SDVX筐体のコンパネからコントローラーを作る(1)
こちらは記念すべき秋葉原スクールテックブログ第2回目の投稿です!
今回はしまとー班のテラの記事、テーマは「SDVX筐体のコンパネからコントローラーを作る(1)」です!それではどうぞ!
はじめに
こんにちは!
この記事では、コナミが運営する音楽シミュレーションゲーム「SOUND VOLTEX」のコナステ版コントローラーを自作する方法について解説します。
アーケード版の旧筐体のコンパネを今回使いますが、完全自作も可能です。
対象読者
- コンパネからボルテコンを作りたい人
- ボルテコンを自作したい人
この記事の目的
- ボルテコン自作の方法について知る
制作ステップ
ボルテコン自作は大まかに次のステップで行います。
- コンパネを入手する
- 大まかな仕様を決める
- 基板を設計する
- 必要な部品を購入する
- 筐体と基板を組み立てる
- Pro Microにスケッチを書き込む
- 完成!
コンパネを使わない人は1番を飛ばしてください。
今回は制御基板にPro Micro (5V対応)を使用します。
この記事を参考におうちボルテを楽しみましょう!
コントローラーの制作
1.コンパネを入手する
コンパネはヤフオクあたりで見つけることができます。出品数は多くないので、落札できるときに落札して入手しましょう。
価格はものによりますがおおむね1万円~3万円ぐらいで落札されています。
落札して入手したものがこちらです。
ホコリやサビで汚れていたので、分解して清掃します。ボタンも分解して洗剤で洗います。
サビで汚れている
清掃してきれいにしたら、部品を確認します。
この個体はつまみの部品がなく、透明な天板を止めるネジも2本のみでした。また、ボタンもスイッチ部分やバネがかなり柔らかくなっていました。不足部品は後で調達します。
ボタンで押されるスイッチがついたハーネスも確認します。
ケーブルにつながった黒い部品は三和電子製OBSA-LHS1F-LNでした。いわゆる新型ランプホルダーです。これについている青や白の部品はLEDで、おそらく12V駆動のLEDです。自作するときには5V駆動のものに換装します。
ボタンは、左から
- OBSA-60UK (BT-A,B,C,Dボタン用)
- OBSA-45UK (FX-L,Rボタン用)
- OBSA-30UK (STARTボタン用)
です。購入するときの参考にしてください。
ここまで出来たらコンパネは壊れにくい場所に保管しましょう。裏面にMDF材が使われているので、湿気には気を付けましょう。
2.大まかな仕様を決める
基板の設計や部品のリストアップのために、大まかに仕様を決めていきます。
まず、制御基板にはPro Microを使います。HIDになるマイコン基板で、GPIO端子から5V出力できるのでぴったりです。同じようなマイコン基板にRaspberry Pi Picoがありますが、GPIOから3.3Vしか出ないので、5V LEDを使うときに回路が複雑になってしまいます。また、Pro Microは多くの人が自作キーボードなどに使っていて情報が手に入りやすいです。
つまみの部品が無いので、ここは自作します。つまみには回転を検出する部品が必要になりますが、今回はニデックのロータリエンコーダを使おうと思います。過去のボルテコン自作erが使っている、コーパルエンコーダことRES20D-50-201-1です。回す力がアーケードのものと似ているそうです。
RES20D-50-201-1
ボタン側のハーネスは流用しようと思います。ボタン側はこのように接続されます。
ケーブル全体の配線はこのようになっています。
基板側コネクタのピンは、ケーブル側からコネクタを見ると以下のようになっています。
AC筐体ではつまみに3端子の電子ボリュームが使われていますが、今回は4端子のロータリエンコーダを使います。左右合わせて2ピン足りないので、別コネクタから引っ張ります。また、ロータリエンコーダとケーブルもコネクタでつなごうと思います。すると、ケーブルは以下のようになります。
ケーブル側の34ピン端子はレセプタクルなのでプラグに変えるケーブルが必要
このとき、基板側の端子は以下のようになっています。
次に、基板側の仕様を考えます。ランプホルダーは(いろいろ省略すると)次のようになっています。
スイッチ部分はLEDと直列につなぐようにします。そうすることでLEDを別で制御する必要がなくなります。
