コミュニティ文化を組織に根付かせるまでの原体験と思考
ログラスでVPoEをしている飯田(@ysk_118)です。
この記事では私の個人的な経験からログラスにおけるコミュニティとの関わり方についての考えをお伝えできればと思います。
この記事の背景
今でこそ私個人としてはコミュニティに足を運べば知っている人がいて、「最近どうですか」から始まりいろんな雑談ができるようになったのですが、私自身がそんな状態に至るまで、そして社内の他の人に同じような体験をしてもらうまでにはそれなりの道のりがあったように感じています。
もともとこの文章は社内向けに、個人的なコミュニティとの出会いと、そこから社内に対してコミュニティ文化を根付かせるまでの思考過程を綴ったものだったのですが、社外に向けても公開するとよいのでは、という意見をもらい、体裁を整えたものという位置づけになります。
※ログラスには2020年10月に参画しており、それ以前のお話も含みますのでご了承ください。
私とコミュニティ
私が初めてコミュニティに参加し始めたのは2017年〜2018年頃で、当時リーダーや新米マネージャーを担い始めた頃にアジャイルとは何か?スクラムとは何か?という純粋な疑問と、もっと社外でのプレゼンスをあげなければという使命感からコミュニティに出て行き始めたことを覚えています。
初めて参加したLTはDevLOVE(Doorkeeper, connpass)のLTの会でした。これをきっかけに、それまで以上にいろいろな勉強会に出るようになり、登壇にもチャレンジするようになりました。
RSGT(Regional Scrum Gathering Tokyo)との出会い
スクラムについて本格的に学び、チームとしてもまとまり始めた頃、当時の現場でたくさんのフィードバックをくれていた上司が退職することになりました。私はその当時の上司のエッセンスを少しでも取り入れたいと思い、足を運んだのがRSGT2018でした。
当時の初々しい記録は個人ブログに残っていたので興味がある方はどうぞ。
強く記憶に残っていることは、実行委員の川口さんがいろんな人を繋いでくれたこと、なぜかFearless Changeの書籍をくれたこと、スクラムの研修の価値について教えてもらったこと(結果その2ヶ月後に受けた)、OSTは何それ怖い!と思って参加しなかったこと、を覚えています。
結果的には、退職した上司が何を考えていたのか?どんなものから影響を受けていたのか?その追体験をしたいと思って参加をしたのですが、そんな思いは吹き飛ぶほどの情報の洪水に圧倒されました。
知らない知識がありすぎて、セッションを聞くだけで脳がパンクしそうになり、ギャザリング(参加者同士の気軽な交流のことをRSGTではこう表現します)どころではありませんでした。
しかしながら、ここからキャッチアップして自身の考え・言葉で取り組んでいけばいいか、くらいのマインドチェンジがありました。
一言で言うと、私の行動変容の原点がRSGT2018となったと言えます。
登壇への憧れ
初めて参加したときから感じていたのですが、登壇している人たちの話がすごい、私もそうなりたい、そんな気持ちがとても強くなりました。
翌年からプロポーザルも出すようになり、しばらく落ち続けていたのですが、ログラスに参画してからもトライし続け、RSGT2022で初めてプロポーザルが通ったときには本当に本当に嬉しかったことを覚えています。
最初からモメンタムが作れていたわけではない
今でこそ、ログラスの多くのメンバーがコミュニティに出ていくようになりましたが、このモメンタムは昔からあったわけではありません。
創業期はとにかく開発を前に進めることが必要でしたし、外に出ていく人が少ない中で、明確なリターンを示しにくいコミュニティ活動は、初期のスタートアップではモメンタムを作ることが難しいと感じていました。
なので、初期は登壇がすごいことである、ブランディングにも繋がる、などエンジニア以外からも分かりやすいポイントを強調して活動していました。
同様にスポンサーなども短期的なメリットを示すには採用と紐付けるしかない側面もあります。短期での社内的な価値を示すところもやりきりながら、長期視点の価値の意識を私の中ではぶらさずにやってきました。
コミュニティの価値
では、長期視点の価値とは何か?
