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モダンな自社開発企業で働く意味を問う: 大阪のしがない受託開発社長からみた今後のWebエンジニアの生存戦略

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まわりを見れば焦っている人もいれば、全く焦っていない人もいたりしますが、受託開発会社でフリーランスエンジニアへの発注と、また自身もフリーランス・もしくは外注先として発注を受けている中で、「エンジニアとして手を動かすだけではこれから先は買い叩かれてしまう」という未来がなんとなくみえていると感じています。今回はなぜそう思うのか、またどうすればいいのかを手を動かすエンジニアを対象読者として提示したいと思います。

記事を書いている人について

  • 今年31歳、独身
  • 大阪で1人法人やってます(->InterfaceX株式会社)
    • 受託開発として、大阪の自社開発系ベンチャーから開発を請負、自身もSESとしてフリーランスで稼働or請負った開発案件のデリバリーに従事
    • 最近はお陰様で月商600万を超えてきました(未だ若干不安定ではありますが)。事業計画ではコンサバに3年後に年商1億を若干超えて会社に毎年3000-4000万程度の内部留保を貯める、そんな予定で動いています。
      • 年商1億以上をエンジニア1人で起業して達成できると読んでいます。
    • 外注させてもらっているエンジニアは4名から5名程度で、前年度から半減。売上は2倍に。
  • 経歴:2019年ごろからかけだしエンジニア。(テックキャンプ全盛期) 2023年に法人化。2023年の平均月単価は120万-200万程度で稼働していたフロントエンド得意なTypeScriptフルスタックエンジニア。
    • 上場会社と直契約でフリーランスやったり、スタートアップで頑張ってみたり、官公庁向けのシステム請負開発など色々とやってました。
    • 起業した理由は単純に既に税金が高くて死にそうだった、使える経費もなくて税金で翌年死ぬ可能性があったため、法人化したという意識低すぎ起業

AIエージェント時代の到来

  • 2023年ごろのAIは、正直いってエディタの補完を補完するレベルのものばかりしかなく、Webエンジニアの働き方を変えるレベルとは全く思われていなかった
    • Github Copilot
      • 出た当初はエディタの補完でよくね?とおもってよく解約していた
    • Claude2.1, Claude3.0は、3になってから大幅に性能向上を感じたものの、定型的なコードしかまともに生成できないことが多かった。2.1はぶっちゃけギャグレベルのコードだった。
  • 2025年以降のAI(LLM)
    • openai/gpt-5
      • Agentとして今のところ扱っていないが、chatgptとして使うと、正直、歴5年超えている自分よりも適切にオンラインの文献を読み込んで、適切なアーキテクチャ設計を納得のできる根拠とともに出してくれる。自分がやるよりも早いので、オンラインのリサーチ能力においては正直勝てない。
        • 実店舗の売上データとか、現実世界の理解はないので、そういった実地データやノウハウでしか勝てない
        • コードもほぼ動くコード、特にモックアップ用途のUIをいい感じに出す能力においては個人的には特筆すべきものがあると感じる
    • openai/gpt-5-codex
      • 生成に若干時間がかかるものの、適切なインプットを渡せば極めて質の高い本番に耐えうるコードを生成することもしばしば
      • 前例がないコードもロジックを積み上げて書き上げる能力はあると感じる。ただし、プロンプトでインプットを適切に渡せるかどうかも重要。
    • anthropic/claude-sonnet-4.5
      • ミドル-シニアレベルのエンジニアが、脳死でコードを書く程度のタスクであれば、あまり手をいれなくてもいい感じのアウトプットをあげてくれるようになった
      • コードのscaffoldingにはほとんど不足を感じることはなくなった。複数の文献をあたったりして、前例のないコードは正直あまりかけない。

Webエンジニアリングをする文脈において、おそらくもう使わない人はいないと言うレベルにまでAIエージェントは利用されるようになったと周りを見て感じます。しかし、AIも結局は人間のエンジニアとにたところはあって、「インプットをわたす指示を出す人が、どこまで適切に命令を出せるか」というところに大きく生成される結果は依存しています。また、「生成したコードを適切なアウトプットに整形する」という作業も非常に重要になっていると感じます。

AIエージェント時代の進化と水面下で起こっている準委任契約の終焉について

準委任という働き方は、私もエンジニア2-3年目のペーペーかつAIが使えなかった2020年ごろは「最強の働き方だなこれはw」とかいいながら、たまにはちょっと高いいきなりステーキとか食べに行っていたものなんですが、AIエージェント後は全くそうではなくなっていると考えています。

(準委任契約とは)
成果物の完成を約束するのではなく、一定の業務を適切に遂行すること自体を約束する契約です。

民法の「委任」の規律が基本で、受任者は**善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負い、結果ではなく努力義務(ベストエフォート)**で責任を負います。

