Open2

テスト計画

buchibuchi

PDMシステム移行テストシナリオ

はじめに

本文書は、PDMシステムの移行に伴うテストシナリオを定義したものです。システムの基本機能である「新規作成」と「設計変更」のワークフローについて、テストの手順と確認項目を詳細に記述しています。テストは段階的に実施し、各段階で適切なテストデータを使用することで、効率的かつ安全な検証を行います。

テストデータの運用方針

フェーズ1:初期テスト(3月前半)

ダミーデータを使用して基本機能の検証を行います。以下のようなテストデータを準備します:

  • 単純な形状の3Dモデルデータ(立方体、円柱など)

    • 例:TEST_CUBE_001.SLDPRT(単純な立方体)
    • 例:TEST_CYLINDER_001.SLDPRT(単純な円柱)
  • 基本的な属性情報

    • 部品番号:TEST-P-0001、TEST-P-0002
    • 部品名:テスト用部品1、テスト用部品2
    • 材質:SUS304、A5052
    • 重量:1.0kg、2.5kg

フェーズ2:検証テスト(3月後半)

既存の一般的な部品データのサンプルを使用します:

  • 過去の一般製品の部品データ

    • 例:標準ブラケット(BR-STD-0023)
    • 例:汎用カバー(CV-GEN-0045)
  • 実際の属性体系に基づくデータ

    • 実際の部品番号体系に従った番号
    • 標準的な部品名称
    • 社内で使用している材質コード

フェーズ3:試験運用(4月)

実データを使用しますが、以下の基準で選定します:

  • 開発完了済みの製品データ
  • 一般公開されている製品の部品データ
  • 機密性の低い社内標準部品データ

1. 部品データの新規作成テスト

1.1 テストの目的

新規部品データの登録から承認までの一連の流れが正しく機能することを確認します。

1.2 前提条件

テストフェーズに応じて、以下のデータを準備します:

フェーズ1(ダミーデータ):

  • テスト用CADデータ:TEST_BRACKET_001.SLDPRT
  • プロジェクトコード:TEST_PROJ_2024
  • 属性情報:
    • 部品番号:TEST-P-0001
    • 部品名:テストブラケット1
    • 材質:SUS304
    • 重量:0.5kg

フェーズ2(サンプルデータ):

  • 既存の標準部品CADデータ:BR-STD-0023.SLDPRT
  • 実際のプロジェクトコード体系に基づくコード
  • 実際の属性体系に基づく情報

1.3 テスト手順

  1. 設計者アカウントでシステムにログインする

    • テストユーザーID:TEST_USER_01
    • 役割:設計者
  2. 新規作成画面を開き、プロジェクトを選択する

    • フェーズ1:TEST_PROJ_2024を選択
    • フェーズ2:実際のプロジェクトコードを選択
  3. CADデータをアップロードする

    • フェーズ1:TEST_BRACKET_001.SLDPRT
    • フェーズ2:BR-STD-0023.SLDPRT
  4. 属性情報を入力する(フェーズ1の例):

    • 部品番号:TEST-P-0001
    • 部品名:テストブラケット1
    • 材質:SUS304
    • 重量:0.5kg
  5. 承認フローの実行

    • 承認者:TEST_APPROVER_01
    • 承認コメント:「テスト承認」

2. 設計変更テスト

2.1 テストの目的

既存の部品データに対する設計変更作業が適切に処理されることを確認します。

2.2 前提条件

フェーズ1(ダミーデータ):

  • 変更対象:TEST_BRACKET_001.SLDPRT(Rev.A)
  • 変更後データ:TEST_BRACKET_001_REV_B.SLDPRT
  • 変更内容:取付穴位置の変更

フェーズ2(サンプルデータ):

  • 変更対象:BR-STD-0023.SLDPRT(現行版)
  • 変更後データ:実際の設計変更ルールに基づく
  • 変更内容:実際の変更管理プロセスに基づく

2.3 テスト手順

  1. 既存データの検索

    • フェーズ1:部品番号「TEST-P-0001」で検索
    • フェーズ2:実際の部品番号体系で検索
  2. 設計変更作業の実行

    • 変更理由:テスト用設計変更
    • 変更内容:取付穴位置の変更(2箇所)
  3. 承認フローの確認

    • 承認ルート:標準承認フロー
    • 関係者への通知確認

3. 追加確認事項

3.1 セキュリティ確認

異なる権限レベルでのアクセス制御を確認:

  • 一般ユーザー(TEST_USER_02)
  • 承認者(TEST_APPROVER_01)
  • 管理者(TEST_ADMIN_01)

3.2 システム連携確認

  • CADシステムとの連携
  • ERPシステムとのデータ連携
    テスト用の連携データは、本番環境と同じフォーマットで、内容のみテストデータとする

4. テスト結果の記録方法

各テストの実施結果は、以下のフォーマットで記録します:

