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React・Remix・Next.jsから学ぶGitHub Releasesの整理術

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はじめに

普段からGitHub Releasesを使う中で、「どう書けば見やすく、伝わりやすいのか?」と気になったことがきっかけで、いくつかのプロジェクトのリリースノートを調べてみました。

すると、プロジェクトによって書き方や構成の違いがあり、工夫の方向性もさまざまでした。
しかし、比較していくうちに、そうした違いの中にも共通するパターンや表現、構造の特徴が少しずつ浮かび上がってきました。

本記事では、GitHub Releasesの書き方に注目し、以下のような内容をまとめています。

  • GitHub Releasesの基本的な機能
  • ライブラリやフレームワークごとのリリースノート構成の比較
  • よく使われている表現や分類スタイル
  • 自分のプロジェクトで活かすためのヒント

リリースノートの書き方に迷ったときや、他のプロジェクトを参考にしたいときに、少しでも役立つ情報になれば幸いです。

GitHub Releasesの基本的な機能と使い方

GitHub Releasesは、リポジトリの「Releases」セクションから簡単にアクセスでき、次のような機能があります。

  • バージョン管理
    • リリースごとに固有のバージョン番号をつけ、コードの状態を記録します。
  • リリースノート
    • 変更内容や修正内容、機能追加などの詳細をリリースノートとして記述し、ユーザーに告知できます。
  • アセットのアップロード
    • バイナリファイルやインストーラー、ドキュメントなど、リリースに関連するファイルをアップロードし、ダウンロードリンクとして提供します。
  • タグ付け
    • Gitのタグ機能と連携して、特定のコミットをリリースに紐付けることができます。

公式ドキュメントに画像付きで説明が載っているので、詳しくはこちらを参照してください。

https://docs.github.com/ja/repositories/releasing-projects-on-github/managing-releases-in-a-repository

プロジェクトの選定基準と調査方法

プロジェクト選定

今回はリリースノートの構成や書き方に注目するというテーマのもと、フロントエンド分野で広く使われている次の4つのプロジェクトをピックアップしました。

  • React
  • Remix
  • React Router
  • Next.js

他にも気になるプロジェクトは多くあるのですが、記事の内容やボリュームを踏まえ、まずはこの4つに絞って紹介することにしました。

今後のシリーズでは、他の領域や用途のプロジェクトも順次取り上げていく予定です。

調査方法

リリースノートを調査する際には、以下のポイントを意識して調べました。

  • 構成の特徴
    リリースノートの構成がどのように整理されているかを調査しました。例えば、変更内容がどれだけ詳しく書かれているのか、どの情報が最初に目に入るようになっているのか、といった点に注目しました。

  • GitHub Releasesの位置づけ
    プロジェクト内でGitHub Releasesがどのような役割を担っているのかを見ました。例えば、GitHub Releasesが補足的な位置づけなのか、公式サイトからも案内されている主要な情報源なのか、といった違いです。これによって、リリースノートの扱われ方や重要度がプロジェクトごとにどう異なるかが見えてきます。

これらの視点を元に、それぞれのプロジェクトのリリースノートがどのような特徴を持っているのかを深掘りしていきます。

各プロジェクトのリリースノートまとめ

React

ReactのGitHub Releases
ReactのGitHub Releases

構成の特徴

Reactのリリースノートは、機能ごとのカテゴリと、モジュール単位での分類を組み合わせた構成が特徴です。
特にメジャーアップデートでは、「New Features」「Breaking Changes」「Deprecations」といったカテゴリごとに情報が分けられ、その中で「React」「React DOM」「React DOM Server」などのモジュール単位の小見出しで整理されています。

パッチやマイナーアップデートでは、各PRのタイトルがそのまま箇条書きで並べられるシンプルな形式です。一方で、メジャーアップデートでは概要や背景説明を含んだ、より丁寧な記述となっており、詳細な解説は公式ブログやアップグレードガイドへ誘導するスタイルになっています。

GitHub Releasesの位置づけ

Reactのリリース情報は、主に以下の3つの場所で提供されています。

1. GitHub Releases

https://github.com/facebook/react/releases

2. CHANGELOG.md

https://github.com/facebook/react/blob/main/CHANGELOG.md

GitHub Releasesとは別にCHANGELOG.mdがある理由については、RemixのリポジトリReact Routerの公式サイトでされていた説明がしっくりきたので紹介します。(Reactも同じ理由かは分かりませんが...)

