FPGAエンジニアの上振れ転職記
目次
はじめに
転職活動を経て無事に内定を得たため、備忘録として活動記録を残します。
著者のプロフィール:
- 年齢: 27歳(2025年7月時点)
- 性別: 男
- 学歴: 国立大学大学院 修士課程修了(機電系)
- 研究内容: FPGAを用いたデジタル回路設計
- 職歴: 中小電子機器メーカーにて回路設計職に3年間従事
転職結果
戦績
- 応募: 6社
- 書類通過: 3社 (50%)
- 一次面接通過: 3社 (100%)
- 内定: 2社 (67%)
- (最終面接辞退: 1社)
転職前
- 勤務先: 中小企業
- 職種: 回路設計職
- 年収: 約500万円
- 月間残業時間: 平均52時間
転職後
- 勤務先: 大手企業(半導体業界)
- 職種: 回路設計職
- 年収: 約700万円(業績連動賞与込み)
- 月間残業時間: 平均20時間
タイムライン
| 日時 | イベント |
|---|---|
| 2024年夏 | 転職を決意 |
| 2025年5月中旬 | ビズリーチ登録 |
| 2025年5月下旬 | エージェントと面談開始 |
| 2025年5月下旬~6月上旬 | 書類作成と応募 |
| 2025年6月中旬 | 書類通過~一次面接 |
| 2025年6月下旬 | 一次面接通過~最終面接 |
| 2025年6月下旬~7月上旬 | 最終面接通過~オファー面談 |
| 2025年7月上旬 | 内定承諾 |
タイムライン詳細
2024年夏-転職を決意
現職は業界柄、FPGAの仕事がほとんどなく、自分の研究経験を活用できないことに不満を抱えていました。
また、将来的に結婚や子どもを持つことを考えると中小企業は収入や働き方の面が厳しく、大手に行きたいと思う気持ちがだんだん強くなっていました。
そんな中、2024年の春から夏にかけて働き方に対する価値観のミスマッチを強く感じる出来事があり、転職を決意しました。
すぐ辞める選択肢もありましたが、以下の理由から、退職時期を翌年夏に設定し、転職活動の開始も4~5月にずらすことにしました。
- 年収は1月~12月で算定されるため、1月まで勤めれば膨大な残業代で年収をブーストでき、転職時の年収交渉で有利になります。
- 更に4月まで待てば、職歴3年。職歴2年では第二新卒との境界が曖昧なため活動しにくいものの、3年なら明確に中途枠で転職活動ができるようになります。
- 有休の支給が7月のため、4~5月に転職活動開始→6月にボーナス支給→7月に有休支給→8月に有休消化→9月1日入社の流れが合理的だと考えられます。
2025年5月中旬-ビズリーチ登録
転職サイトの選定
自分にはFPGA設計の実務・研究経験があり、大手メーカーへの転職を目標としていたため、ミドル~ハイクラス向けで大手メーカーの案件に強いとされるビズリーチを選択し、登録しました。
プロフィールにレジュメが必要なので、経験を棚卸しして簡単にまとめました。棚卸しした内容は職務経歴書を書くときにも活用できるので、この段階でしっかりやっておくと楽です。
スカウト爆撃でメールが麻痺
プロフィールの審査が完了すると、エージェントや企業からスカウトが来るようになりますが、初日は1日に50通近く来て参りました。捌き切れない。やめてくれよ...(絶望)
転職活動用に、専用のメールアドレスを用意しておくことを強くお勧めします。
この中からエージェントを選ぶことになりますが、自分は以下を重視していました。
- 具体的な案件の情報が提示されていること
- 大手メーカーへの転職支援に強いこと
最終的に3社3名のエージェントと面談を進めることになりました。
面談予約が始まってからは、有休を取れるかどうかが転職活動のスケジュールに関わることもあるので調整が必要です。私の場合は週1で取り、取った日に面談や面接を詰め込んでいました。
2025年5月下旬-エージェントと面談開始
面談では、転職理由、現年収、希望年収、希望業界など、自分が把握している項目をできる限り具体的に伝えます。この時点での希望年収は現年収+100万円(=600万円)でした。
面談前に質問票が提示されることもあり、自分の希望条件や転職理由を整理するのにうまく活用できました。
転職軸が早めに固まると今後の面接対策が楽になるので、自分の要望を整理しつつ本音ベースでエージェントに相談するのが良いと思います。エージェントには守秘義務があるので、応募企業含め外部には基本漏れません。
希望年収に対する説明はエージェントによって見解が分かれ、若干混乱しました。「20代ではあまり年収が動かない」と言う人もいれば、「20代でも大幅に年収が上がるケースはある」と言う人もいます。
この違いは、エージェントが扱っている案件の性質によるのではないかと思います。
おそらく、前者は一般的なJTC(伝統的な日系企業)案件の話で、後者は半導体製造装置など、高年収が狙える業界の案件の話ではないかと推察しています。
2025年5月下旬~6月上旬-書類作成と応募
棚卸しした内容をもとに、履歴書と職務経歴書を作成しました。
こういった文書生成はAIの得意分野なので、大まかな構成を作ってもらい、それをベースに推敲しました。エージェントが添削を受け付けてくれることもあるため、併用しました。
同時に求人票が届き始めるので、面談から1週間を目安に応募先を吟味しました。
20代でのFPGA設計経験は希少性が高く、求人票を見た時点で戦える案件かどうかはっきり分かれる印象でした。
応募の方針としては、手当たり次第ではなく明確に勝てそうなものを厳選することにし、最終的に6社へ応募しました。
2025年6月中旬-書類通過~一次面接
6社のうち3社で書類が通過し、一次面接へ進むことになりました。
結果的に面接は全勝となりましたが、応募数を絞ったことで会社情報の調査や業界研究に集中できたのが大きかったと思います。
