「思考のギア」を言語化した
結論: 思考のギアとは
思考のギアとは 状況に応じてInput/Outputの精度とスピードのバランスを調整する能力と私は考えています。
本記事の対象読者・スコープ
- 対象読者:思考のギアって存在知ってるけど、中身がよくわからんって人
- 書くこと
- 思考のギア=結論とした理由
- どう活用できそうかの考察
- 書かないこと
- 思考のギアという概念の説明
はじめに
思考のギアという概念、ご存知でしょうか?
私は2, 3年前に先輩に教えてもらって初めて知りました。最初はそんなものかと聞いていましたが、その人だけでなく優秀な方々が共通してこの概念を持っていることに気づきました。長らく理解できずにいましたが、最近ようやく自分なりに腹落ちしたので記事を書いた次第です。
※思考のギア自体の概念については、下記の記事が参考になります。思考のギアって何?という方はこちらもご覧ください。
結論に至ったきっかけ
結論は変わらないので興味のある方だけ読んでください
きっかけは音ゲーを遊んでいた際の気づきでした。音ゲーの基本はリズムに合わせてノーツを叩いてコンボを繋ぐことですが、私はノーツの量が増えたり速度が上がる時に異なる対策が必要だと気づきました:
-
ノーツの量が増える場合
→ 対策:ノーツをじっくり見て、見落としを減らす(精度重視) -
ノーツの速度が上がる場合
→ 対策:周辺視野でざっくりノーツを把握し、認識が追いつかなくなるのを防ぐ(スピード重視)
この「状況に応じた思考の切り替え」こそが思考のギアの本質だと気づきました。つまり:
Input(情報収集)とOutput(反応・行動)それぞれについて、「精度」と「スピード」のバランスをどう取るか が重要なのです。
思考のギア=結論とした理由:思考のギアの2軸モデル
最終的な結論として、思考のギアは次の2軸の組み合わせで整理できると考えました:
- Inputの精度 vs スピード:情報をどれだけ正確に・詳細に取り込むか、または素早く大まかに把握するか
- Outputの精度 vs スピード:反応や成果物をどれだけ正確に・詳細に出すか、または素早く大まかに出すか
ただ、2軸の組み合わせだと4通りが考えられますが、一般的に思考のギアは「ハイギア」、「ニュートラルギア」、「ローギア」の3種類と言われがちです。
2種類の分類方法は矛盾しているわけではなく、実際は下記のように対応していると考えております。
- ハイギア:Input/Outputともにスピード重視
- ニュートラルギア:特に思考のギアを変えていない通常の状態
- ローギア:Input/Outputともに精度重視
なぜ2種類の組み合わせしかギアの定義がないのかは、組み合わせを1つずつ見るとよくわかります:
Input 精度重視 | Input スピード重視 | |
---|---|---|
Output 精度重視 | ⭕️(詳細な分析と対応) | △(早とちりのリスク) |
Output スピード重視 | ×(時間の無駄) | ⭕️(素早い対応) |
Input/Outputがともに精度重視・スピード重視は言わずもがな、特に問題ないと理解できるかと思います。
他の組み合わせがNGなのはそれぞれ「Input次第でOutputに出せるものに限界があるから」です。以下で具体的に説明します。
NG例1: Input スピード重視、Output 精度重視の場合
Inputで大まかに情報を把握して高精度のOutputをしようとすると、それは足りない情報を自分で補完して出す必要が出てきます。
その認識が合っていれば良いですが間違っていたらただの早とちりで手戻りのリスクがあるわけです。
(ただ、ここを△としたのはいわゆる阿吽の呼吸というやつで、「あれやって」とかで伝わる関係性もあるので一概にNGというわけでは無いのかな?という思いがあったりします。)
NG例2: Input 精度重視、Output スピード重視の場合
せっかくInputを高精度で入れたのにOutputを雑に出すのは勿体無いです。
仕様の理解は完璧なのに細かい所が色々足りていない成果物、みたいなイメージです。これは組み合わせの中では最もNGかと考えています。
ただし、確認・聞き返しというレスポンスは私はOutputに含んでいないです。
例:「〇〇という仕様があって〜」に対して「それって××ってことですか?」のようなレスポンス
なぜかというとそれはInputの精度を上げる行為であるためです。
自分のOutputが期待されており、なおかつInputの精度が不足していると感じたなら、確認すべきタイミングです!
ガンガン確認していきましょう!
