AIの質問を『選択肢+推奨度+理由』にしたら、意思決定の質と速度が圧倒的にあがった
3行まとめ
- AIに質問させるときに選択肢を提示させると、回答が楽で早くなる
- さらに、推奨度とその理由を出力させると、その根拠を元にAIと議論できるし、納得感を持って進められる
- 結果、意思決定が速くなり、質も上がる
AIと対話しながら開発してますか?
Claude CodeやCursorなどのAI開発ツールを使ってる人、増えてますよね。
AIが暴走しないように、不明な点を質問させてる人も多いと思います。
でも、毎回自然言語で答えるの、面倒じゃないですか?
たとえば:
AI: 「バリデーション、フロントエンドとバックエンドどっちでやりますか?」
あなた: 「うーん、両方かな。セキュリティ的にバックエンドは必須で、UX的にフロントエンドも欲しいし...」(と、入力すると長い)
もしどちらでバリデーションするかを決めていなかった場合、
AIからこのように質問してくれることは、何をすべきかを明確にする上でとても嬉しいですよね。
ただ、それを毎回自由回答で答えるのは、それなりに脳のパワーや時間を使います。
そこで最近、AIに「推奨度付き選択肢」(選択肢+推奨度+理由)で質問させるように設定したら、
体験が大きく変わりました。
圧倒的に楽になり、意思決定の質も速度も上がった のです。
推奨度付き選択肢とは?
「選択肢+推奨度+理由」 をセットで質問させることを、この記事では「推奨度付き選択肢」と呼んでいます。
たとえば、さっきのバリデーションの例で、こう聞いてみます:
人: 「バリデーション、どっちでやるか迷ってる。推奨度と理由付きで選択肢出して」
AI: 「バリデーションの配置、悩ましいですよね🤔 選択肢を出します:
- 両方で実装(推奨★★★)
フロントエンド:UX向上(即座フィードバック)、バックエンド:セキュリティ確保。二重管理のコストはあるが、最も堅牢で安全。実務では標準的なアプローチ。- バックエンドのみ(推奨★★☆)
セキュリティ重視。フロントエンドを信用せず、不正リクエストを完全防御。ただしUXは劣る(サーバー往復後にエラー表示)。APIが外部公開される場合は必須。- フロントエンドのみ(推奨★☆☆)
UX最優先で即座にフィードバック。ただしセキュリティリスク大(バイパス可能)。プロトタイプや社内ツールなど、信頼できるユーザーのみの場合に限定。- バックエンド主体+フロント軽量(推奨★★☆)
バックエンドで厳格に実施、フロントエンドは基本的な項目のみ(必須チェック、形式チェック程度)。バランス型だが、中途半端になりがち。
これが推奨度付き選択肢です。
最近各AIツールは選択肢を自動で提示してくれるようになってきていますが、そこに推奨度と理由を追加すると大きく変わる、というのがこの記事の趣旨です。
では、これで何が変わるのか?3つのメリットを紹介します。
3つのメリット
1. 意思決定の速度が上がる 🚀
推奨度と理由があると、意思決定のプロセスが劇的に速くなります。
良い意思決定をするには、こんなステップが必要です:
- 選択肢を洗い出す
- それぞれの良し悪しを評価する
- 比較検討して決める
でも、これって時間も労力もかかりますよね。
推奨度付き選択肢なら、この全てが叩き台として一気に出てきます。
- 選択肢:AIが候補を列挙
- 評価:推奨度とその理由が出力される
- 比較:出力された推奨度と理由を見て判断する
ゼロから考えるのではなく、叩き台から始められるのが大きいです。
必ずしも推奨度が高いものが良いというわけでも、推奨理由が全て正しいわけでもありませんが、叩き台があるだけで圧倒的に楽になります。
2. 意思決定の質が上がる 📈
理由をもとに検討できるので、意思決定の質も上がります。
1. ロジカルに判断できる
理由とトレードオフが明示されているので、感覚ではなく論理で判断できます。
「なんとなく良さそう」ではなく、「この理由なら納得」と決められるようになります。
2. 自分が思いつかなかった選択肢にも気づける
AIが挙げた選択肢の中に、「その手があったか!」と気づくことも。
理由を読んで「確かにこっちの方が合ってるかも」と視野が広がります。
3. 納得いくまで議論できる
理由があるから、それを元にAIと対等に議論できます。
- 人: 「その理由なら、○○も検討した方がいいんじゃない?」
- AI: 「確かに!それも追加します」
理由を軸に、より良い選択を探せる。 これが質の向上につながります。
3. 学びになる 📚
選択肢の背景や考え方を知れるので、自分の知識も増やすことができます。
- 「なるほど、こういう観点で選ぶのか」
- 「このトレードオフ、他の場面でも使えそう」
AIが単なる効率化ツールから、学びを得られるパートナーになります。
実際にこんな場面で使っています
例1:開発の意思決定
冒頭でも紹介したバリデーションの例。
「推奨度と理由付きで選択肢出して」と一言添えるだけで、
フロント・バック・両方の3択が推奨度付きで返ってきました。
実装コストと堅牢性のトレードオフも理解した上で進められます。
他にもこんな場面で利用しています:
- 仕様検討(ユーザー体験、技術的な設計)
- ライブラリ選定(新しく導入検討時など)
- テスト方針検討(テストの粒度、モックの範囲)
例2:記事執筆(この記事自体のメインメッセージを決める)
開発以外でも使えます。実はこの記事を書くときにも使いました。
構成を考える途中で、「この記事のメインメッセージ、何を一番強調しようか迷ってるんだけど、推奨度と理由つきで選択肢出して」と聞きました。
AIの回答は以下のようでした。
この記事のメインメッセージ、選択肢出すね:
「速度と質の両方」:速くて、しかも質も上がる一石二鳥
推奨度:⭐⭐⭐ 推奨!
