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UXデザインの教科書まとめ

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序文 まとめ

対象は「製品やサービスを使う体験」

我々は日常的にたくさんのモノを使って日々生活している
「モノ」は、作り手が何らかの意図を持って作り出したもの

製品やサービスを使うのは、それを使うことで得られる結果が嬉しかったり、便利だったりするからだ。

本書では、この「製品やサービスを使う体験」を対象としている。
使う人がいて、作る人が提供する製品・サービスが有る。そしてUXデザインは、両者の関係に着目することからはじまる。

使う人の体験を考えたものづくりを学ぶ

ほとんどの人は自分が困っていることを解決したり便利になるような、自分がほしいと思うサービスを考える

あなたが「あったらうれしい」「欲しい」と思うアプリは、あなた以外の人はどれくらい望んでいるか

どれほどの人が嬉しいと感じてくれるかが問題

UXデザインとは、使う人が嬉しいと感じるような体験を実現する製品やサービスを作ることを目指したデザイン方法論

UXが良いものになるようにと考えるのは、ものづくりに関わる全ての人の願いだが、これを実現するのはなかなか難しい。
特にユーザの状況を理解することは、思った以上に難しい。
同じ様な属性の人であっても生活の中で実践している行動は全く違ったり、逆に同じ行動をしているのに、考えていることは正反対だったりすることさえある。

ユーザーに理解される製品やサービスにするためには、UXデザインの知識が不可欠

手法だけでなく理論やプロセスの考え方を学ぶ

UXデザインはサービス開発の分野では、既に当たり前のように実践されているが、ここでは、短期的に効果が得られることを目的に、UXデザインの手法が使われる傾向がある

UXデザインの手法を適用するだけでも確かに効果はあるが、理論やプロセスに対する知識があれば、その手法を適用する目的や意義について考えることが出来るようになり、更に良い結果を導くことが出来るはず

製造業でもUXデザインに取り組む必要性が高まっている。
その背景には、製品に対する消費者の価値観の変化がある為。

自動車を例に出すと
昔 → 所有しているだけでステータスだった
今 → どんな新しい体験をもたらしてくれるかに価値の意識がシフト

UXデザインは小手先の手法の話ではなく、また、最近流行りのテクニックでもない。先駆的な人たちが、ユーザーにとって「良いものを提供したい」という想いでチャレンジしてきた成果の蓄積によって成り立っている一つの学問領域でもある。

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UXデザインが求められる背景

ユーザーは自分たちのやりたいことを達成する為に企業などが提供する製品やサービスを利用する。
→ 製品やサービスを利用することで、今までできなかったことができるようになったり、やりやすくなったりすれば、シンプルにうれしいし、もっと使いたくなる。

一方、企業にとっては、ユーザーの「うれしい体験」を実現する製品やサービスをいかに実現するかが課題

ユーザーが嬉しいと感じる体験となるように、製品やサービスを企画の段階から理想脳ユーザー体験(UX)を目標にしてデザインしていく取り組みとその方法論をUXデザインと呼ぶ

UXデザインは、デザインの一分野だが、製品やサービスなどを企画・設計・開発・デザインすることを総称して広い意味でデザインと呼んでいる。

UXデザインにおいて実際作られているものは、Webサイト、アプリが多いが、本来はデザインの対象物は限定しておらず、LP、チラシ、取説、サポートセンターの応対の仕方に至るまで、様々なものがデザイン対象物となりうる。

スマホ、タブレットの普及はUXデザインの必要性を格段に高めた

スマホによって様々なユーザーの利用状況に対応した、使いやすいサービスを提供することが求められるようになった

スマホ用のカーナビアプリが登場したことにより、純正のカーナビは値段が高い割に使いにくい製品と感じられるようになってしまった

2000年代前半頃にすでに、ユーザーの感情的な側面に着目したデザインをしようとする試みはあった。プレジャラブルデザインやエモーショナルデザインといったキーワード。

ユーザービリティを超える必要がある
その最大の理由は、ユーザービリティだけでは、ユーザーと製品の関係を捉えたことにならないという気付きがあったこと

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UXデザインの第一歩はサービスがユーザーにどの様な価値を与えるのかを考えるところから始まる。

本書の例
サービスを企画する前提として、「家族を笑顔に」というビジョンをチームで共有することからスタート

サービスがユーザー提供する体験価値を明快に表現したフレーズ

ユーザー像が「ママが使いたい」サービスと明確に決まる

想定ユーザー層と同じ価値観を持つであろうユーザー(条件を満たせば身近な社員でもok)にインタビューを行う

UXを適切にデザインするには、チーム内の思い込みや思いつきだけに頼らず、ユーザーの現状の利用状況や本質的なニーズ調査によって明らかにし、想定ユーザー像であるペルソナを明確にすることが重要となる。

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想定ユーザーのペルソナを作成する為に、インタビューの結果をKA法(ユーザーインタビューなどの定性的データから特徴的出来事をピックアップし、それに対し、分析作業を1枚のカード内で行う分析方法)でユーザーの体験価値を分析する。

これによりチーム内でユーザーの体験価値を共有しやすくなる。

分析を深めることで、ユーザー状況を明らかにし、サービスコンセプトを決めていく。

本書の例
「スマホで撮りためた子供の写真を形に残せる”毎月一冊無料フォトブック”」と設定。

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UXデザインでは、ここからが重要なプロセスとなる
コンセプトが明確になったら、

そのサービスを利用するユーザーが、

  • どの様な体験をしてチームが目標とする体験価値を実感するのか
  • どうすれば再び再利用したい、利用し続けたいと思うのか

ということについて体験の流れを「シナリオ」として検討していく

直接のユーザーだけでなく、ユーザーの周りの人とのやりとりも想定し、体験のシナリオを検討する
ペルソナがシナリオに描いたとおりに体験したとしたら、ビジョンである「家族が笑顔に」を実現できるかどうかを常に意識しながら体験の流れを検討

