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エンジニアがペット用ニットウェアを作り始めた理由——編み物ビジネス試行錯誤の記録

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1人アドベントカレンダー2025 4日目。

ペットを飼っていないのに、ペット用ニットアイテムを作ってみた話をします。

正直、矛盾しているんですが、真面目にそんな戦略を取った経緯を整理して話したいと思います。


売れない日々

2019年に編み物を再開してから、メルカリで販売を始めてみました。
("ハンドメイド"のカテゴリーに出品すればハンドメイド品を販売できるため、まず始めるのに手軽でした)

最初に作っていたのは、アクリルたわしやリストバンド--。実用的で、作りやすいものでした。

価格も数百円から数千円前後と決して高くない価格だったので、売れるだろうと思っていましたが、なかなか思ったように売れませんでした。

これは、新品や中古品を安く買いたい人が多く集まっていたことにも起因していると思っています。

もちろん、購入される方もいましたが、決まって値段交渉が発生し、
"お気に入りを購入したい"というモチベーションより、"より安いものを買いたい"モチベーションの人が多いことも、「作ったものはそこまで価値がないのでは?」と思ってしまいました。

やり取りは、"とても気に入っているので安くしてくれ"というスタンスのやり取りの方が多かったのですが、まあいいか、で値下げをした後、検討しますで保留にされたりすることも度々でした。

また、"個人的に交渉した人だから安くする"というのは公平性を欠くので、値下げした値段で販売を続けるのですが、手間暇かけたものが値下げ交渉に耐えざるを得ない状況に疲弊してしまいました。

当時、メルカリショップはなかったため、在庫数=出品数で、作った個数分だけ出品しなきゃいけないのも、面倒に感じていました。
(確か、その当時はアプリからのみしか出品しかできなかったのも面倒と思った記憶です。うろ覚えですが…)

この問題を打破するため、調べたところ、minneCreemaのハンドメイドマーケットのプラットフォームが賑わっていることを知り、私は、minneに登録しました。

こちらも、登録する前は、売れたらどうしよう!(今考えると、とんだ狸の皮算用…。)と悩み、売れた時を考えて在庫を増やして--。

結果は、数個売れるだけ。

Instagramも始めました。投稿を頑張ってみたり、Eコマースアカウントに切り替えてみたり、Instagramと連携できると聞いて、Squareのネットショップを開設してみたり--。

しかしながら、劇的な変化は起きませんでした。

「ペットがいいよ」

転機は、最初の会社でお世話になった上司からのアドバイスでした。当時、役員をされていた女性の方です。

「ペットのものは、我が子可愛い!で似合うと勢いで買ってくれる人多そう。」
「手編みのペット用品は、サイズ感の調整ができれば意外と需要があるよ。」
「ペット市場は拡大しているし、人っぽいものを着せたい需要はどんどん増えているよ。」

そして、こうも言われました。

「ペットにお金を惜しまない人は多いし、気に入ったら高くても買ってくれる。そして、ペット仲間同士で口コミも広がるよ」

その話を聞いて、なるほど、と思いました。

本格的に作ってみた

アドバイスをくれた方に、最初の作品を送りました。

簡単に作れるものを編んでもおもしろくないと思ったので、結構凝った作りにして本格的に編んでみることにしました。

猫用のセーターには、北欧の伝統的な編み方を取り入れました。キヒノヴィッツ・ラトビアンブレードと呼ばれる技法を使用。

キヒノヴィッツ・ラトビアンブレードの編み物
棒針編みで横方向に「三つ編みのようなぷっくりとねじれた編み目」を作る伝統的な技法のキヒノヴィッツ・ラトビアンブレードの編み方

キヒノヴィッツのヴィッツとは「樽」という意味です。キヒノとは、手編みのミトンなど伝統的で独特な手仕事で有名なエストニアのキフヌ島(キヒノ)のことです。

つまり、"キヒノの樽"という意味で、樽のたがのように、立体的に見える編み上がりで、渡り糸をねじった独特な模様が特徴で、特有の凹凸感が出ます。

そして、グレーをベースに、オレンジ、グリーン、イエローのラインが入った、カラフルなデザインに編み上げました。

犬用のセーターには、アラン編みの編み込み模様を入れました。ターコイズブルーの毛糸で、ケーブル模様が浮き出るようにあえて太めの毛糸でざっくり編みに。

お渡しして数日後、届いた写真に嬉しくって飛び上がってしまいました!

猫2匹がニットセーターを着ている写真

可愛い!!!

ミニピンがアラン編みのセーターを着ている写真

技術的には、作れることがわかりました。写真映えもする--。これはいけるかもしれない!!!