We manage release notes in this file instead of the paginated Github Releases Page for 2 reasons:

  • Pagination in the Github UI means that you cannot easily search release notes for a large span of releases at once
  • The paginated Github interface also cuts off longer releases notes without indication in list view, and you need to click into the detail view to see the full set of release notes

(和訳↓)

私たちは2つの理由から、ページ分割されたGithub Releases Pageの代わりにこのファイルでリリースノートを管理しています:

  • Github UIのページネーションでは、一度に多くのリリースのリリースノートを簡単に検索することができません。
  • ページ分割されたGithubのインターフェイスでは、長いリリースノートはリストビューでは表示されずに切り捨てられ、リリースノートの全セットを見るには詳細ビューをクリックする必要があります。

そのため、基本的にはCHANGELOG.mdが中心的な情報源として管理されているように思えます。それに対しGitHub Releasesは、通知機能やリアクションなど、周辺機能の利便性もあることから、外部向けに公開される「発表の場」 として活用されている印象でした。

3. 公式サイト(Versionsページ)

https://react.dev/versions

一方で公式サイト(React.dev)は、各メジャーバージョン(例:React 18、19)の概要や機能、アップグレードガイドを掲載するナビゲーション的な位置づけです。リリースノートで説明するにはちょっと長すぎるような、具体的なコードを交えての解説がブログ形式で紹介されていました。

所感とまとめ

Reactでは、リリース情報を以下の3つの情報源に分けて提供することで、

  • 変更の一覧性(CHANGELOG.md)
  • 通知・配布の即時性(GitHub Releases)
  • 概要と文脈の理解(公式サイト)

といった目的ごとに役割を明確にし、それぞれに最適な形で情報を届けている印象を受けました。

また、「カテゴリ → モジュール単位」で整理するリリースノートの構成は、変更点が把握しやすく、自分のプロジェクトでも取り入れやすいスタイルだと感じました。
シンプルながらも読み手にとって親切な設計で、丁寧な情報提供の好例と言えるのではないでしょうか。

Remix & React Router

RemixとReact Routerは、同じ開発チームによってメンテナンスされていることもあり、リリースノートの構成やスタイルにも一貫性がありました。そのため、このパートでは2つまとめて紹介します。

RemixのGitHub Releases
RemixのGitHub Releases

React RouterのGitHub Releases
React RouterのGitHub Releases

構成の特徴

どちらのプロジェクトも、リポジトリ直下にある CHANGELOG.md にリリース情報をまとめており、バージョン番号と日付の見出しごとに時系列で整理されています。

変更内容は、「Patch Changes」「Minor Changes」「Breaking Changes」といった変更の種類に応じたカテゴリに分けられ、それぞれの項目が簡潔に箇条書きで記述されています。

さらに、複雑な変更や仕様の補足が必要な箇所には、箇条書きの中で段落を変える形で簡単な背景説明や移行ガイドが記載されていることもあります。

また、各エントリの末尾に「Changes by Package」というセクションが用意されており、どのパッケージにどんな変更があったのかが一覧で把握できるようになっている点も特徴的でした。

なお、React Routerの公式サイトのリリース情報も、内容はCHANGELOG.mdのものがそのまま掲載されており、CHANGELOG.mdが主要な情報源として位置づけられていることがわかります。

GitHub Releasesの位置づけ

両プロジェクトとも、GitHub ReleasesはCHANGELOG.mdへのリンクを提供する場として活用されています。

リリースノートの本文には「See the changelog for the release notes.」といった一文と該当バージョンへのリンクのみが記載されており、変更点の詳細はそちらを参照する形になっています。

ちなみに、この運用スタイルはRemixではv2.3.0以降、React Routerではv6.19.0以降から始まっていました。

所感とまとめ

RemixとReact Routerのリリースノートは、情報の種類ごとに丁寧に整理されており、ユーザーが必要な情報にすばやくアクセスしやすい構成が特徴的でした。

  • 変更内容のカテゴリ分け(Patch, Minor, Breakingなど)
  • PRやIssueへのリンクが併記されており、変更の背景が追いやすい
  • 背景説明や移行ガイドの補足
  • 複数パッケージの変更をまとめる「Changes by Package」セクション

といった工夫により、リリースの意図や影響範囲が把握しやすくなっています。

また、GitHub ReleasesとCHANGELOG.mdの役割を明確に分離し、すべての情報をCHANGELOG.mdに集約する方針も印象的でした。

Reactのように情報源が複数に分かれているスタイルとはまた違った、統一感と集中管理を重視した運用スタイルとして、参考になる点が多いリリースノートだと感じました。

Next.js

Next.jsのGitHub Releases
Next.jsのGitHub Releases(直近のv15.3.0は非常に長いため、ここではcanaryの例を掲載しています)

構成の特徴

Next.jsのリリース情報は、GitHub Releasesが主要な発信源となっており、全体をまとめたCHANGELOG.mdは存在していません。

各リリースでは、以下のようなカテゴリごとに変更内容がまとめられています。

  • Core Changes
  • Documentation Changes
  • Example Changes
  • Misc Changes

それぞれのセクションでは、各変更がPRのタイトル単位で箇条書きされており、対応するPR番号へのリンクも付けられています。
また、各リリースの末尾には 貢献者への謝辞(Credits) も添えられており、コミュニティへの敬意が感じられる点も特徴的です。

Next.js特有のリリースとして、canary版(開発版)が存在し、こちらもGitHub Releasesにプレリリースとして一覧表示されています。canaryはPRマージのたびにリリースされる形式で、更新頻度は非常に高く、細かな変更の追跡が可能です。

Canary Releasesについては以下のディスカッションで確認できます。

https://github.com/vercel/next.js/discussions/36898

canary versions are released pretty much after every merge into main and often after only few hours.
Multiple canaries can be created on the same day, making it sort of "nightlies".

