息子さんのOSSの為に死亡証明書を下さい
この記事はLivetoon Tech Advent Calendar 2025の7日目の記事です。
はじめに
こんにちは!
AIキャラクターアプリkaiwaを開発している株式会社Livetoonの開発マネージャーの土川です。
kaiwaの公式サイト
今回のアドベントカレンダーでは、LivetoonのAIキャラクターアプリのkaiwaに関わるエンジニアが、アプリの話からLLM・合成音声・インフラ監視・GPU・OSSまで、幅広くアドベントカレンダーとして書いて行く予定です。
是非、publicationをフォローして、記事を追っていって見てください!
明日は弊社CTOの「【Livetoon TTS】最強の日本語TTSを支える技術」です!
なんの話?
RustOwlという、Rust向けのOSSがあり、その「Successor」になったよという話です。
簡単に言うと「Successor」は、GitHubにて、オーナーの死後に引き継ぎを行う機能です。
RustOwlは一時期、GitHubのトレンドにも載る有名OSSであり、GitHub側からも、Successorを指定してねと作者に届くほどでもありました。
RustOwlの話は、5日目記事をご覧下さい。
「Successor」とは
GitHub上では、「事前指定された後継者」と日本語名で表記されているとおり、リポジトリの所有権の移し先のユーザーを事前に設定する機能です。
RustOwlの作者であるcordx56には、専用の通知が飛んできたわけですが、別に有名OSSではない我々のアカウントでも設定が可能です。
GitHubのSettingsのAccountからできます。

(まあ私の場合、個人Repoに継続的に開発していくべき重要なOSSなんて無いので、設定する必要は無いですね。)
「Successor」は何をするのか?OSS死亡時引き継ぎの難しさ
さて、RustOwlのSuccessorになったわけですが、もし仮に(あんまりしたくない話題ですが)cordx56さんが亡くなってしまった場合、私はどうすればいいのでしょうか?
GitHubの死亡ユーザーポリシーによると、以下の情報でSupportポータルでの連絡が必要だそうです。
- 死亡者のGitHubアカウントや名前などの情報
- 申請者のGitHubアカウントや名前などの情報
- 死亡者と申請者の関係
- 要求の内容(リポジトリの移転など)
- 申請者の身分証のコピー
- 死亡証明書のコピー
はい。最後の 死亡証明書 これを求めるのは当たり前だよね、と思いつつ、これが一番厄介でもあるんですよね。
普通に考えて、後継者はOSSのより中核のメンバーを指定するべきなのですが、死亡証明書の取得などがあることを考えると、親族とは一定近しい人である必要があります。
逆に、親や配偶者に「Successor」をやってもらうのは、GitHubのアカウント取得と管理であったり、OSSへの一定の理解を求められます。エンジニア一家でも無い限り、難しいですね。また、不謹慎ではありますが、日常生活や旅行など、一緒に居る時間が長い分、不慮の事故などに一緒に合う可能性は高く、冗長性に欠けるという問題もあります。
都市伝説ではありますが、コカコーラのレシピを知る2人は、同じ飛行機に乗らないらしいです。冗長性ですね。
そうなると、親族とコンタクトを取るのが比較的容易であり、エンジニアでOSSへの一定の理解があり、でも毎日会うような人ではない人がベストなのではないでしょうか?
私の場合、cordx56とは、大学が同じであり、実家などにも遊びに行ったこともある仲なので、ここら辺の条件を満たしているといえます。
私はRustに関しては基本文法が分かるぐらいで、業務でも使っていないので、まずRustOwlの継続的なメンテナーをするのは難しいです。
実際に上記対処をしなければならなくなってしまったときは、既存メンテナーと相談の上、メンテナーの中から真の後継者を選ぶことになると思います。
実際に「Successor」が使われた例
軽く調べてみたのですが、逆にこの機能を使わなかった例としてVimがありました。
どうやら、Successorを使って、権限委譲などはできるというのは分かっていたそうですが、その結果故人のアカウントが実質無効なアカウントになることが容認出来なかった?ようで、代替案として、家族が故人のアカウントを操作して権限変更などを行ったようです。
まとめ
- GitHubには「Successor」という、死亡時の所有権移譲を事前指定できる仕組みがある
- ただし移譲には死亡証明書などの提出が必要で、親族との橋渡しができるエンジニアが現実的
- 家族だけに頼ると冗長性が低く、逆に同僚だけだと証明書取得が難しいため「近い友人エンジニア」が最適解になりやすい
明日のアドカレ記事は弊社CTOによる、「【Livetoon TTS】最強の日本語TTSを支える技術」です。
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