Jestでの関数Mock作成について

Jestでの関数Mock作成とメモリ負荷について📝

Jestで特定の関数をモックする代表的な手法をいくつか挙げ、それぞれのメリット・デメリット、サンプルコード、そしてテスト負荷（メモリ使用率など）について整理します。

主なモック手法

1. jest.fn()での関数モック

   概要：jest.fn()を用いて新規のモック関数を生成します。元の関数実装に依存しないため、最もシンプルな方法です。

   メリット：

   • 簡潔で素早く記述できる
   • 任意の戻り値や実行時動作を容易に設定可能（mockReturnValue, mockImplementationなど）

   デメリット：

   • 元のオブジェクトや関数構造を保持しないため、元実装との紐づきを示しにくい

   サンプルコード：

   const myMockFn = jest.fn();
   myMockFn.mockReturnValue('mocked result');
   
   test('myMockFn returns mocked result', () => {
     expect(myMockFn()).toBe('mocked result');
   });
   

   メモリ・テスト負荷：

   • 比較的軽量。単純な関数オブジェクトをmockするだけなのでオーバーヘッドは少ない。

2. jest.spyOn()での既存メソッドモック

   概要：既存のオブジェクトやクラスのメソッドにスパイを仕掛け、戻り値をモックします。

   メリット：

   • 元のメソッド構造・オブジェクトを維持しつつ挙動のみ差し替え可能
   • テスト後にmockRestore()で元状態に戻せる

   デメリット：

   • 元となるオブジェクトとメソッドが存在することが前提
   • jest.fn()より多少記述が冗長

   サンプルコード：

   const obj = {
     method: () => 'original'
   };
   
   jest.spyOn(obj, 'method').mockReturnValue('mocked');
   
   test('obj.method returns mocked', () => {
     expect(obj.method()).toBe('mocked');
   });
   

   メモリ・テスト負荷：

   • 個別のメソッドに対するスパイなので軽量。jest.fn()同様、小規模なら問題なし。

3. jest.mock()での自動モック(モジュール全体モック)

   概要：jest.mock()を使い、テスト対象のモジュールを丸ごとモックします。__mocks__ディレクトリを利用することも可能です。

   メリット：

   • モジュール全体を一度にモックできる
   • 再利用性が高く、複数テストで同じモックを使用しやすい

   デメリット：

   • 設定がやや複雑になりやすい
   • モジュール単位でモックするため、細かい粒度の制御が難しい

   サンプルコード（__mocks__/myModule.jsを利用する場合）：

   // __mocks__/myModule.js
   module.exports = {
     myFunction: jest.fn().mockReturnValue('mocked result')
   };
   
   // test file
   jest.mock('../myModule'); // 上記の__mocks__が利用される
   const { myFunction } = require('../myModule');
   
   test('myFunction returns mocked result', () => {
     expect(myFunction()).toBe('mocked result');
   });
   

   メモリ・テスト負荷：

   • モジュール全体を読み込み・モックするため、関数単位のモックよりは若干負荷が上がる可能性あり。ただし一般的な規模のプロジェクトでは大きな問題となりにくい。

4. jest.requireActual()を用いた部分的モック

   概要：元のモジュールをjest.requireActual()で取得した上で、一部関数のみをモックする手法です。

   メリット：

   • 元のモジュール実装の一部は使用しつつ、一部のみ差し替え可能
   • 実用的な「部分モック」が実現しやすい

   デメリット：

   • 設定がやや複雑
   • 部分的な差し替えのため、意図せぬ依存があるとテストが難解になる可能性

   サンプルコード：

   jest.mock('../myModule', () => {
     const actualModule = jest.requireActual('../myModule');
     return {
       ...actualModule,
       myFunction: jest.fn().mockReturnValue('mocked')
     };
   });
   
   const { myFunction, otherFunction } = require('../myModule');
   
   test('myFunction returns mocked', () => {
     expect(myFunction()).toBe('mocked');
   });
   

   メモリ・テスト負荷：

   • 実際のモジュールを一度読み込んだ上でモックするため、単純なjest.fn()やjest.spyOn()よりは負荷が上がる場合がある。しかし、大半のケースで問題ない範囲。

メモリ使用率やテスト負荷についてのコメント

• 基本的な関数モック(jest.fn(), jest.spyOn())は非常に軽量で、テストケースが数十～数百程度ではメモリ負荷や実行時間への影響は僅少です。
• jest.mock()で大規模なモジュールをモックする場合、すべての依存関係やモジュールを読み込むため、多少メモリ使用率が上がる可能性があります。ただし、通常のユニットテスト規模では問題になりにくく、テストランナー(Jest)自体が大規模プロジェクトにも対応できるようになっています。
• 大量にモックを乱用すると、テストセットアップのコード量や複雑性が増し、テスト時間が若干延びる場合もありますが、一般的な用途では依然として軽量といえます。

比較表

手法	容易度	柔軟性	元実装への依存	適用範囲	メモリ/CPU負荷	サンプルコード例
jest.fn()	高（簡単）	高 (独立関数を自由にモック)	不要	関数単位	低(軽量)	const mockFn = jest.fn(); mockFn.mockReturnValue('foo');
jest.spyOn()	中（やや複雑）	中 (既存メソッドのみ)	必要	オブジェクトメソッド	低(軽量)	jest.spyOn(obj, 'method').mockReturnValue('bar');
jest.mock()(自動モック)	中（普通）	高 (モジュール全体をモック)	不要	モジュール単位	中(やや負荷)	jest.mock('../module'); const { fn } = require('../module'); fn.mockReturnValue('mocked');
jest.requireActual()併用	低（やや面倒）	高 (部分的モック可能)	必要	モジュールの一部	中(やや負荷)	jest.mock('../module', () => { const actual = jest.requireActual('../module'); return {...actual, fn: jest.fn()};});

上記を参考に、テスト対象やニーズに合わせて適切なモック手法を選択するとよいでしょう。