Windows Server Datacenter Edition と Azure Edition の違い (どっち選べばいいの?)
Windows Server Datacenter: Azure Edition とは?
"Windows Server Datacenter: Azure Edition" は Azure (と Azure Stack HCI) 上で利用が可能な Windows Server OS です。その名の通り、概ね、Azure 上で利用ができる、 Datacenter Edition に幾つかの機能が追加されたものと考えていればよいかなと思います。
ときどき、Datacenter Edition と Azure Edition にどのような違いがあるのか、従来 Datacenter Edition を使ってきたが新たに Azure Edition を選んでよいものかどうか、などなどご相談頂くこともあるので、改めてまとめておきました。
なお、Windows Server Datacenter: Azure Edition は、Windows Server 2022 から提供されており、Windows Server 2025 でも提供されています。
機能面ではどういった違いがあるのか?
まずは、良く聞かれる機能的な違いについてです。
簡易表
- | Datacenter Edition | Azure Edition | 概要・備考 |
---|---|---|---|
ホットパッチ | - | 〇 | 高速に、再起動不要で Windows Server の更新プログラム適用を実現する機能。再起動の頻度を 3か月に1度 くらいにし、ダウンタイムをへらす。 |
SMB over QUIC | - | 〇 | 安全性を高めるため、TLS1.3 で暗号化した QUIC トンネルを構成し SMB トラフィック を通す機能。Windows Server 2025 は Standard / Datacenter Edition でも利用可 |
データ転送用の記憶域レプリカ圧縮 | - | 〇 | 記憶域レプリカを使用する際に、サーバー間のレプリケーションデータを圧縮する機能。スループットを向上させ、DR時の同期に要する時間短縮などの利点がある |
Azure 用拡張ネットワーク | - | 〇 | 制約は多いが、オンプレミスに存在するサブネットをAzureにも構成して通信できる。いわゆる L2 延伸。あくまで最後の手段として。 |
KMS ホスト | 〇 | - | ボリューム ライセンス認証サービス ロール (Volume Activation Services) を実行して KMS ホストとなれるか |
Windows コンテナ | 〇 | - | Windows コンテナの基本イメージを利用できるか |
その他、大部分の機能 | 共通 | 共通 | - |
機能差について
Datacenter Edition と Azure Edition の主要な相違点についてのドキュメントがあり、Azure Edition でのみ利用可能な機能として、以下のようなものが挙げられています。[1]
- ホットパッチ
- SMB over QUIC (Windows Server 2025 では、Standard / Datacenter Edition でも利用可能)[2]
- データ転送用の記憶域レプリカ圧縮
- Azure 用拡張ネットワーク
これらの機能は、Azure Edition でのみ利用可能な機能です。特に、 ホットパッチ が有用かな、と思います。
また、より詳細な比較としては、各 Edition で使用可能なロールと機能の比較をしたドキュメントもあります。[3] 基本的には Azure Edition の方が多機能なのですが、逆に、 Datacenter Edition でなければ使えなそうなものとしては、以下 2 つの部分がありそうです。
- 1つは、KMS ホストとなることができるか、といった部分です。Azure Edition は Azure 上に展開される前提であり、Azure KMS によってアクティブ化され、KMS ホストとして構成することはできません。
- もう1つは、Windows Server コンテナーの部分です。Windows コンテナの基本イメージは、Windows Server Azure Edition では利用できません。[4]
個人的にはあまり多用しない機能かなと感じており、多くの場合、機能差の面から Datacenter Edition でなければというパターンは、すくないと思います。
OS Image は何が違うの?
smalldisk や Core などもあるので全てのイメージで比較をするわけではありませんが、提供されているイメージを以下の3つの OS イメージとして大別し、違いを確認しておきます。特に ② と ③ の違いが気になるかと思います。なお、Windows Server 2025 では、②と③の区別はされていないようです。
① Windows Server 2022 Datacenter - x64 Gen2
② Windows Server 2022 Datacenter: Azure Edition - x64 Gen2
まずは ① と ② の違いですが、これは既にご紹介した Azure Edition のうち以下機能を有効化できるかどうか、という違いについての話になります。
- SMB over QUIC (既定では有効になっていないので、利用する場合 有効化)
- データ転送用の記憶域レプリカ圧縮 (既定では有効化になっていないので、利用する場合 有効化)
- Azure 用拡張ネットワーク(既定では有効化になっていないので、利用する場合 有効化)
③ Windows Server 2022 Datacenter: Azure Edition Hotpatch - x64 Gen2
② と ③ の違いは、さらにホットパッチが有効化できるかどうかの違いです。
② は Azure Edition ですがホットパッチが有効化できないイメージです。
③ はホットパッチが有効化できるイメージです。
ホットパッチを利用する場合、③ のイメージを選択してください。[5]
なお、Windows Server 2025 では、②と③の区別はされていないようです。
ホットパッチを利用できない?
ときどき、「Azure Edition でデプロイしたんだけど、ホットパッチを利用出来ていない気がする・・・」という場合があります。これは既にご紹介した通り、実は、OSイメージとして、
"Windows Server 2022 Datacenter: Azure Edition Hotpatch - x64 Gen2"
というものがあり、それに気が付いていなかった、というケースがあったりします。
また、デプロイしていても、ホットパッチを利用するためには、ホットパッチを有効化しておく必要もあります。
Gen 1 or 2
Azure Edition は 仮想マシン Gen 2 VM でのみ利用可能です。Generation 1 は利用できません。Datacenter Edition は Gen 1 でも Gen 2 でも利用可能です。
セキュリティ更新プログラム(KB) に違いはあるのか?