(和訳↓)

カナリアバージョンは、メインにマージされるたびにリリースされる。
同じ日に複数のカナリアが作成されることもあり、一種の「ナイトリー」となっている。

なお、このディスカッションは2022年5月時点のものであり、現在は canary ブランチがデフォルトブランチとして設定されています。

GitHub Releasesの位置づけ

Next.jsでは、GitHub Releasesと公式ブログの二本立てでリリース情報を提供するスタイルが取られています。

GitHub Releasesでは、すべてのバージョンの変更内容がPR単位で整理されています。canary版(開発版)も含めて、細かな修正や内部的な改善までしっかり記録されているため、実質的にはCHANGELOGとしての役割も果たしています。

一方で、Next.jsの公式ブログ(ニュース)では、メジャーアップデートや注目度の高いマイナーリリースを中心に、新機能や改善点が紹介されています。ブログでは、変更の背景や意図に触れながらわかりやすく解説されており、全体像を把握したいときに役立つ内容になっています。

ただし、ブログではすべての変更が取り上げられているわけではなく、またGitHub Releasesも安定版とcanary版が同列に並んでいるため、細かい変更点や安定版だけの情報を確認したいときには、やや探しづらさを感じる場面もあります。

この点については、GitHub Discussionsでも「Reactのように安定版の変更だけを確認できるページがほしい」といった声が挙がっていました。

https://github.com/vercel/next.js/discussions/65212

そんな声に応えるように、コミュニティのユーザーがまとめサイトを作ってくれていました。

https://nextjs-changelog.vercel.app/

このサイトでは、canaryやリリース候補(rc)といった開発版を除いた安定版のリリースノートだけを一覧で確認できるほか、「バージョン◯◯から最新までの変更点をまとめて見たい」といったケースにも便利な差分表示機能がついています。

大量のリリースの中から必要な情報だけをさっと探したいときに、公式情報を補う便利な情報源として使えそうです。

所感とまとめ

Next.jsのリリースノートは、GitHub Releasesを中⼼に構成された、実用性の高いスタイルが印象的でした。

  • PRベースのシンプルなリスト形式
  • カテゴリ別の整理(Core, Docs, Example, Misc)
  • 貢献者への謝辞の掲載
  • 開発版(canary)も含めた頻繁なリリースの可視化

といったポイントからも、最新の変更を素早く確認できる実践的な構成が意識されていると感じます。

一方で、GitHub Releasesと公式ブログで役割を分担しつつも、安定版とcanary版が同列に並ぶ構成や、すべての変更点を一元的に見渡せるページがない点には、やや不便さを感じる場面もあるかもしれません。

全体として、Next.jsは高速な開発サイクルを支える運用に最適化されたリリーススタイルを取っており、プロダクトの成長スピードに合わせた合理的な構成として、非常に参考になる事例だと感じました。

おわりに

本記事では、GitHub Releasesを活用している人気プロジェクト(React / Remix & React Router / Next.js)をピックアップし、それぞれのリリースノートの構成や工夫を比較してきました。

共通して見られたのは、単に変更点を列挙するだけでなく、ユーザーが理解しやすいように整理された構成 や、GitHub / 公式ブログ / CHANGELOG.md などの情報源を使い分ける工夫がされていた点です。

また、プロジェクトによっては、

  • 情報を1箇所(CHANGELOG.md)に集約して見やすくするスタイル
  • 公式ブログとGitHub Releasesで役割を分担するスタイル

といったように、それぞれの開発体制や運用方針に合わせた整理の工夫がされていることも印象的でした。

GitHub Releasesは便利な機能ですが、「どう書くか?」はプロジェクトによってさまざまです。
今回紹介した実例が、自分のプロジェクトに合ったリリースノートの書き方を考えるヒントになれば嬉しいです。

今後は、以下のようなテーマでも引き続きまとめていく予定です。

  • 今回取り上げたプロジェクトのGitHub Actions活用編(リリースノートの自動作成など)
  • 新たなプロジェクトのリリーススタイルの紹介

本記事が参考になりましたら、いいねやフォローいただけると嬉しいです!


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