Luupインターン経験と分析業務の紹介(データサイエンティスト/アナリスト)
こんにちは、Data Groupでインターンをしていた柳です。
2023年12月から2025年3月まで、Luupでデータサイエンティスト/アナリストとして活動していました。
今回は、インターンで実際に取り組んだ業務内容を交えながら、その経験を振り返ります!
Luupインターンに興味を持った理由
Luupのインターンに興味を持った理由は大きく2つあります。
1つ目は、「専門分野を活かせる場面が多いこと」です。
私は大学および大学院で機械学習および数理最適化を学び、研究室ではシェアモビリティの再配置(※需要と供給のバランスをとるために、車両を移動させること)にも取り組んでいました。Luupでも車両の再配置などが行われているのではないかと考え、興味を持ちました。
さらに面接を通じて、Luupでは移動傾向の分析やライド数の予測など、専門知識を活かせる場面が多くあることを知り、データサイエンスを使ってサービスの改善に大きく貢献できる環境だと感じました。
2つ目は、「事業会社で経験を積みたかったこと」です。
当時私は受託分析企業のインターンをしていました。様々なドメインのデータに触ることができ面白いと感じていた一方で、1つのプロダクトを継続的に改善する経験をしたいと考えていました。
Luupは私自身も普段使っているプロダクトなので、「自分が使うサービスを自分の力で改善する」という取り組みができる貴重な機会だと思いました。
インターンの環境
Luupでは私以外にも複数名のデータサイエンティスト/アナリストのインターン生が在籍しており、それぞれの専門分野や関心に応じてタスクが割り振られていました。
私は最初にデータ抽出や簡単な集計などを担当しながら、Luupの保有データの種類や取得方法をキャッチアップしました。入社直後は特に、幅広いデータに触れることを意識して取り組んでいました。
週1回のData Group定例ミーティングや1on1を通じてチームとの連携もスムーズに行え、困ったときにはすぐ相談できる環境でした。
実際に取り組んだ業務
ここからは、私がインターン中に取り組んだ具体的な業務について紹介します!
施策の効果検証
こちらはインターンで初めて取り組んだ業務になります。
Luupでは、ポートの需要と供給の調整を目的とした割引施策を行っています。これは、特定のポートを出発/返却ポートに選択することで、ライド料金が割引される仕組みです。
アプリ上でのクーポン表示画面
以下で例を使って説明します。
例えば、あるポート(Pとします)に車両が1台も存在しないケースを考えます。ポートに車両が存在しないため、ユーザーはポートPからライドすることができず、車両がある付近のポートまで移動するか、ライドを諦めるという判断をすることになります。
そこで、「ポートPで返却したら割引」というクーポンを配布します。これにより、ポートPに車両が返却されやすくなり、車両不足を解消できます。
逆に、ポートPが満車のケースでは、ユーザーはポートPで車両を返却できない問題が発生します。そのため、「ポートPから出発したら割引」というクーポンを配布することでポートPから車両が出発しやすくなり、満車の状態を回避できます。
上記のようなクーポン配布による車両再配置施策について、効果検証を行いました。
具体的には、「割引施策があったことで成立したライドがどれだけ存在したか」を推定し、クーポン割引額と比較しました。
例として、ポートPに車両が1台も存在しなかった場合に、「ポートPで返却したら割引」が適用されたライドAによって、ポートPに車両が1台返却されたとします。このとき、ライドAの直後にポートPからライドBが出発したとすると、「ライドBはライドAが発生していなければ車両が存在せず、成立し得なかった」と考えることができます。つまり、ライドBは「割引施策があったことで成立したライド」になります。
しかし、この考え方には課題があります。先ほどの例には「ライドAは割引施策がなければ発生しなかった」という仮定が置かれていますが、実際は割引がなくてもライドAが発生していた可能性があります。そのため、上記のような集計を行うと「割引施策があったことで成立したライド数」を過剰推定し、施策の効果を高く見積り過ぎてしまいます。
そのため、因果推論や機械学習の手法を利用し、「割引施策があったことで成立したライド数」を適切に推定できるよう工夫をしました。
各部署からの分析依頼対応
こちらはインターン期間中、継続的に取り組んでいた業務です。
Luupでは、各部署から日々分析依頼が届きます。依頼内容はデータの抽出やダッシュボードの作成、特定地域の利用傾向の分析など多岐にわたります。また、Luupが保有するデータは、ソフトウェアやハードウェア、オペレーションなどとても幅広いのが特徴です。
私は依頼者と丁寧にコミュニケーションをとりながら、どのデータをどのように使うべきかを一緒に考え、最適な形で成果物を作ることを大切にしていました。
そのなかでも、当記事ではLuupならではの分析依頼である「移動傾向の分析」について紹介します。
