🗂

【OS】メモリ管理について

に公開

はじめに

コンピュータのメモリ管理は、OSが担う最も重要な役割の一つです。普段私たちが何気なく複数のアプリを同時に使えるのも、このメモリ管理の技術があってこそ実現できています。
本記事では、OSがどうやってメモリを管理しているのかについてまとめていきます。

メモリ管理の基本思想

OSのメモリ管理には、いくつかの重要な目的があります。
まず、限られた物理メモリをいかに効率的に活用するかという点。
そして、複数のプログラムが互いに干渉することなく安全に動作できる環境を提供すること。さらに、プログラム開発者がメモリの物理的な配置を気にせずに済むような抽象化レイヤーを提供することです。

初期のコンピュータシステムでは、メモリ管理は非常に単純でした。
実行するプログラムが一つだけで、そのプログラムがすべてのメモリを使用するという仕組みです。
しかし、現代のように複数のプログラムを同時に実行するマルチタスク環境では、もっと洗練された方法が必要になります。

仮想記憶の誕生

現代のOSが採用している中心的な技術が「仮想記憶」です。これは、物理メモリの制約を超えたアドレス空間をプログラムに提供する画期的な仕組みです。

仮想記憶では、各プログラムが自分専用の大きなメモリ空間を持っているかのように見せかけます。実際には、物理メモリとストレージ(ハードディスクやSSD)を組み合わせてこの幻想を作り出しています。プログラムがメモリにアクセスする際のアドレスは「仮想アドレス」と呼ばれ、OSとハードウェアが協力してこれを実際の物理アドレスに変換します。

この変換には「ページテーブル」というデータ構造が使われます。ページテーブルは、仮想アドレス空間と物理アドレス空間の対応表のようなものです。ただし、この変換処理を毎回行うとパフォーマンスが低下するため、最近使われた変換結果は「TLB」(Translation Lookaside Buffer)と呼ばれる特別なキャッシュメモリに保存されます。

ページングの巧妙な仕組み

仮想記憶を実現する主要な技術が「ページング」です。メモリを固定サイズの「ページ」という単位に分割し、このページ単位で管理します。一般的なページサイズは4KBですが、最近のシステムではより大きなページも使用されます。

物理メモリが不足すると、OSは使われていないページを選び出し、ストレージ上の「スワップ領域」に退避します。この操作を「スワップアウト」と呼びます。後でそのページが必要になった時には、再び物理メモリに読み込まれます(スワップイン)。

どのページを退避させるかは重要な判断です。OSは「LRU」(Least Recently Used)などのアルゴリズムを使って、最も使われていないページを選び出します。この判断を誤ると、頻繁にページの入れ替え(ページフォルト)が発生し、システム全体のパフォーマンスが低下してしまいます。この現象を「スラッシング」と呼びます。

メモリ保護の重要性

複数のプログラムが同時に動作する環境では、メモリの保護が不可欠です。あるプログラムのバグが他のプログラムやOS自体をクラッシュさせるようなことがあってはなりません。

OSは、各プロセスに独立した仮想アドレス空間を割り当てることで、プロセス間の隔離を実現しています。また、ページ単位で読み取り・書き込み・実行の権限を設定できるため、重要なOSのコードやデータをユーザープログラムから保護できます。

さらに、現代のプロセッサには「特権レベル」という概念があり、カーネルモードとユーザーモードを区別しています。これにより、通常のアプリケーションがOSの重要な機能にアクセスすることを防いでいます。

実際のOSでの実装例

Linuxカーネルでは、「Buddy System」と呼ばれるアルゴリズムで物理メモリの割り当てを管理しています。これは、メモリを2のべき乗サイズのブロックに分割し、必要に応じて結合したり分割したりする仕組みです。また、小さなメモリ割り当てには「Slab Allocator」が使われ、効率的なメモリ管理を実現しています。

Windowsでは、「Working Set」という概念で各プロセスが実際に使用しているページの集合を管理しています。また、「SuperFetch」という機能でユーザーの使用パターンを学習し、よく使うアプリケーションを事前にメモリに読み込むことで、起動時間を短縮しています。

まとめ

OSのメモリ管理は単なるリソースの割り当て以上のもので、システム全体の安全性、安定性、パフォーマンスを支える基盤技術です。物理メモリを仮想化することで、メモリの柔軟性が高まり、効率が改善します。こういった仕組みが私たちの見えないところで行われているのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考URL

https://45kaku.com/itpassport_text_45-01/
https://qiita.com/sasakiki/items/e0f21556f45f5b4376a9
https://elite-lane.com/operating-system/

Discussion