「DMM.comを支えるデータ駆動戦略」を読んだ
データラーニングギルドのアドベントカレンダー、14日目の記事になります。
買ったはいいけどありすぎる読み応えに積んだままにしてしまっていたDMM.comを支えるデータ駆動戦略を読んだ所感です。
書籍要約
ざっくり内容を要約してみました。
1.データ駆動戦略の全体像を理解する
- KGIにつながるCSFを分解したKPIを設定してPDCAを回せ
- KGI ビジネスにおいて組織や企業が設定する最終的な経営目標を定量的に評価するための指標。Key Goal Indicator の略。書籍では売上1億円達成が例として挙げられる。
- CSF 経営目標を達成するに当たって経営戦略上、重要となる管理項目。設定したCSFに資源を投下することが、目標達成の鍵となる。Critical Success Factor の略。書籍では売上1億円を達成する野に必要な1日の売上が例として挙げられる。
- KPI 重要目標達成指標であるKGIを実現するための日々の行動指針。Key Performance Indicator の略。書籍ではCSFを因数分解した1日の訪問数、購入率、一人あたりの購入額が挙げられている。
2.事業を数値モデルで表現すると予測と自動化ができる
- 事業をシステムとして捉え、構造を言語化して説明可能にする。
- 何をインプットし、何をアウトプットするシステムなのか。
- 階層性を捉え、ミクロ・マクロのズームイン・ズームアウト。階層をブレイクダウンして1人のユーザーの行動として把握できるか、場所・流入元・商品・金額といったあらゆる切り口で解析できるか。
- 科学的に数値で観測し、客観性、再現性を高める。
- KPIを設定して改善を繰り返す。
- ユニットエコノミクス 一人あたりの単位でみたときに収益として黒字になっているかどうかを見る指標。ユニットエコノミクスまで落とし込み、この合計が財務諸表につながるようにする。
3.仮説検証を繰り返すことで不確実性を下げていく
- 正解がわからない中、スピード感をもって改善を繰り返す
- 正解はユーザーにある
- 組織が大きくなると関係者が増え、社内調整に時間がかかるが価値は生まない
- 失敗をコントロールする。失敗から学ぶ。
4. なぜ学習をする組織が必要なのか
- 学習する組織とは 目的に向けて効率的に行動するために集団としての意識と能力を継続的に高め、伸ばし続ける組織
- しなやかさが必要
- 「しなやかに」とは、強い衝撃や急激な変化に耐え、あるいはその後に回復する力(レジリエンス)を持っていることを指す
- 既存の経験に囚われないよう、戦略的に「Unlearn」させる。
- タックマンモデルのどの位置にいるかを確認する。
- 「関係の質」を高めることから始め、成功循環モデルのグッドサイクルを回す。
- 戦略的にUnlearnできる場を作る。
- スクラムやリーンといった体系的な学びの「型」を取り入れる
- メンバー同士の価値観を相互左右させることで「ゆらぎ」の場をつくる
5.戦略的Unlearnによる組織モデルの構築
- 戦略的Unlearnでの組織学習の流れは、アジャイル開発の1種であるエクストリームプログラミングを参考にしている。
6.組織構造から発生する力学を操作する
- 目指すべき組織から与える裁量や権限といった組織構造を考える
- ユーザーの変化が激しくスピード感を持って取り組む必要があるなら、少人数で権限を委譲し小さく失敗氏ながら進められるよう失敗の影響度を管理できるよう予算を見えるようにする必要がある。
7.データを集約して民主化する
- データ活用できる基盤を構築する
- データレイク(データを貯める湖)
- データウェアハウス(データの管理倉庫。データレイクに入るデータは利用するサービス毎にことなるため分析しやすいデータ構造を担保する)
- データマート(価値があるデータ)
- 毎日ダッシュボードを見る癖をつける
- デイリースクラムで確認、チャットに通知を入れる
- エンジニアでないメンバーもSQLを学んでデータの民主化を図る
8.商品レビューをデータ駆動でグロースさせてみよう!
- 因数分解してKPIを展開する
- A/Bテストを実施する
書籍にもそう書いてますし、書評ブログを書かれた方も仰られていますが、立場や興味に応じて関心の高い事が書かれたチャプターから読んだ方がよさそうです。
それだけボリュームがすごいです!
そして読んだら理解できるという類の本ではなく、実践する中で何度もこの本に立ち返って消化していく本かなと思います。
著者である石垣さんのこちらの記事もデータ駆動戦略を理解するうえで参考になりました。
データ駆動を可能にするDMMのカルチャー
会社の数は本体のDMM.com 含めて 22社。
従業員数は公式HPによると本体が1527名、グループ全体だと記事によれば約4000名。
これだけの大規模な会社が、徹底的に細やかなデータ管理を行えている要因は何だろう?というところが気になりました。
DMMのビジョンを調べてみたところ、以下のような内容でした。
DMMは、器のような会社。
DMMは長らく、「ビジョンなし」の会社としてやってきました。
ビジョンがないからこそ、なんでもできる。どんな市場にも参入していく(ただし撤退の判断もスピーディに)。
どこまでも商いや事業を尊重し、稼ぎながら、再投資することで成長してきた企業です。
何でも受け入れる、という意味でしょうか...。
また、創業者の亀山社長の対談も非常に興味深い内容でした。
目利きでどういう話があったかというと、一番多かったのは、「テクノロジーをどう目利きしているのですか?」と。
VRやロボットなどいろいろやられてると思うのですが、どうやってそれらへの投資の判断をされてるのかという。
亀山敬司氏(以下、亀山):ぜんぜんしてないね、これは。
目利きというか、テクノロジーは本当によくわからないね。だから何もしてないです。
要は俺はテクノロジーの良さがわからないから、結局みんなからそれがウケてる・ウケてないみたいな話になるから。
だからまあ、やらせてみるんだよね。やってみないとわからないから、やらせるという。
だから、目利きしてるんじゃなくて、目利きしないでやらせてるということかな。
(略)
亀山:だから、明日明後日潰れるような会社じゃないわけじゃない。
そしたらちょっとぐらいドジってもいいからさ、ボコボコやらせてみるということになるかな。
つまり、今、余力あるうちに失敗させておいたら、本当にでかい失敗をしなくなってくるし。
今、金あるうちにちょっとぐらい損させてでも、やらせてみるのがいいかな。
それはやっぱり、こういう講義を聞くのもいいんだけど、実際に実践のなかでやって、コケたほうが頭にガーンと入ってくるんだよね。
ここからうかがえるのは、以下の4点です。
- DMMは顧客が反応するかどうかを大事にしつつ、様々な事業を展開している
- やらせてみるチャレンジ精神を大事にする文化
- 失敗を許容する文化
- 失敗から学べる環境を整えている
データ駆動という、直接売上に結び付かない投資に力を入れている点も、スピーディさが求められるウェブ系の事業が多いことに加え、やらせてみる文化、失敗を許容する文化によってデータ駆動の投資が行われたのではないかと思います。
また、失敗を許容する文化が、安心して失敗から学べる環境の中で働きデータ駆動戦略を継続している要因なのではないかと感じました。
失敗すると即アウトの文化であれば、データを取っていても中で働く人たちはなんとかして言い訳しようと思うのが人情でしょう。
以上になります、最後までお読みいただきありがとうございました。
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