Deno Slack SDK導入からサンドボックス構築まで
はじめに
Slack開発が大きく変化しています。2025年の最新アップデートにより、開発者エクスペリエンスが大幅に向上し、特にDeno Slack SDKとサンドボックス環境の登場により、これまで以上に簡単にSlackアプリの開発・テストが可能になりました。
**最も重要なのは、Slack Developer Programに参加することで、通常は高額なEnterprise Grid機能を無料で利用できるサンドボックス環境にアクセスできることです。**これにより、個人開発者や小規模チームでも、エンタープライズレベルの機能を使ったSlackアプリの開発・テストが可能になります。
本記事では、以下の3つのステップについて詳しく解説します:
- Slack Developer Program参加 - 無料でEnterprise Grid機能にアクセス
- サンドボックス構築 - 完全なEnterprise Grid開発環境の構築
- Deno Slack SDK導入 - サンドボックス環境での開発環境構築
1. Slack Developer Program参加 - 無料でEnterprise Grid機能を利用
1.1 なぜSlack Developer Programが重要なのか
通常、Slack Enterprise Gridは月額数万円〜数十万円の高額なプランですが、Slack Developer Programに参加することで、これらの全機能を無料でサンドボックス環境として利用できます。
無料で利用できるEnterprise Grid機能:
- 高度なワークフロー機能
- カスタム関数とデータストア
- 組織レベルのセキュリティ設定
- 複数ワークスペースの管理
- Slack Connect機能
- すべてのボット権限とAPI
1.2 開発者アカウントの作成
-
Developer Program サイトへアクセス
- api.slack.com/developer-program にアクセス
- 「Join the Program」をクリック
1.3 開発者ダッシュボード
登録完了後、以下の機能にアクセス可能になります:
- サンドボックス管理 - 最大2つのアクティブサンドボックス(通常数十万円相当)
- イベント情報 - 開発者向けイベントやミートアップ
- ニュースレター - 最新機能とベストプラクティス
- コミュニティアクセス - グローバル開発者コミュニティ
1.4 料金と制限(重要)
- Developer Program参加費用:完全無料
- サンドボックス利用料金:完全無料
- Enterprise Grid機能:完全無料で利用可能
- 身元確認用の支払い方法登録が必要(実際に課金されることは一切ありません)
💡 ポイント: 支払い方法の登録は身元確認のためのみで、実際に課金されることはありません。無料でEnterprise Grid機能をフル活用できます。
2. サンドボックス構築 - 完全なEnterprise Grid環境を無料で
2.1 サンドボックスの価値
Slack Developer Programのサンドボックスは、完全なEnterprise Grid環境です:
🎯 通常数十万円/年のEnterprise Grid機能が無料で利用可能:
- 全Enterprise Grid機能へのアクセス
- 最大3つのワークスペース作成可能
- 最大8人のユーザー
- 6ヶ月間のデフォルト利用期間(延長可能)
- 高度なセキュリティ機能
- 組織レベルの管理機能
2.2 サンドボックスの作成手順

-
開発者ダッシュボードにアクセス
- 左側メニューから「Sandboxes」セクションに移動
- 「Provision Sandbox」ボタンをクリック
-
サンドボックス設定
- サンドボックス名:例「MyApp-DevSandbox」 - 組織名:例「MyCompany-Dev」 - 管理者パスワード設定(ワークスペースへのログインでも使います) - 利用目的の選択 -
プロビジョニング開始
- 「Provision Sandbox」ボタンをクリック
- プロビジョニングが開始されます(通常2-3分)
-
プロビジョニング完了
- サンドボックスが正常に作成されました
- 確認メールが送信されます
- 「Launch in Slack」ボタンが表示されます
2.4 サンドボックスの制限事項
開発・テスト専用のため以下の制限があります:
- データ保持期間:3日間(メッセージとファイル)
- アクティブサンドボックス:同時に最大2つ
- 30日間で最大10個のサンドボックス作成可能
- Slack Connect:サンドボックス間のみ
3. Deno Slack SDK導入 - サンドボックス環境での開発環境構築
3.1 システム要件
🎯 重要:サンドボックス環境が構築済みであることを前提として進めます