しかし、このままだと抵抗が低いためにLEDに大電流が流れてしまいます。そのため、電流を制限するために抵抗器をつなぎます。
また、LEDを静電気から保護するために、ツェナーダイオードをつなぎます。
スイッチ7つにはすべてこの回路を使う
ケーブルと基板はハーネス付属の34ピン+追加2ピンを使いますが、この基板とPro Micro基板をつなぐことを考えます。GNDはすべて一つにまとめてしまいます。すると、各ボタンの入力7つと各つまみの電源・出力A相・B相に加えGND1つで合計14ピンになります。Pro Microのピン数に合わせるために、各ボタンとつまみその他で分けて7+7ピンにします。
上の7ピン端子二つがPro Microに繋がる
使用する部品は基板設計の時に決めます。
コントローラーの筐体は次回設計します。
3.基盤を設計する
大まかな基盤の仕様が決まったので、それをもとに基板を作ります。
まずは基板のもととなる回路図を作ります。KiCADを用いて回路図を書いていきます。
KiCADの使い方について詳しく解説してくれているサイトがあるのでコレを参考にしてください。
ケーブルとつなぐ34ピンコネクタから置きます。2x17ピンのシンボルはライブラリにないため、シンボルを作成して配置します。 配線ツールとシンボルを用いてボタンにつなげる部分の回路を描いていきます。
ツェナーダイオードは逆向きに繋げる
Pro Microにつなげるコネクタとつまみ用のコネクタを書きます。
GNDにPower Flagをつけて回路図が完成します。
この回路図をもとにフットプリントをつけて基板作成...となるのですが、そのためには使用する部品を求める必要があります。
まずは34ピンコネクタから。
このコネクタに対応するコネクタを見つけるために、このコネクタを特定します。
おそらくJST製なので、カタログを参考に調べていきます。ピンのピッチは2.5mmでした。また、レセプタクルなので基板対基板用コネクタであることがわかります。2列コネクタであることを考えると、これはXADR-34Vとわかります。これに対応したプラグコネクタはXADRP-34Vです。これを基板に接続するにはB34B-XAD-SS-Nを使います。XADコネクタはXAコネクタとコンタクトが共通なので、ほかのコネクタはXAコネクタにします。7ピンコネクタにはB07B-XASK-1、2ピンコネクタにはB02B-XASK-1を使います。
B34B-XADSS-N
抵抗器とツェナーダイオードも決定します。抵抗器の抵抗値の計算をします。
使用するLED(ランプホルダに対応した三和電子製LED)の順方向電圧は3.6Vぐらいでした。このLEDのおそらく定格電流は販売ページによると45mAとありました。今回は余裕を持たせて20mA程度流します。
抵抗値
で求めることができます。
と求まります。最も近い抵抗値を持つ抵抗器は68Ωのものがあるので、これを使います。
今回は秋月電子で売っているCF25J68RBを使います。
ツェナーダイオードは順方向電圧
データシートを参考に、フットプリントを作成して反映します。
割り当て前にルールチェックとアノテーションを忘れずに
次は基板の設計になります。PCBエディタを開いて、基板を設定して部品を配置します。
ユニバーサル基板を使って手作りする人はPCBを設計する必要はありませんが、通常の2.54mmピッチの基板が使えない点に注意してください。B34B-XADSS-Nが2.5mmピッチで穴ずれが大きく刺さりません。2.5mmピッチの基板が必要になります。
回路図から基板を更新ボタンを押すと部品が出てくる
部品を配置したら配線していきます。GNDは適当に設計してOKです。(裏面にベタグランドを追加するため)
部品を配置してベタグランドを追加した図 基盤を取り付けるためのネジ穴も付けた
PCBが完成したらこれを出力してJLCPCB等のPCBメーカーに発注しましょう。
今回はSTEP3まで完了しました。
✅ コンパネを入手する
✅ 大まかな仕様を決める
✅ 基板を設計する
4. 必要な部品を購入する
5. 筐体と基板を組み立てる
6. Pro Microにスケッチを書き込む
7. 完成!
次回はSTEP4以降を行います。
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