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GitHub Actionsを用いた機械学習モデルのシステムアップデート時の注意点

2025/03/06に公開

1. 環境の再現性を確保する

機械学習モデルのトレーニング環境や推論環境の違いによって、再現性の問題が発生する可能性がある。

対策:

  • requirements.txtpoetry.lock でパッケージバージョンを固定。
  • Dockerコンテナを利用し、環境依存を排除。
  • Pythonのバージョンも固定 (actions/setup-python で指定)。
- uses: actions/setup-python@v4
  with:
    python-version: '3.9'

2. モデルのバージョン管理

GitHub Actionsで自動更新を行う場合、誤って古いモデルや不完全なモデルを上書きしないように注意。

対策:

  • モデルのバージョンを model-YYYYMMDD.pth のように管理。
  • バージョン管理ツール (DVC, MLflow) を導入。
  • モデルのハッシュ値を記録し、変更検知を行う。
- name: モデルのバージョン確認
  run: |
    md5sum models/latest_model.pth > model_checksum.txt
    git diff --exit-code model_checksum.txt || echo "モデルが更新されました"

3. 大規模データの扱い(学習データ・モデル)

GitHubのリポジトリには 100MB以上のファイルを直接アップロードできない 制限があるため、モデルやデータの管理に注意が必要。

対策:

  • モデルは GitHub の LFS (Large File Storage)Amazon S3, Google Cloud Storage に保存。
  • DVC (Data Version Control) を利用し、大規模データの管理を行う。
  • GitHub Secrets にクラウドストレージの認証情報を設定。
- name: S3 に最新モデルをアップロード
  run: aws s3 cp models/latest_model.pth s3://my-bucket/models/
  env:
    AWS_ACCESS_KEY_ID: ${{ secrets.AWS_ACCESS_KEY_ID }}
    AWS_SECRET_ACCESS_KEY: ${{ secrets.AWS_SECRET_ACCESS_KEY }}

4. トレーニングの実行・管理

GitHub Actions の実行時間制限(2,000分/月の無料枠)を考慮し、長時間の学習処理は適切に管理する 必要がある。

対策:

  • 学習は GitHub Actions ではなく クラウド環境(SageMaker, Vertex AI, Azure ML) で行う。
  • self-hosted runner を設定し、学習用のGPUサーバーをGitHub Actionsのランナーとして利用。
  • チェックポイントを保存し、途中から再開できるようにする。
- name: AWS SageMaker でトレーニング開始
  run: aws sagemaker create-training-job --training-job-name my-training-job

5. モデルのデプロイ戦略

デプロイ時に旧バージョンのモデルが 即座に上書きされると、障害時のロールバックが困難 になる。

対策:

  • ブルーグリーンデプロイメント を採用し、段階的にモデルを切り替える。
  • A/Bテストを行い、新モデルの精度を検証してから適用。
  • 自動デプロイ前に pytestgreat_expectations を用いたモデル精度チェックを実施。
- name: モデル精度チェック
  run: python test_model.py

6. CI/CD のテスト・バリデーション

新しいモデルやコードが追加された際、デグレード(精度低下)が発生しないように 事前テストを行う。

対策:

  • pytest でユニットテストと精度テストを実施。
  • 事前に 過去のデータセットでモデルを評価 し、一定のスコアを満たした場合のみデプロイ。
  • GitHub Actions Matrix を活用し、複数のデータセットでテストを実施。
- name: 過去データでの精度テスト
  run: pytest tests/test_model_accuracy.py

7. モデルの監視とロギング

新しいモデルをデプロイ後、推論精度やレスポンス速度を監視 する仕組みを導入。

対策:

  • Prometheus + Grafana でリアルタイム監視。
  • API の推論結果を ELK スタック (Elasticsearch + Logstash + Kibana) に保存。
  • モデルの推論結果をロギングし、異常値を検出。
- name: API の推論ログを保存
  run: |
    curl -X POST "http://my-api.com/predict" -d '{"input": "テスト"}'
    >> logs/predictions.log

まとめ

項目 注意点 対策
環境の再現性 ランタイムの違いで動作不良 Docker化, Pythonバージョン固定
モデルのバージョン管理 古いモデルが上書きされるリスク DVC, バージョンタグ管理
大規模データの扱い GitHubのサイズ制限 S3, DVC, LFSを活用
トレーニング管理 実行時間制限 クラウド環境で学習, Self-hosted runner
デプロイの安全性 モデルが即適用されてしまう ブルーグリーンデプロイ, A/Bテスト
CI/CD テスト 精度劣化のリスク pytest, 過去データで評価
監視とロギング 精度低下を即時検知できない Prometheus, ELKで監視

GitHub Actions を活用しながらも、クラウドリソースの活用・テスト戦略・モデル管理 を適切に設計することで、安全かつ効率的に機械学習モデルを運用できます。

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