ChatGPT3.5(無料)で始めるディベート練習
今回は多くの人が試しやすいようにChatGPT3.5(無料版)で検証していきます。
基本的なコマンド
- 長い文章を読み込ませる
入力文字数には制限があります。「解除と言うまでは回答せず、「続けて」と返して」と言って、その間入力を続けてください。 - 長い文章を答えさせる
回答が長いと途中で止まってしまいます。「続けて」と言ってください。 - 改行はShift+Enter
使い方1:校正させる
ChatGPTは自然言語処理をするAIです。情報の正確性はありませんが、文章力は高いです。
校正する、という機能が便利です。
検証したところ、引用元が勝手に変えられたり、引用の中身が勝手に変えられることは無いようでした。ただ、そのためにも分かりやすく鍵かっこで囲うなどしてください。
そのままコピペして完成版にするというよりは、地の文で「確かにそっちの方がいいな」と思う部分だけ採用すると良いでしょう。
例えば、以下の校正は妥当だと思いました。
なぜそう校正すべきか理由を求めてみたのですが、一般論が返ってきただけで具体的ではありませんでした。
正直言って、なぜそうなのかが分からないのにChatGPTに従って直すのはやめた方がいいです。
言われたらそうだと分かるけど一人だと煮詰まってしまう、という状態で役立つものだと思ってください。
ちなみにこの校正が参考になるなと思った点は以下の通りです。
・発生過程1に対して、立論中でプランを示していないのにプランと言っている。具体性がないので分かるよう論題を端的に要約して挿入している。
・発生過程1の論題導入そのものが示すのは「外国人労働者の受け入れ」ではなく「日本国内での労働を認める」こと。(論題で「受け入れ拡大」と言っているので間違いではない)
・発生過程1と2の繋がりが修正されている。日本国内での労働を認めれば即座に労働力不足が解消されるわけではないため、発生過程2に「外国人労働者の受け入れが増えることで」という一言が追加され、ロジックが分かりやすくなっている。
・発生過程3に「日本企業は」と追加され、外国に工場を移転する主語が明確になっている。
・深刻性で単に空洞化と言っているが、メリットが「産業の空洞化を防ぐ」なのでそれに合わせて修正されている。
※モデルシナリオなので、否定側と揃える意味で発生過程になっています。重要性が深刻性になっているのはミスです。
使い方2:応答練習のために質問させる
反駁は反駁練習をよくするのですが、立論の応答練習って全然しなくないですか?
でも応答ができる立論者ってとにかくかっこいいですよね。
ということで、応答練習として無限質疑っていうのをよくやっていました。これには無限に質問してくれる質疑者が必要なんですが、タイミングが合わないこともあります。一人でも応答練習したいですよね。
先ほどの立論に対してできるだけ答えやすい質問を10個考えてください。
答えやすい質問10個
ここからは、先ほどの肯定側立論に対して、答えやすい質問を10個考えてみます。
- 外国人労働者の受け入れ拡大によって、どのような産業が影響を受けると考えますか?
- 外国人労働者の受け入れ拡大によって、日本経済にどのような影響が出ると考えますか?
- 外国人労働者の受け入れ拡大によって、日本国民の雇用機会は減少するという批判がありますが、どのように反論しますか?
- 外国人労働者の受け入れ拡大によって、社会保障財政にどのような影響が出ると考えますか?
- 外国人労働者の受け入れ拡大によって、どのような職種が需要があると考えますか?
- 新たな在留資格を導入することによって、どのように外国人労働者の受け入れが増やされると考えますか?
- 外国人労働者の受け入れによって、日本国内における人種差別や偏見などの問題はどのように対処すべきだと考えますか?
- 外国人労働者の受け入れ拡大によって、日本の技能教育や人材育成にどのような影響が出ると考えますか?
- 外国人労働者の受け入れ拡大によって、日本企業のグローバル化が進むと考えますか?
- 外国人労働者の受け入れ拡大によって、日本の国際競争力が向上すると考えますか?