Luupでは、特定の地域内でどのような移動が行われているかを可視化するニーズが多く存在します。頻繁に利用されているポートや経路を地図上で表現することで、ユーザーの行動パターンを視覚的に理解できます。
出発ポートと返却ポートの組合せの可視化
例えば、これは車両が出発したポートと車両が返却されたポートの組合せを集計し、可視化したものです。これにより、どのポートが人気なのか、どこからどこに向かうライドが多く発生しているかを把握できます。
交通量の可視化
こちらはいくつかのライドにおける車両の位置情報を集計し、よく利用されている道路はどこか(交通量)を可視化したものです。この可視化にはH3と呼ばれるデータ形式を利用しています。H3は地理空間を六角形のグリッドで分割するデータ形式で、一定範囲内の座標集合を同じH3と見て集計することができます。さらに、H3は六角形の大きさを調整可能なため、集計時に粒度を変えることができるメリットも存在します。
LuupでのH3の活用は他にもあるので、ご興味のある方は以下ブログもぜひご覧ください。
画像判定モデルの開発(深層学習)
Luupでは、返却時にユーザーが車両の写真を撮影します。
返却時の写真撮影のイメージ
一部の返却画像には車両自体が写っていないものや、車両全体が写っておらず一部だけが写っているものが存在します。そのため、車両全体が写っていない画像を自動で判定するタスクに取り組みました。
このタスクでは、大きく「過去の返却画像に対するラベル付け」「深層学習モデル等の学習」の2つを行いました。返却画像に対するラベル付けでは、過去の返却画像それぞれに「正しく車両全体が写っているか」のラベル付けを行います。次に、ラベル付けをした画像データを用いて深層学習モデルを学習し、性能を検証しました。
ここで、初期の段階ではラベル付けを行ったデータ数が少なく、学習が安定しないという課題がありました。一方で、愚直なラベル付けには多くの時間を要するため、効率的な学習データの作成が求められます。
そこで、手作業でのラベル付けを一定枚数行った後は、一度学習したモデルを用いてラベルなし画像データに対して推論を行い、これを正解ラベルとして再度学習するというアプローチを採用しました。これは画像モデルによって予測したラベルを使用するため、データにノイズが含まれる可能性がありますが、学習データを容易に増加させることができます。
上記のようなやり方で一定の分類性能に到達したため、現在もさらなるモデルや運用の改善に向けた開発が続いています。
ユーザー分析とKPI設計
Luupでは、クーポンの配布をはじめとする様々なマーケティング施策を行っています。
一方で、「どのような体験を提供すれば、ユーザーに継続的に乗っていただけるか」についての知見が体系的に整理できていないことが課題でした。
そこで、すでに継続的に利用いただいているユーザーが試乗から継続までに、どのようにLuupを利用していただいているかについて分析しました。例えば、前述したような「出発ポートと返却ポートの組合せ」を可視化・分析することで、ユーザーにどのような体験を提供できると、継続的に利用していただけるかを言語化しました。
特に、このタスクはデータ分析の担当を私に一任していただき、サービスグロース担当者と1対1で分析結果を議論しながら重要KPIを決めていきました。議論の中でユーザーインタビューの結果等を共有していただいたことで、分析時の仮説の精度を上げることができたと感じています。
最終的に、試乗から継続までにどのようにLUUPをご利用いただいているのか傾向が明らかになり、これを計測するためのKPIが設計され、各種キャンペーン施策を考えるヒントを得ることができました。
インターンを振り返って
Luupでのインターンでは、数多くの分析や開発に携わることができました。特に良かったと感じている点は以下の2つです。
多様なデータと技術に触れることができた
Luupでは、ユーザーの行動履歴、クーポン情報に加えて、車両の位置情報、返却時の画像、オペレーションのログなど、様々なデータがあります。こうしたデータを組み合わせてどのような分析ができるかを考え、実際に手を動かすのが非常に面白かったです。
色々な分析手法を試す中で、効果検証や深層学習など、幅広い技術を身につけることができました。
事業の意思決定に大きく関わる分析ができた
上記で述べたタスクは、どれも事業の意思決定に大きく関わるものでした。例えば、ユーザー分析で設定したKPIは社内で展開され、これをもとにマーケティング施策の考案が行われています。
このような責任感とやりがいのある大きな仕事を任せてもらえたことは、非常にモチベーションになりました。
おわりに
Luupのインターンシップでは、データサイエンティスト/アナリストとしてのスキルを大きく向上させることができました。
特に、専門性を活かしながら、自分が使用しているプロダクトを改善していく経験ができ、とても貴重なものだったと感じています。
採用情報
Luupでは、データアナリストやエンジニアを募集中です。
今回の記事を読んで興味を持っていただけた方は、ぜひご一読ください!
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