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LLMとRAGの実践:コードで学ぶプロ向けガイド

2025/02/28に公開

1. はじめに

大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)は、自然言語処理(NLP)の分野で革命を起こしています。しかし、LLM単体では最新の情報を参照できない、ファクトチェックが困難などの課題があります。そこで登場するのが RAG(Retrieval-Augmented Generation) です。

本記事では、LLMとRAGの仕組みを解説し、実際のコードを用いた実装例を紹介 します。特に、エンジニアやデータサイエンティスト向けに、RAGのメリットを最大限に活かす方法を深掘りします。


2. LLMとRAGの基本概念

2.1. LLMとは?

LLMは、大量のテキストデータを学習し、自然言語の理解・生成を行うモデルです。代表的なLLMには以下のようなものがあります。

  • OpenAI GPTシリーズ(GPT-4, GPT-3.5)
  • MetaのLlamaシリーズ(Llama 2)
  • Google Gemini

2.2. RAGとは?

RAGは、検索エンジンのように外部データソースから情報を取得し、その結果をLLMのプロンプトに組み込んで、より正確な回答を生成する手法です。

RAGのメリット

  • 最新情報を活用できる(LLMの固定知識に依存しない)
  • ハルシネーションの軽減(より正確な情報を参照可能)
  • ドメイン特化が可能(カスタムデータの活用)

3. RAGの実装:Pythonで試す

ここでは、FAISS(Facebook AI Similarity Search)を用いたRAGの基本的な実装 を紹介します。

3.1. 環境構築

まず、必要なライブラリをインストールします。

pip install transformers faiss-cpu langchain sentence-transformers

3.2. データの準備

まず、検索対象となるドキュメントを用意し、埋め込みベクトルを生成します。

from langchain.embeddings import HuggingFaceEmbeddings
from langchain.vectorstores import FAISS
from langchain.document_loaders import TextLoader
from langchain.text_splitter import RecursiveCharacterTextSplitter

# テキストデータの読み込み
documents = [
    "RAGはLLMの弱点を補うための技術です。",
    "RAGは検索と生成を組み合わせた手法です。",
    "FAISSは高速な類似検索を実現するライブラリです。"
]

# テキストの埋め込みを作成
embeddings = HuggingFaceEmbeddings(model_name="sentence-transformers/all-MiniLM-L6-v2")
vector_store = FAISS.from_texts(documents, embeddings)

3.3. 検索と回答生成

ユーザーのクエリに対して、関連する情報を検索し、それをLLMのプロンプトに組み込んで回答を生成します。

from langchain.llms import OpenAI
from langchain.chains import RetrievalQA

# LLMの設定
llm = OpenAI(model_name="text-davinci-003")

# 検索チェーンの設定
qa_chain = RetrievalQA.from_chain_type(llm, retriever=vector_store.as_retriever())

# クエリの実行
query = "RAGとは何ですか?"
response = qa_chain.run(query)
print(response)

3.4. 結果の解釈

RAGを使うことで、LLMが事前に学習していない情報でも、外部データから正確な回答を生成できることが確認できます。


4. 応用編:高度なRAGの構築

4.1. カスタムデータの取り込み

独自のドメインデータをRAGに活用するには、企業の内部文書や特定のデータセットをベクトルストアに組み込むと良いでしょう。

loader = TextLoader("custom_data.txt")
docs = loader.load()
text_splitter = RecursiveCharacterTextSplitter(chunk_size=500, chunk_overlap=50)
split_docs = text_splitter.split_documents(docs)

# ベクトルストアの更新
vector_store.add_documents(split_docs)

4.2. Hybrid Searchの導入

ベクトル検索とキーワード検索を組み合わせることで、検索精度を向上させることができます。

from langchain.vectorstores import Chroma

chroma_store = Chroma.from_documents(docs, embeddings)
hybrid_retriever = chroma_store.as_retriever()

4.3. エッジデバイス向けの最適化

小型LLM(DistilGPT、Phi-2)を利用することで、エッジデバイス上でRAGを実装することも可能です。

llm = OpenAI(model_name="gpt-3.5-turbo")

5. まとめ

本記事では、LLMとRAGの基本概念から、実際のコードを用いた実装方法まで を詳しく解説しました。RAGを活用することで、LLMの制約を克服し、より実用的なシステムを構築できます。

今後の展望

  • RAG + 再学習技術の融合
  • スケーラブルなRAGシステムの設計
  • 生成AIの倫理的課題への対応

LLMの活用を考えている方は、ぜひRAGを組み合わせた高度な情報検索システムの構築に挑戦してみてください!

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