シナリオを想定ユーザーに見せ、評価コメントをもらいながら修正
→ユーザーインタビューはこうして欲しいよりも事実を聞く

体験シナリオができたら、これをサービスの機能要件に変換していく。
ユーザーストーリーマッピングという手法が使える。
→作成したシナリオを元にそれを実現する為に必要な機能を挙げていく手法
付箋に体験シナリオの各段階に沿ってユーザーの行動を書いて時系列に並べ、それぞれの段階で比喩王な昨日の要件に付箋に書いて並べていく、この際に優先度をつけて整理する。

機能要件が出来上がればあとは、UIのプロトタイプを作成し、製品仕様を詳細化する。

早い段階から想定ユーザーの協力を得て、施策・評価・検証を繰り返しながら詳細度を上げていく。
サービスが具体的になった段階でも想定ユーザーにたいして、目標とするUXが提供できているかを評価してもらい検証する。

UXデザインでは、

  1. ユーザーに提供したい体験価値を定める
  2. ユーザーの利用状況を把握する
  3. コンセプトを明確にする
  4. 理想のUXを設計する
  5. その体験を実現するために製品・サービスを具現化する
    というアプローチをとる。

このようにして開発されたサービスは、実際に多くのユーザーの心を捉えることに繋がった。

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1章では、UXデザインを下記の様に説明
「ユーザーがうれしいと感じる体験になるように、製品やサービスを企画の段階から理想のユーザー体験を目標にしてデザインしていく取り組みとその方法論」

2章ではUXデザインを実践する為の様々な要素とその関係性について解説

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UXデザインにはデザインする相手として3つの主体がある。

  • ユーザー
  • 製品・サービス
  • ビジネス

特にユーザーと製品・サービスとの関係が重要

ビジネスは、製品・サービスを提供する組織
サービスを提供する仕組みがなければ、ユーザーはサービスを受けることができない。
UXデザインにおいてビジネス側の視点は不可欠。
UXデザインの一環として、ビジネスモデルや組織・人材・システムなどを検討することがある。

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UXデザインを実践する為の必要な3つの要素

  • デザインの対象領域
  • デザインの実践
  • デザインの理論

UXデザインでは、ユーザーと製品・サービス、それらを提供するビジネスを「デザインの対象領域」とする。

UXデザインは、ユーザーにとっての嬉しい体験が実現する様な製品・サービスを作り出す為のもので、ユーザーとその製品・サービスだけでなく、それとの関わりにまで対象領域を広げたデザイン。

UXデザインを実践する為にデザインの理論が必要となる。

デザイン理論の中で人間中心デザインプロセスが中心的なもの。

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UXデザインとUXの違い

UXデザイン

  • ユーザーと製品・サービスの間にあるデザインの実践

UX

  • ユーザーから生まれる主観的なもの
  • 製品・サービス利用時の印象、感情的な変化、それに対する感想・評価、扱うモチベーションなどの様々な反応

この位置関係を正確に理解しておくことがUXデザインを進める上でとても大切になってくる。
UXそのものは、あくまでそれぞれのユーザーの主観なので、作り手が手を付けることが出来ないところにある。
だからこそ、ユーザーを中心においた人間中心のデザイン哲学が必要になってくる。
これらを踏まえて、ユーザーにどんな体験をしてもらうかを計画することが、UXデザインの主な目的の一つ。

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2023/08/22

一般に、新しい製品やサービスを作ろうとする時、「◯◯できる製品」とか「◯◯を実現するサービス」というように、最初に製品・サービスのコンセプトを決めることがある。製品・サービスが出来ることを先に考えてしまうと、それによって実現するUXはその機能を使うことが目的になってしまう。
実際の利用文脈では、ユーザーは機能を使いたくて製品・サービスを使うわけではない。
ユーザーの目的を果たすための手段として製品・サービスがあるはずだ。
最初に機能を中心としたコンセプトからデザインをはじめてしまうのは、製造業の製品開発などでよく見られる誤ったアプローチである。

UXデザインでは、ユーザーが求めている体験価値の中からデザインで実現する体験価値を設定し、それを目標としてデザインを詳細化していくことが特徴である。
体験価値とはユーザーが行動によって得られる嬉しいことである。
体験価値はUXの中心的な概念であり、最初にユーザーの嬉しいと感じる原理を設定してしまうところに、UXデザインの最大のポイントがある。機能に合わせてユーザーの行動を都合よく合わせて考えるのではなく、デザインのアウトプットの一番最初にユーザー側の要件を決めること。

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2023/08/23
・UXデザインは、どのようなものを作るかを検討する企画の段階がとても大切
・大切なのは、最初に検討した体験価値や理想のUXを目標として設定し、この目標からブレないように常に確認しながら具体的な制作を進めること
・せっかくUXを重視しながらコンセプトを作っても、製品を作る際にそれを無視した制作が行われてしまうのであれば全く意味がない。

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・UXデザインは、製品・サービスを提供する際の仕組みを作ることまでがデザインの範囲
・Webサービスの場合は、情報の更新体制などを含む運用体制やその運用計画がそれに当たる
・接客を含むような場合は、接客する従業員のマニュアルや制服など、検討するべき仕組みの範囲が大幅に拡大する

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ユーザーとはだれか
・一般に、ユーザーと言うと、製品・サービスを直接使用する個人をイメージする
・しかし、操作する個人のユーザー以外にも多様な役割のユーザーがいる
・トラブル時のメンテする人、サポートする人、危機が出力する結果を受け取る人
・直接システムを操作する人を直接ユーザー、出力結果を利用する人を間接ユーザーと呼ぶ

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UXの定義
・ISO9241-210:2010
・UXPA(User Experience Professionals Association)
・ニールセンーノーマングループ
・ハッセンツァールとトランクティンスキーによる定義

