Notionでインセプションデッキテンプレートを作ったので公開します
こんにちは!Lisa Technologies 株式会社インターンのなかがわはじめです!
今回、プロジェクトのキックオフなどに使うインセプションデッキのテンプレートを Notion で作成しました!Duplicate 可にしましたのでみなさんもご自由にお使いください。
本記事では、このテンプレートの作成の経緯やテンプレートの使い方などを紹介します!
作成の経緯
そもそもインセプションデッキって?
インセプションデッキとは、プロジェクトの全体像(目的、背景、優先順位、方向性等)を端的に伝えるためのドキュメントです。ThoughtWorks 社の Robin Gibson 氏によって考案され、その後、アジャイルサムライの著者 Jonathan Rasmusson 氏 によって広く認知されるようになりました。
インセプションデッキとは、10 の「てごわい質問」に答えていくことでチームでプロジェクトに対する期待を共有し共通認識を作るためのツールです。
筆者はそもそもスクラム自体をきちんと理解していなかったため、『カイゼン・ジャーニー』でスクラムの全体像を把握してインセプションデッキの使い所を理解した上で、『アジャイルサムライ』でインセプションデッキの思想に踏み込んでいきました。
考え方としては『イシューからはじめよ』と共通点を多く感じたので、こちらも理解の助けになりました。
社内の課題感
これからどんどん新規プロジェクトを打ち出していくにあたり、共通の確認事項をまとめておきたいということでインセプションデッキの必要性が出てきました。
Google Docs や PPT などでのインセプションデッキのテンプレートは見つかるものの、社内のストック情報の整理に使用している Notion でのテンプレートは見当たらないということで、今回自作することにしました。
テンプレートの紹介
今回のテンプレートは、基本的にはアジャイルサムライで紹介されているものを流用しています。ただし、以下の 2 点を工夫しました。
- 「我われはなぜここにいるのか」や「ご近所さんを探す」などのドラマチックな言い回しが「共通認識を確認する」という目的の妨げになると感じたので、より具体的な内容に言い換えた
- Notion の表現方法に合わせ、書き込みがより簡単になるようにした
以下の表は、本家の見出しと本テンプレートの見出しの比較です。本テンプレートの見出しでは名詞と動詞が混在するところが少しイマイチですが、より具体的な内容がわかるようにしてあります。
アジャイルサムライでの見出し | 本テンプレートでの見出し |
---|---|
我われはなぜここにいるのか | このプロジェクトのミッション |
エレベーターピッチを作る | プロジェクトの核心を明快に説明する |
パッケージデザインを決める | キャッチコピーを決める |
やらないことリストを作る | このプロジェクトのスコープ |
ご近所さんを探せ | プロジェクトコミュニティの全貌 |
解決案を描く | アーキテクチャ |
夜も眠れなくなるような問題はなんだろう? | このプロジェクトの負け筋 |
期間を見極める | 必要な期間を見積もる |
何を諦めるのかはっきりさせる | 何を諦めるのかはっきりさせる |
何がどれだけ必要なのか | 予算と最終責任者 |
先日ローンチした開発ブログ立ち上げプロジェクトを例に、テンプレートの詳細を紹介していきます。
このプロジェクトのミッション
"Start with Why"の精神で、このプロジェクトの真のゴールを明らかにしよう
なぜこのプロジェクトが始まろうとしているのか、その課題感を一言で表します。
開発ブログプロジェクトは、「社内にアウトプット文化を作る」べくスタートしました。
プロジェクトの核心を明快に説明する
エレベーターに同乗している 30 秒の間に投資家を惹き付けなくてはいけないとき、このプロジェクトをどう説明する?
対象顧客や競合(代替手段)との差別化について明記します。プラットフォーム事業など、顧客が複数いるプロジェクトの場合はそれぞれの顧客に対してエレベーターピッチを作成します。
今回の開発ブログも「社内エンジニア」と「社外エンジニア(採用候補者)」で対象顧客が 2 つ考えられましたが、プロジェクトのミッションによりふさわしい社内の方をメインとしました。
キャッチコピーを決める
もしこのプロダクトがスーパーマーケットの棚に並ぶとしたら、お客さんがこの商品を買う理由はなんだろう?
