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Microsoft ハードウェア : 「Windows 開発キット 2023」を普段使いの PC として使う

2022/11/09に公開
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2022 年 10 月 25 日に「Windows 開発キット 2023」が発売されました。
開発者向けに書かれた記事を見かけるようになりましたが、ここではあまり ARM を知らない or 開発などを考えてない方に向けて、普段使いの PC として「Windows 開発キット 2023」は使えるのか?という観点で参考になればと書かせていただきました。
なお、こちらは特に宣伝などは意図しておらず、私に見返りなどもありません😉

「Windows 開発キット 2023」とは?

「開発キット」と名前がついていますが、ARM という CPU が搭載された小型 PC です。
その ARM 用のアプリ開発者をターゲットに Microsoft が販売している製品となります。
https://www.microsoft.com/ja-jp/d/windows-開発キット-2023/94k0p67w7581?activetab=pivot:概要tab
2022 年 5 月の Microsoft Build というイベントで "Project Volterra" という開発コードで発表され、2022 年 10 月 25 日に販売が開始されました。

ARM という CPU

ARM は主にスマホなどのモバイル機器で使われる消費電力を抑えたタイプの CPU です。このタイプの CPU は、デスクトップ PC やサーバー用の CPU よりも処理速度が劣るものの、一方で小型化や発熱量を抑えられるというメリットがあります。
最近ではモバイル向けの CPU の高性能化に伴い、一般的なデスクトップ PC でも実用可能な速度がでるようになりました。それらを搭載している製品も一部ですが出てくるようになりました。
例えば Microsoft では Surface X Pro や Apple の Mac も M1/M2 との表記があるものがモバイル機器でも使われている CPU を利用した製品になります。
ちなみに、ARM を搭載した PC で Windows を動かしたい場合には "ARM 版 Windows" を利用する必要があります。

ちなみに CPU は大きく分けると 2 種類のタイプがあります。
現在ではあまりその境は無くなっていますが、歴史的なイメージでは以下のようになってます。

種類 命令セット 製品 用途
x86 / x64 CISC Intel Core や AMD Ryzen など PC やサーバー
ARM RISC Apple M1 や Qualcomm Snapdragon など 携帯機器や組み込み機器

一般的には Intel などがよく聞くかと思いますが、ARM などは携帯電話やゲーム機、ルーターや組み込み機器などでも良く使われています。ちなみに私は Sun Microsystems の SPARC という RISC ベースの CPU とお仕事をする機会が長かったこともあり、諸君 私は RISC が大好きだ。

で、"普段使い" にはどうなの?

一週間ほど使ってみましたが、個人的には最高です。
使い方にもよりますが、私は普段の仕事使いがメインであり、基本朝から寝るまでつけっぱです。

  1. 低発熱・静音 --- 耳を近づければ微かにファンが聞こえるかというレベル
  2. 程よいサイズ感 --- Intel NUC ほど小さすぎずインターフェイスも十分
  3. デザインが良い --- Surface チックなデザイン
  4. そこそこのスペックだが比較的安い --- CPU 8 Core, RAM 32GB, SSD 512GB

普段の仕事では Microsoft Teams を中心とした Office アプリの使用や Web 閲覧などをメインで使ってます。この程度の使い方であればノート PC なんかと比べたらとても快適に使えます。

小型のお弁当箱サイズの筐体


電源アダプターと筐体


Mac mini より小さいです。(高さが若干低く、Mac mini が正方形の分、奥行きが短い)

モバイルの CPU を使ったデスクトップ PC は、消費電力が少ない分パフォーマンスは落ちるものの (Apple M1/M2 は別格・・・) 発熱量が抑えられることによる静音性と小型サイズ化がありがたいですね。

ARM 版 Windows で動くアプリは?

