🌈 実践 GPT-5

YouTube チャンネル「数理の弾丸」です。この記事では、GPT-5 の実践的なナレッジを整理します。

同じ内容の動画：
https://youtu.be/r8FdqmYPy64

この記事のゴール：

• GPT-5 の基本的な仕様を、既存モデルと対比しながら理解する
• API へのリクエスト方法を理解し、システムに組み込む準備をする
• コーディングエージェントとして GPT-5 を活用するイメージを掴む

理解する

GPT-5 は OpenAI が 2025/8/8 に発表したマルチモーダルLLMです。ソフトウェアエンジニアリング、数学、生物学など様々なドメインで GPT-4o や o3 を凌駕するベンチマーク性能を達成しています。

また、すでにAPIも提供されており、さらにCodex CLIやCursorを経由した利用も可能です。

GPT-4o との主な違いをまとめます。

項目	GPT-5	GPT-4o
コンテキストウィンドウ	400,000	128,000
最大出力トークン	128,000	16,384
知識カットオフ	2024-10-01	2023-10-01
入力単価（/1M tokens）	$1.25	$2.50
キャッシュ入力単価（/1M）	$0.125	$1.25
Reasoning token support	あり	記載なし

クリティカルに大きな違いはインプットのコスト（GPT-5 は 4o の 1/2）であることと、出力の最大トークン長が大幅に向上している点にあります。参考までに、o3 の最大出力トークン長は 100,000 なので、o3 と比較しても勝る長さです。より長大なコーディングや文書作成などが可能と期待できます。

ふたつのモデルがひとつに

GPT-5 はユーザが指定したリクエストパラメータやプロンプトの内容に応じて、長考するか、手早く答えるかを自動でスイッチングする仕組みを持っています。

GPT‑5 は、2つのモデルとルーター機能からなるシステムです。1つ目のモデルは、高速かつ効率的に幅広い質問に回答できる高速応答用モデル（高スループット）、2つ目のモデルはより複雑な問題に対して複雑問題用モデル（深い推論）（GPT‑5 thinking）です。そして、最適モデルを自動選択するリアルタイムルーター機能が、これら2つのモデルのどちらを使うべきか、会話の種類や複雑さ、必要なツール、ユーザーが示した意図（例えば、「深く考えて」など）に応じて、瞬時に判断し、切り替えてくれます。
https://openai.com/ja-JP/index/introducing-gpt-5/ より引用

多くのLLMは、ユーザの要求それぞれに対して割くリソースを自律的に調整することができない点が Energy-Based Transformer^[1] でも指摘されていましたが、GPT-5 はこの問題に対するひとつの解といえそうです。

API スペック

API の仕様はこちらから確認することができます。

アクセスの方法

ChatGPT の公式プラットフォームはこちらからアクセス可能です。また、API経由で使えるモデルはユースケースごとに3つ提供されています（2025/8/8 時点）。

モデル	想定用途	ドキュメント
gpt-5	コーディングやエージェント的タスク処理など、多段的な推論を要するタスク向き	https://platform.openai.com/docs/models/gpt-5
gpt-5-mini	通常のチャットや、ある程度のスピードが求められるタスク向き	https://platform.openai.com/docs/models/gpt-5-mini
gpt-5-nano	文書のクラス分類など、瞬発的なアウトプットが求められるタスク向け	https://platform.openai.com/docs/models/gpt-5-nano

使う

下記三つの使い方をフォローします。

• 公式プラットフォームで使う
• API を使う
• Cursorで使う

公式プラットフォームで使う

いろんなモデルを試していて、LLMはなぞかけが大変苦手であると感じています。ダブルミーニングを駆使するとかはほぼ出来ず、単に共通点のあるものを二つ挙げてくる感じです。GPT-5はどうなのでしょうか。

なぞかけしましょ

お化け屋敷のお題を出してみます。

嫌な予感がするな・・・。

うーん

やはりGPT-5でも、唸らせるようななぞかけは難しいのかもしれません。
次に、コーディングも試してみます。

てきとうにアプリ作成の指示を出してみる

「コードを実行」を押すと、依存関係をインストールして画面内で起動できます。

出来上がったもの

API を使う

API の新規パラメータとして下記が追加されており、開発者にとって自由度の大きい制御が可能になっています。

• reasoning.effort: 思考トークンの量を制御（minimal/low/medium/high）
• text.verbosity: 出力の冗長度を制御（low/medium/high）
• Custom tools：生テキストをツール入力に送れる。文脈自由文法で出力を制約可能
• Allowed tools：定義済みツールのうち使用を許可するサブセットを指定（auto/required）

シンプルな応対

シンプルに curl でリクエストしてみます。

curl -sS https://api.openai.com/v1/responses \
  -H "Authorization: Bearer $OPENAI_API_KEY" \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{ "model": "gpt-5", "input": "こんにちは" }' \
| jq

