DroidKaigi 2025 参加レポート
はじめに
DroidKaigi 2025 に参加してきました!
印象に残ったセッションや企業ブースなどをレポートします!
セッション
Android開発者のためのGen AI
このセッションでは、AndroidアプリへのAI実装について、技術的な仕組みから実践的なテクニックまで体系的に解説する内容でした。
セッションの前半では、Gemini NanoによるオンデバイスAIとFirebase AI Logicを使ったクラウドベースの実装方法が紹介されていました。特にGemini Nanoは、V1からV3まで進化を続け、最新版では日本語の敬語・謙譲語の区別も理解できるまでに成熟しているとのこと。Gemini Nano を動かすための ランタイムであるAI Coreがモデル管理を担当することで、アプリサイズへの影響を抑えながら高度なAI機能を実装できるようになってきていることが興味深い点でした。
またこれらのAIの活用にあたって、プロンプトエンジニアリングの実践的なテクニックの紹介があり、以下のようなテクニックが紹介されていました:
- 役割を明確に定義(「あなたはPythonのエキスパートです」など)
- 否定形より肯定形の指示を使用
- ステップバイステップで思考を誘導
- 具体例を多く提示
実装事例として紹介された韓国のタクシーアプリ「Kakao T」では、メッセージから配送情報を自動抽出する機能において、これらのテクニックを適用することで認識精度を80%から96%まで向上させることに成功したそうです。
今後の展開として、Pixel 10に搭載される「Magic Suggest」機能や、Android 17以降でのエージェント型OSなど、AIがより深くOSに統合されていく未来像も示されました。
生成AIをAndroidアプリに実装する際の実践的な知識が詰まった、非常に充実したセッションでした。
Androidエンジニアとしてのキャリア
DroidKaigi代表の日高さんによるキャリアセッションに参加しました。技術的な話題が多いDroidKaigiの中で、エンジニアの悩みに寄り添う内容でした。
セッションで最も心に残ったのは「自己認知をハックして、行動に結びつける」という言葉でした。多くのエンジニアが感じる「失敗が恥ずかしい」という心理に対し、完璧主義を脇に置いて、とにかく動き始めることの大切さを強調されていました。
将来への不安について、「不確実だからこそ面白い」という前向きな視点を提供してくれました。計画は大切だけれど、それは固定的なものではなく、仮説と検証を繰り返すプロセスとして捉えるべきだと。具体的には:
- まず自分の興味を見つけて「こんなプロになりたい」とビジョンを描く
- 必要なスキル(Kotlinやサーバーサイドなど)を実際に試してみる
- 会社の評価やコミュニティでの反応をフィードバックとして次に活かす
このサイクルを回し続けることが、不確実な時代を生き抜く鍵になる。
キャリアを伸ばすコツとして提案されたのは**「ニッチな専門性×広い視野」**の組み合わせ。Androidの特定機能でも何でもいいから、深く掘り下げる分野を持つこと。専門を極めた人ほど視野が広がり、結果的によりゼネラルな判断ができるようになると。
「不確実性を楽しむ」というメッセージで締めくくられたこのセッション。AIやComposeなど新しい技術の波を追い風に、「モバイルは今も楽しい」と語られたことで、参加者は勇気をもらったはずです。
逆向きUIの世界〜AndroidアプリのRTL言語対応〜
RTL(Right-to-Left)言語対応のセッションは、6億6千万人のアラビア語圏市場を意識した実践的な内容でした。多くの開発者が後回しにしがちなテーマですが、グローバル展開を考えると避けて通れない重要な課題に思えました。
RTL対応の基本として、Androidは設定次第でフレームワーク側がかなりの部分を自動処理してくれます。しかし、そこで安心してはいけないのがRTL対応の奥深さ。特に印象的だったのは、クイズ形式で示された「何を反転させて、何を反転させないか」の複雑な判断基準でした。
例えば、時計回りの進行インジケーターはRTL言語圏でも時計回りのまま。でもアイコンのバッジは左上に移動し、矢印などの方向性を持つアイコンは反転させる必要があります。こういった文化的な文脈を理解していないと、違和感のあるUIになってしまうんですね。
見落としがちな点として挙げられたのが、フォントサイズの調整です。「アラビア語は視覚的に小さく見えるので10%大きくする」という具体的な数値は、実際に苦労した経験から導き出されたもの。こうした細かいノウハウの積み重ねが、本当に使いやすいアプリを作る鍵になりそうです。
最終的には「ネイティブスピーカーにチェックしてもらうのが一番安心」という結論に。機械的な反転だけでは対応できない、文化的な違いへの配慮が必要だということを改めて認識させられました。
「できるだけ標準UIコンポーネントを使う」「地味に大変」という率直な感想も含めて、RTL対応の現実的な難しさと向き合い方を教えてくれたセッション。グローバル市場を視野に入れた開発において、貴重な指針となる内容でした。
Androidライブラリ設計における利用者目線の実践テクニック
mukataaさんによるライブラリ設計のセッションは、社内で認証ライブラリを開発する中で得た実践的な知見を共有する内容でした。3つのアプリで同じ認証機能を個別に実装していた状況を、ライブラリ化で解決しようとした経験から、利用者目線でのライブラリ設計の重要性を説明されていました。
セッションでは「使いやすいライブラリを作る5つのポイント」が紹介されました。
1. カプセル化の徹底
APIの公開範囲を適切に設定するため、Explicit APIモードの活用するとよい。これにより、意図せずpublicになってしまうAPIを防ぎ、「本当に公開すべきか」を考える機会になる。
2. 前提にできる技術スタックの検討
ライブラリがHiltやNavigation Composeなど特定の技術を前提にすると、それを使っていないアプリでは利用できなくなるという問題が指摘されていました。
3. 機能性と自由度のバランス
「多くの機能を提供したい」と「カスタマイズの自由度を保ちたい」はトレードオフの関係。
4. ドキュメントを書くことの効果
説明しづらいAPIは設計に問題がある可能性がある。ドキュメントを書くことで、利用者への説明だけでなく、開発者自身がAPIの使いやすさを再考する機会になる。
5. サンプルアプリの作成
自分がライブラリの利用者になってみること。サンプルアプリはリポジトリに含めることと、機能ごとにサンプルを分けることが推奨されていました。
セッション全体を通じて「利用者の気持ちを考える」という姿勢が一貫していました。
社内ライブラリ開発という具体的な事例を基にした、実践的で説得力のあるセッションでした。
ブース
今回、私が所属している企業でもブースを出しており、少しチャレンジングな企画を用意しました。
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「Good Job」アンケートボード
技術的な成功体験や、思わず「Good job!」と声を上げたくなるような出来事を付箋に書いて共有するボードです。他社のエンジニアの皆さんが、どんなことに喜びや達成感を感じているのかを知る、貴重な機会となりました。
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LT登壇者募集
弊社開催のLTイベント登壇者を、カンファレンス会場で直接スカウトするという試みです。登壇を決めて頂いた方々、ありがとうございました!
※登壇募集したイベントは以下になります。
▼明日から使える私の推しAI活用術!
▼カンファレンスの学び、こう実務に活かしてます!
▼新卒XX年目!私の紆余曲折を振り返ってみた
まとめ
今回、初めて参加した DroidKaigi 2025 でしたが、最新の技術動向と、参加者の熱気を肌で感じることができ、非常に学びの多いカンファレンスでした。
このレポートが、参加できなかった方や、アプリエンジニアの皆さんにとって、DroidKaigiの熱気と学びを伝える一助となれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました!
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