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ノート:「幾何分布の期待値」

2022/02/27に公開

https://algo-method.com/tasks/809/editorial

このうち、「解法3: 式変形を頑張る方法」の別解を備忘のためにおいておく記事です。


求めたいこと

無限和

\sum_{n=1}^{\infty}{np(1-p)^{n-1}}

の値を求めたいです。

準備

\Sigma の中にある pn に束縛されないので、外に出しておき

S = \sum_{n=1}^{\infty}{n(1-p)^{n-1}}

について考えることにします。

1. 高校数学教科書によくある解法

わかりやすくするため、q = 1 - p としておきます。

S= \sum_{n=1}^{\infty}{nq^{n-1}}

自然数 N について S_N

S_N \overset{\text{def}}{=} \sum_{n=1}^{N}{nq^{n-1}} = 1 + 2 q+ 3q^2 + ... + Nq^{N-1}

とします。

式を見ると q の係数が邪魔で、無限等比級数の公式を使用できません。
なので、係数をどうにかして消し去りたいたいです。

そこで、(1-q)S_N を計算して、係数を 1に揃えることを考えます。

qS_N= q\sum_{n=1}^{N}{nq^{n-1}} = q + 2 q^2+ 3q^3 + ... + Nq^N

なので

(1-q)S_N = \sum_{n=1}^{N}{nq^{n-1}} - q\sum_{n=1}^{N}{nq^{n-1}} = 1+q+q^2+q^3+...+q^{N-1} - Nq^N
\therefore (1-q)S_N = \sum_{k=0}^{N-1}{q^{n}} - Nq^N = \frac{1-q^{N}}{1-q} - Nq^N
\therefore S_N = \frac{\frac{1-q^{N}}{1-q} - Nq^N}{1-q}

ゆえに、q = 1-p に注意して

\displaystyle S = \lim_{N \to \infty} S_N = \sum_{n=1}^{\infty}{nq^{n-1}} = \frac{\frac{1-0}{1-q}-0}{1-q} = \frac{1}{(1-q)^2} = \frac{1}{p^2}

最終的に

\sum_{n=1}^{\infty}{np(1-p)^{n-1}} = pS = \frac{1}{p}

と答えが求まりました。

2. 微分による解法

x = 1-p とすると、 \displaystyle \frac{\mathrm{d}x}{\mathrm{d} p} = -1 すなわち \mathrm{d} x = - \mathrm{d} p となることに注意して

\begin{aligned} S = \sum_{n=1}^{\infty}{n(1-p)^{n-1}} &= \sum_{n=1}^{\infty}{nx^{n-1}}\\ &= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x} \left( \sum_{n=0}^{\infty}{x^{n}} \right)\\ &= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} p} \left( -\sum_{n=0}^{\infty}{(1-p)^{n}} \right) \end{aligned}

と変形できるので、無限等比級数の公式

\sum_{n=0}^{\infty}{(1-p)^{n}} = \frac{1}{1-(1-p)} = \frac{1}{p}

を使用すると

\begin{aligned} S&=\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} p} \left( -\sum_{n=0}^{\infty}{(1-p)^{n}} \right)\\ &= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} p} \left(-\frac{1}{p} \right)\\ &= \frac{1}{p^2} \end{aligned}

と変形できます。

ゆえに

\sum_{n=1}^{\infty}{np(1-p)^{n-1}} = pS = \frac{1}{p}

と答えが求まりました。

3. マクローリン級数の微分を用いる方法

唐突ですが、関数 \displaystyle \frac{1}{x-1} を点 0 周りでテイラー展開(マクローリン展開)すると

\frac{1}{x-1} = \sum_{n=0}^{\infty} {x^n}

が得られます。

この式の両辺を x で微分してみます。

すると、左辺は

\begin{aligned} \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x}\frac{1}{1-x} &= \frac{-1}{(1-x)^2}\cdot(-1)\\ &= \frac{1}{(1-x)^2} \end{aligned}

一方で、右辺は

\begin{aligned} \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x}\sum_{n=0}^{\infty} {x^n} &= \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x}\left(1 + x + x^2 + x^3 + ... \right)\\ &= 0 + 1 + 2x + 3 x^2 + ... \\ &= \sum_{n=0}^{\infty} {nx^{n-1}} \end{aligned}

左辺=右辺の形に戻すと

\frac{1}{(1-x)^2} = \sum_{n=0}^{\infty} {nx^{n-1}}

となります。

ここで x = 1-p を代入すると、なんと

\displaystyle \frac{1}{p^2} = \sum_{n=0}^{\infty} {n(1-p)^{n-1}}=S

が出来上がります。

ゆえに

\sum_{n=1}^{\infty}{np(1-p)^{n-1}} = pS = \frac{1}{p}

と答えが求まりました。

Discussion