テスト実施記録:

  • 実施日時:YYYY/MM/DD HH:MM
  • テストフェーズ:フェーズ1/2/3
  • 使用データ:テストデータ識別子
  • テスト実施者:担当者名
  • テスト結果:合格/不合格
  • 特記事項:気づいた点や問題点
  • 添付資料:スクリーンショットなど
buchibuchi

PDMシステムにおける3DCADアセンブリ管理:ボトムアップアプローチによる実装と検証

はじめに

製品開発における3DCADアセンブリモデルの管理は、PDM(Product Data Management)システムの中核的な機能の一つです。しかし、その実装と検証は複雑な課題を伴います。本稿では、ボトムアップアプローチと例外処理の組み合わせによる、効果的な実装・検証手法について解説します。

複雑さの本質

PDMシステムにおける3DCADアセンブリ管理の複雑さは、主に以下の3つの要因に起因します:

1. 構造的な複雑さ

現代の機械製品は、数百から数千の部品で構成される複雑なアセンブリ構造を持ちます。これらの部品は単純な親子関係だけでなく、以下のような多層的な関係性で結ばれています:

  • 位置的な制約(Assembly Constraints)
  • 形状の相互依存関係
  • 設計意図に基づく関連性
  • 製造上の要件による制約

2. プロセスの複雑さ

製品開発プロセスでは、多数の関係者が同時並行で作業を進めます:

  • 複数の設計者による並行設計
  • 部門間での設計データの共有と活用
  • 承認プロセスにおける多段階のレビュー
  • 設計変更に伴う影響範囲の管理

3. 組織的な要求の複雑さ

様々な部門が異なる目的で3DCADデータを必要とし、それぞれが独自の要求を持っています:

  • 設計部門:詳細な設計情報へのアクセス
  • 製造部門:製造に必要な形状・寸法データ
  • 品質管理部門:検査基準との照合用データ
  • 調達部門:外注先とのデータ共有

ボトムアップアプローチによる実装

この複雑な課題に対処するため、以下のような段階的なアプローチを提案します。

第1段階:基本機能の実装と検証

最も基本的な機能から開始し、システムの核となる部分の信頼性を確保します:

  1. 単一部品の管理

    • 新規作成とチェックイン
    • バージョン管理の基本メカニズム
    • メタデータの登録と管理
  2. 単純なアセンブリの管理

    • 部品間の基本的な関係性の定義
    • アセンブリ構造の保持
    • 基本的な参照関係の管理

第2段階:複合機能の実装

基本機能を組み合わせた、より複雑な機能を実装します:

  1. 複数設計者による並行設計

    • チェックイン/チェックアウトの制御
    • 競合の検出と解決
    • 変更履歴の追跡
  2. 承認プロセスの管理

    • ステータス管理
    • 承認フローの制御
    • 権限管理

第3段階:例外処理の実装

実務で発生する様々な例外的状況への対応を実装します:

  1. 緊急の設計変更対応

    • 承認済みデータの緊急修正
    • 影響範囲の即時評価
    • 変更通知の迅速な展開
  2. システム障害時の対応

    • データ整合性の保護
    • 復旧手順の確立
    • バックアップ/リストア機能

検証アプローチ

実装した機能の検証も、同様に段階的に行います:

基本機能の検証

  • 単一操作の正確性
  • データ整合性の維持
  • 基本的なエラー処理

複合機能の検証

  • 複数機能の連携動作
  • パフォーマンスの確認
  • ユーザビリティの評価

例外処理の検証

  • 異常系シナリオでの動作
  • リカバリー機能の確認
  • セキュリティの検証

導入のポイント

システムの導入に際しては、以下の点に留意することが重要です:

  1. 段階的なロールアウト

    • パイロット部門での試験運用
    • フィードバックの収集と改善
    • 段階的な展開範囲の拡大
  2. ユーザートレーニング

    • 基本操作の習得
    • 例外時の対応手順の理解
    • ベストプラクティスの共有
  3. 運用体制の整備

    • サポート体制の確立
    • 問題発生時の対応フロー
    • 定期的な運用状況の評価

まとめ

3DCADアセンブリ管理の実装は複雑な課題ですが、ボトムアップアプローチと適切な例外処理の組み合わせにより、堅牢なシステムを構築することが可能です。基本機能の確実な実装を基盤として、徐々に複雑な機能を追加し、最後に例外処理を組み込むという段階的なアプローチが、成功への鍵となります。

また、実装後の運用においても、継続的なモニタリングと改善を行うことで、システムの信頼性と有効性を維持・向上させることが重要です。これにより、組織の製品開発プロセスを効果的にサポートする、価値の高いPDMシステムを実現することができます。