理由:タイトルと完全一致。両方のメリットを伝えられる。3つのメリット(速度・質・学び)全部カバー。欲張りだけど、実際に両方実現してるなら説得力MAX「速度」:叩き台があるから意思決定が爆速になる
推奨度:⭐⭐⭐ 推奨!
理由:一番わかりやすくて実用的。「時短」は誰にでも刺さる。ビジネスパーソン向け。シンプルで伝わりやすいが、「質」の話が薄くなる「選択肢の網羅性」:自分が思いつかなかった選択肢にも気づける
推奨度:⭐⭐
理由:「視野が広がる」という知的な価値。記事の「2. 意思決定の質が上がる」の一部だけど、これ単体だとやや地味。「気づき」の価値は伝わるが、メインには弱い「AIとの協働の質」:AIが単なる作業ツールから、対等なパートナーになる
推奨度:⭐⭐
理由:抽象的だけど本質的。「議論できる」という質的変化を強調。ただし概念的すぎて、ピンとこない人も多そう。エモいけど伝わりにくい
案と理由を見て、思考が整理されて、「1番で行こう」と決定しました。
理由を読むことで、各選択肢の良し悪しが明確になり、納得感を持って記事執筆に進めます。
開発以外でも、思考を整理する時には幅広く使えるテクニックです。
どのAIツールでも使える
この「推奨度付き選択肢」は、シンプルなテクニックなので、どんなAIツールでも使えます。
ChatGPTやGeminiなどのチャットツールでも、ClaudeCodeやCursorなどの開発ツールでも可能です。
基本の使い方
会話の中で直接指示すればOKです。
不明な点があったら積極的に質問して。
その際は選択肢を出して、それぞれ推奨度とその理由を一緒に提示して。
これだけで動きます。
推奨度のフォーマットは指定しないでも動きますが、毎回表記がブレる可能性があるので指定しても良いと思います。
例:
⭐の5段階評価★○△★★★☆☆
などを指定すると良いでしょう。
設定に永続化する
毎回指示するのが面倒なら、各ツールの設定に書いておくと便利です。
ChatGPT: Custom Instructions
Settings → Personalization → Custom Instructions に追加:
選択肢を提示する時は、以下のように推奨度と理由を記載する。
1. 選択肢A(推奨度:⭐の5段階評価)
- 理由:
Claude Code: CLAUDE.md
プロジェクトルートの CLAUDE.md に追加:
## 基本方針
- 不明な点は積極的に質問する
- 質問する時は常にAskUserQuestionを使って回答させる
- **選択肢にはそれぞれ、推奨度と理由を提示する**
- 推奨度は⭐の5段階評価
Claude Codeには AskUserQuestion という選択肢機能もあります。
これは最近リリースされた機能で、ClaudeCodeがカーソルで選択式で回答できるような機能で、非常に便利です。記事公開時点ではまだデフォルトで使われないこともあるので、「AskUserQuestionで回答させて」と言うと使ってくれます。
先ほどの選択肢は、このように表示されます。

AskUserQuestionを使う上でも、推奨度と理由を書いて、と伝えるだけでさらに便利になるので、合わせ技で使ってみてください。ただし、記事公開時点では、選択肢の数が4個ぐらいに限定されるので、選択肢の数が多い場合は「AskUserQuestionを使わずに選択肢を表示して」というともっと多い選択肢を提示してくれます。
まとめ
3段階の進化
- AIに質問させる(暴走防止)
- 選択肢で答えやすく(自然言語不要)
- 推奨度と理由を追加(速度と質UP) ← 今ココ!
推奨度と理由で:
- ✅ 叩き台が出ることにより、意思決定の速度が上がる
- ✅ 理由を元に議論できるので、意思決定の質も上がる
- ✅ 思いもよらなかった選択肢や理由が出てきて、学びにもなる
この記事が役に立ったら、ぜひ実践してみてください!
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