[略] "text": "こんにちは！何をお手伝いできますか？\n旅行計画、文章の添削、プログラミング、学習サポート、日常の疑問など、何でもどうぞ。" [略]

追加パラメータを試す

Thinking の度合いを調整するパラメータを明示的に与えるパターン：

curl -sS https://api.openai.com/v1/responses \
  -H "Authorization: Bearer $OPENAI_API_KEY" \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{
    "model": "gpt-5",
    "input": "GPTモデルの歴史を教えて",      
    "reasoning": { "effort": "medium" } 
  }' \
| jq

[略] "text": "概要\nGPTは、Transformerの「デコーダ」構造を用いた自己回帰型（次トークン予測）の大規模言語モデル群で、OpenAIが2018年以降継続的に拡張してきました。以下は2017〜2024年頃までの主な流れです（2024年10月時点の一般公開情報に基づく）。\n\n主要な年表\n- 2017\n - Transformer論文（Vaswani et al., “Attention is All You Need”）が発表。以後のLLMの基盤に。\n- 2018\n - GPT（通称GPT-1, 117Mパラメータ）: 大規模コーパスで事前学習し、下流タスクで微調整する手法を提示。ゼロショットの片鱗を示す。\n- 2019\n - GPT-2（最大1.5B）: WebTextで学習。長文生成が大幅に改善。悪用懸念から段階的公開が話題に。\n- 2020\n - GPT-3（175B）: スケール拡大で少数例提示（few-shot）やゼロショット性能が飛躍。API提供が始まり、「プロンプトエンジニアリング」が実務で定着。\n- 2021\n - Codex（GPT-3系列のコード特化）: GitHub Copilotの基盤に。自然言語→コード変換を一般化。\n- 2022\n - InstructGPT（RLHF）: 人間のフィードバックによる強化学習で指示追従性・安全性が大幅改善。\n - ChatGPT（11月、GPT-3.5系）: 対話UIで爆発的普及。指示追従、会話メモリ、簡易ツール利用の基盤が整う。... [略]

API のレスポンスとして Thinking の内容を取得することはできないようです。

Custom Tools を呼び出させる

GPT-5 は、ユーザ（API使って開発する人）が作成した任意のツール（カスタムツール）を認識させ、実行命令を出させることが可能です。例えば、下記のように "description" の値として自然言語で説明を置くだけで任意のツールを作成することができます。

// 例：Python コードを実行させるツールの定義
"tools": [
      { "type": "custom", "name": "code_exec", "description": "Executes Python code" }
    ],
    "tool_choice": {
      "type": "allowed_tools",
      "mode": "auto",
      "tools": [
        { "type": "custom", "name": "code_exec" }
      ]
    }

ツールの定義を含めたリクエストは次のようになります：

curl -sS https://api.openai.com/v1/responses \
  -H "Authorization: Bearer $OPENAI_API_KEY" \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{
    "model": "gpt-5",
    "input": "半径10の円の面積を Pythonで計算して。",
    "tools": [
      { "type": "custom", "name": "code_exec", "description": "Executes Python code" }
    ],
    "tool_choice": {
      "type": "allowed_tools",
      "mode": "auto",
      "tools": [
        { "type": "custom", "name": "code_exec" }
      ]
    }
  }' \
| jq

レスポンスとして、定義したツールの実行命令が返ってきています。

// ※ 前後略
"id": "ctc_6895b327f184819ead7f3e4be2e4557e016b3292b67dfa4c",
"type": "custom_tool_call",
"status": "completed",
"call_id": "call_Jj6it5PkkiIqGsRtpfFPTgXA",
"input": "# Calculate area of a circle with radius 10\r\nimport math\r\nr = 10\r\narea = math.pi * r * r\r\narea",
"name": "code_exec"

クライアント側でこのレスポンスをパースして、用意しておいたツールに渡すイメージです。
API の使用法について詳しくはこちらも参照ください。
https://platform.openai.com/docs/guides/latest-model

Cursorで使う

すでにCursorでも各種エンドポイントが利用可能になっています。

Cursor Settings > Models から選択可能

個人的な経験則として o3 は妙にネットワークエラーが多い印象ですが、GPT-5 は安定しています。 o3 は行間が多く、o3 が何言ってるのか理解するのに苦労することが多いのですが、GPT-5は o3 匹敵のクオリティに安定性と親切さが足されたような感じで非常に体験が良いです。

省略が少なく、こちらが理解しやすいアウトプットな印象

数分放っておいてもバンバン進めています。手放しで使うと暴走しすぎる感がありますが、そこはコンテキストで制御するものかなと思います。

終わりに

本記事では、下記観点から GPT-5 の実践的な内容を整理しました。

• GPT-5 の基本的な仕様を、既存モデルと対比しながら理解する
• API へのリクエスト方法を理解し、システムに組み込む準備をする
• コーディングエージェントとして GPT-5 を活用するイメージを掴む

脚注

1. https://arxiv.org/abs/2507.02092