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有線LANの規格まとめ(IEEE802.3)

2022/07/29に公開

この記事では有線LANの規格についてまとめます。IEEE802.3のプロトコルは物理層、データリンク層とセットで標準化されています。

物理層とは

OSI参照モデルにおけるレイヤ1に相当する部分です。TCP/IPモデルではデータリンク層と合わせてネットワークインターフェース層と定義されたりもします。

物理層では以下の2つの内容が定義されています。

(1)データを0と1の電気信号に変換,送信
(2)有線LAN,無線LANの規格の定義

物理層を勉強する際にポイントとなるのが(2)です。物理層には非常に多くの規格が存在しており、それらを覚えることはとても大変です。まずは全体の概要からスタートして、個々の細かい内容を見ていきます。

物理層のプロトコル(IEEE802.3、IEEE802.11)

物理層のプロトコルは大きく2つに分けることができます。有線LANの技術を標準化しているIEEE802.3、無線 LANの技術を標準化しているIEEE802.11です。

この記事では有線LAN(IEEE802.3)を中心にまとめていきます。

IEEE802.3とは?

IEEE802.3はイーサネットに関する技術を標準化しています。有線LANの規格を理解することがこの節での目標となります。

イーサネットとは?

通信機器同士を接続するために利用するケーブル(=有線LAN)の規格です。元々は「規格」を意味する用語でしたが、「有線LANの規格といえばイーサネット」という認識が大きく広がったことから、有線LAN自体をイーサネットと呼んでいるケースがほとんどです。

イーサネットの歴史

1970年前後にハワイ大学で構築されたALOHAnet(アロハネット)です。ALOHAnetはいくつもの島に分散して存在しているハワイ大学のキャンパスを無線で接続したパケット交換型ネットワークです。パケットの転送効率向上を図るためパケットが送れなかったらランダムな時間だけ待って再送するという仕組みとなっています。CSMA/CDの由来ともなりますが、この仕組みこそが初期のイーサネットの基礎となりました。

1970年代後半に入りALOHAnetを参考にDec社,インテル社,ゼロックス社が共同開発した技術がイーサネットです。イーサネットは安価に高速化を実現できるだけでなく、お手軽に拡張できることから世界中へ普及しました。IEEE802.3はこのイーサネットに関する規格が定義されています。

IEEE802.3のプロトコル名称

正式名称

伝送速度,ケーブル,コネクタの形状などによって、たくさんのプロトコルが標準化されています。それぞれIEEE 802.3の後ろに1~2文字のアルファベットが付いた名前が与えられています。

しかし実務の現場でIEEE802.3~という呼び方をすることはありません。規格名称だけではどのような内容なのかわからないからです。光ケーブルのことを伝えるのにIEEE802.3zなど伝えるのは大変ですよね。

〇〇 BASE - △△

そこで正式名称とは別に、その概要を表した別名を使うことがほとんどです。

伝送方式

BASEかBROADのどちらかが入ります。0と1の電気信号をどのように送るか?という点で、2つは以下のように異なります。

略称 伝送方式 伝え方
BASE ベースバンド方式 媒体へ直接流す
BROAD ブロードバンド方式 アナログな信号に乗せる

BROADが使われることはほぼないので、ここは一律BASEと思って頂いて構いません。

媒体

ケーブルやレーザーの種類が入ります。名前の略称は以下の通りです。

T:ツイストペアケーブル
S:短波長レーザー
L:長波長レーザー

主な分類の考え方

現在のネットワーク環境で使われているケーブルは2つしかありません。銅でできたツイストペアケーブルか、ガラスでできた光ファイバーケーブルのどちらかです。

銅線

ツイストペアケーブル、同軸ケーブルの2つに分かれます。同軸ケーブルは初期のLAN構築に使われていたモノであり、現在はほぼ使われることはありません。ここはツイストペアケーブルを理解しておけばOKです。

光ファイバーケーブル

シングルモード、マルチモードの2つに分けることができます。2つはコアの大きさが違っています。マルチモードはコアが大きいので、損失が大きく伝送距離が短くなります。シングルモードはコアが小さいので、損失が少なく伝送距離が長くなります。

ツイストペアケーブル、光ファイバーケーブルの比較

代表的な2つのケーブルの違いをまとめたのが以下です。

ツイストペアケーブル 光ファイバーケーブル
材質 ガラス
速度 遅い 速い
信号 大きい 小さい
伝送距離 短い 長い
ノイズの影響 大きい ない
取り回し しやすい しにくい
コスト 安い 高い