活用・応用
ギア調整でHP・MP管理
スピード重視・精度重視では精度重視の方が疲れます。
Inputの精度を上げる行為が確認であるように、精度を上げるには何度も確認・推敲・リファクタなどを反復して行う必要があるからです。
逆に、適切にギアチェンジをすることでHP・MPの消費を抑えられるってことです。
場面に応じて必要なギアを選択することが長期的なパフォーマンスにつながります。
以下は長期的パフォーマンスを出すための私の考えです。
- 全ての場面で100%の力を使う必要はない
- 例:簡易な進捗報告、日常的なメッセージやり取り など
- そもそも自分に振られたとしても、担当外と切り捨てるというのも一つの手。
- 状況に応じて適切なリソース配分を行うのが重要
- 同期的な場なら概ねスピード重視。重要な意思決定をするなら精度重視。
- 非同期系でも軽い質問ならスピード重視。レビューなど成果物の品質に直結するものは精度重視にすべき。
- 相手のリソースも考慮すべき
- 次セクションで詳細記載
相手のギアに合わせる重要性
前のセクションでは、ギア調整とHP・MP管理を書きました。
それを応用して自分だけでなく周りにも思考のギアの意識を拡張しようというのがこのセクションで書くことです。
自分のOutputが遅くて急かされた経験は1度くらいはあるかと思います。
締め切り近いけど大丈夫?だったり、あの件ってどうなりましたっけ?だったり。
私はよく通話中に自分のレスポンスが遅くて怒られていたのですが、振り返るとこれは相手との思考のギアが噛み合っていない状態であったと感じています。
この経験を踏まえると、思考のギアが噛み合っていないと以下のような問題が起こると考えられます。
- 自分or相手のHP・MPを無駄に消費してしまう。
- 早いレスポンスが欲しいのにレスポンスが遅くて時間を浪費する
- ざっくりで良いから早いレスポンスが欲しいのに、何度も聞き返して精度の高いレスポンスを返そうとする
- 精度の高いレスポンスが欲しいのに、雑なレスポンスをもらって後で問題が起きる
- チームの生産性が低下する
- ミーティングが長引いたり、何度も確認が発生して進行が滞る
- お互いの不満が溜まり、円滑なコミュニケーションが難しくなる
- 信頼関係が損なわれる
- 「この人は要点を掴めない」「この人は細部に気を配らない」という認識につながる
- 長期的な協力関係に悪影響を及ぼす
そのため、円滑なコミュニケーションのためには:
- 相手の状態を観察し、どのギアで動いているかを把握する
- 適切なギアを選択してコミュニケーションを行う
例えばこんな感じでギアを変えてみると良さそう
- 相手の話すスピードや質問の仕方に注目する
- 「大まかな方針だけ教えて」→スピード重視
- 「詳細な根拠が知りたい」→精度重視
- 相手の返答の速さと詳細さをチェックする
- 即答で簡潔な返事→スピード重視モード
- じっくり考えて詳細な説明→精度重視モード
- 会議の目的や場の空気を読む
- アイデア出しのブレストなら→スピード重視
- 最終決定や契約に関わる場なら→精度重視
- 相手の時間的制約を確認する
- 「急いでいるので手短に」→スピード重視の合図
- 「じっくり検討したい」→精度重視の合図
- スピード重視の相手に対して
- 要点を先に伝え、細部は後回し
- 「結論から言うと〜」で始める
- 選択肢を限定して質問する(「AとBどちらが良いですか?」など)
- 精度重視の相手に対して
- 根拠や背景情報を添えて説明
- 予想される懸念点にも先回りして言及
- オープンな質問をする(「どう思いますか?」など)
- 自分のギアを明示する
- 「ざっくりした案ですが〜」(スピード重視)
- 「詳細を確認したいのですが〜」(精度重視)
- 状況に応じてギアチェンジを提案する
- 「一旦全体像を把握したいので、詳細は後で聞かせてもらえますか?」
- 「ここは重要なポイントなので、もう少し詳しく説明させてください」
成長のポイント:思考のギアの習熟度レベル
思考のギアの習熟度レベルを下記にまとめてみます。
私もまだまだレベル1〜2程度なので、説得力はないですが参考程度にしていただければと思います。
レベル1:自己認識
- 思考のギアという概念を理解する(Input/Outputの精度とスピードのバランス)
- 自分がどのギアで作業しているかを意識してみる
- 場面によって自分のギアを意図的に変えてみる(精度重視の場面とスピード重視の場面を区別する)
レベル2:状況認識
- タスクの性質に応じて適切なギアを選べるようになる(重要な決定には精度重視、アイデア出しにはスピード重視など)
- Input/Outputの精度/スピードの組み合わせで、いま何を重視すべき状況かを把握する
- 自分の体力・精神力(HP・MP)と相談しながら適切なギアを選択する
レベル3:相手のギアに合わせる能力
- 相手の話し方やレスポンスの速さから相手のギアを読み取れるようになる
- 相手のギアに合わせて自分のギアを調整してみる
- 相手と自分のギアの違いを認識し、必要に応じて調整を提案できる
レベル4:マスターレベル
- チーム全体の作業の流れを見て、最適なギアの組み合わせを見出せる
- ギア切り替えのタイミングを自然に感じ取り、状況に応じて瞬時に切り替えられる
- 他者にも思考のギアの概念を伝え、チーム全体の効率を向上させられる
まとめ
この記事では思考のギアを「状況に応じてInput/Outputの精度とスピードのバランスを調整する能力」と定義し、その活用法について考察しました。
主に、以下の3点について書きました。
- 思考のギアの本質: Input/Outputそれぞれで「精度」と「スピード」のバランスをどう取るか
- 適切なギア選択の重要性: 状況に合わせたギアチェンジがリソース効率を高める
- 相手のギアに合わせる重要性: 相手が求めているレスポンスのスピードと精度に合わせることで、無駄な労力を省き、信頼関係を構築できる(はず)
この概念を通じて、より効率的で効果的なコミュニケーションの糸口になれば幸いです。
また、私自身最近気づいたことなので、それは違うんじゃない?など思う方もいるかと思います。
ぜひ意見やご自身の見解をコメント等で聞かせてもらえると助かります!
Discussion
はじめまして。
実際にギアが噛み合わなくて、困っていました。
ギアの概念、参考にします。
コメントありがとうございます!少しでもお力になれたのなら幸いです!!
相手の期待値と噛み合わないことはよくありますよね。。
記事書き上げたあとの気づきですが、本記事の話は広い意味では期待値マネジメント, 期待値コントロールの話に繋がってるのかなと思いました!
もしかしたら、そちらも調べてみると得られるものがあるかもです!
うーん。
とても助かった。
ちょうど困っていたところでした。
ありがとうございます。
こちらを見てみました。