Datacenter Edition と Azure Edition で提供される更新プログラムに違いはありますか? といったご質問もいただきます。提供されている更新プログラムは、基本的には同じですが、ホットパッチを利用する場合にはちょっと違いがあります。
ホットパッチ機能について
ホットパッチ機能は、コンピューターを再起動しなくても Windows Server に OS セキュリティ更新プログラムをインストールすることができる機能です。おおむね3か月毎の ベースライン(再起動必要な KB) と、 ホットパッチ(再起動不要な KB)、 2種類の KB があります。
ベースラインには、3か月毎に規則的にリリースされる計画ベースラインと、ゼロデイ修正などの重要な更新としてリリースされる計画外ベースラインがあります。何月の KB がベースラインなのかは、ホットパッチカレンダーで確認することができます。以下は 2024年のホットパッチカレンダーです。[6]
見て頂ければ明らかですが、2024.8 月は、計画外ベースラインですね。
ホットパッチを利用していない場合 における違い -> ない
Azure Edition と Datacenter Edition どちらも、更新プログラムは共通です。
たとえば、2024 年 10 月のセキュリティ更新プログラムについてみてみます。
Windows Server 2022 としては、KB5044281[7] が提供されています。ここに Azure Edition と Datacenter Edition の区別はありません。どちらでも共通のKBです。
ベースライン(再起動必要な KB )の適用 における違い -> ない
ホットパッチを利用している場合、内容は同月に提供されているホットパッチを利用していない KB と同一です。例えば、2024 年 10 月のベースラインについて確認してみます。[8]
内容としては、 KB5044281[7:1] を単に参照するようになっています。
つまり、ベースラインの月では、ホットパッチを利用している Azure Edition と、ホットパッチを利用していない Azure Edition、そして Datacenter Edition で、提供 KB は基本的に同一になります。(だからこそのベースラインです)
ホットパッチ(再起動不要な KB )の適用 における違い -> あり
一方ホットパッチを利用している場合、ホットパッチを利用している Azure Edition に対して、ホットパッチを利用していない Azure Edition 及び Datacenter Edition での提供 KB は異なります。
ホットパッチは、そもそも重要なセキュリティ更新プログラムを再起動不要で適用するものです。つまり、提供されている KB の内容は、同月の通常の KB のうち、再起動せずに高速にインストールできる Windows セキュリティ更新プログラムのみに限定されています。
一例として、2024年9月に提供された、ホットパッチの KB と、ホットパッチではない KB を見比べてみます。黄色ハイライトしたセキュリティアップデートは共通ですが、青ハイライトした部分は、ホットパッチではない KB にのみ含まれていることがわかります。
そのため、ホットパッチを利用している場合には、ホットパッチを利用していない Azure Edition 及び Datacenter Edition とは、差が生じる場合があるということになります。
ライセンスまわりでは何か違いがあるのか?
今持っているライセンスを踏まえてどちらを選べばいいか、といったご質問を頂くことが有ります。ライセンス周りは十分に確認いただく必要はありますが、基本的には Datacenter Edition と Azure Edition どちらを選んでもよいという答えになると思います。
Azure ハイブリッド特典 を利用しない場合に何か違いはあるか? -> ない
特段、ソフトウェア アシュアランス つきの Windows Server ライセンスなどをお持ちでないなど、 Azure ハイブリッド特典 が利用できない場合です。この場合、 Azure Edition と Datacenter Edition どちらを選んでも、ライセンス料金は同じです。Azure の仮想マシンは、OS の料金 と コンピューティングリソースの利用料金 どちらも 従量課金制 で Azure のサブスクリプション に請求されるため、Azure の利用料金として OS のライセンス費用も払っていく形になります。
このあたり、料金計算ツールで確認してみます。
上記の場合、 OSの料金 として ¥896.32/月 が請求されることがわかります。この際、Datacenter Edition と Azure Edition どちらを選んでも、 OS の料金として違いはありません。
Azure ハイブリッド特典 を利用する場合に何か違いはあるか? -> ない
ソフトウェア アシュアランス があり Azure Edition に Azure ハイブリッド特典を利用したいが、 Azure Edition でも利用はできるのか? というご相談については、 Azure Edition でも利用可能というのが回答になります。
既存の VM で有効化することも、新規作成時に有効化することも可能です。
ライセンス認証で何か違いはあるか? -> ない
Datacenter Edition でも Azure Edition でも、基本的にライセンス認証のための手続きは不要です。Azure Marketplace からデプロイした Windows VM は全て、Azure の KMS サーバーに接続してライセンス認証するように最初から構成されています。[8:1]
その他、聞かれること
どちらが推奨、といったものはある? -> ない
特に、どちらかを推奨している、どちらかは非推奨、といったものはありません。
当たり前ですが、Azure 上に VM 立てる際、Azure Edition ではなく Datacenter Edition でもまったく問題ありません。
で、どちらを選べばいいんだっけ? -> お客様の要件次第
Azure Edition でしか利用できない機能を利用したい場合は当然 Azure Edition を選択頂くかとは思いますが、オンプレミス等も含めて Datacenter Edition で統一しておきたいといった場合など Datacenter Edition を選択されることもあるかと思います。Azure Edition Hotpatching では、パッチの適用タイミングが他のマシンと異なることが困るということ(WSUS や Azure Update Manager でしっかり管理したい、のような)で、ホットパッチのない Azure Edition を選択されることもあるかと思います。
私自身は Azure Edition の方を常用しており、 Azure Edition で困ったという声を聞いたこともないため、Azure Edition でいいんじゃないの、とは思ってはしまいますが、どちらを選ぶかは結局、お客様の要件次第になります。
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