Azureのアプリケーションのイングレス設定とは?

Azureのアプリケーションのイングレス設定とは?
Azureのアプリケーションにおけるイングレス設定とは、外部からのトラフィックをAzure上でホストされているアプリケーションやサービスにルーティングするための設定を指します。主に、Azure Kubernetes Service (AKS)やAzure Application Gateway、Azure Front Doorなどのサービスを利用して、アプリケーションへのアクセスを管理・制御する仕組みです。
以下に、イングレス設定の概要とAzureでの具体的な役割を説明します。
1. イングレスとは?
イングレス(Ingress)は、外部からのHTTP/HTTPSトラフィックをアプリケーションの内部サービス(通常はKubernetesクラスタ内のポッド)にルーティングするためのリソースです。イングレスを使用することで、以下のような機能を実現できます:
- URLベースのルーティング:特定のURLパスに基づいてトラフィックを異なるサービスに振り分ける。
- SSL/TLS終端:HTTPS通信をサポートし、証明書の管理を行う。
- 負荷分散:トラフィックを複数のバックエンドサービスに分散。
- セキュリティ制御:ファイアウォールルールや認証の統合。
Azureでは、イングレス設定は主に以下のコンポーネントを通じて実現されます。
2. Azureでのイングレス設定の主要コンポーネント
(1) Azure Kubernetes Service (AKS) でのイングレス
AKSでイングレスを設定する場合、KubernetesのIngressリソースとIngress Controllerを使用します。代表的なイングレスコントローラーには以下があります:
- NGINX Ingress Controller:広く使われているオープンソースのイングレスコントローラー。
- Azure Application Gateway Ingress Controller (AGIC):Azure Application Gatewayをイングレスコントローラーとして統合し、AKSのトラフィック管理を行う。
設定例(KubernetesのIngressリソース):
apiVersion: networking.k8s.io/v1
kind: Ingress
metadata:
name: example-ingress
annotations:
kubernetes.io/ingress.class: azure/application-gateway
spec:
rules:
- host: example.com
http:
paths:
- path: /
pathType: Prefix
backend:
service:
name: my-service
port:
number: 80
tls:
- hosts:
- example.com
secretName: example-tls
この例では、AKS内でexample.com
へのトラフィックがmy-service
にルーティングされ、TLS証明書を適用しています。
(2) Azure Application Gateway
Azure Application Gatewayは、レイヤー7の負荷分散を提供するサービスで、イングレス設定の中心的な役割を果たします。主な機能:
- パスベースのルーティング:URLパスに応じて異なるバックエンドサービスにトラフィックを振り分け。
- WAF(Web Application Firewall):セキュリティ強化のためのファイアウォール機能。
- SSL終端:HTTPSトラフィックの処理。
- 統合性:AKSやVM、Azure App Serviceなどと連携可能。
Application GatewayをAKSのイングレスコントローラーとして使用する場合、AGICを利用してKubernetesのIngressリソースと同期させます。
(3) Azure Front Door
Azure Front Doorは、グローバルな負荷分散と高速なコンテンツ配信を提供するサービスで、イングレス設定の一部として使用されることがあります。特に、複数の地域にデプロイされたアプリケーションに対して、以下を提供します:
- グローバル負荷分散:最適なリージョンへのトラフィックルーティング。
- キャッシュ:CDN(コンテンツ配信ネットワーク)機能による高速化。
- セキュリティ:WAFやDDoS保護の統合。
(4) その他の関連サービス
- Azure Load Balancer:レイヤー4の負荷分散を提供。イングレス設定の基礎として使われる場合も。
- Azure Traffic Manager:DNSベースのトラフィックルーティングで、複数のエンドポイント間での負荷分散を支援。
3. イングレス設定の主な用途
- トラフィック管理:複数のサービスやアプリケーションへのトラフィックを一元管理。
- セキュリティ強化:TLS証明書の管理やWAFによる攻撃防御。
- 高可用性:負荷分散やフェイルオーバーによる信頼性の向上。
- スケーラビリティ:トラフィック増加に応じた自動スケーリング。
4. Azureでのイングレス設定の手順(簡略化)
-
イングレスコントローラーのデプロイ:
- AKSの場合は、NGINXやAGICをデプロイ。
- Application Gatewayを使用する場合は、AGICをインストールし、Application Gatewayと統合。
-
Ingressリソースの作成:
- YAMLファイルでルーティングルールやTLS設定を定義。
-
DNS設定:
- ドメイン名をApplication GatewayやFront Doorの公開IPにマッピング。
-
証明書の設定:
- TLS用の証明書をアップロードまたはAzure Key Vaultで管理。
-
テストと監視:
- トラフィックが正しくルーティングされているか確認し、ログやメトリクスで監視。
5. 注意点
- コスト:Application GatewayやFront Doorは使用量に応じて課金されるため、適切なサイズを選ぶ。
- 複雑性:複数のサービスを統合する場合、設定が複雑になる可能性がある。
- セキュリティ:証明書の更新やWAFルールの定期的な見直しが必要。
6. 参考資料
- Azure公式ドキュメント:https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/application-gateway/
- AKSのイングレス設定:https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/aks/ingress-basic
- Azure Front Door:https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/frontdoor/

主にFrontendではイングレス設定を使用するが、BackendのServerでは使用しないで認識あっていますか?
