初めてのAI駆動開発、チームの生産性が6週間で143%向上した
こんにちは、mayaです!
今回はさまざまなAIツールをチームに導入した結果、1年以上かかる見積もりのプロジェクトを半年で完了できる見通しが立った話をしようと思います。
この記事の主題は、いわゆる「AI駆動開発」の事例紹介です。
技術系の細かい話は期待しないでください。どちらかというと、どういった目的でどのAIエージェントを使用したかとか、AI活用をチームに浸透させるために何をしたか的な話がメインです。
📄 この記事で分かること / 対象読者
- AIツールをどう活用して開発効率を上げたか?
- AIツール導入にあたって効果検証、選定、投資対効果測定はどうしたか?
- AIツールをチームに導入するにあたり工夫したこと
対象読者:AI駆動開発で開発効率を上げたい方、AI活用をチーム/組織全体に普及させたいPMさん
👨💻 筆者のステータス
- エンジニア歴3年
- 現在は自社開発サービスにおけるリプレイスプロジェクトのリード
🎯 背景共有
お話の舞台はとある自社開発企業のリプレイスプロジェクトです。
PHP/Laravelで構築されたサービスをNext.jsで再構築する作業を、4-6名のチームで行っています。
かれこれ1年ほど続いてるプロジェクトなので、多方面から「いつ終わるの?」とプレッシャーがかかってる状況。
今後も長く運用されるサービスなので、品質を維持しつつも開発効率を向上させることが急務でした。
実際に導入したツールは下記の通りです
ツール | 主な用途 | 導入効果 | 特徴 |
---|---|---|---|
Devin | コードレビュー自動化、調査、要件定義、仕様書作成 | レビュー時間70%削減 | ドメイン知識の理解力が高い |
Claude Code | 実装・設計・調査 | 実装速度2倍以上 | 仕様書駆動開発に最適 |
Cline | 実装・設計・調査 | Claude Codeに移行してからは使用してない | VSCode統合で使いやすい |
GitHub Copilot | コード補完・提案、PRの簡易コードレビュー | タイピング50%削減 | リアルタイム支援 |
🚀 AIツール本格導入までの流れ
ほとんどのAIツールはもちろんタダじゃないので、会社に購入してもらう必要があります。
ざっくりこんな感じで進めました。
- 「AIツールに対する期待値」を明確化しステークホルダーに説明
- 試験導入(1ヶ月)
- 試験期間中に効果検証とナレッジの蓄積
- 効果検証結果のまとめ / 本格導入決定
そもそもAI活用に前向きで新しい取り組みに柔軟な会社なので、特に障害なくスムーズに本格導入まで辿り着きました。
📊 効果検証と投資対効果
本格導入に漕ぎ着けるには、試験導入期間を以て「AI導入してよかった!継続したいです!」と報告できる材料を揃える必要があります。
「慣れないツールで逆に効率下がった」なんて懸念もありますし、当初は爆発的な効率UPも期待していなかったので、定量だけでなく定性面でも材料を揃えておこうと考えました。
- 定量的な指標
- 単位期間あたりの作業量:消化タスクの数、ストーリーポイント(※スクラムやってます)
- AIエージェントで作成したPR数、Issue数
- 定性的な指標
- 開発サイクルのストレス・ノイズの減少(定型作業をAIに委任)
- 仕様調査、インシデント対応時の負荷軽減
- レビュー負荷軽減など
万が一 定量面でインパクトのある成果を残せなくても、エンジニアメンバーから
🗣️ 「もうAIなしじゃ生きていけない」
🗣️ 「開発体験が最高だった」
といった声が上がれば、それだけでも十分に導入価値をアピールできるはず、、、などと考えてました
🏆 結果
実際は定量面でもめちゃくちゃ良い結果が出ました。
満場一致で導入が決まりました
うちはスクラム開発をしていまして、1スプリントあたりにどれくらい作業できたか(ポイントを消化できたか)でパフォーマンスを測ってます。
各種成績(Findyを使用)
指標 | 5月 | 6月 | 7月 |
---|---|---|---|
PR作成数 | 27 | 65 | 184 |
オープンからマージまでの時間(時間) | 29.6 | 22.8 | 12.9 |
イシュー作成数 | 73 | 111 | 179 |
スプリント成績の推移
スプリント | 消化ポイント | 改善率(累積) |
---|---|---|
スプリント1(AI導入前) | 118ポイント | - |
スプリント2 | 144ポイント | +22% |
スプリント3 | 246ポイント | +108% |
スプリント4 | 287ポイント | +143% |
※1スプリント=2週間、6週間で生産性が143%UP
📝 AI駆動開発方法をドキュメント化
