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IEMAI CF-ABSの特徴をTDS(テクニカル・データ・シート)から調べる

2023/04/06に公開

IEMAI カーボンファイバー ABSフィラメント

FFF(FDM)方式3Dプリンター用のフィラメントです。耐熱性や強度などの特徴があるABS樹脂をベースに、ミルド・カーボンファイバーが重量比で20%含有されていると謳われており、通常のABSフィラメントと比べて機械的特性が向上されているものと考えられます。

日本国内ではAmazonでも販売(販売者名:IEMAI JP、発送:Amazon)されており、定期的にセール価格2,799円へ下がることでも知られています。タイミングによっては、300円OFFクーポンと組み合わせて2,499円で購入できる場合もあります。繊維強化エンプラの中では最も手頃なフィラメントの1つです。

略称について

IEMAI社はCF-ABSを略称としていますが、日本ではABS-CFと表記される場合も多く見られます。本稿ではCF-ABSを用います。

主な特性

IEMAI社からテクニカル・データ・シート(TDS)が公開されています。ここではCF-ABSとABSのページを抜粋します。

CF-ABS

ABS

特性の比較(CF-ABSとABS)

CF-ABSとABSを比較します。おそらくCF添加による何らかの特徴が見えてくるはずです。

項目 CF-ABS ABS 変化率
密度 1.10\rm{g/cc} 1.06\rm{g/cm^3}
引張強さ 48\rm{MPa} 46.0\rm{MPa} 104\rm{\%}
引張弾性率 5200\rm{MPa} 2270\rm{MPa} 229\rm{\%}
破断伸び 3\rm{\%} 2.50\rm{\%} 120\rm{\%}
曲げ強さ 78\rm{MPa} 69.0\rm{MPa} 113\rm{\%}
曲げ弾性率 5280\rm{MPa} 2350\rm{MPa} 224\rm{\%}
ガラス転移点 105\rm\degree{C}
荷重たわみ温度 at 0.45\rm{MPa} (※) 78\rm\degree{C}
荷重たわみ温度 at 1.8\rm{MPa} (※) 97\rm\degree{C}
表面抵抗 >10^9 \mathsf{\Omega}/\rm{sq}

※荷重たわみ温度

  • at 0.45\rm{MPa}:ISO 75 メソッドB
  • at 1.8\rm{MPa}:ISO 75 メソッドA

考察

まず、大きく異なるのは弾性率で、CF-ABSはABSの2.2倍以上の値になっており、CF添加によって顕著に剛性が向上していることがわかります。

強さは、若干の向上が見られるものの、104~113\%の変化にとどまっています。引張強さの変化率(104\%)と曲げ強さの変化率(113\%)に差があるのは、層間接着性が関与していることが伺えます。一般的に、層間接着性が大きくなると曲げ強さが大きくなります。

荷重たわみ温度は、ロード条件が異なるため同列に比較できませんが、数値としてABSよりもCF-ABSの方が19\rm\degree{C}低いことは気にしておいた方が良いかも知れません。しかし、通常であれば繊維強化してあるCF-ABSの方が温度が高くになる傾向があるのに対してこれは反する値であり、またCF-ABSのガラス転移点と荷重たわみ温度との差が27\rm\degree{C}と大きすぎる値であることへの違和感も含めて、比較には慎重な評価を要するともいえます。

層間接着性に関して

IEMAI社の.ruサイトで公開されているTDSでは、特徴が文章でも記載されています。

層間接着性について抜粋します。

(略) having excellent interlayer adhesion which greatly improve the strength and shock resistance of the prototype.

(参考訳)

プロトタイプの強度と耐衝撃性を大幅に向上させる優れた層間接着性を備えています。

結論

IEMAI CF-ABSフィラメントは、同社ABSフィラメントと比べて次のような機械的特性・温度的性質の違いが見られます。

  • 剛性が大きく(224\rm{\%}へ)向上している
  • 強度が若干(104~113\%へ)向上している
  • 層間接着性が向上している可能性が伺える
  • 荷重たわみ温度が低くなっている(ただし同列に比較できないため慎重な評価を要する)
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