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【ネットワーク基礎】IPアドレスのクラスとCIDRを整理する

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はじめに

インターネット上でコンピュータ同士が通信するためには、IPアドレスという「住所」が欠かせません。
このIPアドレスは、かつては「クラス」という枠組みで管理されていましたが、インターネットの急速な拡大により、クラスフルアドレッシングには多くの問題が生じました。
その問題を解決するために登場したのが、CIDR(Classless Inter-Domain Routing)、つまりクラスレスアドレッシングです。

この記事では、クラスフルアドレッシングクラスレスアドレッシングの違いを、背景や課題も交えながらわかりやすく解説していきます。
この記事を読むことで、IPアドレス管理の歴史的な流れと現在主流のCIDRの仕組みを体系的に理解できるようになります。

なお、CIDRの書き方については別記事にまとめ、本記事では触れませんので、あらかじめご了承ください。

クラスフルアドレッシングとは

インターネット初期のIPアドレス管理では、「クラスフルアドレッシング」という方法が採用されていました。
これは、IPアドレスをクラスA、クラスB、クラスC、クラスD、クラスEという5つのクラスに分類し、あらかじめネットワーク部とホスト部の長さを固定する方法です。


https://tech.pjin.jp/blog/2021/09/29/ccna_019/ より画像引用

たとえば、クラスAは先頭ビットが0で始まり、ネットワーク部が8ビット、ホスト部が24ビットと決まっていました。
このように、クラスごとにビット数が固定されていたため、設計が単純でわかりやすいという利点がありました。

それぞれのクラスには用途があり、クラスAは大規模な組織向け、クラスBは中規模な組織向け、クラスCは小規模な組織向けに設計されていました。
なお、クラスDはマルチキャスト用、クラスEは将来のために予約されているアドレス帯であり、一般的な通信には使われませんでした。

しかしこの方式にはIPアドレスが硬直的に割り当てられるため、アドレスの無駄遣いが発生するという大きな課題がありました。
例えば、クラスBのアドレスを割り当てられた組織が、実際には数百台しかホストを必要としない場合でも、65,534個ものホストアドレスを持て余すという問題が生じたのです。
こうしてIPアドレスの無駄遣いが深刻になり、インターネットの急速な拡大に伴って、早々に限界が見え始めました。

クラスレスアドレッシング(CIDR)とは

この問題を解決するために登場したのが、クラスレスアドレッシングです。
正式にはCIDR(Classless Inter-Domain Routing)と呼ばれ、1993年ごろから本格的に採用され始めました。

クラスレスアドレッシングでは、従来のクラス分けを廃止し、ネットワーク部とホスト部の境界を任意のビット数で自由に設定できるようにしました。
これにより、必要に応じてネットワークを細分化したり、大きなネットワークを作成したりすることができるようになり、ネットワークの規模に応じたきめ細かいアドレス設計が可能になり、無駄のないIPアドレス運用ができるようになりました。


http://envader.plus/article/52 より

CIDRでは、IPアドレスとともにプレフィックス長を指定します。
たとえば、「192.168.1.0/24」という表記は、「IPアドレス192.168.1.0で、最初の24ビットがネットワーク部」という意味になります。
これにより、クラスA/B/Cに縛られることなく、必要に応じて柔軟にアドレスを割り当てることができます。

さらに、CIDRはルーティングの効率化にも貢献しました。
複数のネットワークをまとめて1つの経路情報として扱う経路集約(サマライゼーション)が可能になり、ルーティングテーブルの規模を小さく保てるようになったのです。

クラスフルアドレッシングとクラスレスアドレッシングの比較

クラスフルアドレッシングではネットワーク部の長さがクラスによって固定されていたため、柔軟なアドレス設計ができず、アドレス空間の無駄が目立ちました。
一方、クラスレスアドレッシングでは、ネットワーク部の長さを柔軟に調整できるため、アドレスを必要なだけ細かく割り当てられるようになりました。

また、クラスレスアドレッシングは、ルーティングの効率化にも大きな効果を発揮しました。
クラスフルの時代ではルート情報が増える一方だったのに対し、CIDRの導入により、より少ないルート情報で広範囲のネットワークを管理できるようになったのです。

現代のインターネットでは、すでにクラスフルアドレッシングは使われておらず、すべてCIDRに基づいてIPアドレスが管理されています。

まとめ

インターネット初期のネットワーク管理にはクラスフルアドレッシングが有効でしたが、インターネットの普及とともに限界を迎えました。
その問題を解決したのがクラスレスアドレッシング、CIDRです。CIDRにより、IPアドレスの効率的な利用と、柔軟なネットワーク設計、ルーティングの最適化が実現されました。
今回の記事が理解の助けになれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考・画像引用元URL

http://envader.plus/article/52
https://envader.plus/article/51
https://tech.pjin.jp/blog/2021/09/29/ccna_019/
https://ntorelabo.com/ipアドレス/
https://zenn.dev/mabo23/articles/6c51d5c1d2d1f6

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