確認と相談ができないことのデメリット、身軽に動くためのマインドと工夫
「いつでも相談してと言われたけど、聞きにくいな」「状況がこじれそうだから、何も言わないほうがいいかな」
仕事をしているとそんなことを思うときがありますし、そんな状況のメンバーを見かけることもあります。それは気持ちによるものだったり、伝えるための手段がわからなかったりするのですが、身動きが取れず悩んでしまいますよね。
わたし自身、考えすぎて消極的な行動をしがちな性格なのですが、失敗を重ねて、仕事においては自分から行動を起こせることが多くなってきました。そのなかで感じるのが、遠慮をして行動を起こさずにいてもあまりいいことがないし、自分から行動することで変化が起こりやすくなるという実感です。
この記事では、遠慮をしてしまう構造や、遠慮することで起こりうる弊害。そして、どのような考え方や工夫をすれば自分から行動を起こしやすくできるかを書いています。
少しでも参考なれば嬉しいです。
なぜ私たちは配慮ではなく遠慮をしてしまうのか?
遠慮を検索すると配慮という言葉が出てくるので、その言葉を比較してみます。
- 「遠慮」とは、他人の気持ちや状況に考えを巡らせて、行動や発言を控えること
- 「配慮」とは、他人の立場や状況を理解して、もっとも良い行動をとること
あるいは近い言葉として次のようなものもありました。
- 気を遣う:自分が心配だと感じたことに対して行動すること
- 気を利かせる:相手の気持ちやその場の状況に配慮した行動をとること
「遠慮≒気を遣う」「配慮≒気を利かせる」と考えてもよさそうな気がします。
ここからいくつか共通点が見えてきます。
まずは主語です。
「遠慮する・気を遣う」は相手や場の状況を考えながらも、最終的な行動は自分のための割合が多そうです。
逆に「配慮する・気を利かせる」は最終的な行動を相手や場の状況をよくするためにしています。
そして行動です。
「遠慮する・気を遣う」は行動を控える消極的な傾向があります。逆に「配慮する・気を利かせる」は何らかの行動を積極的とっていこうという意思が見えます。
では次に、なぜ「遠慮したり気を遣う」のかを考えてみます。
- 間違いや衝突を避けたいから
- 仕事ができない人だと思われたくないから
- 相手が忙しそうだから
- 自分の役割だと思っていないから
- 多くの人がやっていないから
間違いや衝突を避けたいから
私たちが遠慮してしまうよくある理由のひとつは「間違ったことを言ってしまったらどうしよう」「相手と違う意見を言って嫌な空気になったらどうしよう」といった不安だと思います。
でも、この考え方をしていると2つの課題に行き当たります。
1つ目は、間違いや衝突を避けることで、より大きな問題を見過ごしてしまう可能性です。
たとえば、プロジェクトの方向性や実現手段に対する違和感を指摘しないことで、あとから大きな手戻りになることが考えられます。
2つ目は、建設的な対話をする機会を逃してしまうことです。
同じ意見であることと同様に、違う意見を持っていることにも価値があります。同じ意見が多ければ確からしいと判断できますし、意見にばらつきがあるなら議論の余地があると判断できるからです。
だから、自分の意見を伝えないことで、改善するプロセスやチームとしての成長機会を逃してしまうかもしれません。
間違いや衝突を避けずに意見を伝えられると、より良い解決策が早く見つかりやすくなり、建設な対話ができる信頼関係を築くことができるようになると思います。
仕事ができない人だと思われたくないから
間違いや異なる意見ではないですが「そんなことも知らなかったのか」「仕事を任せても大丈夫なのかな」のように、自分の能力を疑われたくない不安もあると思います。
でも、発言しないことが実際には逆効果になってしまうことも多いです。
- 理解が不十分なまま作業を進めてみるけれど、あとになって確認することになる
- 実は自分以外にも理解が不十分な人がいて、チーム全体として仕事の効率が落ちている
- 実はお互いの認識がズレていて、それぞれが違うゴールに向けて進もうとしている
わからないことを適切なタイミングで確認することは、能力不足と捉えられるよりも、むしろ仕事への積極的な姿勢として評価されることのほうが多いと思います。もちろん、求められる基準はあるかもしれませんが、遅れをちゃんと取り戻していたら問題にならないことのほうが多いです。
それに、チームには経験や専門領域が違う人のほうが多いので、適切な認識合わせは無駄にならず、チームにとって意味のある時間になると思います。
相手が忙しそうだから
