https://algo-method.com/tasks/809/editorial
このうち、「解法3: 式変形を頑張る方法」の別解を備忘のためにおいておく記事です。
求めたいこと
無限和
\sum_{n=1}^{\infty}{np(1-p)^{n-1}}
の値を求めたいです。
準備
\Sigma の中にある p は n に束縛されないので、外に出しておき
S = \sum_{n=1}^{\infty}{n(1-p)^{n-1}}
について考えることにします。
1. 高校数学教科書によくある解法
わかりやすくするため、q = 1 - p としておきます。
S= \sum_{n=1}^{\infty}{nq^{n-1}}
自然数 N について S_N を
S_N \overset{\text{def}}{=} \sum_{n=1}^{N}{nq^{n-1}} = 1 + 2 q+ 3q^2 + ... + Nq^{N-1}
とします。
式を見ると q の係数が邪魔で、無限等比級数の公式を使用できません。
なので、係数をどうにかして消し去りたいたいです。
そこで、(1-q)S_N を計算して、係数を 1に揃えることを考えます。
qS_N= q\sum_{n=1}^{N}{nq^{n-1}} = q + 2 q^2+ 3q^3 + ... + Nq^N
なので
(1-q)S_N = \sum_{n=1}^{N}{nq^{n-1}} - q\sum_{n=1}^{N}{nq^{n-1}} = 1+q+q^2+q^3+...+q^{N-1} - Nq^N
\therefore (1-q)S_N = \sum_{k=0}^{N-1}{q^{n}} - Nq^N
= \frac{1-q^{N}}{1-q} - Nq^N
\therefore S_N = \frac{\frac{1-q^{N}}{1-q} - Nq^N}{1-q}
ゆえに、q = 1-p に注意して
\displaystyle S = \lim_{N \to \infty} S_N = \sum_{n=1}^{\infty}{nq^{n-1}} = \frac{\frac{1-0}{1-q}-0}{1-q} = \frac{1}{(1-q)^2} = \frac{1}{p^2}
最終的に
\sum_{n=1}^{\infty}{np(1-p)^{n-1}} = pS = \frac{1}{p}
と答えが求まりました。
2. 微分による解法
x = 1-p とすると、 \displaystyle \frac{\mathrm{d}x}{\mathrm{d} p} = -1 すなわち \mathrm{d} x = - \mathrm{d} p となることに注意して
\begin{aligned}
S = \sum_{n=1}^{\infty}{n(1-p)^{n-1}} &= \sum_{n=1}^{\infty}{nx^{n-1}}\\
&= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x} \left( \sum_{n=0}^{\infty}{x^{n}} \right)\\
&= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} p} \left( -\sum_{n=0}^{\infty}{(1-p)^{n}} \right)
\end{aligned}
と変形できるので、無限等比級数の公式
\sum_{n=0}^{\infty}{(1-p)^{n}} = \frac{1}{1-(1-p)} = \frac{1}{p}
を使用すると
\begin{aligned}
S&=\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} p} \left( -\sum_{n=0}^{\infty}{(1-p)^{n}} \right)\\
&= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} p} \left(-\frac{1}{p} \right)\\
&= \frac{1}{p^2}
\end{aligned}
と変形できます。
ゆえに
\sum_{n=1}^{\infty}{np(1-p)^{n-1}} = pS = \frac{1}{p}
と答えが求まりました。
3. マクローリン級数の微分を用いる方法
唐突ですが、関数 \displaystyle \frac{1}{x-1} を点 0 周りでテイラー展開(マクローリン展開)すると
\frac{1}{x-1} = \sum_{n=0}^{\infty} {x^n}
が得られます。
この式の両辺を x で微分してみます。
すると、左辺は
\begin{aligned}
\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x}\frac{1}{1-x} &= \frac{-1}{(1-x)^2}\cdot(-1)\\
&= \frac{1}{(1-x)^2}
\end{aligned}
一方で、右辺は
\begin{aligned}
\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x}\sum_{n=0}^{\infty} {x^n}
&= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x}\left(1 + x + x^2 + x^3 + ... \right)\\
&= 0 + 1 + 2x + 3 x^2 + ... \\
&= \sum_{n=0}^{\infty} {nx^{n-1}}
\end{aligned}
左辺=右辺の形に戻すと
\frac{1}{(1-x)^2} = \sum_{n=0}^{\infty} {nx^{n-1}}
となります。
ここで x = 1-p を代入すると、なんと
\displaystyle
\frac{1}{p^2} = \sum_{n=0}^{\infty} {n(1-p)^{n-1}}=S
が出来上がります。
ゆえに
\sum_{n=1}^{\infty}{np(1-p)^{n-1}} = pS = \frac{1}{p}
と答えが求まりました。
Discussion