映像配信の現場をもっと効率的に捌きたい
これは Livesense Advent Calendar 2024 DAY 11 の記事です。
こんにちは。tkyma と申します。
7月からリブセンスに入社し、現在は情報システムグループで業務改善・省力化に注力しています。
業務の中でイベントの映像配信に携わることがあり、その際に配信の構成や仕組みをもっと効率的にできたらと思い調べた内容になります。
直面した課題
元々インフラエンジニアをしていたこともあり、配線作業にさほど抵抗はありませんでした。
電源や通信ケーブルは規格に気をつけて機器同士を繋いでいけば物理配線でそこまで困る部分はありません。
ですが、音声や映像には各配線を接続する際にInput/Outputといった方向性があります。
2つの機器を繋げるのにLANケーブル1本で済んでいたところ、映像配信では映像(入/出)・音声(入/出)と複数本の接続が必要になってきます。
また、方向性があるということはルーティングを考える必要があります。
さらに、経路上ではコンバーター等で信号やアスペクト比が変化し、分配器によって多重に複製されていきます。
おまけに、インターネットを通じて遠隔地の映像を取り込んだり、配信したりといったニーズもあるためPCの内部での仮想的なスイッチングやルーティングも考えなければいけません。
ご家庭のTVくらいでしたら困ることはありませんが、規模が大きくなり構成機器が増えると途端に複雑化してしまいます。
NDI
これらをもっとシンプルにできないかと調べていたときに見つけたのがNDI(Network Device Interface)です。
これを利用することで既存のIPネットワークを利用することができ、双方向性もあるため、配線のコントロールも容易になります。
HDMI信号等をNDIに変換するコンバーターも販売されているので、既存の機器もそのまま利用することができます。
注意点としては、それなりのトラフィックが流れるため、通信経路上のスループットには気をつける必要があります。
ネットワークに乗せるだけでシンプルに
NDI Tools
これだけで多くの機能が利用できるためこれだけで十分かもしれません。
以下のツールもNDI Toolsに同梱されています。
NDI Studio Monitor
ネットワーク内に流れているNDIの映像・音声を確認できるツールです。
配信卓でモニタリングするのにも利用できますし、登壇者に今の状態を確認してもらうのにも利用できます。
mDNSマルチキャストを利用しているため宛先設定など不要なところが便利です。
NDI Router
NDI用のソフトウェアスイッチャーです。
ネットワーク内のNDIを取り込み、複数系統のNDIとして出力することができます。
物理的なスイッチャーが無くてもPC単独で映像の切替が可能になります。
NDI Screen Capture
PCの画面を取り込んでNDIとして出力するツールです。
Web会議ツール等でよく使う画面共有がイメージしやすいです。
NDI Webcam Input
NDIをWebカメラの信号としてPCに取り込めるツールです。
これを利用することで、各種Web会議ツールにNDIの映像を直接流すことが可能になります。
NDI Bridge
WAN越しにNDI通信を可能にするためのツールです。
このツールを経由することで遠隔地の各拠点とNDIを送受信することができます。
遠隔地の映像はWeb会議ツール等を介して行うことが多いですが、Web会議ツール用PCで映像を集約したり切り替えたりといった作業が煩雑になりがちです。
NDIを使うことでカメラ・PC等、拠点にある映像ソースを個別に受け取ることができるので、コントローラーで一元的に制御することが可能です。
活用
NDIは通常の映像配信以外の場面でも便利に活用することができます。
YouTuber、VTuber、OBS
性能を求められるゲーム用のPCと配信用PCを分けて利用するのに、従来からそちらの界隈では割と使われているようです。
(元々は私がバ美肉デビューする際に、負荷のかかるアバターのレンダリングやトラッキングを別PCが担う2PC構成とする際にNDIと出会いました)
OBS用のプラグインが提供されているので、OBS同士で簡単に映像・音声のやり取りが可能です。
スマートフォンカメラの活用
アプリがリリースされています。
Wi-Fiに接続することで、カメラ映像をNDIとしてネットワーク上に流してくれるので、コントローラー側で映像ソースとして選択するだけで簡単に手元カメラを増やすことができます。
無人配信
Studio MonitorにはKVM機能が内蔵されているので、リモート側のPCを操作することもできます。
機器だけ事前に設置してしまえばリモート会場の配信操作を一元的に行う事ができます。
会議中の画面共有
最近はWeb会議ツールで画面共有することが多いですが、NDIを利用する事でWAN回線を利用せずローカルの通信だけで画面・資料を共有することもできます。
映像のキャスト先もグループ化・暗号化できるため特定のメンバーにのみ共有することも可能です。
リアルタイムの編集
Adobe PremiereやAfter Effects向けのプラグインも提供されています。
NDIの映像を直接取り込んで、リアルタイムで編集し配信することもできます。
おわりに
こういった技術を利用することでITエンジニアとしての経験を活かしつつ、より良いイベント運営に貢献できたらと考えています。
NDIにはSDK等もありますので、アイデア次第ではネットワークを利用して様々な運用や表現ができるのではないかと思います。
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