「科学的な適職」鈴木祐著をもとに就職活動における最適な職業選びを紹介
こんにちは。豆太郎です。
今回は、これからどこの企業に就職すれば良いか悩んでいる学生に向けて記事を書きました。
参考にしたのは鈴木祐著の「4021の研究データが導き出す科学的な適職」という本です。
この本では、これから就職活動を行う大学生におすすめの本となっています。なぜなら、この本では複数の文献をもとに、適切な職場選びを行う方法が書かれており、後悔しない職場選びが分かるかなんですよね。具体的には、職場選びにおける避けるべきことや、幸福度の上がる職場選びの特徴が書かれています。ですので、これから就職活動をしたいが、進路の軸が決まらずに悩んでいる人に、まず参考にしてもらいたい本です。
この記事は以下のような人に向けて書きました。
- 大学生で就職活動を始めたいが、行きたい企業が分からない
- ほとんどの人が知りえない、ホワイトな企業を見つけて楽に就活を終わらせたい。
- 就職後の仕事を行い方や捉え方を知りたい。
上記のような人に向けて記事を書きました。
なぜ、仕事選びに失敗するのか?
就職先選びの誤解
1.好きを仕事にしようは間違い
よく、「就職先では、好きを仕事にしよう!」という言葉や、企業の宣伝を聞きますよね。ただし、好きを仕事にしようは間違いなんですよね。なぜなら、好きを仕事にしてしまうと仕事を辞めやすく、スキルも伸びないからなんですよね。
ミシガン大学が行った研究では、以下のような適合派と成長派の思考を持つ人をグループ分けしました。
- 適合派:「好きを仕事にするのが幸せ」と考える
- 成長派:「仕事は続けるうちに好きになるものだ」、「そんなに仕事は楽しくなくてもいいけど、給料は欲しい」
結果的に、適合派の人は最初の一年は幸福度が長く続くものの、その後は幸福度が長く続かないとの結果がでました。逆に、成長派の人は1~5年のスパンで見た場合に、適合派と比べて幸福度・年収・キャリアなどのレベルが高くなっていたとのことです。この理由としては、どんな仕事にも人が好まないような雑務が発生しており、「好きを仕事にする」適合派の人は、現実の仕事と理想の仕事のギャップを感じてしまい、モチベーションが下がるからです。逆に、成長派の人は、困難な仕事や雑務をこなしていても仕事に思い入れがないため、モチベーションを保つことができます。
また、別の研究では、以下の仕事に対して以下の3つの思考を持つ人を分類して研究を行いました。
- 好きを仕事に派(自分はこの仕事が好きだ)
- 情熱派(この仕事で社会に貢献する)
- 割り切り派(仕事は仕事)
上記を確かめたところ、最も優秀だったのは「割り切り派」だったとのこと。具体的には、「割り切り派」の思考を持つ人は、作業の上達も早く、すぐに仕事を辞めなかったとのこと。また、「好きを仕事に派」や「情熱派」はやはり仕事の現実と理想のギャップを感じて、モチベーションが落ちやすく、スキルも身に付きにくかったとのこと。
上記のような結果から好きを仕事にするのは間違いであるとのことでした。そして、好きや情熱をもって仕事をするとギャップが生まれてしまい、仕事のスキルを身につけにくかったり、やる気を失いやすとのことでした。
2.お金を目的として就職するのは間違い
年収の高さを基準として企業を選ぶのは間違いです。
なぜなら、以下のようなことがあげられます。
- 仕事と給料の満足度の相関関係は小さい(満足度には影響がない)
- 給料アップによる満足度は一年しか継続しない
- 年収がある程度高くなると、年収が上がっても幸福度が高くならない。(年収400万円以上に達すると、そこから幸福度を高めるためにはさらに400万円の収入アップが必要)
このように、仕事と給料の満足度はあまり関係がなく、またある程度年収があると、そこから収入が増えても幸福度が上がらないとのことでした。
そして、本書では幸福度を上げるために、給料を上げることよりも大事なことを2つ挙げていました。
- 健康的な体調にする(健康レベルが「普通」から「ちょっと体調がいい」に改善した時の幸福度の上昇率は、年収が上位一%に達した場合と比較して、6521%も大きい。)
- 仲のいい人間関係を作る(仲が良いパートナーとの結婚から得られる幸福度の上昇率は、収入が上位10%に上昇した場合と比較して767%も大きい。)
つまり、収入を上げるよりも健康的な生活を送ることを意識したり、仲の良い人間関係を作ることに努めれば、お金以上の喜びを味わうことができるということなのです。
3.自己分析や業界分析は意味がない。
自己分析や業界分析は意味がないです。
なぜなら、誰もが有望な業界を予測するのは予測できないですし、個人の価値観や趣味も予測できないからなんですよね。
具体的には、ペンシルベニア大学の研究では3年後~5年後の経済や企業の状況を予測した実験では、集まった専門家の予測データをまとめたところ、50%の正解でしか当たらなかったとのこと。このことから、誰も将来を予測することは不可能なのですよね。そして、3年後~5年後の予測ですら50%とのことだったので、10年後の未来はさらに正確性が落ちることが予測されます。このことから、とくに、10年後や20年後の企業や業界の状況を予測しても不可能だと考えられます。
