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【OS】ファイルシステムについて

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はじめに

現代のオペレーティングシステムにおいて、ファイルシステムはデータの永続的な保存と管理を担う重要なコンポーネントです。ファイルシステムがなければ、ハードディスクやSSD上のデータは単なるビットの集合に過ぎず、効率的なアクセスや管理が不可能になります。
本記事では、ファイルシステムの基本的な概念から構造まで、わかりやすく解説していきます。

ファイルシステムの基本概念と役割

ファイルシステムは、物理的なストレージデバイス上に論理的な構造を提供するソフトウェア層です。
その主な目的は、ユーザーやアプリケーションがデータを簡単に扱えるように抽象化することにあります。具体的には、データを「ファイル」という単位で整理し、さらに「ディレクトリ」という階層構造で管理します。これにより、ユーザーは物理的なストレージの詳細(どのブロックにデータが保存されているかなど)を気にせずに、直感的なパス名でファイルにアクセスできます。

ファイルシステムは単にファイルを保存するだけでなく、アクセス制御、データ保護、効率的な領域管理など、多くの機能を提供します。
例えば、複数のユーザーが同じシステムを利用する場合、ファイルごとにアクセス権限を設定することでセキュリティを維持します。
また、大容量ファイルを効率的に扱うため、ファイルを小さなブロックに分割して管理する技術もファイルシステムの重要な役割です。

ファイルシステムの階層構造と主要コンポーネント

ファイルシステムの内部構造は、いくつかの論理的な層に分けて考えることができます。
最上位にはユーザーインターフェースがあり、ファイル操作のためのシステムコール(open、read、write、closeなど)を提供します。
その下には仮想ファイルシステム(VFS)層があり、異なるファイルシステムタイプを抽象化して統一的なインターフェースを提供します。この抽象化により、アプリケーションはext4、NTFS、FAT32などの具体的なファイルシステムの違いを意識せずに操作できます。


https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1009/01/news108.html より

VFSの下には具体的なファイルシステム実装があり、データの編成方法やメタデータの管理方法など、ファイルシステムごとに固有のアルゴリズムが実装されています。
最も低レベルでは、デバイスドライバが実際のストレージデバイスとの通信を担当します。

この階層化アーキテクチャにより、新しいファイルシステムタイプの追加やストレージ技術の進化に対応できる柔軟性が得られます。

ファイルシステムの主要なデータ構造

ファイルシステム内部では、いくつかの重要なデータ構造が協調して動作しています。
inode(インデックスノード)はUNIX系ファイルシステムの核心となる概念で、ファイルのメタデータ(所有者、アクセス権、サイズ、データブロックの位置など)を格納します。
inodeはファイルシステム内で一意の番号で識別され、ディレクトリエントリは実際にはファイル名とinode番号のマッピングに過ぎません。

ディレクトリ自体も特別な種類のファイルとして扱われ、ファイル名とinode番号の対応表を保持しています。この設計により、同じファイルに複数の名前(ハードリンク)を付けられる柔軟性が生まれます。また、ファイルシステム全体の情報を管理するスーパーブロックは、ブロックサイズ、空き領域情報、inodeテーブルの位置など、ファイルシステムのグローバルな状態を保持します。

ストレージ管理と領域割り当て技術

ファイルシステムの重要な役割の一つは、限られたストレージ空間を効率的に管理することです。
このため、ファイルシステムはストレージデバイスを固定サイズのブロック(通常512バイト~4KB)に分割し、ファイルごとに必要なブロックを割り当てます。大きなファイルは複数のブロックに分散して保存され、小さなファイルは1ブロックを共有することもあります。

ブロック割り当て方法にはいくつかの戦略があります。連続割り当てはファイルの全ブロックを連続した領域に配置する単純な方法ですが、断片化が発生しやすい問題があります。
リンク割り当ては各ブロックに次のブロックへのポインタを含める方法で、断片化を防げますがランダムアクセスが苦手です。
インデックス割り当ては専用のインデックスブロックを使用し、現代のファイルシステムで広く採用されているバランスの取れたアプローチです。

空き領域管理には、ビットマップやリンクリストなどの技術が使われます。ビットマップは各ブロックの使用状況を1ビットで表すコンパクトな方法で、空きブロックの検索が効率的に行なえます。
一方、リンクリストは空きブロック同士をポインタでつなぐ方法で、大容量ストレージでのスケーラビリティに優れています。

ジャーナリングとデータ整合性の維持

システムクラッシュや電源障害が発生した場合、ファイルシステムの整合性を保証することは極めて重要です。伝統的なファイルシステムでは、メタデータ更新中のクラッシュによりファイルシステム全体が破損する危険性がありました。この問題を解決するために開発されたのがジャーナリングファイルシステムです。


https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/0307/29/news002.html より

ジャーナリング機構は、実際のメタデータ変更前に、変更内容を「ジャーナル」と呼ばれる特別な領域に記録します。変更が完了するとジャーナルエントリを削除し、途中でクラッシュした場合はジャーナルを参照して作業を完了またはロールバックします。
これにより、ファイルシステムは常に整合性の取れた状態に保たれます。ext3/ext4の「orderedモード」や「journalモード」、NTFSのジャーナリング機構など、実装の詳細はファイルシステムによって異なりますが、基本的なコンセプトは共通しています。

まとめ

ファイルシステムはオペレーティングシステムの根幹を成す技術であり、単なるデータ保存の枠を超えて、現代コンピューティングの基盤として進化し続けています。物理ストレージの特性を抽象化し、ユーザーに直感的なデータ管理インターフェースを提供するという本来の役割に加え、データ整合性の保証、パフォーマンス最適化、セキュリティ強化など、多岐にわたる機能を包含するようになりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考・画像引用元URL

https://milestone-of-se.nesuke.com/sv-basic/architecture/os-and-filesystem/
https://itmanabi.com/filesystem/
https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/0305/20/news002_2.html
http://lpi.or.jp/lpic_all/linux/intro/intro10.shtml
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1009/01/news108.html
https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/0307/29/news002.html

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