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共通するのは、
・主観的評価
 → 体験の感情的評価(UXの本質的特徴)
・消費者とユーザーの連続性・一体性
 → ユーザーであるまえに製品を購入する消費者。製品を利用する前のフェーズも利用の段階と同様に扱う
・時間的・長期的視点
 → ユーザーとサービスの関わりは、一時的なものに限定されず、長く使う間の経験全てがUXの範囲

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2023/08/28
体験の期間で異なって知覚されるUX

  • 予期的UX
    • 製品やサービスを実際に使用する前の体験
    • ユーザーが製品やサービスを使った体験を想像することなど
  • 瞬間的UX
    • 製品を使っている最中の体験
    • 状況に応じて刻々と変化する
    • ユーザーの反応は感情的なものになる
  • エピソード的UX
    • サービスを使った後に振り返るときの体験
    • 製品を自分なりに使った結果、うまく出来なかったという体験や思いの外良い結果が得られたという成功体験など
    • エピソード的UXは瞬間的UXを内包する
  • 累積的UX
    • 試用期間全体を振り返るときの体験
    • 累積的UXはエピソード的UXを内包する

一連の体験の中のある期間を区切ることで、UXが明確になりユーザーがどの様な評価や印象を抱いた以下を把握できるようになる。

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2023/08/30水

使う意欲と利用態度

UXに影響するモチベーション

同じ製品でも、人によって製品・サービスに接する態度は違うし、使い方や使う頻度も異なる。
(個人差と言ってしまえばそれまでだが、)どうしてこの様な差が生まれるのか。

UXはその製品に対するユーザーのモチベーションによって影響を受ける

インタラクティブ操作を伴う製品は使うのを敬遠したり、最小限の使い方に留めるユーザーも存在。

インタラクティブ製品のUXに強い影響があるモチベーションとして以下の2つがある

  • 製品利用の自己効力感(SE:self-efficacy)
  • 製品関与(PI:product involvement)

自己効力感とは

「課題を成し遂げる為の能力に対する個々の信念」
やれるかどうかではなく、やれるように頑張れると思うか

例えば、目の前のインタラクティブな製品を扱うために

  • 自分で操作する
  • 説明書を読む
  • トラブルに合った場合に、自分自身が対応する
    等に対する能力の度合い

製品の操作が苦手だという人は、自己効力感が低く
逆に、製品の操作が得意な人は、自己効力感が高い

製品関与

ユーザーの個人的な目的や価値観と対象となるインタラクティブ製品に対する関係の度合い

利用意欲で分かれる4つの利用態度

製品利用の自己効力感と製品関与は、強い関係があるものの異なる側面の利用意欲。

オンライン音楽配信サービスの場合
インタラクティブ製品に対する自己効力感が高く操作が得意な人であっても、音楽そのものにあまり興味がなく音楽配信サービスそのものに製品関与が低い場合は、そのサービスを使いこなそうと意欲は湧きにくい。

逆に自己効力感が低くても、製品関与の意欲が高い場合、サービスを使いこなそうとする意欲は湧きやすい。

製品利用の自己効力感(SE:self-efficacy)、製品関与(PI:product involvement)のそれぞれの高低の組み合わせで分ける分類法をSEPIA法と呼び、簡易的なペルソナを作る際のフレームワークとして、UXデザインにも活用されている。

利用行動や評価への影響

利用態度は、利用行動の違いに影響を与えると同時に製品評価にも影響が確認されている。

特に「期待先行ユーザー」は、積極的に利用したい気持ちがあるのにうまく使えないというグループの特性が反映される傾向がある。

製品の満足度が比較的高いと同時に不満足度も高い特徴が得られた。

ユーザーと製品・サービスとの関わりを扱うUXでは、ユーザーの意欲や態度を把握することが、UXをより詳細に理解することにつながる。

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2023/08/31

利用文脈

利用文脈

英語ではContext of Use となるので、「コンテクスト」「コンテキスト」と表現されることもある。
ユーザーがサービスを使用する際の状況やその背景、あるいは使用する前後で起こる様々な出来事のつながりを指す。

なぜ、コンテキストが重要になるかというと、人は脈絡なく製品・サービスを使うことはないから

コンテキストは人によってよって違うこともあり得るし、いつも同じ文脈になるという保証もない。

新しい体験を提案するときにもコンテキストが重要な鍵を握っている。
実際の利用環境では、複雑で多様な利用文脈が存在する中、これをどの様に扱い、デザインにつなげていくかがIXデザインの技法の重要ポイント。

文脈効果

前後の刺激を受けて対象となる刺激の知覚過程が変化することを文脈効果という。
文脈効果は、人間の過去の経験に基づいたものだが、こうした働きにより人間は素早く全体を理解することが出来る。

例えば、車の中にあるカーナビは、運転中に操作するのもディスプレイを見つめることも難しいため、ユーザーは、特に考えることなく車を発信させる前に操作しようとする。
文脈とは、物の使い方に自然とルールをつけるもの。

サービスの使用における文脈を理解することこそが、ユーザーのサービスとの関わりやその意味を把握する上で極めて重要な要素

さまざまな利用文脈の捉え方

人間中心デザインの国際規格としてISO 9241-11, 9241-210があるが、やや複雑なため、もう少し分かりやすく説明したものがある。

山岡俊樹氏の提案の人間工学の観点から物のデザインを「人間とシステムとの調和を考えること」とし、人間 - 機械インターフェース(Human Machine Interface:HMI)が重要と述べている

