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【特別企画】松尾研GENIACプロジェクト「チームビジネス」メンバーにインタビュー!その熱意と挑戦の裏側に迫る(その2)

2024/07/24に公開

はじめに

こんにちは、松尾研GENIACプロジェクト、チームビジネスの福田です。

前回の記事でご紹介した通り、私たちは東京大学松尾研究室にて、経済産業省によるGENIACの国産大規模言語モデル(Large Language Model: LLM)開発に参加しています。

前回はプロジェクトメンバーの一部にインタビューを行い、彼らの熱意と挑戦の裏側に迫りました。今回は、引き続き別のメンバーにもお話を伺い、プロジェクトの全容により深く切り込んでいきたいと思います。

インタビューの概要

今回インタビューを行ったメンバーは以下の5名です。

  • hamtaryo-san: 前処理チームメンバー
  • 和田 颯馬: 前処理チームメンバー
  • Takuma SHIGA: 前処理チームメンバー
  • 小川さん: 前処理チームリーダー
  • 前河さん: 開発チームメンバー

プロジェクトの中でも特に重要な役割を担う前処理チームのメンバーが中心となりましたが、開発チームの視点も加えることで、より多角的な考察ができればと考えています。

参加の動機とこれまでの経験

まずは、メンバーそれぞれの参加動機と、これまでのLLMやAI開発の経験について伺いました。

前処理チーム

前処理チームのメンバーは、いずれもLLMやトークナイザーの開発経験はあまりないようでした。しかし、その分新しい知見を得られることを楽しみにしている様子が伺えました。

Takuma SHIGAさんは「もともと前処理班。フィンチューニングはやっていたが、前処理やトークナイザーは初めてだったので、わからないことがいっぱいあった」と話します。しかし「色んな情報をバッともらえた。やりやすかった。わからないことがあるとすぐに教えてもらえた」と、チームでの協力体制に助けられたことを明かしてくれました。

hamtaryo-sanも「色んな方とデータセットの中身とかを調査したりまとめたり、自分の知らないことがほとんどだったので、そのへんがものすごく楽しかった」と、新しい知識を吸収できる喜びを語ります。

和田さんは「LLM使う機会があったが、あくまで利用側であった。今回は事前学習のデータ集めに関わって、まだまだ知らないことがめちゃくちゃ多いと再認識した」と述べつつ、「データセットは何百GBというデータを扱うので、いままで意識してなかった計算量とか議論できたのもた良かった」と、より技術的な話題にも触れてくれました。

開発チーム

一方、開発チームの前河さんは、これまでの経験を活かしながら、より自由にAIを扱いたいという思いからプロジェクトに参加したようです。

「過去にAI案件に携わった経験から、もっと自由にAIを扱いたいと考えていた」と前河さん。
「IT企業のAI案件では、制約が多くて、自分の思うようにできなかった」
そうですが、今回のプロジェクトではそうした制約から解放され、のびのびと開発に取り組めているとのことでした。

チームでの協力や刺激

次に、チームでの協力や刺激について、どのように感じているか聞いてみました。全員が口を揃えて、チームワークの良さと、お互いから受ける刺激の大きさを挙げてくれました。

Takuma SHIGAさんは「普段は管理職をしているのでコードを書いたりしていないが、今回、みんなとやっている中で自分もコードを書いたり、いつもと違う雰囲気で作業できたのが良かった」と、普段とは異なる立場で開発に携われる面白さを語ります。

hamtaryo-sanも「色んな人と作業をする中で、自分では持ち得ない幅広い観点でやることができたのが良かった」と、多様な視点に触れられる喜びを口にしました。

和田さんは「今まで参加したイベントは自分が登壇して話たり、向こうが登壇したり、話して終わりのコミュニケーションが多かった」そうですが、「今回、一個のプロジェクトにみんなで取り組む、手を動かすところも込みでのコミュニケーションだったのでそこが新鮮でオモシロイと思った」と、より実践的なコラボレーションを楽しんでいる様子でした。

開発チームの前河さんからも、「同じLLMをやっていこうという人たちと、めぐり合えて、一緒に議論できたのはよかった。仕事ではそういうことはないので」と、志を同じくするメンバーとの出会いに喜びの声が上がりました。

