社内で雑談するための Slack アプリを内製して、運用してみた結果
はじめに
1年ほど前に、社内で雑談する体験を良くするために、Slack アプリを開発しました。
約1年間運用してみて、良かった点や改善したい点がいろいろ見えてきたので、作ったきっかけから運用してみた結果についてまとめてみます。
きっかけ
元々、弊社の開発部・プロダクト部では Random Coffee という週に一度雑談する機会があり、randomcoffee というSlackアプリを活用してメンバー同士の雑談を行なっていました。
Random Coffee の時間は、毎週ランダムにペアが組まれ、その週のどこかで30分おしゃべりをする、という取り組みです。
この取り組み自体はよかったのですが、以下のようないくつかの課題がありました。
- 完全にランダムなため、同じ相手と連続でマッチすることがある
- マッチング後の予定調整や雑談場所の調整が面倒
- 通常業務の忙しさから雑談が後回しになり、スキップされることが多い
自分たちでもっと体験が良い雑談アプリを作れるのでは?と思い、社内のメンバー数人で実際に作ってみることにしました。
どんなアプリを作ったか
開発したアプリは、従来の Random Coffee の仕組みを活かしつつ、社内向けにアップデートしました。
具体的には以下のような機能を入れました。
1. 重複を避けるマッチングアルゴリズム
単純なランダムではなく、過去のペア履歴を考慮して、同じ相手と連続でマッチしないように調整しています。
また、はじめて参加する人にはできるだけ多くの人と話せるように3人でマッチングされやすいようになっています。
ペアが決定すると、自動で Slack にメッセージが送信されます。

2. Google カレンダーと自動連携
マッチングが決まると、ペアの2人(または3人)のGoogle カレンダーに予定が自動作成されます。
ペアごとに Slack メッセージも送信されるため、スレッドでスケジュール調整が簡単にできます。
3. Gather の雑談スペースを自動割り当て
弊社では、社内コミュニケーションに Gather を活用しています。
マッチングと同時に、Gather 内の雑談スペースが自動で割り当てられ、URL が Google カレンダーの予定に紐付き、Slack でも通知されます。
雑談用のカフェ風スペースも新たに用意して、仕事する場所と切り離してみました。

4. AI が毎週トークテーマを提案
話すネタに困ったときのために、毎週 AI がちょっとしたトークテーマを自動で決めてくれます。
「最近ハマっていること」や「最近の面白い発見」などのちょっとしたトークテーマが毎週自動で Slack に投稿されます。
5. Slackチャンネル入退室で参加管理
参加したい人は専用チャンネルに入るだけでOKです。
チャンネルから抜けると次回のマッチングから外れるため、気軽に参加できます。
開発方法
この記事では詳細までは書きませんが、アプリ自体はすべて GAS(Google Apps Script)で実装しました。
毎週決まった曜日・時間に GAS のトリガーでスクリプトを実行し、
- Slack API でチャンネル参加者一覧を取得
- 過去のマッチング履歴を参照しながらマッチングロジックを実行
- 結果を Slack に投稿
- Google Calendar API で、マッチしたメンバーの予定を自動作成
という一連の処理を GAS 上で実行しています。
外部サーバーを用意する必要がなく、シンプルに運用できる構成になっています。
1年間運用してみた結果
全体的には体験が良いという意見が多く、好評でした。
一方で、実際に運用してはじめて分かった課題もいくつかあります。
良かった点
スキップされることが減っている
同じ相手と続けてマッチングされることが減ったことで、スキップの回数も少なくなったように感じています。
また、Google カレンダーの予定が自動で作成され、マッチした相手との Slack スレッドも自動生成されるため、日程調整がしやすくなった点もスキップが減った要因のひとつだと思います。
トークテーマが意外と好評
正直あまり使われるかわからなかったんですが、意外と使ってるという声がありました。特によく話すメンバー同士だと、テーマがあった方が話しやすいのかもしれません。
みんなが雑談しているのがわかるので罪悪感がない
Gather だと周りで他のメンバーも雑談しているのが視覚的にわかるので、仕事中でも雑談しやすくなり、罪悪感が減ったという声がありました。
祝日や社内イベントがある時に手動でスキップできる
雑談予定の日が祝日だったり、社内イベントでみんな参加できない場合でも手動でスキップできるため、不要な通知を送らずに済むようになりました。
課題
同じチームの人とマッチングするとスキップされがち
普段よく話すチームメンバーとマッチングすると、スキップされるケースが多いようです。
今後は所属しているチーム情報も取得して、なるべく別チームのメンバーとマッチングするロジックの追加を検討したいです。
相手がスキップすると雑談できない問題
以前からあった課題ですが、マッチング相手がスキップすると、雑談相手がいなくなってしまいます。
相手がいなくなった人向けに、誰でも入れる「喫煙所」的なスペースを Gather に作ってもいいかもと思いました。
Slack App ともマッチングしてしまう問題
Notion AI や Devin など、Bot 機能を持つ Slack App がチャンネルに参加していると、人間と同じようにマッチング対象に含まれてしまうことがありました。
AI と雑談できたら面白そうなのですが、まだそこまでの機能はないため、Slack App を除外する処理は改善ポイントとして残っています。
雑談チャンネルへの参加率は特に上がっていない
任意参加なので大きな課題ではないですが、導入してから参加人数が大きく増えたかというと、そうでもありませんでした。
雑談したいタイミングだけ参加すればいい、という気軽さを大切にしているので、今のままでも健全な状態だとは思っていますが、雑談の意義やメリットを社内でもう少し共有できれば参加者が増える可能性はありそうです。
まとめ
雑談用の Slack アプリを自作して1年ほど運用してみましたが、実際に使ってもらう中で、良かったところもあれば、改善したいポイントもいろいろ見えてきました。
最近は社員数も増えてきてますが、新しい社員からは、
「他チームの人と話す機会があってよかった」
「仕事の依頼や相談がしやすくなった」
といった声を聞くこともありました。ちょっとした雑談が、新しいメンバーが会社に馴染むきっかけにもなっているようです。
せっかく内製したアプリなので、これからもゆるくアップデートを続けながら、社内のチームを超えたコミュニケーションに貢献できたらいいなと思います。
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