今もそうですが、当時はどこも手探り状態でAI駆動開発を進めていた状況で、ベストプラクティスが一般に確立されていませんでした。
そんな中、ツールを導入して 「どうぞ使ってください」だけだとどう使い始めたら良いか分からないし、メンバーごとに活用方法に差異が生まれて生産性に格差が生まれてしまうなと懸念しました。
のでまず初めに、僕なりの 「AI駆動開発フロー」をドキュメント化して「これがスタンダードですよ」みたいな顔してチームメンバーに共有しました。
- 各種AIツールの特徴
- 各種AIツールの使い方 / 使い分け
- 要件定義・調査・設計・実装・レビューの各工程でどのようにAIを活用するか(AI駆動開発フロー)
この資料が当時どれほどメンバーの役立ったかはわかりませんが、
「AI駆動開発をイメージしてもらう・AIに対する抵抗感を和らげる」 という意味では、良い仕事をしてくれたと思ってます。
また、開発で使用するClaude CodeのカスタムコマンドやDevinのPlaybookなども一通り用意し「すぐ使える」状態を作っておきました。
📦 仕様書駆動開発の導入
AI導入からしばらく経つと、メンバー全員が各々工夫しながら日常的にAIを活用するようになりました。
そこで課題は次のフェーズへ移ります
「AI駆動開発で開発効率を上げるには?」
まず着手したのは、実装作業を最大効率で進めることです。
取り組んだことは色々ありますが、一番インパクトが大きかったのは**「仕様書駆動開発」**です。
要件定義・設計・実装計画・実装と全ての工程をAI主導で行うためのプロンプトを作成し、Claude Codeをひたすら動かしてました。これでかなり効率が上がりました。
Kiroが出てくる前にこの方法に辿り着けていたのはちょっとした自慢です。
💡 なぜ仕様書駆動が効いたのか
私たちがリプレイスしていた旧システムには要件定義書や仕様書が存在せず「仕様把握・調査」がめちゃくちゃ大変でした。
Claude CodeやDevinを導入以後は、そのあたりの作業を丸投げしたことで爆発的に開発効率が上がりました。
旧環境のコードから仕様書を起こすというAIのドキュメンテーション能力、そしてメンバーごとに異なるAI活用のアプローチを「仕様書駆動」というアプローチに一本化できたことが大きかったですね。
🔍 AIレビューの導入
実装スピードが上がってすぐにぶつかった壁が 「レビューの遅延」 です。
レビューのスピードは上がっていないわけなので、PRがどんどん溜まってしまい開発サイクル全体の効率はさほど上がりませんでした。
全ての実装はレビューを通過する必要があるので 「開発速度の上限=レビュー速度の上限」 とも言えます。
3年弱エンジニアをしてきましたが、チームメンバーのおかげで「レビューがボトルネックになる」ということがこれまでなく、この経験はとても新鮮でした。
🛠️ どのように解決したか
レビューにおいてAIに任せられるところとそうでないところを整理し、任せられる部分は全てAIに委任しました。
またAIに丸投げできないところも、AIの補助が入ることで効率化できないか考えました。
レビュー内容 | 担当 | 理由 |
---|---|---|
コーディング規約 | AI | ルールベースで判定可能 |
命名規則 | AI | パターン認識が得意 |
アーキテクチャ準拠 | AI | ルールベースで判定可能 |
パフォーマンス | AI + 人間 | AIが指摘、人間が判断 |
ビジネスロジック | 人間 | ドメイン知識が必要 |
セキュリティ | AI + 人間 | AIが検知、人間が評価 |
当初レビューには主にClaude Codeを使用していました。Claude CodeでPRの内容を取得して、レビューガイドラインに沿ってレビューコメントをPR上に残してもらう感じです。
🎆 Devinが革命をおこした
AI導入直後は、ビジネスロジック部分は人間がレビューするしかないと思ってましたがそんなことはありませんでした。
ある時「旧環境のコードを正として新環境の実装が適切かレビューして」と依頼したら、不足しているビジネスロジックや、旧環境との細かな差異(エラーメッセージ、DBに登録する値など)までも的確に指摘してくれたのです。
これはいけると思い、早速Devinので2種類のコードレビューPlaybook(繰り返し使用するプロンプト)を作成しました
- 実装ガイドラインレビュー:プロジェクトの実装ガイドラインに即した実装が行えているかレビューする
- ドメインガイドライン:ドメイン知識に基づいて、旧環境と相違ない機能が実装できているかレビューする
レビューPlaybookの活用により、人間のレビュー負荷は劇的に下がりました。
6月→7月にかけてPR作成数は約3倍になりましたが、それらを問題なく捌けているし、バグの発生率も上昇していない点からも非常に効果的なアプローチだったと評価してます。
