アラートの表示文言の表現

✅ UXの観点からのアラート文言設計指針(iOSアプリ向け)
iOSアプリにおいて、アラートの文言は単なる通知ではなく、ユーザー体験(UX)そのものです。ユーザーに安心感を与え、次の行動を明確に導く文言設計が求められます。
1. 事実+理由+提案 の3ステップを意識する
要素 | 例 |
---|---|
事実 | パスワードが正しくありません。 |
理由 | (省略可・内部要因の場合は不要) |
提案 | もう一度入力してください。 パスワードを再設定できます。 |
💡 良い例:
パスワードが正しくありません。もう一度入力してください。
この形式により、ユーザーが「何が起きたのか」「なぜなのか」「次にどうすればよいか」を迷わず理解できます。
2. 文面は短く・明確に・敬語ベースで
- 主語や助詞は省略してOK:「〜してください」で終わる簡潔な構造
- 読点は1文に1つまでが理想(情報の塊を減らす)
- エラートーンは「怒り」「拒絶」ではなく、「案内」「補助」のトーンにする
例:
× 入力が正しくありません。
◎ メールアドレスの形式が正しくありません。もう一度入力してください。
3. 曖昧な表現を避け、具体的に伝える
NG例 | 改善案 |
---|---|
入力が正しくありません | メールアドレスの形式が正しくありません。 |
認証できませんでした | 認証コードが一致しません。 |
ユーザーの操作と結びついた原因が示されると、再操作の成功確率が上がります。
4. 繰り返し表示されてもストレスにならない言葉選び
- × 「エラーが発生しました」だけ
→ 原因も解決策も不明で不安をあおる - ◎ 「サーバーエラーが発生しました。時間をおいて再度お試しください。」
→ 一時的なエラーであることが伝わり、安心感が生まれる
5. iOSヒューマンインターフェイスガイドライン(HIG)に準拠する
AppleのHIGに準拠したアラート文言設計のポイントは以下のとおりです:
-
タイトルは省略可能
→ メッセージが状況を的確に伝える場合、タイトル不要(UIAlertController
のmessage
のみでOK)
→ タイトルは補足が必要なケース(例:長時間操作していなかったなど)に限る
🔗 HIG: アラート -
アクションボタンは明確な動詞を使う
悪い例 良い例 OK 再試行する / ログインする / 設定を開く キャンセル 後で行う / スキップする → HIGでは「Delete」「Retry」など、結果を明確に伝える動詞を使うことが推奨されています。
🔗 HIG: ボタン -
アラートは1回の操作で完結させる
→ 2段階の確認や選択肢過多は避ける。選択肢は最大2つ(Primary / Cancel)が基本。 -
破壊的操作には注意表示を加える
→ destructive スタイル(赤ボタン)+確認付きテキスト(例:「この操作は取り消せません」) -
アラートを回避できるなら、非モーダルな通知で代替を検討する
→ 例:バナー、トースト、インラインエラー表示など
🔗 HIG: アラート
🔖 アラート文言UXチェックリスト
以下の観点でアラート文言をレビューしましょう:
チェック項目 | チェック済 |
---|---|
1. 何が起きたか明確に伝えているか? | ✅ |
2. ユーザーに責任を押し付けていないか? | ✅ |
3. 次に取るべき行動がわかるか? | ✅ |
4. 同じ文言を何度見ても不快でないか? | ✅ |
5. 短くて読みやすい文になっているか? | ✅ |
6. アクションが意味のある動詞になっているか? | ✅ |
7. アラートを避けられるなら他のUI手段を検討したか? | ✅ |
🧠 クイズ:アラート文言設計の理解度チェック
Q1. 次のうち、UX観点で最も適切なアラート文言はどれ?
A. 入力に失敗しました
B. エラーが発生しました
C. パスワードが正しくありません。もう一度入力してください。
D. ダメです!
答え:C
状況(事実)と提案が含まれており、ユーザーの次の行動を自然に促す文面です。AとBは曖昧で、Dは拒絶的で不適切です。
🔗 HIG: アラート
Q2. アクションボタンのラベルとして適切なのはどれ?
A. OK
B. キャンセル
C. やめる
D. 再試行する
答え:D
HIGでは「OK」などの曖昧な表現ではなく、結果を明示する動詞ベースのラベルを推奨しています。
🔗 HIG: ボタン
Q3. アラートが不要なケースに該当するのはどれ?
A. ユーザーの入力に即時フィードバックしたいとき
B. 決済失敗後の再試行を案内したいとき
C. ネットワーク遮断をユーザーに伝えたいとき
D. ログイン中にセッションが切れたとき
答え:A
即時フィードバックはアラートではなく、インラインエラー表示やバナーなど非モーダルな方法が推奨されます。
🔗 HIG: アラート
Q4. アラートにタイトルをつけるべきケースは?
A. 毎回つける
B. メッセージが短すぎるとき
C. メッセージだけでは状況が伝わらないとき
D. Appleの推奨だから
答え:C
タイトルは補足的な情報が必要な場合にのみ使用します。多くの場合、メッセージだけで十分です。
🔗 HIG: アラート
Q5. 次のNG例を改善すると?
認証できませんでした。
A. もう一度試してください。
B. 不明なエラーが発生しました。
C. 認証コードが一致しません。もう一度入力してください。
D. 入力に誤りがあります。
答え:C
ユーザーの操作に具体的に対応し、明確な提案を含んでいます。
🔗 HIG: アラート