HMIの5側面

  1. 身体的側面
  2. 頭脳的側面
  3. 時間的側面
  4. 環境的側面
  5. 運用的側面

ATMを例にすると

  1. 身体的側面
    → ハードウェアの形状がユーザーにフィットしているか。
    健常ユーザーは扱えるが、車椅子ユーザーには扱えない。

  2. 頭脳的側面
    → 操作画面がわかりやすいか、見やすさが関係する。

  3. 時間的側面
    → 作業や操作にかかる時間的な面での適合性。
    反応時間が適切でないと、誤操作を招いたりする。

  4. 環境的側面
    → ATMが置かれている店舗空間について、照明器具のせいで画面が見にくくないか、操作音が聞き取りやすい環境か。等

  5. 運用的側面
    → サポート体制やユーザーへの操作案内など

ISOの利用文脈の捉え方は、ユーザーやユーザーの仕事に重点をおいた捉え方であったが、山岡のHMIの5側面は人工物に重点を置いた捉え方

行為のインタフェース

利用文脈をよりシンプルに捉えたものとして、行為のインタフェースの抽出法がある。

人の行動に着目し、改善点を見つけてより良く新しいカタチを見つけていくデザインを「行為のデザイン」と呼ぶ。

日常生活におけるインタフェースを抽出することからデザインを始めるべき。
遊佐ーあの行為位を構成する要素を「どんなシーンで」「誰が」「どんな手段で」「目的を果たすのか」の4つに整理

例えば、駅の階段で母親がベビーカーを持って階段を上がるという行為があった場合、手段を人、物、情報に分けて、「どんな人→親切な人」「どんなもの→階段をそのまま上がれる特殊ホイール、握りやすいグリップ」「どんな情報→エレベーターの設備情報」などが考えられる。

同じユーザー、同じ目的でも多様な手段があり得るという利用文脈の多様性を示すことで、新しい製品・サービスの発想をしやすくする効果を狙ったもの。

どの範囲のコンテキストか

ユーザーの利用文脈によって、目の前のサービスを利用する前にある行為が様々である。
ユーザーはいきなりサービスを使い始めるわけではなく、現状の運用とさまざまなサービスとを比較し、対象のサービスにいきつく。

ユーザーの本質的ニーズは、目の前のサービスの範囲を超えたところにある場合があることを念頭に置き、製品の利用場面だけに限定しない、広い範囲の利用文脈を把握することから、新しい製品やサービスを企画できる可能性もある。
どの様な範囲の利用文脈を把握するのかについては予め検討が必要。

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2023/09/05

ユーザビリティとは

ユーザビリティは日本語では「使いやすさ」と言い換えられることが多いが、正確な訳語は「使用性」。
その製品の機能をユーザーが発揮させるために、どれほど容易に製品の操作を行えるかを表す用語

ユーザーが使いやすいと感じる度合いではなく、サービスの品質を表す言葉であり、あくまでサービス側の概念。

UXの質を左右する要因としてユーザビリティがあり、サービスのユーザビリティが良ければ、ユーザー側のUXが良いものになる可能性が高い

ユーザビリティの定義

UXやHCDの分野においてほぼ標準的な定義となっているものが、ISO 9241-11:1988による定義

ISO 9241-11では、ユーザビリティを次のように定義
「ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目標を達成するために用いられる際の有効さ、効率、および満足度の度合い」

  • ユーザー作業の有効さ → 目標を達成する上での正確さと完全さ
  • 効率 → 目標を達成する際に、正確さと完全さに費やした資源
  • 満足度 → 不快さのないこと、及び製品仕様に対しての肯定的な態度

という主観的評価によって測定できるもの

UXは主観、ユーザビリティは客観なものであるのに、満足度は主観評価なので違和感があるが、
満足度の定義では「不快さのないこと、及び製品仕様に対しての肯定的な態度」となっており、サービスに対する総合的な満足度とは異なっており、ごく限定的な主観評価を扱っている。

これは現在、ユーザビリティの品質を測定する物理的な測定機がないことと関係している。
その為、人間を測定機と見立て、利用文脈を特定したうえで、実際に使用してもらい、その作業成績によって代用するアイデアが9241−11の考え方。

ユーザビリティと利用品質

ユーザビリティは、利用の結果による品質評価であることから「利用品質」と呼ばれることがある。

現在、ユーザビリティには9241-11とは異なる定義も存在し、有力なものの一つに ISO/IEC 25010がある。
このモデルでは、システム品質を「利用品質モデル」「製品品質モデル」「データ品質モデル」の大きく3つに分けている。

ユーザビリティは、製品品質モデルに含まれる。
9241-11では、ユーザビリティと利用品質は同等と捉えていたが、25010では、ユーザビリティをより客観的で主にインタラクションに関する範囲での品質としてとらえ、製品を利用する際の品質と分けている点が特徴

ユーザビリティに関しては、モデルでは製品品質、利用品質を分けて入るものの表裏一体のものだということ。

適切度認識性とユーザインタフェース快美性

適切度認識性
製品またはシステムが利用者のニーズに適切であるかどうかを利用者が認識できる度合い。
ドキュメント、チュートリアル、webサイトの情報提供まで含んだもの

ユーザインターフェース快美性
ユーザインタフェースが利用者にとって楽しく、満足の行く対話を可能性にする度合い
UIデザインの品質に踏み込み、「楽しさ」を指標に含んでいる点がこれまでにない特徴

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目標達成と人工物

目標達成とユーザービリティの考え方

ISO 9241-11 および ISO/IEC 25010によるユーザビリティの定義は、いずれも「目標を達成」する際の有効さ、効率、満足度であるとしている。
目標達成というユーザの行為を扱うのがポイント

人間の行動には、意識的行動と無意識的行動がある。
ユーザビリティは意識的行動において、ユーザーが目標とする状態を得る為に、サービスによって支援される目標達成の度合いであると考えることが出来る。

サービスのユーザビリティは、複数ユーザーの有効さ、効率、満足度を集計し、総合的に分析することで、定量的に評価できる。

目標の階層性

ユーザーの目標とは「ユーザーが意図した結果」を指す。
サービスを使うという視点だけに囚われてしまうと、機能を使うことがユーザーの目標のように感じてしまうが、サービスを使うこと自体は目標を達成するための手段であるはず。

