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省略・歪曲・一般化からの回復:相談にはアドバイスより先に気づきを促すことから始める

2023/09/17に公開

悩み相談に対してアドバイスをするのは自然に思えますが、有効に働かない場合もあります。

そもそも悩んでいる状態というのは「理屈では何となくわかっているけど、できないから困っている」ことも多いです。
「こうすればいいよ」と言われてもできないし、さらにネガティブなループを繰り返してしまうことも考えられます。
事実や正論は相手の助けになりますが、「否定された」「受け入れたくない」と感じさせてしまうと、逆に相手の妨げになってしまう可能性もあるからです。

こういった場合に有効なのはアドバイスではなく「気づき」です。
「あっ、そういう考えもできるのか」といった気づきから「これなら自分にもできるかもしれない」といった、その人ができること・やりやすい方法が考えられるように伴走することが大切だと思います。

気づきを促すための方法として、NLP(神経言語プログラミング、Neuro Linguistic Programming)にある「省略・歪曲・一般化」を回復する質問(メタモデル)が有効だと考えています。

参考にさせていただいた脳と言葉を上手に使う NLPの教科書の内容をもとに、自分なりの解釈も含めてまとめました。

誰かの相談に対してうまく助けてあげたいと思っている方、自分の悩みを自分でうまく解決したいと思っている方の助けになれば幸いです。

省略から回復する

省略とは、情報や要素を部分的に削除することです。
重要な情報が失われていると、不正確なコミュニケーションになってしまう可能性が高まります。

省略:単純削除

  1. 「不安です」
  2. 「何に対して不安を感じているんですか?」

漠然とした不安だけでは、次の選択肢が出てこないので解決には至りません。
「どんな出来事があって」それに対して「どのように感じたのか」を明確にする必要があります。

省略:比較削除

  1. 「話し下手なんです」
  2. 「誰と比べて話し下手だと思いますか?」

比較すること自体に問題はありませんが、適切な比較対象になっているかを確認することが大切です。

自分よりも明らかに優れた人を対象にしても否定的になり過ぎるかもしれませんし、何となくのイメージで比較していたら漠然とした不安を感じやすくなるかもしれません。

省略:不特定指示詞

  1. 「このままではダメだ」
  2. 「『このまま』とは具体的に何のことですか?」

指示詞(例:これ、この、あれ、どの)には具体的な内容を省略できるメリットがありますが、曖昧なイメージで考え進めてしまうデメリットもあります。
5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を使って、イメージを具体的で簡潔な言葉に変換することが大切です。

たとえば、「〇〇の経験がキャリアアップのために必要だけど、いまの状況では携わることが難しいと感じている」のように明確になれば、より具体的な検討ができるようになります。

省略:不特定動詞

  1. 「混乱しています」
  2. 「どのように混乱しているんですか?」

混乱した結果、どのように困っているのか本人にしか分からない状態です。

省略:名詞化

  1. 「変化がありません」
  2. 「何がどのように変化していないんですか?」

「変化」は動詞である「変化する」を名詞化したものです。
名詞は動くイメージが起こりにくいので、動詞に変換することで動きをつけて選択肢を見つけやすくします(写真を動画にするイメージ)。

歪曲から回復する

歪曲とは、実際に起きた出来事を元の状態から歪めて受け取ることです。
誤解や偏見が混ざってしまうことで、非現実的で独りよがりな結論を出してしまう可能性が高まります。

歪曲:因果関係

  1. 「〇〇さんは私を苦しめます」
  2. 「〇〇さんはどのようなことをして、あなたを苦しめるんですか?」

人は他人の感情を直接コントロールできません。
人を原因とせず、人が起こした行動に目を向けることで、適切な因果関係を見つけます。

歪曲:複合等価

  1. 「遅刻をする人はやる気がないと思います」
  2. 「やる気以外に、遅刻をしてしまう他の原因は考えられますか?」

遅刻は「行動」でやる気は「状態」です。行動と状態は単純にイコールで考えることができません。
やる気がなくても遅刻しないこともありますし、遅刻をする理由はやる気以外にあったかもしれません。

歪曲:読心術

  1. 「〇〇さんは私に批判的です」
  2. 「どのようなことがあってそう感じるのですか?」

他人の心の中は分かりません。
具体的に「どのような出来事が起こったのか」、それに対して「なぜそのような結論に至ったのか」を区別できると考えを整理しやすくなります。

  1. 「〇〇さんは私がしてほしくないことばかりしてきます」
  2. 「〇〇さんはあなたがしてほしくないことが、どのようにわかると思いますか?」

自分が相手の心の中が分からないように、相手も私の心の中を知ることをできません。
相手が何を思っているのかを否定的に推測してもモヤモヤしてしまいます。
「してほしくないこと」が起こらないようにする方法を建設的に考えいけるといいですね。

歪曲:判断

  1. 「いまの仕事が向いていないと感じます」
  2. 「誰かがそう言ったんですか?」

「いまの仕事が向いていない」というのは可能性の一つで、事実ではないかもしれません。
「適切な判断基準になっているのか?」「適切な判断基準であると判断するには何が必要か?」を考えていきましょう。

一般化から回復する

一般化とは、少ない事実や事例を根拠にして他のすべてに同じように当てはめることです。
過度な当たり前で自分を縛ることで、本来持っている可能性を制限してしまうかもしれません。

一般化:全称限定詞

  1. 「いつも落ち込んでいます」
  2. 「いつもですか?」

いつも落ち込んでいる人はいません。
「いつも」「みんな」「絶対」のような例外を認めない表現があったら「本当にそうだろうか?」「例外はないだろうか?」と問いかけてください。

一般化:必然性・可能性の叙法助動詞

  1. 「もっと頑張る必要があります」
  2. 「頑張らないとどうなりますか?」

「〜をしなくてはならない」「〜をしてはならない」という表現を「必然性の叙法助動詞」といいます。

自分に「これは避けられないことだ」というルールを課している状態です。
「本当に避けられないのか?」「別の選択肢を選んだ場合はどうなるのか?」と問いかけてください。

  1. 「自分の意見を言うことはできません」
  2. 「自分の意見を言うと、どうなりますか?」

「〜をできない」という表現を「可能性の叙法助動詞」といいます。
今度は自分に「これをすることはない」というルールを課している状態です。

あくまでも自分の中でのルールなので、自分が意見を言う可能性自体は残っています。
「意見を言った場合の結果を想像」したり「できないと感じているのは何が起こるのを心配しているのか」を改めて考えてみます。

一般化:前提

  1. 「なぜ苦しいことしか起こらないんだろう?」
  2. 「苦しいことしか起こらないんですか?」

「苦しいことしか起こらない」という前提になっていて、それ以外の例外は起きないことになっています。

「例外は本当に起きていないのか?」「例外は起きないと思ってしまうのはなぜなのか?」が明確になると心や考えが整理しやすくなります。

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