報酬は時間や稼働量に応じることが多く、**請負契約(成果完成が義務)**と対比されます。
例:システム運用・保守、コンサルティング、アジャイル開発支援、ヘルプデスク等。
  • 現状、ビジネスサイドからは「エンジニアはほとんどコードをAIで生成して書いている」という点に関して、エンジニアの提供価値が落ちたと感じることはなく、むしろデリバリー改善に非常に有用であると歓迎されている状態。
  • ただ、中小企業であまり採用に予算がない会社だと「ミドル・シニアレベルのエンジニアを取るなら、初心者に毛が生えたエンジニアにAIを操作させても、いい感じに現場レベルの働き方はできているね」という受けとり方をしているビジネスサイドの方が多いと言う見方をどうしてもされがちになっている。
    • メガベンチャーとかだとどういった感じなのかあまりわからないのですが、新卒エンジニアの給料はかなり伸びているものの、高単価な案件や求人は正直増えていないなと感じています。
      • デリバリーできる量は増えているのに関わらず、単価が上がらないというこれまで見られなかった状態に陥っているのではないか?

        • (私見)言語や商流・ポジションによるとおもうが、LL系言語(特にPHP)は案件が少なくなったと2023年ごろから聞くようになった。 この70万というのは、60-80万円でもとれうる人が平均的に獲得する単価なので、ここでボリュームゾーンが形成されている?
          • おそらく案件をえらばなければ需要は旺盛だが、「いい案件を獲得できるか」でいうとかなり厳しいというのが自分の周りをみていても感じるところ
      • 特に準委任契約のフリーランスの場合、デリバリーできた量(pull request / 本番反映したコード、納品完了したプロジェクト)に関わらず、時給単価を上げるインセンティブが働きづらい状態になっている

        • AIエージェントというツールによって、全体の生産性が底上げされた結果、その利潤がエンジニアではなく企業が享受してしまっている状態に近づいている?
        • 企業からしても全体生産性があがってしまえば、給料をあげるインセンティブが全く上がらなくなってしまう
          • 自分の会社では、以前なら何も考えずにフリーランスのエンジニアにおまかせしていた仕事範囲は、何も考えずにAIエージェントにとりあえず突っ込んで見る状態になってしまい、外注先が半減してしまった
            • P/Lは大幅に改善した。受託開発の場合、請負開発もやっていて、ここにリスクを感じており、あまり請負に振り切ることができなかったが、AIエージェントによる生産性向上によって、請負開発での予算内デリバリー成功確率が大幅に向上し、準委任契約での稼働を大幅に減らすことで、平均月商が大幅に増えました
            • 受託開発だと、新規事業をうちではうけることが多いのですが、そもそも成功しなかったり、あとは営業段階からプロトタイプを作り切るうちに他のお金をいただいてコードを書く時間が削られてしまうような状態もあったのですが、それもAIエージェントによって大幅に改善し、AIエージェントにコードを作らせることで、営業中の案件が最悪失注しても外注費=AI利用料のみに抑えられるようになり、ここが最も営業活動が改善した部分です。

話は若干それるのですが、最近はフランチャイズオーナーに店舗内装を受託するビジネスなど結構儲かっている方もいらっしゃるらしいです。彼らはエンジニアでいうと請負開発のような形で内装工事が完了してはじめてお金をもらうモデルとなっています。建築業界では請負契約が何かと多く、それによって関連法律が適切に整備されていたりもするようです。

彼らはデリバリーにはどうしても人力が必要なのですが、いまのソフトウェア開発は、AIエージェントによって大幅に工数が削減できるため、請負開発をすることに対してアレルギーになることは若干アンチパターンに陥っているのではないかと思っています。

これに関しては、自社開発企業から究極的には予算をもらって、その予算内で開発を完結できるようなビジネスモデルが提供できれば、それが最もエンジニアの利益追求につながるかも?と思いつつ、今の会社で色々と試してみているところです。究極的には事業会社に雇われてエンジニアとしているより、外注先の受託開発企業として請負でその範囲をデリバリーしたほうが稼げるならそっちがよくない?と本気で思ったりしています。 一人で例えば上場企業の大きなサービスを立ち上げるとかでも良いですし、既存のアプリ開発をまるっと一人とか1社で引き受ける時代はかなりくる可能性はあるんじゃないかなと思っています。

まとめると、準委任契約で時給をもらってAIで生産性あげても、あなたの給料あがりましたか? ということなんです。給料のあがらないイノベーションほど腹立たしいものはありません。

開発チームで動いていた時代から、今後は1名のエンジニアがAIエージェントを使ってコンテナの数をスケールするようなイメージでデリバリーできる工数も簡単にスケールし、請負契約で巨大なサービスも納品できる世界線がくる、もしそうなったら時給で働く意味はなくなってくるだろうと読んでいますし、実際に私は請負開発で月に稼げるお金の限界を突破しつつあるなと感じています。