良い質疑なのか、本当に答えやすいのかはともかくとして、一定の想定問答にはなると思います。
どのような回答をすべきかはチームで相談してほしいのですが、一応ChatGPT的にはこう思うという回答を得ることもできます。
では上記に対する回答をできるだけ短く答えてください。
出来るだけ立論の中にある論拠から答えてください。分からないことは分からないと答えてください。
回答例
- 高度人材やITなどの分野で影響があると考えます。(論拠:現状分析「外国人の受け入れが少ない」、深刻性「産業の空洞化」)
- 日本の経済成長にプラスの影響を与えると考えます。(論拠:現状分析「人手不足」、深刻性「海外直接投資の増加による国内生産、投資、雇用等の減少」)
- 外国人労働者が単純労働に従事するわけではなく、日本人にはない専門性や技能を持っている場合があるため、雇用機会が増える可能性があると反論します。(論拠:現状分析「単純労働者は受け入れないという政府の基本方針」)
- 社会保障財政には負担がかかる可能性があるが、外国人労働者が年金や医療保険に加入して納めた負担金が社会保障制度を支えることもあるため、それを考慮する必要があると考えます。(論拠:メリット「労働力不足が解消される」)
- 農業や介護、建設などの職種で需要があると考えます。(論拠:発生過程「在留資格を導入し、外国人労働者を受け入れる」)
- 雇用契約の締結先機関との条件で日本国内での労働が認められる在留資格を新設することによって、外国人労働者の受け入れが増えると考えます。(論拠:発生過程「新たな在留資格を導入することによって、外国人労働者の受け入れが増やされる」)
- 多文化共生の理念に基づいた教育や取り組みを行うことで、問題に対処すべきだと考えます。(論拠:発生過程「受け入れ人数の制限を行わない」)
- 外国人労働者が専門的な技能を持っている場合、日本人にもその技能を教育する機会が増える可能性があるため、技能教育や人材育成にプラスの影響を与えると考えます。(論拠:現状分析「外国人の受け入れが少ない」)
- 日本企業がグローバル化するためには、外国人労働者の導入が必要な場合があるため、外国人労働者の受け入れ拡大が日本企業のグローバル化を促進すると考えます。(論拠:現状分析「日本は外国人の受け入れが少ない国」)
- 外国人労働者の導入によって、多様性が増し、グローバルな視野を持った人材が増えることによって、日本の国際競争力が向上する可能性があると考えます。(論拠:現状分析「外国人の受け入れが少ない国」)
では上級編、難しい質問をしてもらいましょう。
肯定側立論にとって致命的な欠陥は何ですか?
肯定側立論の致命的な欠陥
肯定側立論にとって致命的な欠陥は、外国人労働者の受け入れに伴う日本社会の課題や問題点に対して、十分な対策を示していないことです。例えば、外国人労働者が社会保障制度に負担をかける可能性や、文化摩擦が起こる可能性などに対する具体的な対策が示されていない点が挙げられます。また、日本人の労働力を活用することが先決であることや、外国人労働者の受け入れ拡大によって日本人の雇用機会が減少する可能性があることなどに対する反論や補足も必要です。
これに従って質疑してもらおうと思ったのですが、ChatGPT3.5には人間の回答に対して追及する機能はないようでした。
ちなみに、ChatGPT4はとても質疑が上手いです。立論を入れなくても、ChatGPT3.5で出した致命的な欠陥を与えるだけで追及型の質疑をしてくれます。
今から「質疑終わり」と言うまであなたは私に以下の欠陥について言及するようにできるだけ短く質問してください。こちらからの回答に対して、必ず1度は追及してください。
肯定側立論にとって致命的な欠陥は、外国人労働者の受け入れに伴う日本社会の課題や問題点に対して、十分な対策を示していないことです。例えば、外国人労働者が社会保障制度に負担をかける可能性や、文化摩擦が起こる可能性などに対する具体的な対策が示されていない点が挙げられます。また、日本人の労働力を活用することが先決であることや、外国人労働者の受け入れ拡大によって日本人の雇用機会が減少する可能性があることなどに対する反論や補足も必要です。
ChatGPT4に長い立論を読み込ませて回数を消費しなくていいというのは大きな気付きです。
無料と有料の使い分けが見えてきた気がします。
とはいえ、こんな短文のやりとりをしていたら簡単に25回終わってしまうので、有料版を使うにしてももっと論点を絞ったほうがいいでしょう。
3時間も待つのはもったいないです。3時間ごとにしか動かないAIに合わせて動いている場合ではありません。人間の貴重な時間を有意義に使うためにAIにサポートさせるのであって、AIに回答させるために人間が動いていてはいけません。