面接準備
面接にあたっては、エージェントから頻出質問リストの提供や、模擬面接の機会などのサポートを受けました。
模擬面接を受けてみると、意外と自分の言いたいことを伝え切れないと感じました。
よく考えると、30~45分の面接で全てを語るのは現実的ではありません。自分の価値観等、本当に伝えたいことは整理して簡潔に伝えられるようにしたほうが良いと思います。
面接本番では想定外の質問が来ることもあり、そのとき矛盾なく答えられるかは大事です。転職軸が定まっていればブレないので、遅くとも一次面接開始までに軸は固めておきましょう。
面接中に評価されていたと感じる要素
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転職理由・価値観の整合性
カルチャーフィットの判断材料になります。表面的な動機だけではなく、どんな考え方をなぜしているかという深い部分まで見られていると感じました。 -
コミュニケーション能力
大手企業では特に重視されます。話の構成力や、質問に対する反応の的確さなども含め、協調性・説明力を見ている印象です。 -
具体的なスキルレベル
成果を端的にかつ技術者以外にも伝えられるように準備しておくとスムーズです。
2025年6月下旬-一次通過~最終面接
3社全ての一次面接が通過し、最終面接へ進むことになりました。
一次面接を通じて志望度が明確になったため、志望度順にスケジュールを組むようにしました。
なお、スケジュール調整が上手くいかずお見送りになるケースはよくあり、自分に原因があるわけではない場合も多いので、あまり気落ちしないほうが良いと思います。
志望度と一次面接からの印象
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A社 (半導体業界)
業界特有の波はあるものの、待遇面が良好。面接を通じて、自分の専門性を業務に直接活用できる点と、比較的穏やかな人が多く働きやすそうな点が好印象で志望度が上昇しました。 -
B社 (自動車業界)
企業体力があり、安定。福利厚生等の待遇面も良好。一方、面接を通じて募集職種への適性にやや不安を感じ、志望度が低下しました。 -
C社 (総合電機業界)
待遇面は標準的ですが、募集領域の将来性が高い特徴があります。一方、面接を通じて産業分野に特有の厳格な社風を感じ、カルチャーフィットの観点で志望度が低下しました。
最終面接準備
最終面接は、一次面接の回答を経営層向けの言い方にアレンジする程度の変更とし、基本的な主張や軸は変えない方針にしました。
一次面接の回答と矛盾しないことが大事です。一次面接の対策をしっかりやっていれば、難しくないと思います。
2025年6月下旬~7月上旬-最終面接通過~オファー面談
A社とB社の2社内定が出たため、オファー面談へ進むことになりました。
C社は最終面接の日程調整中でしたが、より志望度の高いA社とB社が内定した時点で辞退しました。
オファー面談は選考ではなく最終的な条件確認の場なので、面接時に聞きづらかった待遇や福利厚生面も聞いてOKです。
将来設計的にも超重要なので、AIに「給与内訳」「休日数」「転勤の有無」「退職金制度」等を含んだチェックリストを作ってもらい、面談時に埋める形で進めました。
オファー面談から1週間が一般的な内定承諾期限ですが、2社内定が出ているためこの間に悩むことになります。
エージェントの囲い込みに注意
エージェントは成果報酬型なので、この段階からポジショントークを含めた囲い込みが発生します。急に面談が増えたりするので、人によっては辟易するかもしれません。
自分の軸に沿った選択をするのが大事で、私の場合は将来的な結婚等の人生設計に沿っているかを重視していました。
2025年7月上旬-内定承諾
最終的にA社の内定を承諾し、現在入社前の手続き等をエージェントの助力のもと進めています。
退職交渉に関する備考
退職交渉を始める時期は内定承諾後が無難です。オファー後に検討したら、現職に残るほうが良いという可能性もあります。
私の場合は現職に残る選択肢がないので、内定直後に交渉をしましたが非推奨です。
補足: 退職交渉で揉めたときの最終手段
退職日の2週間以上前に配達証明付き内容証明郵便で退職届を送るのは法的に認められた最強の退職方法です。
最終手段として覚えておいて損はないです。
振り返り
結果的にこの転職は大成功でしたが、要因は以下のような要素にあると思います。
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転職理由の言語化
転職理由が「何となく」ではなく、会社と自分の価値観がズレていたことを明確に認識しました。いまの問題点がよく分かるので、大手に行きたい理由がはっきりし、一貫した考えで選考に臨めました。 -
現年収が高いタイミングでの活動
残業代により年収が一時的に高くなり、結果的に書類選考時のスペックで不利にならずに済みました。 -
AIの活用
自分の価値観の掘り下げ、書類作成の手伝い等、AIの得意分野を活かして効率化しました。 -
運
しょうもない話ですが、運やタイミングの要素もあります。エージェントの案件や募集時期との噛み合いが良かった部分もあります。
おわりに
回路設計職は中小から大手への転職事例が比較的多く、技術的な基礎があれば評価されやすいと感じました。
実際に働いていても、業務に対する姿勢や誠実さなどの特徴から、大企業的なカルチャーと親和性の高い人材が多い印象です。
当たり前かもしれませんが、同じ年齢でも大手のほうが給与は高くなることを実感しました。どこで働くかはとても大事だと思います。
転職を検討されているハードウェアエンジニア諸氏の参考になれば幸いです。
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