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Tech Value の浸透施策を振り返ったら見事に ADKAR モデルに当てはまった

2024/12/12に公開

サムネ

かつ


こんにちは、ログラスで EM をしている塩谷 @shioyang です!

今年の 2 月、ログラスのエンジニアリング組織では Tech Value: Update Normal を公開しました。どんなバリューも単に発表しただけでは組織に浸透することはまれです。この記事では、Tech Value の発表後に行なった 浸透施策 を、変革を推進するフレームワークである ADKAR モデル で整理して、振り返っていきます。
現在まさに浸透施策を試されている方や今後バリューを組織に広めていく機会がある方へのヒントになれば幸いです!

はじめに

Tech Value 推進チーム

ログラスのエンジニアリング組織は急拡大の真っ最中です。このまま拡大が進む中で、これまで大切にしてきたカルチャーが薄れてしまうのではないか、それぞれが別々の方向を向いてしまうのではないか、という懸念がありました。そこで、拡大後も失いたくない「これまで大切にしてきたカルチャー」を言語化し、その後組織全体に浸透させていく必要がありました。

この記事で紹介する浸透施策は有志で集まったチームで行いました。little_hand_s の呼び掛けのもと、urmot塩谷 の三人で推進をしました。

ADKAR モデル

ADKAR モデルは Jeffrey Hiatt の書籍で紹介された、個人変革を支える五段階のフレームワークです。下記の五段階[1]があります。

段階 説明
Awareness: 認知 変革の必要性の認知
Desire: 欲求 変革に参加し、サポートしたいという欲求
Knowledge: 知識 変革の方法についての知識
Ability: 能力 必要なスキルや言動を実行する能力
Reinforcement: 定着 変革を維持するための定着

1. Awareness: 認知

変革の必要性の認知

Tech Value 発表

エンジニアチーム全体がオフラインで集まる場を設け、策定した Tech Value: Update Normal を周知しました。周知の際には「Tech Value が Update Normal に決まった」という事実を伝えただけではありませんでした。
そもそも Tech Value を策定するに至った目的を説明し、策定に至るまでの試行錯誤を共有し、策定に関わった有志メンバーから Update Normal に込められた想いを語りました。

詳細はこちらの記事をご覧ください。
https://note.com/itohiro_loglass/n/n355fde3dbbd2

新メンバーへの周知

既存のメンバーは発表を聞いていますが、その後入社したメンバーには当初 Update Normal の詳しい説明を聞く機会がありませんでした。そこで会社説明資料への掲載と入社後のオンボーディングで説明の時間を設けました。

採用サイトや面談では会社説明資料を通して Update Normal に触れていただき、エンジニア組織が大切にしている価値観をお伝えできるようにしました。

入社後のオンボーディングでは Update Normal 発表の時と同じように、策定の経緯や試行錯誤も含めて共有するようにしました。Update Normal は皆で一緒に活用しながら育てていくものであるため、策定時の想いも含めて知ってもらうことが大切だからです。

2. Desire: 欲求

変革に参加し、サポートしたいという欲求

理想状態から逆算するワーク開催

Update Normal の副文に記載された以下の内容にフォーカスし、エンジニアリング組織の全員でワークをしました。

今までの当たり前基準を越え、より高い基準へと移行していく。
今までの当たり前を疑い、まったく新しい当たり前づくりに取り組んでいく。

ワークの目的は、当たり前に気付き、その理想状態を考えることです。そして Update Normal に対して自身の意思や動機を持つことでした。理想状態から バックキャスティング で逆算をしていくことで、日々の改善にとどまることなく非連続な高い基準へと移行していくイメージを持つことができました。

実際のワークは下記ステップで行いました。

  1. 少人数のチームに分かれる
  2. 今の当たり前と理想状態を書き出す
  3. 書いたものをなぜ出したのか共有する
  4. 議論したいものに投票する
  5. 理想状態、アクションを考える
  6. 全体に共有する

ワークの様子
ワークの様子

3. Knowledge: 知識

変革の方法についての知識

判断基準の明文化

前述の通り、Update Normal は皆で一緒に活用しながら育てていくものです。当初は、策定メンバーと他メンバーとで理解度に差があるために、他のメンバーが『この使い方で合っているのか?』と迷うことがありました。そこで Update Normal ガイドラインを作成して判断基準を明文化しました。

