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法律から見る日本の寒い地域: 「国家公務員の寒冷地手当」地図

2024/12/10に公開

こんにちは、MIERUNEの @sorami です。今年(2024)、北海道の真ん中、旭川近くの東川町というところに引っ越しました(経緯)。本日12月10日は、最高気温-2度、最低気温-6度です。

この辺り、上川地方は、日本の中でも特に寒さが厳しいエリアとして知られ、日本の気象官署での観測史上最低気温「-41.0℃」 はこの地で記録されています(1902年1月)。

出典: 気象庁|歴代全国ランキング

出展: 気象庁|歴代全国ランキング

ところで、一般的に日本で「寒い地域」というと、どこを思い浮かべるでしょうか。やはり北海道?

国家公務員の寒冷地手当

法律

日本には 「国家公務員の寒冷地手当に関する法律」(昭和二十四年法律第二百号) という法律があります。この法律では「寒い地域」で勤務する国家公務員に対する手当の支給について定められています。

https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000200

また、対象となる地域は法令内の別表で規定されており、寒冷地は1級地から4級地までの区分で定義されています。

国家公務員の寒冷地手当に関する法律 - 別表 - スクリーンショット

これらの地域は、具体的に日本のどこにあるのでしょうか。

地図

地図上で塗り分けてみると、以下のように各地域が1級地から4級地に区分されていることがわかります。

「国家公務員の寒冷地手当」地図

全国1,718市町村(北方領土6村を除く)のうち、計450(26.2%)が寒冷地となっていました。

  • 一級地: 79市町村(4.6%)
  • 二級地: 90市町村(5.2%)
  • 三級地: 19市町村(1.1%)
  • 四級地: 262市町村(15.3%)

一級地, 二級地, 三級地は全て、北海道にあります。また、北海道の市町村で寒冷地に指定されていないところはありません(計179 - 北方領土6村を除く)。

四級地は、東北全県(青森県, 岩手県, 宮城県, 秋田県, 山形県, 福島県)と、関東地方(群馬県)、甲信越地方(新潟県, 山梨県, 長野県)、北陸地方(福井県)、東海地方(岐阜県)、そして中国地方(岡山県, 広島県)にあります。

中国地方の岡山県(真庭郡)や広島県(安芸太田町)も指定されているのは面白いですね。

これらの区分は、恐らく歴史的な経緯によるところも多く、必ずしも現代の気候や生活状況と一致しているとは限らないでしょう。しかし、一つの事例として興味深いものだと感じました。

データ

法令情報

e-Gov法令検索の法令APIから、法令情報を取得することができます。

https://laws.e-gov.go.jp/apitop/

例えば今回の法令は、以下のようにすることで取得できます:

https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawNum=昭和二十四年法律第二百号;article=第一条
https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=324AC1000000200;article=第一条

今回対象とした別表は、以下のように取得しました:

https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=324AC1000000200;appdxTable=別表

しかし取得したものの、その地域は自然文で書かれているため、機械的にパースするのが困難でした。

# 原文の例
"""
オホーツク総合振興局管内のうち
網走郡 斜里郡のうち清里町及び小清水町 常呂郡 紋別郡のうち遠軽町、湧別町、滝上町、興部町及び西興部村
"""

# → こうしたい
["北海道", "オホーツク総合振興局", "網走郡", None],
["北海道", "オホーツク総合振興局", "斜里郡", "清里町"],
["北海道", "オホーツク総合振興局", "斜里郡", "小清水町"],
["北海道", "オホーツク総合振興局", "常呂郡", None],
["北海道", "オホーツク総合振興局", "紋別郡", "遠軽町"],
["北海道", "オホーツク総合振興局", "紋別郡", "湧別町"],
["北海道", "オホーツク総合振興局", "紋別郡", "滝上町"],
["北海道", "オホーツク総合振興局", "紋別郡", "興部町"],
["北海道", "オホーツク総合振興局", "紋別郡", "西興部村"],

そのため最終的には人手でデータを作成しました。全てを人手で打ち込んで整備したわけではなく、原文をもとに GitHub Copilot が大部分を支援してくれたため、半自動で準備することができました。

行政区画(市区町村)

行政区画(市区町村)の地形は、国土交通省 国土数値情報(行政区域) を元にした、smartnews-smri/japan-topographyを利用しました(municipality/geojson/s0001/N03-21_210101.json)。いつもありがとうございます。

データとコードの公開

整備後のデータと前処理のコード(Jupyter Notebook)を公開しています。詳細はそちらをご覧ください:

https://gist.github.com/sorami/9a090862157c545575e1960d8007fd63

CSVファイルの様子

Jupyter Notebookの様子

可視化

前処理して整理したデータを、QGISを用いて可視化しました。

QGISの様子

着色には、Observable 10 カラーパレットを利用しました。2024年4月に公開された、 データ可視化ライブラリ Observable Plot のためのデフォルトの色区分です。

https://observablehq.com/blog/crafting-data-colors

Observable 10 カラーパレット

参考情報

https://weathernews.jp/s/topics/201712/060105/

https://blog.goo.ne.jp/la_old_september/e/75497cd2d92433d547ea4a88280394b1

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