面接で語れる:ECサイトでマイクロサービス基盤を担当していた時の実務と挑戦
転職面接で「ECサイトでインフラ/プラットフォーム/マイクロサービスの仕事をしていた」と話すときに、説得力を持って具体的に語れるように作ったブログ記事(テンプレート)です。
以下は「面接で語るストーリー」「直面したチャレンジ」「具体的に取ったアクション」「得られた成果」を含め、聞き手がイメージしやすい形にまとめています。実際にやったことに合わせて数値や固有のツール名を差し替えて使ってください。
イントロ(話し出しの例)
「私はECサイトのプラットフォームチームに所属し、KubernetesクラスターとTerraformを中心に、RailsやGoなど多言語混在のマイクロサービスの運用・移行を担当していました。特に、モノリスからの段階的な分離と、クロスサービスのデータ整合性、可観測性の向上に注力しました。」
この冒頭で、役割(Platform / SRE / Backend Lead等)、担当範囲(クラウド、K8s、CI/CD、DB移行など)、貢献領域を簡潔に伝えます。
背景・状況(Situation)
- プロダクト特性:EC型サービス(大量の画像、検索、レコメンド、広告など高負荷領域が混在)
- 既存構成:Railsを中心としたモノリシックアプリが存在し、多くの機能が同一DB・同一デプロイ単位で動いていた
- 目標:可用性と開発スピードを両立させるため、段階的にマイクロサービス化を進め、Kubernetes上での運用基盤を整備する
直面した主なチャレンジ(一覧)
- モノリス分割に伴うデータ所有権の整理(誰がどのテーブルを責任持つか)
- DBスキーマ変更とオンラインマイグレーションの安全な実行
- マルチランゲージ環境での通信・遅延・エラー対処(Rails⇄GoのRPC/HTTP連携)
- サービス間の可観測性不足(ログ/メトリクス/トレースの分散)
- デプロイ戦略とリリースの複雑化(DB移行を含むローリング/カナリア)
- 運用コストとクラスタ肥大化(コスト管理/ガバナンス)
- インシデント対応とナレッジの散逸(オンコール負荷、属人化)
- データ整合性とユーザー体験の担保(キャッシュ不整合や遅延表示)
各チャレンジに対する実践(Task → Action → Result)
以下は面接で語ると効果的な“短いストーリー(STAR)”です。立場や担当範囲に合わせて主語を調整してください。
1) データ所有権の整理
-
Task(課題): モノリスから機能を切り出す際、どのサービスがどのデータを『正』として保持するかが未整理で、サービス間での書き込み競合や責任の不明確さが発生していた。
-
Action(対応): ドメイン駆動設計(DDD)の観点でドメイン境界をワークショップ形式で定義。各サービスの「データオーナーシップ(canonical source)」を明文化し、API契約(OpenAPI)とイベント契約(Kafka topic schema)を定義した。
- 具体的には「Userはuser-serviceが唯一の真(source of truth)」「Productのメタ情報はproduct-serviceが持ち、ユーザー表示情報はuser-serviceのAPI呼び出しで補完する」等。
- 契約違反を防ぐため、CIでOpenAPIとスキーマ検証を導入した。
-
Result(成果): サービス間の責任が明確になり、クロスサービスのバグが半分以下に削減。新サービスのオンボーディングがスムーズになり、チームの独立性が向上した。
2) DBスキーマ変更/オンラインマイグレーション
- Task: 本番DBのスキーマ変更でダウンタイムを避けつつ、安全にカラム追加やリネーム、データ移行を行う必要があった。
- Action: ①後方互換なスキーマ変更(カラム追加)、②アプリ側で新旧フィールドを一時的に両対応、③CDC(Change Data Capture、例: Debezium)でデータを新DBへ逐次転送、④最終フェーズで切り替え、⑤旧スキーマのクリーンアップという手順を採用した。
- Result: サービス停止なしでスキーマ移行を完了し、ユーザー影響はゼロ。移行作業の標準化により、以後の変更が安全に実行できるようになった。
3) 言語が異なるサービス間の通信と遅延対策
-
Task: Railsで実装されたフロント系がGo実装の重い処理を呼ぶとき、レイテンシやエラー伝播でユーザー体験が悪化していた。
-
Action:
- gRPCを導入してプロトコルを統一し、IDLで型の整合性を確保
- タイムアウト、リトライ、サーキットブレーカーをライブラリレベルで標準化(例: Envoy + circuit breakerパターン)
- 非同期化できる処理はキュー(Kafka)経由に変更して、ユーザー同期パスを軽くした
-
Result: 平均APIレイテンシのp95が低下し、エラーの波及が抑えられた。開発者は言語の違いを意識せずに、安全に相互通信できるようになった。
4) 可観測性の改善(ログ・メトリクス・トレース)
-
Task: 分散システムで障害の原因を突き止めるのに時間がかかっていた。
-
Action:
- 分散トレーシング(Jaeger/Zipkin)を導入し、リクエストの全経路を可視化
- 共通のログフォーマット(JSON)と構造化ログ、中央集約ログ基盤(ELK/Fluentd)を整備
- PrometheusとGrafanaでサービス単位・API単位のSLO監視を導入し、アラートをSLOに基づくものにした
-
Result: Mean time to detect(MTTD)とMean time to recover(MTTR)が共に改善。インシデント後の調査時間が短縮され、サービスの信頼性が向上した。
5) デプロイ戦略の整備(DBを含むリリース)
-
Task: DBスキーマ変更を伴う機能リリースがリスクを伴っていた。
-
Action:
- Feature Flagで段階ロールアウトを行い、Canary/Blue-Greenリリースを組み合わせた
- データ書き込み側を先にデプロイして互換性を確保し、段階的に読み取り側を差し替える
- ArgoCD(GitOps)でマニフェストを管理し、Terraformはインフラ変更のみを担当
-
Result: リリース失敗時のロールバックが容易になり、リリースによる障害が大幅に減少した。
6) コストとクラスタのガバナンス
-
Task: 開発チームが独自にクラスターや大きなリソースを作ることでコストが肥大化していた。
-
Action:
- Terraformモジュールを作成し、標準的なクラスタ・ネットワーク構成を提供
- ポリシー(ラベル付け、命名規約、リソースクォータ)をCIで検証
- コスト可視化ツールを導入し、チームごとの利用状況をダッシュボード化
-
Result: 無秩序なリソース作成が止まり、クラウドコストの無駄削減につながった。
7) インシデント対応とナレッジ共有
-
Task: インシデント発生時の対応が属人化しており、復旧手順が曖昧だった。
-
Action:
- Runbook(復旧手順書)を整備し、Playbookに沿ったオンコール訓練を実施
- 全てのインシデントはBlamelessでポストモーテムを実施し、原因と対策を
Discussion