「〜さん忙しそうだから声をかけにくいな」と感じることもありますよね。「困ったらいつでも相談してください」と言われていても、ある程度の説明ができる状態まで進めてから声をかけようとすると、それにも時間がかかってしまったり。
でも、サポートする立場にたってみると、早めに向こうから質問してくれる人はとてもありがたいもの。「うまく進んでいるかな?」「こちらから声をかけたほうがいいかな?」のように考える負担を減らしてくれるからです。
そして、忙しい人ほど早めに声をかけないとスケジュールが埋まって、相談するタイミングが取れなくなったりもします。たとえば、何時間か後しかスケジュールが合わなかったりして、手持ち無沙汰な状態になってしまうかもしれません。
事前に相談する可能性があることを伝えておいたり、早めに声をかけてそれまでに相談内容を整理できるようにする。そのような進め方にしたほうがスムーズに進むことも多いです。
自分の役割だと思っていないから
「これはあの人の仕事だから」「わたしがあえて前に出なくてもいいだろう」と考えてしまって、それが遠慮に見えることがあります。
仮に自分の役割でなかったとしても、フォロワーシップを発揮して役に立てることがあります。
- 気づいたことや感想を伝える
- 疑問点を質問する
- 改善策を提案する
- 困っていることや自分にできることがないか質問する
専門外のことでも気づきや疑問点があるかもしれません。最終的な判断は相手に委ねつつ、相手の困りごとを一緒に考えるとスムーズにいくことも多いです。
意識的に自分の役割を広げることでチームへの貢献を実感できると思いますし、より良い協力関係は仕事を楽しくしてくれると思います。
多くの人がやっていないから
「他の人もやっていないから、わたしもやらなくていいかな」という同調バイアスも、遠慮に見えることがあります。
たとえば、次のような状況が起きていないでしょうか。
- 誰も積極的に意見を言わない
- 意見を言わないことが当たり前になる
- 意見を言うことのハードルが上がる
- さらに誰も意見を言わなくなる
このような負のループに陥ってしまうと、反応が薄かったり無関心さが目立つ、居心地のよくないチームになってしまいます。時間は効率的に使えるかもしれませんが、話すべきことが話せていなければ効果的な仕事は難しくなると思います。
でも、誰かがリーダーシップを発揮して最初の一歩を踏み出すことで、チームの雰囲気は変わっていくと思います。ここで言うリーダーシップは能動的と置き換えると、少し解像度が上がるかもしれません。
- 能動的:外部からの働きかけとは関係なく、自ら進んで他者に働きかけること
- 受動的:外部からの働きかけによって反応を起こすこと
相手や場の状況をよくする、積極的な行動を取るための考え方や工夫
あらためて、配慮と気を利かせるの意味をおさらいします。
- 「配慮」とは、他人の立場や状況を理解して、もっとも良い行動をとること
- 気を利かせるとは、相手の気持ちやその場の状況に配慮した行動をとること
「相手や場の状況をよくする」ために「積極的な行動を取る」ことが大切です。
そのために、わたしがとくに気をつけていることです。
- 「私たち」にとって役に立つ行動を考える
- 目的合わせをする
- 状況を整理するための型を作る
- 自分の意見を持ち、率直に伝える
- なるべく早くその場で伝える
- 相手の行動に対して肯定的なフィードバックをする
「私たち」にとって役に立つ行動を考える
主語を自分にしてしまうと、どうしても防御的で受け身になりがちです。とくに、やったことがない仕事の場合は「失敗したくない」「うまくやりたい」と考えたくなるのは自然なことだと思います。
もしも発言や行動に心理的な抵抗を感じたら「チームとしてはどうありたいかな?」と視点を変えてみるのがおすすめです。
主語を自分から離すことで、客観的に問題と向き合いやすくなると思います。失敗したとしても「チームのために必要な失敗だった」「この学びを次に活かそう」と、いい意味で責任を転嫁しやすいです。
そして、正しさも大切ですが、「誰かの役に立つ」「チームの役に立つ」という視点で考えることが仕事において重要と感じています。仕事は結局のところ、求められている結果を出す必要があるからです。
目的合わせをする
「どのような状態を目指していて、何を達成できればいいのか?」
目的とゴールの認識がズレていると、本当に役立つ行動が取れていないかもしれません。
まずは認識を合わせる質問から。意見を出すのはそれからでも遅くありません。
状況を整理するための型を作る
オレオレフレームワークを準備しておくのもおすすめです。わたしは次のような型を使っています。
- ゴール:最終的に「どんな状態になるとよさそう」ですか?「決定したいこと」はありますか?