チーム開発をする理由の喪失と人類ソリューション営業兼エンジニア化計画

  • SaaSやEC系の会社とか最新機能を常に出していかないといけない会社だと、競合に勝つためにプロダクトロードマップを策定し、通年など計画をたててから開発に落とし、テックリードなどデリバリー担当者と相談をし、工数が不足していると感じたら採用に動くことが多かった。(例)このままだと機能のデリバリが全く間に合いません。エンジニアもう一人欲しいです。のような形
    • 今だと、「エンジニアの追加は不要なので、AIエージェントを使って効率を上げるので私に2倍の給料ください」がいえるのが一番給料があがりそうな感じがする
  • 思えば、チーム開発ってめちゃくちゃめんどくさかったよね、と言う話
    • 新しいメンバーがきたら毎回「うちのコードはこういう感じ」という説明を全方位でやらないといけなかった
      • 初回のレビューでコメントが100件以上つくなど「洗礼」が行われる
    • コードレビュー、優秀な仲間がいると自分のタスクも差し置いて最高優先度でこなすけど多いときに3-4件のプルリクを見ないといけない。バグってるかまで見なくてもいいけど、品質の高いレビューをするために手元で動かしたりとかするのが大変。
    • epicレベルの大きな機能を複数マージするときに競合が起こりつづけてめちゃくちゃしんどい
    • 「正直これテックリード1人で開発したらよくね?」という疑念をもつ案件もあったりした
      • コードの書き方やら思想やらすべてテックリードが奉行として存在している。テックリードの思考当てゲームと化するコードレビュー
        • 品質担保観点でコードベースが一貫していることは大変重要だが、それってお前一人で全部開発したらよくね? と思う案件に筆者は何度も遭遇したことがある。
          • 郷にいれば郷に従え、とはいうし完コピするくらいやり込めば学びもあるけどぶっちゃけ1人でできれば楽だよね...とは昔からおもっているところ

1人でデリバリーできる量が増えると、もう1人でやったほうがはやい案件って思ったよりたくさんある気がしています。以前はマイクロサービスは開発チーム単位で切るのが良い(コンウェイの法則)など言われていましたが、小さいマイクロサービスを1人で開発するとか、新規サービスを1人で開発するとか、全く知らない言語をスクラッチで使って開発するとかもうなんでもできてしまうのが現状なので、チーム開発をするメリットが今までになく薄くなっていると感じています。

受託開発の現場でもそうなので、おそらく事業会社でもそうだと思われますが、1人で1サービスを開発することによって、エンジニアの原価管理が圧倒的に楽になります。間接経費も抑えられるので、1エンジニア1サービスという開発スタイルが今後メジャーになっていくことは増えていきそうです。

私の周りで事業会社で受託に近い形態を提供している会社だと下記の様な割り振りが増えている気がしています。

  • 新規事業には1人の担当エンジニアをつける。なるべくAIで開発を頑張って1人の正社員で作り切る
  • SaaSの会社がAIエージェントをひっさげて、新規開発の受託開発部隊をつくる。APIは自社のSaaSを使い、アップセルとして受託を売りに行くムーブの増加
    • ソリューション営業化するエンジニア

エンジニアでソリューション営業しながら自社のAPIを使ったりSDKを使ったりしてモックアップを作って、SaaSをさらにカスタマイズしたニーズに完全に適合するプロトタイプの提供などは非常に需要のあるAI利用分野になりそうです。シリコンバレーでは「Forward Deployed Engineer」など呼ばれているようです。

ref: https://experts.zyyx.jp/gitlab/blog/what-is-forward-deployed-engineer

これって結局客先常駐SESを言い換えただけでは...

こんなSESみたいな働き方があのシリコンバレーでもっともアツいときたもんです。ソフトウェアエンジニアも下にみられてしまったものです。

個人的にはキャリア形成からすると、全く賛同できません。もっとバックエンドの難しいビジネスロジック書き続けて、難しいアプリの設計開発やったほうが言いに決まっています。全ての人がこの働き方には絶対向いていないし、キャリアの何処かで気分転換で経験するくらいが良い気がします。

私の予想ですが、これから先はこういった働き方が増えて、SaaS企業などFDEを使うことで売上が増える企業は少しずつ不人気になっていくと読んでいます。(というかAIによってSaaSのパイが奪われるというのが先かもしれませんが)

これからのエンジニアの生存戦略: モダンな自社開発企業から取れるエッジ(利ざや)はほとんど消えている

昔(2020年あたり)はTerraformをかけてフルスタックエンジニアであれば月100万は稼げるとか言われていた時代もありますが、もう既に前時代的な話に聞こえてしまいます。今だとどう考えても100万の価値がないなと感じてしまいます。(TerraformとかAIがつくるのめちゃくちゃ得意だし一回つくったらほぼ同じことの繰り返しですからね...)