また、ハーバード大学が行った研究では、被験者に10年後の将来の自分と、過去の10年前の自分についての価値観や好みの変化をを質問しました。その結果、被験者は10年後の将来については価値観や好みが変化しないという回答が多数はだったにも関わらず、過去の10年前から価値観や好みは変化していたとの回答が多く寄せられました。つまり、人々は過去の価値観や好みは変化しているにもかかわらず、これから先の価値観の変化することを過小評価していることを表しています。このことから、人間は自分ですら、将来の自分の変化を予測できないことを言うことができます。
なので、自己分析や業界予測をしたところで予測が外れてしまうため、意味がないとのことでした。
4.直感で企業を選ぼうとする
直感で企業を選ぼうとすると、失敗することが多いです。
具体的には、ある大学が行った研究では以下の6つの意思決定スタイルを持つ人をグループに分けて、人生の意思決定の質を選びました。
- 合理的:論理的に考えて意思決定をする
- 直感的:直感や感覚で選択する
- 依存的:他人のアドバイスをもとに決定をする
- 回避的:決定を引き延ばそうとする
- 自発的:できるだけ早く決定を終わらせようとする
結果的に、最も人生の満足度が高く、ストレス度が低かったのは、合理的に考える人でした。このことからも、直感的に職場を選ぶよりも合理的に職場を選んだ方が良いとのことです。また、よくキャリアアドバイザーなどの意見に従って就職先を決める方もいるかと思いますが、その場合も依存的(他人のアドバイスをもとに決定する)にならずに、最終的には自分で判断して就職先を決める方が失敗しないかと思います。
ですので、就職先も合理的に判断するようにしましょう。この本では、合理的に職場を判断するためにいくつかのテストを活用しています。
5.適性にあった仕事を求める
インターンシップも前職の経験も適性判断には役に立たないとのことです。なぜなら、企業で求められるスキルやカルチャーは各社ごとに異なり、また企業内でも部署ごとに求められるスキルが異なり、前職の経験やインターンシップの経験が就職してからのパフォーマンスに役に立たないケースがあるからなんですよね。例えば、過去に上流工程の行っていたエンジニアであっても、配属された部署で下流工程を行うとなると、求められるもの(プログラミングスキル)が異なるため、活躍をすることが難しくなってしまいます。
ある研究では、実際に前職やインターンシップなどの経験など、適性検査が、どのくらい実際の現場でのパフォーマンスに役立っているかを調べました。
結果的には、一番信頼度の高い質問項目(ワークサンプルテスト)ですら、候補者の29%しか説明ができなかったとのこと。
※ワークサンプルテストとは、実際に会社の実務で行われるタスクを被験者に行ってもらうこと。
就職先を決める7つの徳目とは?
自由:その仕事に裁量権はあるか?
職場における自由は満足度を高めるために重要です。
ある研究では、2つのグループに分割して満足度を調べました。
- 社員が自由に行動できるがたばこを吸えない会社、
- 社員が自由に行動できないがたばこを吸う会社
すると、自由に行動できるがたばこを吸えない会社の方が満足度が高く、逆に自由に行動できないがたばこを吸う会社では、体を壊しやすかったとのこと。このことから、自由はたばこよりも幸福度や健康に大きな影響を与えるとのことです。たしかに、私が行っていたアルバイトやインターンシップでもたばこを吸っているが、若々しく開発を行っている50歳代の副社長がいました。おそらく、たばこを吸っていても、現役でプログラミングを行うことができているのは、仕事の自由であるのではないかと思いました。
また、会社内で自由に行動できる人は、管理職など職位が高い人やスキルが十分にあって信頼のおける人が多いです。ですので、新卒で入社して自由に行動するためには、ある程度スキルを身につけておくことが望ましいかと思います。逆に
スキルが無い人は入社して間もないころは、自由に仕事を任せてもらえず満足度が下がるかもしれませんが、自由に裁量権を任せてもらえる職に昇進できるように、「仕事は仕事だ」(成長派の考え方)と思って割り切って、業務を行いましょう。そうすればおのずと、裁量権を任せてもらえるスキルと他人からの信頼を持つことができます。
また、性別によって、自由の種類が変わってくるとのことです。
ある研究では、以下のように自由の種類を2つに分けて、男女ごとに幸福度の違いを研究しました。
- 自分の作業開始・終了時間を自由に決めることができる(フレックスタイム制)
- 自分の作業の進め方や作業ペースに関して、自由に決めることができる(裁量権が大きい)
その結果、男性は裁量権の大きさ、女性はフレックスタイムの方が幸福度が高くなるとのことでした。
このことから、
- 男性は裁量権の大きさ
- 女性はフレックスタイム
を重視して、会社を選ぶと成功しやすい傾向があるかと思います。
達成:前に進んでいる感覚は得られるか?