ユーザーの目標には階層性がある。以下のようなイメージ。

目標:子供と一緒の時間を楽しみたい → 手段:子供と一緒に海までドライブする

目標:子供と一緒に海までドライブしたい → 手段:車で海までスムーズに移動する

目標:車で海までスムーズに移動したい → 手段:体験の良いカーナビを利用する
・・・

ユーザビリティを計測するにしても、ユーザーの目標を適切なレベルで理解することが重要。

目標達成におけるユーザーの指向性と満足感

ユーザーとサービスの関わりの中には、必ずしも目標達成だけが目的でない場合もある。

例えば、居心地の良いベッドで寝るという行為は、寝るという目標の達成よりもそのプロセスの心地よさを重視していることになる。
デザインが気に入った腕時計を時間を知るという目標達成とは関係なく眺めるという行動を取ることもある。

HCDの研究を開拓してきた黒須氏は、ユーザの目標達成行動の種類3つに分類した。

  1. 目標指向的行動   → 目標達成がメイン
  2. プロセス指向的行動 → 目標達成の過程がメイン
  3. 状態指向的行動   → 目標達成行動ではなく、純粋にその状態にあるということがメイン

目標指向的行動では「満足感」、プロセス指向的行動では「楽しさ」、状態指向的行動では「心地よさ」

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2023/09/07

人間中心デザインプロセス

人間中心デザインプロセスとは

人間中心デザインプロセスの位置づけ

人間中心デザイン(Human Centered Design:HCD)プロセスはUXデザインを実践するためのプロセスとして活用されるデザイン理論。
特定のデザイン対象分野に限定されず、あらゆるものに当てはめられるプロセス。

UXデザイン = HCDではないが、HCDプロセスに沿って、UXデザインを行う理由はいくつかある。

  1. HCDプロセスが示す開発アプローチの実施が、ユーザー観点からの手戻りや失敗を極力防げるから
  2. 多様な背景やスキルを持つ開発メンバーの基準となると同時に、同じ目標を持つ為の基盤となるから

サービスはユーザーの為に存在する為、開発もビジネスもユーザーや顧客の為にあるべきだが、どんなユーザーなのか、何を求めている顧客なのか、開発メンバー間で共有の理解がないまま開発が行われることが少なくない。

HCDプロセスは、ユーザーが求めていることを明確にし、開発に関わる誰もが目標にする基盤として機能する。

HCDは、造り手がユーザーのことを理解するという二次的理解を前提としたデザイン。

HCDプロセスでは、ユーザーを理解して開発する過程を定義してるが、どれほど深くユーザーを理解できたとしても制作したものがユーザーの求めるものとあっていないものになってしまうことはある。

その様な自体を避ける為に、直接ユーザーに確認すれば良い。
ユーザー自身に確認できないときもユーザーを調査した時に把握したユーザーの体験価値や本質的ニーズに立ち戻って確認する。

これを常に確認しなければ、知らず知らずにユーザーが求めているものから離れていってしまう。
その為、HCDプロセスでは、ユーザーの体験価値や本質的ニーズを常に確認し、問題があれば修正するといった反復修正が必ず含まれる。

ISO 9241-210が示すHCDプロセス

ISO 9241-210 の正式なタイトルは「人間工学 - インタラクティブシステム人間中心設計」

HCDの具体的とりくみ

  1. 人間中心設計プロセスの計画
  2. 利用状況の把握と明示
  3. ユーザーの要求事項の明示
  4. ユーザーの要求事項を満たす設計による解決案の作成
  5. 要求事項に対する設計の評価
    ※1〜4を繰り返し

    設計された解決案がユーザーの要求事項を満たす

4に至った段階で、1〜3の中で必要なフェーズに立ち返る

PDCAと基本的には同じだが、PDCAのチェックは当事者の振り返りを意味することがあり、HCDのプロセス評価はあくまでユーザーによる評価、または、ユーザーを念頭に置いた評価。

HCDの6原則

  1. 設計がユーザー、タスク、環境の明確な理解に基づいている
  2. ユーザーが設計と開発全体を通じて参加している
  3. 設計がユーザー中心の評価により実施され、洗練されている
  4. プロセスを繰り返している
  5. 設計がユーザエクスペリエンス全体に取り組んでいる
  6. 設計チームが学術的なスキルと視点を取り組んでいる
  • 理想的には、ユーザの利用文脈を把握するところから始める
  • 利用文脈が異なればユーザビリティや製品評価は大きく異なる
  • ユーザーには直接参加してもらった方が良いものの予算などの関係で参加してもらえない場合、ユーザーの利用文脈を把握し、ユーザーの立場で評価することが必要
  • プロセスを繰り返すことが原則 → 繰り返す前提の開発計画が必要
  • HCDプロセスを適用する目的は良いUXを実現すること、想定されるUXの全体を対象とした開発でなければ、良いUXの実現はそもそも難しい

HCDのプロセスの目的を端的に言い表すと、ユーザー要求に適合したUXの実現

実際の現場では、ユーザー要求事項が技術やビジネス都合でユーザ要求が実現されなくなってしまうことが多い。
9241-210では、こういったトレードオフが発生する場合、UXの質を落とさない、あるいは高める為に必要なの解決策を導き出すために有効なのは、多様な専門分野のメンバーの参画である。