- 問題:具体的にどんなことで「困って」いますか?
- 情報:問題点が分かる「参考情報」があれば教えてください
- 現状:現時点で「分かっていること」「調べていること」があれば教えてください
- 施策:現時点で考えている「方法」はありますか?
- 課題:どんなことが分かれば「前に進められそう」ですか?
この質問集に書き込んでいって、足りないところが質問する項目になります。書き込んでいると頭が整理されて、質問しなくても次にやってみることが見えたりもします。
質問するときには次のようなことに気をつけます。
- 前提:相手の理解度に合わせて、前提になる知識や情報を揃える
- 範囲:どの範囲を話して、何をゴールとするのかを伝える
- 構成:相手が理解しやすい順番で話す
- 比喩:相手が知っていることで例えて、全体像や概要をイメージで共有する
- 情報量:相手が理解しきれる情報量に抑える
- スピード:相手の理解が追いつく速度で話す
- 語彙:相手に合わせた分かりやすい言葉を使う
- ケア:相手の理解度を確認しながら話す内容を調整する
自分の意見を持ち、率直に伝える
議論をするうえで、スタンス(意見や立場)を明確にすることが意外と大事だと考えています。
近いものとして叩き台もありますが、どちらも考える対象が存在していて、違いを見出しやすい点が同じです。つまり、正しさや精度はあまり問題ではなくて、議論を引き出すためのきっかけになるものが必要ということです。
このときに「アサーティブ・コミュニケーション」を参考するのもおすすめです。
アサーティブというのは、次のようなことです。
- 自分の気持ちや意見を率直に表現しながら、相手の気持ちや意見にも率直に耳を傾ける言動のこと
- お互いの意見を出し合い、それが食い違っていても、粘り強く共通点を見つける努力をすること
意見を押し付けるのではなく、相手に従ってしまうのでもなく、自分の意見も相手の意見も尊重するコミュニケーション方法です。
「DESC法」で意見を整理するとアサーティブに表現しやすくなります。
- 描写(Describe):対応しようとしている状況や相手の行動に対して、客観的で、具体的な事実だけを描写する
- 表現(Express):描写した事柄や言動に対して、自分の感情や気持ち、あるいは相手への共感の気持ちを表現する
- 提案(Specify):お互いの行動、妥協案、解決策などの、具体的で実行しやすい提案をする
- 選択(Choose):提案を受けた相手の反応を予測して、相手が同意した場合としなかった場合の両方に対する自分の言動を選択する
「よくわかるアサーション 自分の気持ちの伝え方」という書籍がとてもわかりやすいのでおすすめです。
なるべく早くその場で伝える
「いま変更すると手戻りが大き過ぎるな」「言ってることはわかるんだけど、もっと早く言って欲しかったな」と感じた経験がある人も多いと思います。
問題は時間が過ぎるごとにコントロールができなくなるので、気がついたときに、なるべく早く伝えられるように意識しています。
「DESC法」のように完璧に整理できていなくても大丈夫です。「代案を出せ」という考え方もありますが、考えつかなかったり、整理しきれないこともあります。
何も伝えられないより、違和感や気づきを伝えるだけでも十分に貢献できていると思います。
相手の行動に対して肯定的なフィードバックをする
行動しても反応が薄かったり、よくない反応が返ってきたら「もうやりたくないな」と感じるのは自然なことだと思います。
たとえば、よかれと思って代案を出したけど、感謝もなく完全に却下されたら、むなしくなったり怒りが湧いてくるかもしれません。
意見を否定することはあるかもしれませんが、反応をくれたこと、意見を考えてくれたことに対して感謝を伝えることはできます。
「助かりました」「ありがたかったです」という意思表示をするだけで救われることは多いです。
まとめ
- 消極的な行動を選んでも損することは意外と多い
- 成長機会や信頼関係は積極的な行動から起こりやすい
- 役割や同調を超えた能動的な行動によって仕事がより楽しくなる
- マインドと少しの工夫で、状況にあった積極的な行動がとりやすくなる
「遠慮は罪」という言葉がありますが「控えめで消極的な行動は、結果につながりにくい」だから「自分のためにもチームのためにも遠慮せず、積極的に発言や行動をしていこう」ということだと考えています。
勇気が必要な場面も多いですが、相手やチームの成功にとって役に立つ、積極的な配慮が当たり前なチームでありたいですね。
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