ハーバード大学の研究では、前に進んでいる感覚が得られるほど仕事の満足度が高いとのこと。具体的には、「小さな達成」が仕事のモチベーションを大きく左右するとのこと。この「小さな達成」とは、今まで分からなかったバグを解消できた、上司に褒められたなどのことです。
そのためには、しっかりとしたフィードバックが得られる会社であるかどうかを調べる必要があります。例えば、1on1面接など1か月や1週間に行ったことについてしっかりと振り返りやフィードバックを貰える会社であるかどうかを調べましょう。
焦点:自分のモチベーションタイプに合っているか
2012年に行われたメタ分析では、モチベーションタイプにあった働き方をしたほうが能力を発揮しやすく、そのおかげで満足度が高いとのこと。
ここで、モチベーションタイプは以下の2つに分かれます。
攻撃型:目標を達成して得られる「利益」に焦点を当てて働くタイプ
防御型:目標を「責任」の一種としてとらえ、競争に負けないために働くタイプ
焦点タイプは以下の記事で確認することができるのでぜひ試してみてください。
転職×投資 科学的な適職から学ぶ、適職選びの16問テスト
この焦点タイプをもとに、職業を選ぶと、能力が発揮しやすいとのことです。
攻撃型:コンサルタント、アーティスト、テクノロジー系、ソーシャルメディア系、コピーライター(変化の激しい業界、ベンチャー企業など)
防御型:事務員、技術者、データアナリストなど(変化のない企業、分析的な仕事、大手企業、公務員等)
です。新卒で何の職業が適しているかについては上記を参考にするとよいでしょう。例えば、自分の場合だと圧倒的に攻撃型でした。ですので、コンサルティングやテクノロジーなどの分野を行っている企業に入社すると成果を出しやすいのではないかと思います。
明確:なすべきことやビジョン、評価軸はハッキリしているか?
タスクやビジョンが明確でないと、仕事において目的ややる気を感じられずに、満足感を感じられないものです。実際の研究でも、タスクの不明確さは社員の疲労や頭痛、消化器官との不調と相関していたとのこと。例えば、上司からの指示が出ていたが、これが何の役に立つか分からないという状況であれば、どうすればこのタスクを完了できるかが分からないまま、呆然と時間が過ぎてしまい、ストレスが溜まっていくばかりです。ですので、会社の明確なビジョンを持って取り組んでいるかということをしっかりと調べましょう。
多様:作業の内容にバリエーションはあるか?
作業の内容にバリエーションがあると満足度が上がりやすいとのこと。
ある研究では、
- 自分が持ついろんなスキルや能力を幅広く生かすことができる
- 業務の内容がバラエティに富んでいる
という上記の2項目を満たす職場ほど幸福度が高くなるとのことです。また、様々なスキルや能力を生かせる職場で働いた場合は、仕事の満足度との相関係数は0.45であり、これは良い職場選びの7つの徳目の一つである「自由」と同じであるとのこと。
ですので、就職先を決める際に注意することとしては、一つの作業を行うのではなく、様々な業務を行って、様々なスキルが身につくチャンスがあるかどうかを調べましょう。具体的には、エンジニアであれば、プログラミングを行うだけでなく、採用活動や広報活動にも取り組むことができ、様々なスキルを身につけることができるかどうかを調べましょう。
実際に、私は複数のエンジニアインターンに行ったのですが、その中でもコーディングを行うだけでなく、実際に現場に行ってお客様の要件を聞く仕事をしたり、社内ブログに社員の困っていそうなことを書くといったように、様々な作業に取り組み、スキルを身につけた際、とても面白かったです。逆に、仕事がコーディングだけのインターンになると作業に退屈してしまう面があったり、コーディングが上手くいかなかったときに何も価値が無くなってしまうので、凹む要因になってしまいます。ですので、様々なスキルを生かせる職場を選ぶと良いと思いますし、逆に言えば就職前に様々なスキルを磨いておくと仕事場で生かせるスキルが増えて、多様な仕事を行うことにつながるので、結果的に幸福度が上がるかと思います。
仲間:組織内に助けてくれる友人はいるか?