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2023/10/02

HCDプロセスと開発手法との関係

HCDプロセスは、本来は様々な設計・開発手法に組み込んで活用するものな為、
ウォーターフォール、アジャイル、反復型、いずれでも適用できる。

それぞれのプロセスでそれなりに時間を使うため、ウォーターフォールや反復型としてイメージされがち。

ただ、アジャイル開発でのHCDプロセス形式をそのまま適用することは難しさがある為、まだまだアジャイル型に適用したHCDプロセスは模索中。

アジャイル型のHCDの取り組みは、アジャイルUCD、アジャイルUX、Lean UXなどが有名

ユーザビリティやアジャイルUXのコンサルである橋本徹也氏によると、経験から導かれた基本的な原理・原則は存在し、それが以下に示す3点である。

  1. 内から外へ:ユーザーにとって最も価値の高い中核的な特徴・機能から開発を始め、徐々にオプション部分へ拡大する
  2. 平行して:実装とUXデザインを平行して実施し、かつUXデザインを実装より少し先行させて実施する。具体的には「パラレルトラック法」
  3. 軽い手法で:これまでのHCDプロセスで用いられる手法を、より簡易化した手法を用いる

長期的モニタリングの重要性

HCDプロセスは、製品の開発過程に焦点があるため、製品のリリース後や保守におけるHCDプロセスに意識が向けることが少ない。

短期間の評価と長期間のモニタリングの結果には大きな違いがある。
特に業務システムなどでは、ある程度使われないと仕事の効果を判断できないこともある。

実地用環境におけるUXという観点では、実際の利用文脈でのユーザーの評価を把握することは不可欠であり、こうした製品のUXに関する情報を収集することで、有用な情報を次期製品開発にフィードバックすることが出来る。

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2023/10/04

ISO以外のHCDプロセスの体系

ISO 9241-210のHCDプロセス以外で提案されているHCDプロセスについて

ノーマンの人間中心デザイン

  • 問題特定に長い時間を割くのを避け、暫定的なデザインを繰り返す
  • アイデアを素早く施行し、ひとつひとつの施行の後に手段と問題提起を修正していく
  • 結果として、人々の真のニーズにきちんと合致する製品が得られる
  • ISO 9241-210は、要求事項を洗い出し、それを元に製品を作るが、ノーマンは、問題提起そのものを修正するためにプロトタイピングを繰り返すことを想定している

ハートソンとパイラのUXデザインのライフサイクル「ホイール(Wheel)」

  • UXデザインのプロセスを4つの活動としている
    1. 分析:ビジネスドメイン、ユーザーの仕事、ニーズの理解
    2. 設計:コンセプトデザイン、相互行為、見栄えの創出
    3. プロトタイプ
    4. 評価
  • 課題があれば、その活動自体が繰り返すか、前段階の活動に戻って再度行う
  • デザインとプロトタイプを分けている
  • デザイン過程は多様なアイデアの可能性の検討とユーザーの行動をデザインする
  • プロトタイプ過程は、そこでのアイデアを具体化していく

IDEOのHCDプロセス

  • 2つのデザインプロセス
  • ひとつは、デザイン思考を主に社会的課題に適用させることを念頭に置いたプロセス
    • 下記の3つが重なる領域をHCDの最終アウトプットとする
      • 有用性:人々が求めているのはなんだろう?
      • 実現可能性:技術的・組織的にか実現可能なのはなんだろう?
      • 持続可能性:継続的に持続可能なのはなんだろう
  • もうひとつは、企業の製品開発やデザイン開発を依頼された際のデザインプロセス
    • 視覚化・実現化・評価・改良を借り換えし行う
    • 観察によるユーザー調査が重要だと主張
    • アイデアのインスピレーションを得るためにもデザイナー自身がユーザーの利用環境を訪問したり、自身が体験したりすることで利用文脈を理解することが重要だとしている
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2023/10/04

関連する学問領域

関連学問領域とUXデザイン

  • UXデザインを実施するために、HCDプロセスに関する知識や実践手法に関する知識だけでは十分でない
  • UXデザインは、ユーザーの体験という人間の本質的な反応に関する領域を扱うため、人間に関する工学分野の基礎的な知識は必須
  • 中でも認知工学、人間工学、感性工学は直接的に関わる分野
  • リアルな人間をとらえるには、やはり学問的な基盤を持っておくことが望ましい

認知工学

  • 認知心理学、認知科学の知見を応用し、機器やシステムを利用するユーザーの認知的側面を支援する仕組みを設計するための工学技術分野
  • 記憶、学習、施行、判断、問題解決といった人間の認知的特性を理解した上で、それらに適合させた使いやすい機器やシステムの設計を目標としている
  • アフォーダンス、メンタルモデルと行った言葉は認知工学の用語

人間工学

  • システムにおける人間と他の要素とのインタラクションを理解するための科学的学問
  • 認知工学よりもやや広く組織における運用や管理の体制、あるいは、組織文化といったことも人間とシステムとの相互作用に影響する要因として捉えている
  • 使いやすさも重要な目標ではあるが、人間の肉体的・精神的な疲労や何よりエラーが起こらない安全で快適なシステムとなるような設計を目指している

感性工学

  • 人間の感性をさまざまな方法を用いて把握し、その結果をものづくりに応用するための工学技術分野
  • 人間の感性を把握し、物理量に置き換え、デザインスペックに表現し、全体としての設計を実現する工学的手法
  • 例えば、既存のデザインに対し、複数の感性ワードを用いた心理調査を行い、数量化理論など統計的手法を用いながら、デザインの物理量と完成との関係背のモデルを作ることで、デザインの仕様を明確化するアプローチなどがある
high-ghigh-g

2023/10/11

UXデザイン

UXデザインのプロセス

UXデザインは、デザイン対象領域の既存のUXや利用文脈、製品・市場から現状を把握するとともに、デザインの理論であるHCDプロセスや関連分野の知識、ノウハウを活用して行うデザインの実践である

UXデザインプロセスが灯明のデザインプロセスと異なる特徴的な3点

  1. ユーザー体験のモデル化と体験価値の探索の段階で、体験価値に着目する点
  2. 実現するユーザ体験と利用文脈の視覚化を行う点
  3. プロトタイプの反復による製品・サービスの詳細化の過程