プロダクトの機能と、そこからお客さんが得る効能を言語化するセクションです。最終的には「商品がお客さんに受け入れられる理由」をひとことでまとめ、キャッチコピーを作ります。
今回は社内エンジニアに「開発ブログプロジェクト」に協力してもらえるよう、「業務時間で堅牢にポートフォリオを積み上げる」というキャッチコピーをつけるに至りました。
このプロジェクトのスコープ
このプロジェクトで解決すべき問題、相手にしない問題、今はまだ判断できない問題をそれぞれ明らかにしよう
Board View で「やること」「やらないこと」「(やるかやらないか)あとで決めること」を整理します。ここで最も重要なのは「やらないこと」を明確にすることです。それ以外はざっくり決まっていれば OK で、とにかく「これについては悩まない」というものを確認しましょう。
開発ブログプロジェクトは内部向けの施策なので、SNS でのアピールや PV 数の追跡は思い切ってやらないことに決めました。
プロジェクトコミュニティの全貌
プロジェクトに参加するメンバーそれぞれが責務として期待されることを明確にしつつ、コアメンバー以外で信頼関係を築かなくてはいけない人たちを確認しよう
プロジェクトに関わる人は推進者が思っているよりもずっと多く、彼らと信頼関係を築けていないことがしばしば失敗を招きます。コアチームのメンバーの役割を明記しつつ、コアチーム以外の関係者についても確認しておくことでそういった失敗を防ぐためのセクションです。
「プロジェクトコミュニティ」も若干わかりづらい言葉ですが、「ご近所さんを探せ」よりも具体的で、かつ本家の中で使われている言葉がこれしかなかったので採用しています。「プロジェクト関係者」でもいいかもしれませんね。
アーキテクチャ
アーキテクチャ図初めて描いたので怪しい点があればフィードバックください!!!
使用する手段の関係性を整理しつつ、解決策の全体像を描こう
課題の解決策を具体的に描いていきます。いわゆるアーキテクチャ図を描くことが求められていそうなので、ストレートにアーキテクチャと表現しました。
開発ブログプロジェクトでは以下の解決手段を利用しており、それらの関係性を上のアーキテクチャ図に落とし込みました。
- Next.js(フロント、RSS feed)
- GitHub Actions(一日一回自動ビルド)
- GitHub Pages(ホスティング)
- Zenn(Lisa 公式ブログ)
- 開発メンバーの個人ブログ
- Slack(開発ブログの更新を RSS 通知)
このプロジェクトの負け筋
このプロジェクトに失敗をもたらす問題を書き出して、自分たちで対処すべきものとそうでないものに分類しよう
本家の見出しは「夜も眠れなくなる問題は何だろう?」というドラマチックなものですが、本テンプレートではより戦略家っぽく「負け筋」と表現してみました。負け筋を羅列し、対処すべきかどうかを見極め、「潰すべき負け筋」について共通認識を取ります。
必要な期間を見積もる
このプロジェクトにどれくらいの期間が必要なのかを見極めよう。どんなに長くても半年以内であることが望ましい。
ガントチャートでざっくりとしたスケジュールを確認します。アジャイルサムライに「プロジェクトは小さく保ち、期間は 6 ヶ月を超えないことが望ましい」と書いてあったので、半年以内に収めることを推奨しています。
何を諦めるのかはっきりさせる
プロジェクトがうまくいかなくなったとき、わたしたちは予算・時間・品質の前に現状の広いスコープを諦めなくてはならない。数ある項目の中から、「いざとなったら諦めるもの」を選ぼう。決して、複数の項目に同じポイントを付けてはいけない。
対立する項目に優先順位をつけ、諦める順番を明確にするセクションです。
アジャイルサムライでは「時間」「予算」「品質」「スコープ」の 4 項目がプロジェクトを統治する「荒ぶる四天王」とされており、そのうち「時間」「予算」「品質」については固定して考えるべきだと書かれています。ですので本テンプレートでは本家より詳細に、「スコープをどう諦めるのか」という部分に着目して記述できるようにしました。
トレードオフスライダーも Formula を利用して無理やり表現しています。Point のプロパティに 100 以下の数字を入れると自動的にスライダーの位置が決まるようになっています。
concat(
"重要でない",
" ",
slice("––––––––––––––––––––", 0, (20 * prop("Point(Max: 100)")) / 100),
"○",
slice("––––––––––––––––––––", 0, 20 - (20 * prop("Point(Max: 100)")) / 100),
" "
"重要",
);
開発ブログプロジェクトではこのプロジェクトのスコープで「やること」と「あとで決めること」に分類したものを羅列し、その重要度にポイントを付けてスコープに立体感をつけるカタチになりました。
予算と最終責任者
最後はすでに決まっているかもしれないが、このプロジェクトの予算(人件費)と、意見が割れたときに最終的な決断を下す責任者を明らかにしておこう
本家ではチームメンバーの要件もここで確認していますが、プロジェクトコミュニティの全貌で一度確認したので本テンプレートでは省略しています。
使ってみての感想
スクラム初心者ですが、使い勝手は結構良いと思いました。テンプレートを用意しなくても割と自然にやってることな気がしますが、テンプレートに落とし込むことで業務標準化につながり、振り返ったときに時間を超えて共通認識を取りやすくなると思います。
テンプレートの改善提案等ありましたらぜひコメントまでお寄せください!
記事を最後までお読みいただきありがとうございました!
Lisa Technologies では積極的にエンジニアを採用しております。
資金調達済でこれからどんどん拡大していく面白いフェーズですので、ぜひ覗いてみてください!
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