Update Normal の判断基準を三つにまとめました。特に、判断は自己申告であることを明確にし、自分自身が判断基準に合っていると思えばそれ以上は検証にコストを払わないようにしました。こうすることで、使用時の迷いを軽減できるようにしました。

  1. 判断は自己申告であること
  2. 「当たり前を疑う/更新する」が理由づけられること
  3. 単発ではなく、持続性や将来に向けた価値やその想定/意志があること

事例の列挙

ガイドラインには判断基準に加えて事例を列挙しました。列挙した事例は下記のように That's "Update Normal"Not yet "Update Normal" に分類しました。
Update Normal には二段階あり、判断基準 2 の「当たり前を疑う/更新する」を満たしたうえで、3 の「持続性や将来への想定や意思がある」を満たす必要があります。そのため、まだ判断基準 3 は満たしていない場合があります。そういった事例を Not yet "Update Normal" として挙げることで判断基準がより明確になりました。

  • That's "Update Normal"
    • 自身が思った Update Normal の事例
  • Not yet "Update Normal"
    • まだ Update Normal には至っていないが可能性を秘めている事例

4. Ability: 能力

必要なスキルや言動を実行する能力

アプノマ紹介

ガイドラインによって判断基準は明確化することができましたので、次は日頃から実際に起こったことと紐づけてもらえるようにしていきました。エンジニアリング組織全員が集まる週次の朝会にて、今週の Update Normal 事例を紹介する「アプノマ紹介」をするようにしました(社内では Update Normal を縮めてアプノマと呼ぶことも多いです!)。

アプノマ紹介の例
朝会のアジェンダの一部

アプノマ紹介では一週間以内にあった事例をひとつ挙げて、Update Normal を行なった人にインタビュー形式で内容を話してもらうようにしました。インタビュー形式にした理由は他のメンバーの理解向上と本人の解像度向上を意図していました。「どんな当たり前を疑ったのか」や「どのように継続性を持たせたのか」などを本人から話してもらうことで他のメンバーも理解がしやすくなります。また、話してもらう本人にとっても Update Normal だった行動を更に解像度を高く認識する機会になるからです。

アプノマ出し

週次の朝会でのアプノマ紹介が恒例化してきたところで、次は朝会で簡単なワークを行なってもらうようにしました。下記ステップで行う 15 分程度のワークを通じて、Update Normal を自らの言葉で捉え直し日常業務への適用方法を考える機会を目指しました。

  1. 少人数のチームに分かれる
  2. アプノマだと思った事例を Slack スレッドに順次投稿する
  3. 一部をピックアップして全体に共有する

短時間のワークでしたがたくさんの事例投稿がありました。例えば、ほんの一部ですが下記のアプノマ事例が投稿されました。

  • チームの枠を越えた権限委譲により機能開発が行われている!
  • チームの振り返り会がその場限りの共有になっていたので、ストックされるドキュメントを作ってくれた!
  • テーブル追加時に毎回特定のチームにレビューが飛んでしまう問題の解消
  • などなど

このワークによってさらに日常でのアプノマ行動を認識し、今後も意志決定や行動の場面で使用されていくことが期待できます。

ワークのテーマも下記のように回を追うごとに Update Normal させていきました!

  1. 身の回りのアプノマ
  2. アプノマ前夜、アプノマ応援(後述)
  3. 三つの価値観に基づいたアプノマ

5. Reinforcement: 定着

変革を維持するための定着

Slack 絵文字の活用

Slack リアクションでの活用が日常的な定着につながっています。社内では アプノマ 絵文字のほか、もうすぐ Update Normal になりそうな期待を込めて アプノマ前夜 絵文字や、Update Normal につながる行動や活動を応援する アプノマ応援 が使われています。

Slack 絵文字
Slack 絵文字

まとめ

Tech Value: Update Normal を組織に浸透させるために実施した施策を、今回の記事ではADKARモデルで整理して振り返りました。当初からこのモデルを意識していたわけではありませんが、結果的に多面的なアプローチが価値観の浸透に寄与していることがわかりました。これからも Update Normal を皆で育て、より良いエンジニアリング文化を目指していきます!

ログラス エンジニアリング組織 Tech Value: Update Normal
エンジニアリング組織 Tech Value: Update Normal

脚注
  1. 日本アタウェイ ADKAR® Modelの5つの要素 ↩︎

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