UXデザインの取り組み方

チームの共同作業を通した共通認識の醸成

取り組み方の基本は、プロジェクトチームによる作業が基本。

特にユーザーが現在置かれている状況での利用文脈を調査し、ユーザーに対する理解を深めていく過程では、可能な限り分担作業ではなく、共同作業で行うことが望ましい。

ユーザーに対する理解をプロジェクトメンバーが共同作業を通して共有しておくことは、UXデザインにおいてとても重要な意味を持つ。

アイデア発想の段階では共同作業を通した共有認識を醸成することが、より良い提案を作り出す近道でもある。

良いデザインプロセスと良い意思決定は別次元

UXデザインプロセスに従ったからといってビジネスとして成功する訳では無い。

あるコンセプトデザインでA案への支持率が80%、B案への支持率が20%だった場合、ビジネス判断で20%の人が支持していたB案を選択肢、ビジネス的に成功したというような例はいくつもある。

これまでにない体験価値を提供するものほど、アイデアレベルの評価では上位にならないことはしばしば起こる。

当初は20%の人しか支持していないアイデアでも、体験価値がうまく伝わる様な広告やプロモーション活動の工夫で、ユーザーの意識が変化し、支持が広がっていくかもしれない。

意思決定そのものは誰かが行わなければならない問題

組織全体の意識変革の必要性

UXデザインは、従来型のものづくりの発想とは意識を変えて取り組むことが必要。

UXデザインは、単にユーザーの要求を満たす製品やサービスを作って提供すると言うだけにとどまるものではない。

UXの発想では、企業が考えるべきことは、ユーザーと自社製品との関係性。
価値は、ユーザーが製品を手段として利用した経験によって生み出されるもので、企業が全てを与えるものではない。

新たな勝ちをつける付加価値からユーザーの体験価値を提案することへと視点がシフトしている。
ユーザーが製品を使う経験を通して実現できる生活における体験価値こそ、求められているもの。

UXデザインに取り組む際には、組織全体でこのことを理解し、意識変革をしなければならない。

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2023/10/30月

利用文脈とユーザー体験の把握

  • 利用文脈とユーザー体験の把握はUXデザインを始める第一歩
  • 調査と言っても市場調査、アンケート調査のような大人数に求める調査ではない
  • 少数に対し、実際の利用環境において、心理的な要因にまで迫るように丁寧に把握する様な調査を指す

実際の利用環境でのユーザー行動は、企画者やデザイナーなどが想像もしていないようなことが当たり前のように行われていることがほとんど。
その様な実際のユーザーの行動を調査することで、ユーザーが求めている体験価値や本質的ニーズに繋がる情報を得ることが出来、新しい製品やサービスのヒントになる。

ユーザー調査を実施する為、まずは調査計画を立案する必要がある。

調査計画

  • プロジェクトの目的にあった適切な調査手法の選定
  • デザイン対象となるユーザーの行為の設定
  • デザイン対象となる調査対象者の設定

「デザイン対象となるユーザーの行為」について

  • ショッピングに関するアプリの場合、「買い物をする」という行動のことを指す
  • プロジェクトのテーマに限定した行為を対象とするか、より広い対象とするかはプロジェクトの目的による
  • 一般的に、新製品、新サービスを作るための手がかりを得たい場合は、やや広く対象行為を設定しておくほうが気づきが多い。

「デザイン対象となる調査対象者」について
テーマに寄っては既存ユーザーを対象とするだけでなく、ユーザーでなくなった人、つまり、使用をやめてしまった人を対象に調査したほうがいい場合もある

ユーザー調査というと、従来の業務分担のいめーじからマーケ担当の仕事と思いがちだが、UXデザインにおけるユーザー調査はそれ自体が製品づくりのためのデザイン行為の一部。

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2023/10/31

代表的な手法

ユーザー調査の種類

定量的調査(多数の人の情報を数量に変換して把握する調査)

  • 行動ログ
  • アンケート
    →事前に仮説がある場合に用いる事が多い

定性的調査(発話、写真、映像など数値では表現されない情報把握のための調査)
→事前に仮説がない場合に用いる事が多い

UXデザインにおける調査では、新しい気付きやユーザーの体験価値、本質的なニーズの仮説を得るために行うことから、主に定性的調査が用いられる。

定量・定性のどちらか一方を選択しなければならないと行ったものではなく、これらを組み合わせてより深くユーザーのコンテキストを理解すべき。
定量・定性調査目的に応じて組み合わせる方法を混合研究法(MMR:mixed-methods research)と呼ぶ。

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2023/11/01

ユーザー調査の代表的な手法

2つに分けられる

  • ユーザーの感情・意見・態度・価値観など、ユーザー自身の答えを知るための手法群
  • ユーザーの生活世界、利用文脈、社会・文化的背景、物理的環境などを含めユーザーが置かれている環境全体を知るための手法群

ユーザーの生活世界やコンテクストを知る方法には、下記がある

  • 現場に出向き実際の現場を通して知る方法
  • ユーザーの過去の経験を引き出すことから把握する方法

また、調査手法ではないが、調査で得られたユーザーの生活世界・コンテクストを整理する手法がある

闇雲に手法を適用すれば良い結果が得られるわけではないことには留意すべき
Webサービスなどの分野では、調査としてアクセスログ解析をすることが多く、たしかにアクセスログはユーザーの操作の結果であり、ユーザー行動の一端を把握することは出来るが、それだけではUXデザインにおける利用文脈を把握したことにはならない。

混合研究法の一つの組み合わせとして用いることは有効

ユーザーの感情・意見・態度・価値観を知る

  • アンケート
  • インタビュー
  • グループインタビュー
  • フォトエッセイ

ユーザーの生活世界、利用文脈を知る

  • エスノグラフィ(フィールドワーク・行動観察)
    • 観察
    • 参与観察
    • シャドーイング
    • フライ・オン・ザ・ウォール
  • コンテクスチュアル・インクワイアリー
  • ダイアリー法
  • 体験曲線法