最新の ARM 版 Windows 11 になって、個人的には困ることはほぼ無くなりました。

ARM 版 Windows では ARM 版アプリが動作するというのが基本となります。
このため Surface RT (2012 年発売) の頃は Windows RT という名称 (Windows 8 ベース) でしたが、基本的に Windows RT 対応アプリしか動作しないため、対応アプリが非常に限られていました。

その後リリースされた Surface X Pro (2020 年発売) では、ARM 版 Windows 10 が搭載されると同時にエミュレーション機能が搭載され、通常の x86 / x64 版 Windows のアプリのうちの x86 (32 bit) 版アプリであればエミュレーション機能で動作が可能になりました。
さらにはその後の ARM 版 Windows 11 では進化して x64 (64 bit) アプリもエミュレーションも可能となり、一般的な Windows アプリであればほとんどが動作するような状況となりました。

  • Windows 11 にて、一般的な x64 / x86 アプリはエミュレーション機能で動作が可能に
  • また ARM ネイティブ対応アプリは増えている。Teams や Office などは ARM 版あり

ARM ネイティブ対応アプリ ---> 増えてきた!

Microsoft Edge, Teams や Office は ARM 対応版が出ています。
今後も対応アプリは増えてくると考えられます。

ARM ネイティブ対応アプリ例

Vendeor App Note
Microsoft Microsoft Edge Web ブラウザー
Microsoft Microsoft Office Word, Excel など
Microsoft Microsoft Teams チャット・ビデオ会議
Microsoft Microsoft OneDrive クラウドストレージ同期
Microsoft Visual Studio Code アプリケーション開発
Microsoft Visual Studio 2022 アプリケーション開発
Microsoft Sysinternals Suite トラブルシューティング用ツール
Microsoft Zoomit (Sysinternals) プレゼン・デモ用ツール
Microsoft PowerToys 便利なユーティリティ集
Adobe Lightroom 写真編集用ツール
Adobe Photoshop 写真編集用ツール


ARM アーキテクチャで動いてるものが多いー

.NET Framwork なんかも ARM 向けが出てますので Microsoft の範囲だと問題なく使えます。

x64 / x86 アプリ ---> 大体問題ない!

通常のアプリ・ソフトウェアであればエミュレーションで動作しますのであまり困ることはなさそうです。普通に Google Chrome など一般的なアプリは問題なく動作します。
また、AirServer というアプリ (AirPlay / Google Cast でのミラーリング表示するようなアプリ) なんかも使えました。

AirSever による iPhone の画面ミラーリング

一方で以下のあたりは注意が必要です。

  • ドライバーを利用するようなアプリの場合は動作しない場合がある
    (サードパーティセキュリティソフトや IME など)

例えば、CPU の温度をモニターするアプリなんかは動かないものもありました。
まぁ、一般的に利用されるようなアプリや Microsoft アプリなどがメインであれば問題ないかと思います。

デバイス・周辺機器はどんな感じ?

この手の小型デバイスにしてはインターフェイスは十分あります。

  • USB-C USB 3.2 Gen 2 x 2
  • USB-A USB 3.2 Gen 2 x 3
  • Mini-Display Port (HBR2 対応)
  • イーサネット ポート (RJ45)


筐体背面に USB-A x3, DP x 1, RJ 45 があり、側面には USB-C x 3 と電源ボタン

ちなみに、USB-C 経由での電源供給を試された方もいましたが流石にできないようです。付属の AC アダプターを使ってくださいね。

一般的な USB マウスやキーボード、マイクなど標準の範囲であれば使える

USB でそのまま認識するもの、汎用ドライバーで動くようなものでは問題なさそうです。
以下のようなものを使っていますが、問題なく使えています。

Vender Name Note
Razer BlackWidow Lite USB キーボード
LogiCool G304 USB マウス
Razer Seiren X USB コンデンサーマイク
Razer Kiyo Pro USB Web カメラ

一方で以下のあたりは注意が必要です

  • 標準ドライバーで動かないデバイス・周辺機器は、ARM 版のドライバーが出てないと使えない (プリンター、デジカメなど)

ちなみに、Razer 製品に関しては "Razer Synaps" というハードウェア構成ツールがあるのですが、そちらからではデバイスの認識はされてない状態でした。

ドライバーを入れることで本来の性能を発揮したり、拡張機能が得られるようなものに関してはメーカー側が ARM 版ドライバーを出さないと難しいと思いますのでご注意ください。