昔はメガベンチャーとかモダンな自社開発企業が転職したいランキングトップに入っていた時代もあったように思いますが、もうそこらで働いてもキャリアを通して得られる収益ってそこまでかわらないんじゃないの?と私は若干遠目にみていたりします。

私も日々真剣に考えているところなので、まだ発展途上ですが、いくつか対策があります。これからはさらに個人レベルでパイの取り合いは激化しそうなので、私もあまりあれこれ種明かしはできないのですが、私の経験上、成功したことをいくつかかいておきます。

結論としてはエンジニアはどこかで需要の激減が起こる可能性があるので、それに対してリスクヘッジをすべきというのが私の考えです。可能であれば、会社により近いところ。従業員としてではなく、取引先としてシステム運用保守等の積み上げも作れるとより良いでしょう。

  • エンジニアとしてまだキャッシュは稼げるので、稼げるだけ稼いでフランチャイズ出店や不動産売買など、キャッシュフローをなるべく早くから作っていく
    • フランチャイズは私の周りでは、5店舗程度加盟して数億の売上を作っている社長さんも聞いたりしますし、月50万以上のエンジニア稼働以外の収益を持っている人もちょくちょくいます
      • これによって必ずしもエンジニアとして稼働しなくていい時間をとれるようになるので、キャッシュフローを作ってまたさらに次の新しいトレンドに張ったり、営業をする時間に使えるでしょう
    • インフレがトレンドではあるので、融資、借り入れはいけるところまでいってしまったほうがよさそうです(返済できる範囲で)
    • フランチャイズや不動産は、取得する際にお金がかかりますが、キャッシュフローを定期的に生んでくれますし、利益を生んでいれば最後にまた出口で売却もすることができ、インフレトレンドによりこの先また高値で売却するチャンスも多いかもしれません。
  • 副業でもいいのでシステム開発を受託する
    • 正社員・フリーランスとして雇われ仕事をする以外に、中小企業のシステムの一部をDX化させる
      • DX化といっても、エクセルを簡単なCRUDアプリに書き換える程度でいいんです
      • ベンチャー企業でバリバリコード書いていた人なら中小企業とかそのへんの受託開発会社のレベルの低さに驚くはず
    • システムを作り込んでしまって、運用保守でお金をいただく
      • 運用保守・サーバー費用など稼働をいただいて、なるべく自分が動かなくても受動的に入ってくる収入を増やしていく
        • システム開発を会社として回して案件ふえていくと月100万以上の固定収入を実現するのもそこまで難しくはないです
        • 品質を確保したまま、顧客の満足度をとりつづけられたらSaaS作ったり博打をうたなくても中小企業10社程度をクライアントにしたらいい感じの売上は立つのでこちらを取りに行っても良いのではないでしょうか
    • システムを受託開発して、途中からレベニューシェアに移行する
      • 作らせてもらったシステムがクライアントをお金持ちにすることがちょくちょくあります
      • その際にレベニューシェア契約に移行を打診します
        • 儲かりすぎるとクライアントから単価アップや固定費アップ、レベシェアの打診をしてくれることもあります
        • うまく行けば広告も出さない、営業フィーなどをを一切出さずにシステムの運用・機能追加をするだけで、個人開発をしてそこそこの収益がたっているような状態ができます
  • とりあえず営業マンになる
    • エンジニアから営業をやってみて思いましたが、営業ができるエンジニアは本当に最強です。コードを書くのは最悪AIができるので、自分で営業することが最も未来の身の振り方に迷いがなくなると思われます
    • 会社を作るでもフリーランスでも良いと思いますが、エージェントは投げ捨てて、とりあえず自分で顧客を見つけるパイプを作るなり、発信するなり、テレアポするなり、LinkedIn伸ばすなり、下請けとして雇ってくれるところを常時2-3個持っておくのが良いです

私はというと、フリーランスのエンジニア何年やっても不安だったのですが、起業してからひとり法人でもお客様が営業活動によって増えていくことが不安をすべて打破してくれているように感じています。

システム開発はキャッシュはある程度稼げる職種なので、その強みを活かして次のキャッシュフローを生み出すフランチャイズ加盟、不動産、ECサイト構築とか色々なキャッシュフローを生む事業に手を出して、月商200-300万くらい回せると、とてもいい感じにエンジニアだけに人生設計を頼る不安感から開放されてきました。なので、合う人合わない人もいるかもしれませんが、自分で案件営業して、しっかり納品するという動き方がエンジニアの世界でも重要になってきていて、一人親方として受託開発やってみるのもいいんじゃない?というそういった結論でした。

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