これは私の原体験にもあるように、「火を付けられる」ことなのだと考えています。
コミュニティでいろいろな人と対話をすると個人レベルでもそうですが、組織や会社レベルでのメタ認知を得ることができます。これは社内に閉じた対話では得られない視点です。
そして、みんなそれぞれの会社で頑張っている、ということを知ることができます。
DevLOVEでは「それぞれの持ち場でがんばれ」という言葉があり、それぞれの会社でそれぞれががんばることが一番大事なんだよ、ということを市谷さんから聞きました。(当時色々抱えているものがあったので、この言葉にはとても救われました。)
コミュニティに出ることで、勇気と情熱をもらい、また会社で頑張ろうと思えれば、長期的には大きな価値になっていると言えると思います。
コミュニティへの還元
こうした価値を享受できるのは、元を辿れば立ち上げた人がいて、運営している人がいて、集まった人がその場をいい場にしようと思って参加している状態が続いているからです。
オープンソースの考え方と通じていますが、会社という垣根を超えて知識をGiveしてくれる人がいるから、そしてそれに社会的な価値があると考えている人がいるから成り立つ話だと思っています。
なので、フリーライドする人が増えるとコミュニティは成り立たなくなってしまいます。
これを持続可能にしていくためには、たくさんGiveをもらった人は今度は自分がGiveする側に回れるといいね、と思っています。よく「恩送り」という表現もされますが、自分がそのコミュニティに慣れてきたら次は初めて参加した人に話しかけてみる、などでも小さなGiveになるのかなと思います。
会社の中でコミュニティ文化を根付かせていくこと
ここまで書いてきた通り、私の場合はアジャイルコミュニティにとても感謝しているので、自身もそこに還元していきたいという思いで動いているところもありますが、会社にこれを広めるという視点に立つと組織に対してどう合理性を説明していくか?があります。
RSGTで言えばスポンサーセッションで寸劇が始まったり、初めて参加する人にとってはびっくりするようなことが至る所で発生するわけですが、ここから得られる全てを言葉で説明することは難しくて、「いけばわかる」という側面もかなりあると思っています。
ひとりで参加してその熱量を言葉で説明することはほぼ不可能だと思っているのですが、複数人で参加してコンテキストを共有した状態であれば、組織やチームにおいて、あの発表の取り組み真似しよう!とかあの廊下のあの会話よかったよね!という"体験を共有した人たちと一緒に会社での取り組みを推進する"ことが格段にやりやすくなります。
ですから、まずは「行くと何かいいことがある」というイメージの醸成を組織の中で先駆者がやっていく必要があります。
そして、連れて行った人が感想を社内勉強会で喋ったり、次はプロポーザルを書いてみましょう!ということでプロポーザルの壁打ちをしたり、連鎖的にモメンタムを強めていくことを取り組んでいます。
コミュニティへのオンボーディング
興味を持ってくれた人が実際に参加していい思い出になるかどうか、は不確実性のあるテーマで、一緒に行ったとしても空気感に馴染めなかったり、自身が何者か認識してもらうだけで結構なコミュニケーションのパワーを使うので、楽しんでもらうためにはオンボーディングのことを考えられるといいなと思っています。
ログラスでは、まず社内で初参加の人に対してのコミュニティの歩き方のオンボーディングをしています。詳細までは触れませんが、歩き方、コミュニケーションの仕方、推奨されるふるまい、推奨されないふるまいなど、ただ参加するだけではわかりにくい部分をお伝えしています。
またコミュニティでの会話のフックを作るという観点では、あまり他社では参考にならないと思いますが、ログラスではグッズ(アクスタなど)によって会話のハードルを下げるという状態を作れていると考えています。
初めて参加する人にとってはそれがあるだけで自分が何者かを伝えやすくなるというメリットがあります。
職種を超えたコミュニティへのDeep Dive
正直、私がログラスに参画した2020年の時点ではまったくゼロからのスタートでしたが、この5年で組織とコミュニティの距離感が縮まったと感じています。
そのひとつの到達点と思えたのがスクラムフェス新潟でProductHRの永井から発表された以下のスライドです。
エンジニアだけでなく、HRがコミュニティにDeep Diveしていける世界観というのはまさに職種を超えてコミュニティ文化が浸透していった先にあるものなのではないかと思いました。
まとめ
あまり普段書かない個人的な体験も交えてコミュニティに対しての思いをまとめてみました。
重要なことは自身が先頭に立って発信を続けていくこと、短期のメリットだけに振り回されないこと、文化の浸透には長い時間がかかること、かなと思います。何かの参考になれば幸いです。
ログラスでは引き続きコミュニティの発展とともに進化していける会社であり続けたいと考えています。
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