Deno Slack SDKを使用するために必要なもの:
- Deno 1.37.0以上 (自動インストールされます)
- Git (Slack CLIの依存関係)
- サンドボックスワークスペース (前セクションで作成済み)
3.2 Slack CLIの自動インストール
最新のSlack CLIは、Denoランタイムとその他の依存関係を自動的にインストールします。
macOS・Linux
curl -fsSL https://downloads.slack-edge.com/slack-cli/install.sh | bash
Windows (PowerShell)
irm https://downloads.slack-edge.com/slack-cli/install-windows.ps1 | iex
3.3 インストールの確認
# Slack CLIのバージョン確認
slack version
# Denoのバージョン確認
deno --version
# 依存関係の診断
slack doctor
3.4 サンドボックスワークスペースでの認証
🔥 重要:本番環境ではなく、サンドボックスワークスペースで認証を行います
slack login
このコマンドを実行すると、スラッシュコマンドとチャレンジコードが表示されます:
📋 Run the following slash command in any Slack channel or DM
/slackauthticket ABC123defABC123defABC123defABC123defXYZ
? Enter challenge code
認証手順(サンドボックス環境):
- サンドボックスワークスペースにログイン
- スラッシュコマンドをサンドボックスのチャンネルに投稿
- モーダルで権限を承認
- 表示されたチャレンジコードをターミナルに入力
認証が完了すると以下のように表示されます:
✅ You've successfully authenticated! 🎉
Authorization data was saved to ~/.slack/credentials.json
3.5 VSCode拡張機能のインストール(推奨)
# VSCodeにDeno拡張機能を手動インストール
code --install-extension denoland.vscode-deno
自動インストーラーを使用した場合、VSCode拡張機能も自動的にインストールされます。
3.6 サンドボックスでの初回セットアップ
サンドボックス環境で開発環境をテスト:
# 認証リストの確認(サンドボックスが表示されることを確認)
slack auth list
# 初回アプリの作成
slack create my-sandbox-app --template https://github.com/slack-samples/deno-starter-template
# プロジェクトディレクトリに移動
cd my-sandbox-app
4. 実践:初回アプリの作成と実行
4.1 サンドボックス環境でのアプリ開発
前セクションで作成したサンドボックス環境とプロジェクトを使用します
4.2 プロジェクト構造の確認
hello-world-app/
├── manifest.ts # アプリ設定
├── functions/ # カスタム関数
├── workflows/ # ワークフロー定義
├── triggers/ # トリガー定義
├── deno.jsonc # Deno設定
└── import_map.json # 依存関係管理
4.3 ローカル開発サーバーの起動
slack run
実行時の流れ:
- 環境選択:作成済みのサンドボックスワークスペースを選択
-
トリガー作成:
sample_trigger.tsを選択してサンドボックス環境に作成 -
サーバー起動:
Connected, awaiting eventsが表示されれば成功
4.4 サンドボックス環境でのアプリテスト
🎯 重要:全てのテストはサンドボックス環境で行います
- 生成されたShortcut URLをサンドボックスワークスペースのチャンネルに投稿
- 「Start Workflow」ボタンをクリック
- フォームでサンドボックス内のチャンネルとメッセージを入力
- メッセージが指定チャンネルに送信されることを確認
✅ メリット:
- 本番環境に影響なし
- Enterprise Grid機能をフル活用
- 安全にテスト・実験が可能
参考リンク
使い倒せ、テクノロジー。(MAX OUT TECHNOLOGY)をミッションに掲げる、株式会社リバネスナレッジのチャレンジを共有するブログです。Buld in Publichの精神でオープンに綴ります。 Qiita:qiita.com/organizations/leaveanest
Discussion