使い方3:立っていない立論を要約させる
あまり言及されないですが、立っていない立論に遭遇したときに、その意図が分からずに固まってしまう人は多いです。ディベートはある程度型が決まっていて、慣れてくるとそれに沿ってきて組み手ができる、というような感じだと思います。
つまり、型にはまっていないでとにかく突進してくるようなものに極端に弱い傾向があります。
とりあえず、形式に沿っていない文章を書かせてみました。
(ChatGPTは勝手に綺麗な文章を書くので割と苦労しました)
形式に沿っていない文章
外国人労働者について、良いことがたくさんあります。例えば、外国人労働者が日本で働くことで、彼らは日本の文化や言語を学ぶ機会があります。同じ職場で働くことで、相互理解が深まり、コミュニケーションがとりやすくなります。
また、外国人労働者が集まることで、職場には多様な人材が集まります。これによって、新しいアイデアやビジネスチャンスが生まれ、職場が活性化することができます。
さらに、外国人労働者が日本で働くことで、彼らの国や文化を知ることができます。将来的には国際交流が促進され、世界をよりよく理解することができるようになります。
つまり、外国人労働者にはたくさんのメリットがあり、彼らと共に働くことは、私たちにとっても良いことがたくさんあるということです。
ディベートの形式には沿っていませんが、言っていることはそれほど悪くはなく、ジャッジは形式に対しては比較的おおらかです。内容がそれなりであれば、3要素の型にはまっているかを重視するよりはできるだけスピーチの中から判定をしてあげようと思う人が多いです。
この場合、否定側の立論が評価できないほどに小さければ、ビジネスの活性化や国際交流を投票理由にして勝つ場面があってもおかしくはないでしょう。
なので「よくわからないけど、立ってない立論に負けた」という事態が発生します。
形式に沿う立論を書けるようになる一方で、形式に沿わない立論をうまく処理できるようにもなる必要があります。
上記を要約させるとこのようになります。
以下が、ナンバリングとラベリングを含めた要約文です。
- 外国人労働者には、日本の文化や言語を学ぶ機会があります。
- 外国人労働者が集まることで、多様な人材が集まり、ビジネスが活性化することができます。
- 外国人労働者の受け入れにより、国際交流が促進されることが期待できます。
- つまり、外国人労働者を受け入れることは、日本の社会や経済にとってプラスの影響を与えることができるということです。
つまり、まず相手の議論をナンバリングとラベリングします。
こちらの形式に引きずり込みます。
1~3が現状分析と発生過程を合わせた論点、4が重要性と仮定します。これは審判にそれなりに妥当に思われればなんでもいいです。できれば質疑の時点でこの構造を明らかにして共通見解を持ちたいです。
そのうえで「プラン前後の差がない」か「発生しても重要でない」ということを指摘していきます。(個別に反駁する前に全体に対して、「プラン前後の差と発生した場合の重要性を相手が証明していない」と言っておくと良いかもしれません)
一応ChatGPT3.5の回答を書いておきます。(質は良くない)
プラン前後で差がない
外国人労働者受け入れ拡大前後で差がない点については以下の通りです。
- 日本の文化や言語を学ぶ機会については、日本に滞在している外国人にとっては拡大前と拡大後で変わりません。
- ビジネスの活性化については、外国人労働者の受け入れ拡大が実現しても、それが自動的にビジネスの発展に繋がるわけではなく、それに対する取り組みや条件が必要となります。
- 国際交流については、日本に滞在している外国人が、受け入れ拡大前後で国際交流の促進に貢献することは変わりません。
- 以上から、外国人労働者の受け入れ拡大があったとしても、それだけで日本社会や経済に変化が生じるわけではなく、取り組みや条件によってその効果が変わる可能性があるということが言えます。
分類できることさえわかれば、短く指摘できて多くの論点に対応できる反駁のバージョンを用意しておけばいいだけです。
まとめ
ChatGPTはネットに繋がないといけないので試合中には使えませんし、ChatGPTの言う通り喋って勝ったところで「機械の代わりに読み上げている」というのは結構虚無感があると思います。実際、無料のChatGPT3.5ではそれほど良いことを言わないのも分かったので、練習に使えるツールが一つ増えたというのがせいぜいでしょう。
ChatGPTに何をさせられるかというのは、リサーチ以外にどんなプレパをしてほしいかということと繋がっていると思います。
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