ツイストペアケーブル

8本の銅線を2本ずつすり合わせさらに一つに束ねたケーブルです。ツイストという名前もありますが、2本ずつ撚り合わせてノイズに強くしています。

ツイストペアケーブルは見た目は1本ですが、実質的には4本です。8本の動線が寄り合わされて、2本1組として、合計4組の電気信号を流せるようになっています。

ツイストペアケーブルで注意したいのが長さです。電気信号を使う特性上、その長さは最大で100mまでとなっています。100mもあれば十分なのでは?と思うかもしれませんが、実際に使ってみるとあっという間に100mに到達してしまいます。もし100m以上の距離が必要な場合、ネットワーク機器で中継する必要があるので注意して下さい。

ツイストペアケーブルは3つの切り口から分類できます、(1)シールド,(2)銅線の並び方,(3)カテゴリーの3つです。

(1)シールドで分類

シールドの有無によってはUTPとSTPに分類できます。

UTPケーブル

銅線をそのままビニールカバーで覆ったケーブルです。UTP = Unshielded Twisted Pair という名前の通り、シールド処理は施されていません。一般的なLANケーブルはこちらのことを指します。

STPケーブル

銅線に対してシールド処理を施したケーブルです。アルミ箔や金属箔で覆うことで電磁ノイズを遮断し、電気信号の減衰や乱れを防ぐことができます。しかし価格が高く取り回ししづらいため、工場など特殊な環境以外では使用することはありません。

(2)銅線の並び方で分類

銅線の並び方によって、ストレートケーブル,クロスケーブルの2つに分けることができます。接続するネットワーク機器のポートの種類によって使い分ける必要があります。

ストレートケーブル

8本の銅線が真っ直ぐ伸びているケーブルのことです。

クロスケーブル

8本の銅線の内、4本がクロスしているケーブルのことです。

1,2番に接続されている銅線を、3,6番に接続する仕組みとなっています。

(補足)コネクタ

ケーブルの末端に取り付ける接続装置です。PCやネットワーク機器にケーブルを直接接続すると取り外しが大変です。そこでケーブルの両端にコネクタを接続し、コネクタを接続機器のポートに差し込みます。ツイストペアケーブルではRJ-45というコネクタが使用されます。RJ-45では8芯=8本の銅線が収容できるようになっています。

なぜストレート、クロスの2つがあるの?

接続するネットワーク機器のポートの種類によって使い分ける必要があるからです。ストレート/クロスのどちらを使用するかは、ケーブルを接続する機器の組み合わせで決まります。例えば、PCとスイッチを接続する場合はストレートケーブルを使用し、パソコン同士を接続する場合はクロスケーブルを使用します。(今は技術が進んでストレートケーブルのみで対応できるようになりましたが)昔は機器同士の双方向通信を可能にするためケーブルを使い分ける必要がありました。これには接続先の機器のポート(=接続口)が大きく関わっています。

MDIポート、MDI-Xポート

ネットワーク機器のポートにはMDIポート,MDI-Xポートの2種類があります。ポートはケーブルの接続口(=港)となって、8本の銅線を受け取るための8つの窓口を用意しています。8つの窓口の並び順は以下のようになります。

  • MDIポート
    1,2番の線が送信用になり、3,6番の線が受信用となります。

  • MDI-Xポート
    1,2番の線が受信用になり、3,6番の線が送信用となります。

ネットワーク機器のポートは一般的に以下となります。

MDIポート:PC、ルーター
MDI-Xポート:ハブ、スイッチ

ここからは実際にストレート/クロスケーブルと、MDI/MDI-Xポートを組み合わせていきます。

ストレートケーブル(PCとスイッチの場合)

データをやり取りするにはネットワーク機器のピン配列に注意が必要です。送信用のピンで送信したデータを、受信用のピンで受け取る必要があります。パソコンはMDIポート、スイッチはMDI-Xポートを持つので、送受信を噛み合わせるにはストレートケーブルを使う必要があります。


送信と受信が噛み合っている

これがもしクロスケーブルだと、送信したデータを受信用のポートで受け取ることはできません。


送信したデータは送信用のポートへ送られてしまう

クロスケーブル(PCとPCの場合)