職場に、困った時に助けてくれる友人がいることは大事です。なぜなら、職場に助けてくれる友人がいるだけで幸福度が高いからなんですよね。実際に、研究では以下のような結果がでました。
- 職場に3人以上の友達がいる人は人生の満足度が96%上がり、同時に自分の給料への満足度は2倍になる。
- 職場に最高の友人がいる場合は、仕事のモチベーションが7倍になり、作業のスピードが上がる。
ということで、職場内に友人がいる場合は、満足度やモチベーションに正の大きな影響があるとのことです。逆に、職場の中で悪い人間関係で働いたときは、健康リスクやストレスが高まりやすいとのこと。研究では以下のような結果がでました。
- 良い上司のもとで働く従業員に比べて心臓発作や脳卒中で死ぬリスクが60%高くなる。
- 嫌な同僚のせいで悪化したストレスは、例え会社を辞めても健康的なレベルに戻るまでに22か月かかる。
とのことです。ですので、上司や同僚との人間関係が悪い場合は、身体的にも精神的にも良くないとのことです。
まとめると、職場内の同僚との関係によって、仕事の満足度や精神的・体力的な影響が変わってくるとのこと。会社では、より良い人間関係を努めることが大切です。
また、上司が良いか、悪いかといったことは実際に企業で働いてみないと分からないものです。ここで、就職活動前に、より良い人間関係を作れるかどうかをチェックする指標として、自分と似た人間がいるかどうかを調べることがあげられます。なぜなら、人間は自分と類似する人を好みやすいからなんですよね。この自分と似た人を好きになる現象は心理学では「類似性効果」と呼ばれ、性格やファッション、考え方、出身の都道府県、使っている技術スタックなど、どんな要素でも自分と似ていれば好感度は高くなります。ですので、社内で仲のいい人を作れそうかどうかについて見極める際には、ホームページや実際に社員にあってみて以下をチェックすると良いでしょう。
- 自分と同じ服装をしている社員がいそうかどうか
- 会社のかかげている価値観は自分にマッチしているかどうか
- 自分と似た性格の人はいるかどうか
- 自分と似た趣味を持つ人はいるかどうか
実際に、私がインターンシップで行った企業では、趣味であるボルダリング、中学校から使ってきたRuby、出身地が同じなど、いろいろと自分と共通する社員が複数人いて、話が盛り上がり、仲良くさせてもらいました。そして、実際に仲の良い社員の方と仕事をすると満足度が高かったです。ですので、自分と共通する人がいそうかどうかで会社を選ぶと、結果的に人間関係も充実して、仕事の満足度を高めることができるかと思います。
貢献:どれだけ世の中の役に立つか?
人に役に立っていると実感できる仕事は幸福度が高いとのこと。
例えば、研究では以下の仕事の満足度が高かったとのこと。
- 聖職者
- 理学療法士
- 消防員
- 教育関係者
- 画家・彫刻家
上記の仕事の共通することとしては、
どれも他人への貢献が分かりやすいということです。
また、ある研究ではボランティア活動を行う人ほど、うつ病の発症率が低く、「他人への親切な行い」を一日5回6週間ほど行った被験者は幸福度が高かったとのこと。
職場探しにおいても、他人の役に立つと実感できるような仕事を見つけるようにしましょう。例えば、仕事選びでもエンドユーザやクライアントと直接関わる仕事(ITコンサルタント、営業)などは、幸福度を感じやすいでしょう。逆に、工場の単純作業や、コンピュータにひたすら向き合う仕事は幸福度が高まりにくいかもしれないです。
さて、上記では就職先選びにおける8つの徳目を見つけました。ここで重要なのが、8つの徳目において、一つの徳目に注目するのではなく、それぞれのバランスを考えて、仕事探しをすることが大事です。例えばいくら他人の役に立てる仕事(教育関係者)でも、決まった教材に従ってしか教えることができないといったように、仕事の内容に自由が無ければ、やりがいを感じられないでしょう。
Discussion