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アンチパターンから学ぶAzureバルククレジットの活用法

2024/06/10に公開

はじめに

Microsoftパートナーになり、ソリューションパートナーとして認定されると、分野によってはAzureのバルククレジットを特典として受け取ることができます。

枠内(商用環境と記載)
これだけでMicrosoft AI Cloud Partner Programの年会費の元が取れるくらいの特典なので、使わない手は無いですよね。ただ、利用者の声を集めてみると、実際に使ってみると思ったとおりに使えないというようなケースが多いように思えるので、この記事では制約事項などの記載を元に、上手に使っていくTipsなどを紹介していきたいと思います。

特典の有効化の方法

ソリューションパートナーとしての前提条件を満たし年会費の支払いを行うと、パートナーセンターの[特典]に[Azureクレジット]というメニューが表示されますので、そこから有効化が可能です。

複数の特典がある場合は並べて表示されます
有効化には、Partner Centerに登録されたEntra IDのアカウントを指定しアクティブ化のURLをそのユーザーに送った上で有効化をさせます。以前は個人アカウント(Microsoftアカウント)にだけ付与ができましたが、今は逆に個人アカウントへは新規では付与できず、以前から付与している物の継続にしか割り当てできません。
Learnのサイトにもこのレベルの記載のみになっている認識です。簡単ですね。

パターン1. 既に利用中のAzureリソースの費用減算として利用する

$6000商用環境に対してのクレジットと言われると、真っ先にこの利用法が浮かびます。が、前項で記載したとおり、「新規」でサブスクリプションが作成されますので、そのままだと既存環境のリソースとして利用することができません。
特定のリソースのみ「移動」して利用するとか、新規で作るHub & Spoke構成のSpoke VNET側で作るサブシステムとかを配置して利用する事はできると思いますが、特典が終了してしまった場合やクレジットを使い切ってしまった場合など、今後の再移動や作り直しが発生したとしてもあまり焦らずに再移動とかができる前提で構成する必要があります。
いずれにしても、商用環境でやるのは勇気がいりますよね。

パターン2. $6000のクレジットを複数束ねて使う

上の方のスクリーンショットにもあるとおり、複数分野でのソリューションパートナーの認定などにより、クレジットを複数受け取ることができることがあります。ただ、同じシステムで例えば$6000x4 = $24000使いたいなどの要望が有る場合でも実現は難しいです。
使い方のところで記載をしましたが、特典を利用する場合はユーザーを1人指定します。この指定は1ユーザー1特典となり、4つまとめて$24000クレジットを与えるなどはできません。
例えば4特典($6000x4)を利用するには、4ユーザー指定する必要があり、それぞれ$6000のクレジットを持ったサブスクリプションが作成されます。
そして、各サブスクリプションはクレジットを使い切ると自動的に従量課金制(PAYG)のサブスクリプションに変換されます。
有効期限30日の他、残りのクレジットが50%、25%、10%を切ると通知メールが来るのですが、Azure SponsorshipのサブスクリプションはAzureポータルからコストを確認できず、専用のポータルからしか残額を確認できないので、残額管理の面からも使い勝手が悪いです。

パターン3. 自由に使えるPoC/トレーニング環境として開放する

タダで使えると思ったら結構制約事項多そう…ということで、どうせ使い道が微妙なら自由に作ったり壊したりできる検証環境として開放しちゃおうというケースも多いかと思います。
この場合にぶち当たる壁を3つほど紹介したいと思います。

  1. MarketPlaceなど別途課金される物をデプロイされてしまう
  2. リソースを消し忘れてクレジットを使い切られてしまう
  3. VMに侵入されてマイニングされサブスクリプションごと停止されてしまう

VMを作成しようとした際に、例えばCentOSとかでFreeだと思っていたら実はMarketPlaceでサードパーティーベンダが公開している有償の物だったりするようなケースがあり、注意が必要です。デプロイ時にクレジット適用可否が表示されているのですが、完全に開放してしまうとそこも担保が難しくなります。

また、Sponsorshipサブスクリプションは利用規約でマイニングが禁止されております。spam行為なども当然禁止されています。そういったことを守る前提で無償提供されているサブスクリプションなので、違反すると最悪サブスクリプションごと止められてしまいます。
そういった意味から検証環境などで手放しで勝手に使うというのは難しいかも知れません。

個人的お勧めの使い方

ゆるく管理された自由に使える環境として構成するのが一番コスパが高いように感じます。いくつか使っていく上でのTipsを箇条書きで記載します。

  • 必要な個数分特典有効化(ならびに残クレジット確認)専用のアカウントを作成する (例: benefit01~04@xxxx.onmicrosoft.com)
  • 利用者から申請を受けて、期間限定でリソースグループ単位の所有者権限を付与してその中で使って貰う。Entra IDの権限が必要な場合は合わせて付与。
  • MicrosoftのトレーニングなどではEntra ID側の権限を必要とするようなケースもありますので、Entra IDのP1,P2など(これらも特典にある物を活用可能)を有効化させたパートナーテナント上で展開する
  • 有効化の際にはクレジットカードの登録を求められますが(PAYGに移行した場合、ならびにMarketPlaceなどで発生する課金先)個人のカードではなく決裁を取ってコーポレートカードで。課金無しで制御しきるのは難しいので、少額(月1万とか年10万)枠で決裁取得
  • SponsorshipはSpotインスタンスが使えるので、リージョンのスポットvCPUのQuota緩和申請(例えば3→12)をしておくと良い。既定のQuotaが0のGPUインスタンスなど、解除しなくても低優先ならリソースに余裕さえあれば起動できるので特に検証環境での利用には有用
  • Copilot for SecurityのSCUに使える($4/インスタンス・時間)が、これが利用金額ボリュームがある程度あり、かつ課金総量をコントロールしやすいのでお勧め
Microsoft (有志)

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