ご質問ありがとうございます。イングレス設定に関するFrontendとBackendの使用についての認識を整理しましょう。
回答の概要
イングレス設定は、主に外部からのトラフィックを受け入れるエントリーポイント(通常、Frontendやユーザー向けの公開エンドポイント)で使用されますが、Backendのサーバーでも間接的にイングレス設定に関連する役割を持つ場合があります。以下で詳しく説明します。
1. イングレス設定の主な用途
イングレス(Ingress)は、外部からのHTTP/HTTPSトラフィックをアプリケーションにルーティングするための仕組みです。Azureでは、以下のようなコンポーネントで実現されます:
- Azure Application GatewayやAzure Front Door:外部トラフィックを受け取り、適切なバックエンドサービスにルーティング。
- AKSのIngressリソース:Kubernetesクラスタ内でトラフィックをサービスに振り分ける。
これらは主に、外部ユーザーやクライアントがアクセスするエントリーポイント(Frontendに相当する部分)で使用されます。たとえば、Webアプリケーションの公開URL(example.com
)やAPIエンドポイントへのアクセスを管理します。
2. Frontendでのイングレス設定
Frontend(例:WebアプリケーションのUIや公開API)では、イングレス設定が以下のような役割を果たします:
-
トラフィックルーティング:URLパス(例:
/api
や/app
)に基づいて適切なサービスにトラフィックを振り分ける。 - SSL/TLS終端:HTTPS通信を処理し、証明書を管理。
- セキュリティ:WAF(Web Application Firewall)や認証を適用。
- 負荷分散:複数のFrontendインスタンスにトラフィックを分散。
例として、ユーザーがブラウザでWebサイトにアクセスする際、イングレス設定がリクエストを正しいFrontendサービスにルーティングします。このため、Frontendではイングレス設定が必須と言えるケースが多いです。
3. Backendでのイングレス設定
Backendサーバー(例:データベース、内部API、ビジネスロジックを処理するサービス)は、通常直接外部トラフィックを受けないため、イングレス設定を直接的には使用しません。ただし、以下の点でBackendもイングレス設定に関連します:
-
Backendサービスへの間接的なトラフィック:イングレスコントローラー(例:Application GatewayやNGINX)がFrontendから受け取ったトラフィックを、Backendサービス(KubernetesのPodやVM上のサーバー)に転送します。この場合、Backendはイングレスの「バックエンド」として設定されます。
- 例:
Ingress
リソースのbackend
フィールドで、Backendサービスの名前とポートを指定。
- 例:
- 内部通信:Backendサービスが他の内部サービスと通信する場合、イングレス設定ではなくClusterIPやServiceリソース(Kubernetesの場合)を使用することが一般的です。これはイングレスとは別で、クラスタ内部の通信を管理します。
- 公開が必要なBackend:まれに、Backend APIを外部に公開する必要がある場合(例:公開APIエンドポイント)、イングレス設定を使ってトラフィックをBackendにルーティングします。この場合は、Backendもイングレス設定の一部として扱われます。
4. 認識の確認
主にFrontendではイングレス設定を使用するが、BackendのServerでは使用しない
この認識は概ね正しいですが、以下の補足が必要です:
- Frontend:イングレス設定は、外部トラフィックを受け入れるエントリーポイントとして必須。ユーザー向けのWebアプリやAPIの公開に使われます。
- Backend:直接イングレス設定を「使用する」わけではありませんが、イングレスコントローラーがトラフィックをBackendサービスにルーティングするため、間接的に関与します。Backendが外部公開される場合は、イングレス設定の一部として構成されることもあります。
5. 例:FrontendとBackendの役割分担
以下は、典型的なWebアプリケーションの構成例です:
-
Frontend:React/Vue.jsなどで構築されたUIが動作し、ユーザーが
https://example.com
でアクセス。イングレス設定(Application GatewayやIngressリソース)でトラフィックをFrontendサービスにルーティング。 -
Backend:Node.jsやJavaで構築されたAPIサーバーが動作。イングレス設定で
/api/*
のパスをBackendサービスに転送。Backend自体は直接外部公開せず、イングレス経由でアクセスされる。
KubernetesのIngress設定例:
apiVersion: networking.k8s.io/v1
kind: Ingress
metadata:
name: app-ingress
spec:
rules:
- host: example.com
http:
paths:
- path: / # Frontendへのルーティング
pathType: Prefix
backend:
service:
name: frontend-service
port:
number: 80
- path: /api # Backendへのルーティング
pathType: Prefix
backend:
service:
name: backend-service
port:
number: 8080
この例では、FrontendとBackendの両方がイングレス設定で管理されていますが、Backendは直接外部トラフィックを受けず、イングレス経由でアクセスされます。
6. 結論
- Frontendでは、イングレス設定が外部トラフィックのエントリーポイントとして主に使用されます。
- Backendでは、直接イングレス設定を「使用しない」ことが多いですが、イングレスコントローラーがBackendサービスにトラフィックを転送するため、間接的に関与します。
- もしBackendが外部に公開される必要がある場合(例:公開API)、イングレス設定に含まれることがあります。
7. 追加の質問があれば
もし具体的なシナリオ(例:AKSでの設定、特定のサービス構成)や、Frontend/Backendの役割についてさらに詳しく知りたい場合、教えてください!また、特定のAzureサービス(Application Gateway、Front Doorなど)についての詳細や設定例が必要なら、その点も深掘りできます。