ディスプレイ x 3 台まで

Mini-Display Port x 1 と USB-C x 2 を利用して最大 3 台までのディスプレイに対応可能です。
ちなみに、Lenovo の「ThinkVision M14t」という USB-C 接続のディスプレイにて、タッチ&ペン入力も問題なく利用できています。
https://www.lenovo.com/jp/ja/p/accessories-and-software/monitors/office/62a3uar1jp

必要最低限使えればと割り切ると、十分なインターフェイスがあると思います。

Dock も使えてるようです

同僚からの情報ですが Lenovo の Thunderbolt のドッキングステーション「Lenovo ThinkThuderbolt 3 dock gen 2」に USB-C で接続し、その先につながってるモニター2台、キーボード、マウス、ネットワークとつながってるとの情報をいただきました。
https://www.lenovo.com/jp/ja/p/accessories-and-software/docking/docking_thunderbolt-docks-(universal-cable-docks)/40an0135jp
たまたま Lenovo 続きで恐縮ですが、ドック系も使えるかもしれないということで参考にしていただければ幸いです。

Hyper-V も一応使用可能だが・・・難あり

Hyper-V 自体は使用可能ですが、仮想マシンも ARM になります。
下記のサイト "Windows 11 on Arm Insider Preview" にて、VHDX がダウンロードできるためそのイメージを利用して作成することになります。このためその手のものに慣れていない人ですとちょっと面倒かと思います。
https://www.microsoft.com/en-us/software-download/windowsinsiderpreviewARM64


Hyper-V も使用可能だが仮想マシンの CPU も ARM

メモリは 32GB あるので十分に仮想マシンは動かせるのですが、仮想マシンも ARM ベースになっちゃうと使用用途が限られてしまいますね。

総評・まとめ

以下のようなタイプの方にはおすすめします。

  • 小型で静かな、ノート PC よりもスペックが良いデスクトップ PC が欲しい
  • Web の閲覧や Office などのアプリを使用するのが中心

一方で以下のような方は避けるべきです。

  • あまり PC に慣れていない
  • 色々なソフトウェアや周辺機器を利用する可能性がある

製品自体の質感などは悪くはなく、プラスチックであるもののしっかりした作りです。
見た目の雰囲気通り Surface ミニデスクトップ PC として出てもおかしくないレベルかなと。
個人的には、もし同等レベルの Intel 版などが一般向けにリリースができたとしたら結構売れるのではーと思うほど完成度が高い製品だと感じました!

関連サイト・記事

「Windows 開発キット 2023」の購入はこちらから
https://www.microsoft.com/ja-jp/d/windows-開発キット-2023/94k0p67w7581?activetab=pivot:概要tab

サティアによる初登場アナウンス
YouTubeのvideoIDが不正ですhttps://youtu.be/BmGiJDeIiY0?t=63

レビュー記事など (勝手にリンク失礼します)
https://gigazine.net/news/20221104-testing-microsoft-windows-dev-kit-2023/
https://dev.classmethod.jp/articles/try-windows-dev-kit-2023-project-volterra/
https://zenn.dev/mtmatma/articles/5c83240d2223de

Microsoft (有志)

Discussion

bunniesfieldbunniesfield

レビュー記事お疲れさまでした。ということで少々コメントを...

x86 / x64 をCISCというのは今では語弊があるのでは? おおむねPentium4あたりからx86コードはmicro opに変換され(キャッシュされ)実行されます。micro op の詳細は非公開ですがRISC的だといわれています。

「Windows RT 対応アプリしか動作しない」一般のユーザーは今でいう所のUWPアプリ (の前身) しかインストール&実行できませんでしたね。例外はプリインストールのOffice でこれはWin32アプリでした。

あと、NPU機能・NPU開発にも触れられたらよかったです。「Windows 11 2022 Update」の「Windows Studio」機能はこれを利用しています。
(参考) https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1441064.html
(参考) https://onnxruntime.ai/winarm

タクヤ オータタクヤ オータ

コメントありがとうございます! (申し訳ございません気づいておらず・・・)
おっしゃる通り、厳密性をいうと今となっては難しいですね。
アドバイスいただいた部分も踏まえて修正させていただきます。ありがとうございます!
また、NPU の部分の参考情報もありがとうございました!