プロジェクトを通じた学びと変化

最後に、プロジェクトを通じて新たに学んだことや、自身の中で変化を感じた部分について伺いました。技術的な発見から、働き方や考え方の変化まで、実に多岐にわたる学びがあったようです。

Takuma SHIGAさんは「目標が明確にあって、それに対して課題を自分で見つけて、みんなで課題を解決していく、っていう活動の仕方が本業ではしてなかった」と明かします。「新しい動き方ができた。みんなバックグラウンドが違うので、'こういう動き方するんだ'っていう部分が非常に勉強になった」と、チームでの新しいワークスタイルに刺激を受けた様子でした。

hamtaryo-sanは「学生なので、仕事の取り組み方を知ることができた」と、社会人メンバーとの協働から学んだことを挙げてくれました。

和田さんは「(LLMを)使う側から作る側に移ったことで見えている世界が変わった」と述べます。「ローカルLLMに対して、業務で使おうとか思ったことがなかったけど、いざ業務で使う時のことを考える際に今回の経験を活かしたい」と、LLM開発の経験が今後の業務にも良い影響を与えそうだと期待を寄せました。

前河さんは、ネットの情報だけでは限界があることを実感したようです。「ネットで公開されているやり方でやっても動かないことは結構ある」そうで、「細かい条件を書いていない。ライブラリの詳細が書かれてなかったり」と、オンラインの情報不足を指摘。一方で「Slackで、他のチームの方とかから、いろいろ知見を得られてよかった」と、プロジェクト内での情報共有の重要性を再認識したと語ってくれました。

小川さんからは、前処理チームのリーダーとしての苦労と喜びが聞けました。「他の方のLLMに使えるデータを作るときの考え方やコードを知れるのは、得難い経験であった」と、メンバーの成長を喜ぶ一方、「当初考えていたより時間が取れなかったのがもったいなかった。足を引っ張る形になって申し訳ない気持ち」と、リーダーとしての悔しさも吐露。それでも「積極的にチームビルディングに関わることもできなかったが、榎本さん、しがさん、塚本さんが、自主的に試行錯誤してくれたのが、ありがたかった」と、メンバーの自主性に感謝の念を示していました。

まとめ


対面チーム開発の様子
今回のインタビューからは、プロジェクトメンバーの熱意と向上心、そしてチームワークの良さが強く伝わってきました。LLM開発という未知の領域に果敢に挑む彼らの姿は、まさに「フロンティアスピリット」の体現者と言えるでしょう。

もちろん、課題や悩みもあるようです。メンバー間のスキルやコミットメントの差への対応、コミュニケーションの難しさなど、チームをまとめていくことの大変さについても率直に語られました。

しかしそれ以上に、多様なバックグラウンドを持つメンバーが互いに刺激し合い、学び合いながら一つの目標に向かって進んでいく姿が印象的でした。新しい知識や技術への興味だけでなく、チームで協力することの面白さや心地よさを感じている様子が伺えました。

だからこそ、多少の困難があってもメンバーたちは前を向いて歩み続けられるのでしょう。一人一人の小さな一歩が、やがて大きな変化を生み出していく。そんな未来への手応えを、インタビューを通して感じることができました。

おわりに

今回のインタビューを終えて、改めてこのプロジェクトのポテンシャルの高さを実感しました。最先端のテクノロジーに挑むわくわくどきどき感、仲間とともに課題を乗り越えていく連帯感。こうした経験は、メンバーたちの心に深く刻まれ、これからの人生の糧となるはずです。

もちろん、プロジェクトの行く末は誰にもわかりません。思うようにいかないこともあるでしょう。しかし大切なのは、そのプロセスで得られる学びと成長なのだと思います。今はまだ見えない可能性を信じ、諦めずに挑戦を続けていく姿勢こそが、イノベーションを生む原動力になるのではないでしょうか。

今後もプロジェクトの進捗を温かく見守りつつ、時折メンバーたちの声を届けていければと思います。最先端の現場で奮闘する彼らの姿から、私たち一人一人が何かを学べるはずです。

最後になりましたが、お忙しい中インタビューに応じてくださったhamtaryo-san、和田さん、Takuma SHIGAさん、小川さん、前河さん、本当にありがとうございました。引き続き応援しています!

そして、ここまで読んでくださったあなたにも感謝を。次回の更新もお楽しみに!

東大松尾・岩澤研究室 | LLM開発 プロジェクト[GENIAC]

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