ユーザーの生活世界・利用文脈を整理する方法

  • AEIOU法
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文脈を理解したデザイン手法の原点「コンテクスチュアル・デザイン」

  • ユーザーの利用文脈を把握したうえでデザインする手法
  • フィールドで得た情報をデザインにつなげていく具体的なステップを示し、文脈理解を重視するUXデザイン手法の原点

調査対象者の選定方法について

得られる調査対象者は、得られる調査結果の範囲や質、あるいは、解釈を左右する為、選定がキーポイント

リードユーザー法

  • 将来を先取りしているユーザをリードユーザーと呼ぶ
  • リードユーザーは、将来一般的になるニーズに直面しており、ニーズに対する解決策を獲得することで便益を得る
  • どのようにリードユーザーを発見し、調査に協力してもらうかを考えると、実践は簡単ではない

エクストリームユーザー法

  • 一般的なユーザーでは経験できない特殊(極端)な状況で製品やサービスを使うユーザー
  • かつてユーザーだったが、今は使っていない人も極端なユーザーとして位置づけられる
  • エクストリームユーザーの中にはリードユーザーが居る可能性も高い
  • エクストリームユーザーを調査する場合、一般的なユーザーに対する調査も併せて実施する方が良い

SEPIA応用法

  • SEPIA法は、サービス利用における自己効力感とそのサービスへの関与度によって、ユーザーを4つの群に分ける方法
  • これを応用し、デザイン対象となる行為について、ユーザー自身がその行為を行う自己効力感、その行為に対する関与度の評価を事前アンケートによって把握し、4群に分け、その群の中からそれぞれ数名を調査対象として選出する方法
  • ユーザーが行為を行う際のスキルに幅が想定されたり、関心の度合いに幅が想定されるようなものの場合に適用することが出来る。

トライアンギュレーションによる調査計画

  • 混合研究法の一つ、三点測量という意味
  • 仮説立案の妥当性を高める研究アプローチ

UXデザインでは、ユーザー調査で得られたデータから、ユーザーの生活世界や利用文脈の仮想的モデルをつくり、その仮説に基づいてユーザーの体験価値や本質的ニーズを導出する

トライアンギュレーションでは、定量・定性調査を組み合わせるだけではない。
定性的調査であっても異なる方法を組み合わえることでより深い理解に繋がるデータを得ることが出来る。

良く使われる方法は、行動観察とインタビューを組み合わせること
両者は互いに補い合う相補の関係にある。

観察とインタビューを繰り返し行うことでより深い理解に繋げ、観察法で見えてきたことをインタビューでたずねると、ユーザーの行為の意味を理解できるようになり、更に観察で見えてくる行動もより詳細に見ることが出来、また別の行動を発見できるようになる。

この様な観察よインタビューの繰り返しこそ、ユーザー調査における基本のスタイルと言え、
こうした考え方を方法論として体系化したものの一つが、コンテクスチュアル・インクワイアリーである。

high-ghigh-g

2023/11/02

ユーザー体験のモデル化と体験価値の探索

この段階では、前段階で調査したコンテキスト、ユーザー体験の実態を分析する

  • ユーザーの体験価値や本質的ニーズの仮説を導出
  • 何をデザインすべきかの手がかりをえる
  • 実現すべき体験価値の候補を検討する

ユーザー調査を行えば、ユーザーが欲しいと考えるものはすぐに分かるという誤解はよくある

  • 調査で得られた情報をデザインに繋げられなければ、どれほどリッチな情報を得ても意味はない
    • インタビュー等の定性調査で得られた情報はリッチであるものの様々なレベルの情報が混在
  • 必要になってくるのが、定性的なデータ分析手法

定性的なデータ分析を詳細に行えば良いというものでもない

  • UXデザインとして、何を提案すべきかの手がかりが得られる様な分析が必要
  • ユーザーの情報をデザイン家庭で扱いやすい形に整理することがこの段階で必要な作業

伝統的なものづくり企業の組織では、ユーザ調査とデザインはそれぞれ別の専門家が実施していることが多い

  • このやり方では、本来デザインに役立つユーザーの情報が抜け落ちたり、デザイナーが思い込みで考えたユーザー像にもとづく提案になってしまったりする
  • ユーザー調査とデザインの間のギャップをいかに埋めるかが実践上のポイント

解決策

プロジェクトのメンバー全員がユーザー調査に積極的に関与すること

  • ユーザーの利用文脈をより共感できる
  • 体験価値の仮説の探索がやりやすくなる

しかし、全員参加が難しい場合がある

  • ユーザ調査に基づいたユーザーモデル(ペルソナ)を作る
  • ローデータを丁寧に分析し、その過程でユーザーの利用文脈に共感していく作業でもある
  • ユーザー調査の現場に参加できなかった関係者も含め、多くの関係者と一緒に実施すると良い
  • 途中参加メンバーにも必ず調査結果のローデータに目を通してもらうことが不可欠

この段階では、ユーザー調査で得られた結果を分析することに集中し、ビジネス戦略やビジネス要求事項について一切考えなことが大切

  • ビジネスの要求事項が明確であればあるほど、都合の良い結果しか得られないことになる
  • 現実のユーザーの利用実態と向き合い、そこからデザインの手がかりを得ることだけに集中するのが大事

プロジェクトメンバーの多くがユーザー調査に参加できず、現実のユーザーの利用文脈を共有しにくい場合

  • プロジェクトメンバー自身がその業務を体験したり、模擬したりすること
  • これで注目すべきニーズや体験価値に気付けることが多い
  • 関係者がユーザー体験を追体験することを共感ワークという