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BERTとGPTの構造的な違い

2025/03/10に公開

近年の自然言語処理(NLP)の分野では、Transformerアーキテクチャをベースとした大規模言語モデル(LLM)が主流となっています。その中でも、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)とGPT(Generative Pre-trained Transformer)は、それぞれ異なる用途で広く使用されています。本記事では、BERTとGPTの構造的な違いについて詳しく解説します。


1. Transformerの基本構造

Transformerは、自己注意機構(Self-Attention)を用いたニューラルネットワークであり、エンコーダ(Encoder)とデコーダ(Decoder)の2つの部分で構成されます。

  • エンコーダ(Encoder):入力されたトークン列全体を並列処理し、文脈情報を学習する。
  • デコーダ(Decoder):エンコーダの出力または自身の前のトークンの情報を利用しながら、次のトークンを生成する。

Transformerの代表的な構造を持つモデルがBERTとGPTですが、これらはエンコーダとデコーダのどちらを利用するかに大きな違いがあります。


2. BERTの構造と特徴

BERTは、Transformerのエンコーダのみを利用するモデルであり、双方向(Bidirectional)に文脈を捉えることができるのが特徴です。

2.1 BERTのアーキテクチャ

  • エンコーダのみを使用(Decoderは存在しない)。
  • 双方向(Bidirectional)アーキテクチャを採用。
  • **マスク付き言語モデル(Masked Language Model, MLM)次文予測(Next Sentence Prediction, NSP)**を事前学習の目的関数として使用。
  • 入力全体を一度に処理するため、文全体の情報を考慮した特徴表現を学習できる。

2.2 BERTの学習手法

BERTは以下の2つのタスクで事前学習されます。

  1. マスク付き言語モデル(MLM)

    • 入力文の一部のトークン(単語)をマスク([MASK])し、そのマスクされた単語を予測する。
    • これにより、前後の文脈を考慮しながら単語を推測する能力を学習。
  2. 次文予測(NSP)

    • 2つの文が与えられたとき、それらが実際に連続した文であるかどうかを判定する。
    • 文の関係性を学習することで、長いテキストにおける理解を向上させる。

2.3 BERTの用途

BERTは、文の理解を目的としたタスクに適しています。

  • 自然言語理解(NLU)
  • 質問応答(Question Answering, QA)
  • 文書分類(Text Classification)
  • 命名エンティティ認識(Named Entity Recognition, NER)

BERTは、文全体を一度に処理し、双方向の文脈を考慮できるため、高精度な理解が可能です。


3. GPTの構造と特徴

GPTは、Transformerのデコーダのみを利用するモデルであり、一方向(Unidirectional)に文脈を捉えながらテキストを生成するのが特徴です。

3.1 GPTのアーキテクチャ

  • デコーダのみを使用(Encoderは存在しない)。
  • 単方向(Unidirectional)アーキテクチャを採用。
  • **自己回帰モデル(Autoregressive Model)**として学習し、次の単語を予測する。
  • **因果マスク(Causal Masking)**を使用して、未来のトークンを見えなくする。

3.2 GPTの学習手法

GPTは、自己回帰(Autoregressive)による**言語モデル(Causal Language Model, CLM)**を学習します。

  1. 自己回帰言語モデル(CLM)
    • 入力として過去の単語列を受け取り、次に来る単語を予測する。
    • 未来の単語は見えないようにするため、因果マスク(Causal Mask)を適用。
    • 言語生成に最適なトレーニング手法。

3.3 GPTの用途

GPTは、テキスト生成を目的としたタスクに適しています。

  • 文章生成(Text Generation)
  • チャットボット(Chatbot)
  • 対話システム(Conversational AI)
  • コード生成(Code Generation)

GPTは、過去の文脈をもとに一つずつ単語を予測していくため、長文生成やストーリー作成に適しています。


4. BERTとGPTの比較

モデル アーキテクチャ 学習手法 文脈の捉え方 主な用途
BERT Encoder-only MLM, NSP 双方向(Bidirectional) 文の理解、質問応答、分類
GPT Decoder-only CLM 単方向(Unidirectional) 文章生成、チャットボット、対話AI

4.1 主な違い

  1. アーキテクチャの違い

    • BERTはエンコーダのみ、GPTはデコーダのみ。
    • BERTは双方向、GPTは単方向。
  2. 学習方法の違い

    • BERTはMLM(マスクされた単語の予測)、GPTはCLM(次の単語の予測)。
    • BERTは静的な表現学習、GPTは動的な文章生成。
  3. 用途の違い

    • BERTは文の理解が得意。
    • GPTはテキストの生成が得意。

5. まとめ

BERTとGPTはどちらもTransformerを基盤としていますが、

  • BERTはエンコーダのみを使用し、双方向に文脈を理解するため、自然言語理解(NLU)に適している。
  • GPTはデコーダのみを使用し、単方向にテキストを生成するため、自然言語生成(NLG)に適している。

これらのモデルを適切に使い分けることで、NLPタスクにおいて高精度な成果を得ることができます。

以上、BERTとGPTの構造的な違いについての解説でした!

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