パソコンはMDI-Xポートを持つ機器です。パソコン同士をつなぐ場合、クロスケーブルで送信と受信のポートをズラして合わせる必要があります。

これがもしストレートケーブルだと、受信同士,送信同士でケーブルがつながれてしまいます。

クロスケーブルは滅多に使いません

最近はクロスケーブルを使うことは滅多にありません。LANケーブルの種類やポートの自動判別して通信を可能にする「オートMDI/MDI-X」と呼ぶ機能が登場しました。ほとんどの機器がこの機能を搭載しており、LANケーブルはストレートでもクロスでも使用可能です。またギガビットイーサネットの場合、自動判別の仕組みが仕様に盛り込まれているので、ますますケーブルの種類を気にする必要はなくなっています。

(3)カテゴリーで分類

ツイストペアケーブルの品質はカテゴリによって表されます。カテゴリは主にケーブルの品質や伝送速度を表します。カテゴリーが大きければ大きいほど1秒あたりに送信できるデータの量は多くなりますが、価格は高価になります。「Cat5」のように省略して表記することもあります。

カテゴリー 主な対応規格 最大伝送速度 最大伝送距離
カテゴリー3 10BASE-T 16Mbps 100m
カテゴリー4 Token Ring 20Mbps 100m
カテゴリー5 100BASE-TX 100Mbps 100m
カテゴリー5e 100BASE-T
2.5GBASE-T
5GBASE-T
1Gbps
2.5Gbps
5Gbps
100m
カテゴリー6 1000BASE-T
10GBASE-T
1Gbps
10Gbps
100m
55m(10GBASE-T)
カテゴリー6A 10GBASE-T 10Gbps 100m
カテゴリー7 10GBASE-T 10Gbps 100m

現在のネットワーク環境で使用されているケーブルのカテゴリーはカテゴリー5e以上です。カテゴリー1~5までは現在主流である100GBASE-Tに対応していません。「Cat5」のように省略して表記することもあります。実際に現場で使用する際は、シールド,銅線の並び方,カテゴリーの3つに考慮してケーブルを選択することになります。

光ファイバーケーブル

ガラスやプラスチックを細い管にしたケーブルです。ファイバーとは英語で繊維を意味しており、光ファイバー=光を通す繊維となります。電気信号ではなく、光信号(光の点滅)によってデータを伝送します。0/1のデータをレーザー光にし、光信号は光ファイバーの中を通っていきます。そして最後にレーザー光をデータに変換する..といった仕組みです。

光ファイバーケーブルは光の屈折率が高いコアと、屈折率が低いクラッドという2層で構成されています。コアをクラッドが外から覆うことで、光をコアの中に閉じ込めて伝送させます。光信号は減衰しにくく、長距離伝送が可能です。しかしガラスでできていることから取り扱いが難しく、どこか一部が欠損しただけでも正しく伝送できません。光ファイバーケーブルは(1)ケーブル、(2)コネクタの2つの切り口から分類できます。

(1)ケーブルで分類

マルチモード光ファイバーケーブル(MMF)、シングルモード光ファイバーケーブル(SMF)の2種類があります。2つは光の通り道となるコアの直径が異なります。マルチモードはコアが大きいので光が減衰しやすい一方、シングルモードはコアが小さいので長距離伝送が可能です。

マルチモード光ファイバーケーブル

コア径が50μmか62.5μmの光ファイバーケーブルです。10GBASE-SRや40GBASE-SRなど、短波長の光を使用するプロトコルで使われます。コア径が大きいため、光の伝送路が分散して複数(マルチ)になります。伝送路が複数になると伝送損失が大きくなり、伝送距離も短く(~550m)なります。ただしシングルモードに比べると価格がやすく、扱いやすいケーブルとなっています。

シングルモード光ファイバーケーブル

コア径が8~10μmの光ファイバーケーブルです。1000BASE-LXや10GBASE-LRなど、長波長の光を使用するプロトコルで使われます。コア径を小さくするのに加え、コアとクラッドの屈折率の差を適切に制御することで、光の伝送路を1つ(シングル)にしています。長距離伝送も可能で(最大70km)、大容量のデータも高速に送ることができます。

(2)コネクタで分類

光ファイバーケーブルのコネクタで代表的なモノを2つご紹介します。SCコネクタ,LCコネクタです。

SCコネクタ

最も一般的な光コネクタです。プラグを差し込むだけでロックされ、引っ張れば簡単に外れます(=プッシュプル構造)。扱いやすく低コストなのが特徴です。ただし少しだけプラグが大きいのが難点です。最近は集約効率を考慮しているLCコネクタに置き換えられつつあります。

LCコネクタ

SCコネクタよりもプラグが小さく、よりたくさんのポートを装置に実装することが可能です。主に機内配線、交換機、SFPコンバータなどに使われます。

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