Devinのドメインに対する理解力はマジですごいなと思いました。
Claude Codeでも似たようなことはできますが、Devinの方が圧倒的に早くて安いですね。
🤝 AIに対する抵抗感を取り除き、AIウェルカムな空気を作る
僕の所属するチームは新しい取り組みにとても寛容ですが、
AIの導入によってそれまでの開発手法が刷新されることに対しては、さすがに抵抗感があったようです。
「仕事を奪われるかも...」みたいな悲観ではなく
- 「AIツールってどう使えばいいの?」
- 「自分でコード書きたい」
- 「新しい開発手法に慣れるの面倒だな」
という感じ。
スムーズなAI開発導入のためにはメンバーの抵抗感を和らげる必要がありました。
以下の施策が実際どれほど効果があったのかはわかりませんが、やって良かったなとは思ってます。(雑)
📢 AIを身近に感じてもらう
ひたすらこまめにAIに関する情報共有をして、「AI×開発」というテーマの情報に触れる機会を増やしました。
- SlackのチャンネルでちょっとしたTipsを発信
- 個人的に取り組んでいるAI駆動開発の成果を共有
- 定例MTGや毎日の夕会でAIについてトークする時間を設ける
最初は上記のようなライトな話題を多めに発信して、
少しずつ「うちのプロジェクトで〇〇使ったら△△ないいことがありそう!」といった、具体的かつポジティブな発信を増やしていった記憶があります。
⚡ すぐに活用できる環境を整えておく
メンバーがいざやってみようと思ったときに、「まずは環境構築から...」となるのはだるいので
すぐに実践できるような環境を作っておくことを意識してました。
「〇〇使うと△△できて良さそうです!」ではなく、「〇〇作ってみました、良さげです。使ってみてください!」という感じで
- ツール系はライセンスを事前に用意しておく(GitHub Copilot、Claude Code、Devinアカウント)
- Claude CodeのカスタムコマンドやPlaybookを作成しておく
- MCPは導入手順書をまとめてから共有... など
📖 ドキュメントの作成
各AIツールの紹介、MCPの紹介、各ツール導入手順などは片っ端からドキュメントにまとめて共有しました。
Slackのタイムラインや口頭で説明しても忘れられるので、繰り返し見返すような事項はドキュメント化しておいた方が良いです。
セットアップ手順を共通化しておくと、トラブルシュートしやすいという副作用もあります。
「困ったら僕に聞いてください」でも良いのですが、人に話しかけるのって結構気力入りますよね。
興味を持った人が勝手に進められるように手順系の資料は充実させてました。
🏛️ ナレッジバンク構築
前章と少し内容が被りますが、全社横断でAI活用の知見を気軽に共有できる場が欲しいなと思い「ナレッジバンク」を作成しました。
- 開発効率化のTips
- 普段使っている便利なプロンプト
- おすすめのMCPの紹介 ...etc
こんな感じで気軽に日々の発見をみんなで共有して、社全体のAI活用の知見が集約される場になれば良いなと思ってます。
今後はナレッジバンクの中から気になるトピックをピックして、勉強会のネタにしたりもする予定です。
🎯 まとめ
以上、初めてのAI駆動開発導入記でした。
自分としてもAIを活用した開発は今回が初めてで手探り状態で色々トライした数ヶ月でしたが、まずまず良い結果に繋げることができました。
新しい取り組みに協力的で、頼もしいチームメンバーと会社のおかげです。
今後も引き続きAI駆動開発のトレンドを眺めつつ、良さげなアイデアはどんどん試していこうと思います〜
それでは🤚
✅ AI導入を検討している方へのチェックリスト
この事例をもとに、チェックリストをAIにつくってもらいました↓
AI駆動開発を始める際のステップ:
📝 事前準備
- AIツールに対する期待値を明確化
- 効果測定指標を決定(定量・定性両方)
- 試験導入期間を設定(1ヶ月程度推奨)
- ステークホルダーへの説明資料を作成
🚀 導入フェーズ
- 各ツールの特徴と使い分けをドキュメント化
- AI駆動開発フローを策定
- チームメンバー向けのセットアップ手順書を作成
- ライセンスを事前に用意
📋 運用・改善
- 定期的なTips共有の場を設定(Slackチャンネル等)
- ナレッジバンクを構築
- Playbookやカスタムコマンドを作成・共有
- 効果測定結果を定期的にレビュー
🎯 成功のポイント
- チーム全体での活用を促進(個人任せにしない)
- 実際のプロジェクトで活用して効果を実感
- 成功事例を積極的に共有
- 導入に対する抵抗感を和らげる取り組みを実施
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