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GitHub Actionsを用いた機械学習モデルのシステムアップデート時の注意点
1. 環境の再現性を確保する
機械学習モデルのトレーニング環境や推論環境の違いによって、再現性の問題が発生する可能性がある。
✅ 対策:
-
requirements.txt
やpoetry.lock
でパッケージバージョンを固定。 - Dockerコンテナを利用し、環境依存を排除。
- Pythonのバージョンも固定 (
actions/setup-python
で指定)。
- uses: actions/setup-python@v4
with:
python-version: '3.9'
2. モデルのバージョン管理
GitHub Actionsで自動更新を行う場合、誤って古いモデルや不完全なモデルを上書きしないように注意。
✅ 対策:
- モデルのバージョンを
model-YYYYMMDD.pth
のように管理。 - バージョン管理ツール (
DVC
,MLflow
) を導入。 - モデルのハッシュ値を記録し、変更検知を行う。
- name: モデルのバージョン確認
run: |
md5sum models/latest_model.pth > model_checksum.txt
git diff --exit-code model_checksum.txt || echo "モデルが更新されました"
3. 大規模データの扱い(学習データ・モデル)
GitHubのリポジトリには 100MB以上のファイルを直接アップロードできない 制限があるため、モデルやデータの管理に注意が必要。
✅ 対策:
- モデルは GitHub の
LFS (Large File Storage)
やAmazon S3, Google Cloud Storage
に保存。 -
DVC (Data Version Control)
を利用し、大規模データの管理を行う。 - GitHub Secrets にクラウドストレージの認証情報を設定。
- name: S3 に最新モデルをアップロード
run: aws s3 cp models/latest_model.pth s3://my-bucket/models/
env:
AWS_ACCESS_KEY_ID: ${{ secrets.AWS_ACCESS_KEY_ID }}
AWS_SECRET_ACCESS_KEY: ${{ secrets.AWS_SECRET_ACCESS_KEY }}
4. トレーニングの実行・管理
GitHub Actions の実行時間制限(2,000分/月の無料枠)を考慮し、長時間の学習処理は適切に管理する 必要がある。
✅ 対策:
- 学習は GitHub Actions ではなく クラウド環境(SageMaker, Vertex AI, Azure ML) で行う。
-
self-hosted runner
を設定し、学習用のGPUサーバーをGitHub Actionsのランナーとして利用。 - チェックポイントを保存し、途中から再開できるようにする。
- name: AWS SageMaker でトレーニング開始
run: aws sagemaker create-training-job --training-job-name my-training-job
5. モデルのデプロイ戦略
デプロイ時に旧バージョンのモデルが 即座に上書きされると、障害時のロールバックが困難 になる。
✅ 対策:
- ブルーグリーンデプロイメント を採用し、段階的にモデルを切り替える。
- A/Bテストを行い、新モデルの精度を検証してから適用。
- 自動デプロイ前に
pytest
やgreat_expectations
を用いたモデル精度チェックを実施。
- name: モデル精度チェック
run: python test_model.py
6. CI/CD のテスト・バリデーション
新しいモデルやコードが追加された際、デグレード(精度低下)が発生しないように 事前テストを行う。
✅ 対策:
-
pytest
でユニットテストと精度テストを実施。 - 事前に 過去のデータセットでモデルを評価 し、一定のスコアを満たした場合のみデプロイ。
-
GitHub Actions Matrix
を活用し、複数のデータセットでテストを実施。
- name: 過去データでの精度テスト
run: pytest tests/test_model_accuracy.py
7. モデルの監視とロギング
新しいモデルをデプロイ後、推論精度やレスポンス速度を監視 する仕組みを導入。
✅ 対策:
-
Prometheus + Grafana
でリアルタイム監視。 - API の推論結果を ELK スタック (Elasticsearch + Logstash + Kibana) に保存。
- モデルの推論結果をロギングし、異常値を検出。
- name: API の推論ログを保存
run: |
curl -X POST "http://my-api.com/predict" -d '{"input": "テスト"}'
>> logs/predictions.log
まとめ
項目 | 注意点 | 対策 |
---|---|---|
環境の再現性 | ランタイムの違いで動作不良 | Docker化, Pythonバージョン固定 |
モデルのバージョン管理 | 古いモデルが上書きされるリスク | DVC, バージョンタグ管理 |
大規模データの扱い | GitHubのサイズ制限 | S3, DVC, LFSを活用 |
トレーニング管理 | 実行時間制限 | クラウド環境で学習, Self-hosted runner |
デプロイの安全性 | モデルが即適用されてしまう | ブルーグリーンデプロイ, A/Bテスト |
CI/CD テスト | 精度劣化のリスク | pytest, 過去データで評価 |
監視とロギング | 精度低下を即時検知できない | Prometheus, ELKで監視 |
GitHub Actions を活用しながらも、クラウドリソースの活用・テスト戦略・モデル管理 を適切に設計することで、安全かつ効率的に機械学習モデルを運用できます。
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