でも、壁がある

問題は、ここからでした。

私はペットを飼っていません。

当たり前のことですが、これが想像以上に大きな壁でした。

ペットを飼っている人にアクセスする手段がない。サイズ感もわからない。

首が普通より太い、ぽっちゃりしている、胴が長い…etc。「うちの子に合うサイズで作ってほしい」と言われても、どれくらい調整したらいいかの感覚がわからない。

サイズを測って教えてくれたら作れると思うけど、やり取りや着てみて合わなかった時の調整の往復など、その面倒さに付き合ってくれるのか--。

そもそも、ペットを飼っていない・実際に会ったこともない人から、決して安くない値段で時間もかかるものを買うだろうか?

サイズ調整が必要になれば、やり取りも発生しますし、その手間をかけてまで、購入に踏み切る人がいるだろうか…?

写真は可愛いのに、反響がなかなか来ない(Instagramでペットを飼っている人にアクセスできていない)。
今、改めて投稿したら反応が増えるかもしれないけど、当時はそのまま埋もれていきました。

もう一つの壁は、自分の性格でした。

私は飽き性です。同じものを何度も編むのが苦手なので、凝った編み方やいろんな色で感覚で編むことを好んでしまう…。

ネット販売をするなら、同じ商品を複数作って在庫を持つ必要がありますし、注文が来たら同じものを編む必要があります。

でも、私は気ままに編みたい。今日はこの色、明日はこの模様、という感じで。

そういう意味で、アドバイスをくれた方のペットに編んであげるのは楽しかったのですが(テーマの色だけ聞いて、それに合うものでいい感じに編むのは楽しかった)、
ネットショップで繰り返し販売するとすると、同じものを作る必要があり、毛糸も同じ種類をたくさん用意する必要があります。

任せてくれる状態で、適当(=いいカンジ)に編むことができるといいのだけど、同じものだけを編み続けるのはちょっと厳しいかもしれない(楽しくないかもしれない)。

本当はオーダーメイドをやりたいんですが、そこそこ値段のかかるものを"適当"に任せてくれるまでの関係性構築がペットを飼っていないこともあり、難しいよね、という結論に至りました。

可愛いのに、売れない。そんな状態が続いています。

現在地:サイズを選ばない方向へ

ワンニャンのコットンバンダナ

今は、サイズをあまり選ばないものに注力しています。ケープ、バンダナ、マフラー、スヌード。

首回りに巻くだけ、背中にかけるだけ。サイズ調整の幅が広いから、「うちの子に合わない」というリスクが減ります。

そして、もう一つの対策として--。

凝ったものを気ままに編んで届けたいという欲はあります。ただ、少量生産で値段も高いのでネットではなかなか売れないとも感じました。

そこで、"実物を見て購入してもらえる"環境として、ハンドメイドマーケットやマルシェで販売することもしています。ただし、気に入っても、ぶらりとやってきたイベントでその場で即決して高めの商品を購入するのは難しい現実にもぶち当たっています。

どうしても、本業が忙しくて、出展できる機会は少ないですし、直前で決めることが多いので計画を立てて活動はできていないのですが、それでも"サイズが合わない"、"思っていたのと違った"などの課題が解決し、納得して購入してもらえる機会として、無理ない範囲でハンドメイドマーケットに出店しています。

ここからCMです!

現在、在庫としてはコットンバンダナが45個ほどあります(作り出すと大量に作っちゃうんだよね…)。
1,200円〜で、minneネットショップで販売中です。

実は、ショップに出している色以外のバンダナも多いのですが、本当に興味があったらSNSでもいいのでコンタクトしてください!

大量のコットンバンダナ
この写真は一部です…

おわりに

ペット用ニットウェアを作り始めた理由は、元上司のアドバイスで「需要がありそうだから」と思ったからでした。

自分がペットを飼っているからではなく、市場があると聞いたからで、せっかく作ったものを喜んでくれて、届けることができると楽しいよね!…と思ったからでした。

結果として、技術的には作れたけど、ビジネスとしてはうまく回せていません。

ペットを飼っていない状況や、同じものを量産するのに飽きてしまう性格や、ぎりぎりで行動する自分の特性が理由と思います。

これでいいか、というと、できれば持続性・再現性があるように見直していきたいのですが、それでも、今のところは趣味として割り切っている側面もあるので、これでもいいとは思っています。

編み物を続けられて、ほしいと言ってくれる人の手に渡れば楽しいし、ペット小物に固執しているわけではないし、解決していない課題があってもいいと思っています。

試行錯誤は続きます。


明日は「AIコーチングでひとり会社の運営が楽になった話」を書く予定です。

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