7年勤めてわかった、エンジニア採用における心理的安全性とカルチャーフィットの重要性
エンジニア採用において、人材の定着率は組織の安定と成長を測るうえで極めて重要な指標です。
かつては 「エンジニアは3年で転職する」 という風潮があり、私自身もLCLに入社した当初、「とりあえず3年で転職しよう」と考えていました。しかし気づけばもう7年が経過しています。社内には3年、5年以上在籍しているエンジニアが当たり前に存在し、新たに加わるメンバーも早い段階で活躍できる土壌が整っています。
この背景には、「心理的安全性」と「カルチャーフィット」を最重要視した採用方針と、その後も継続して根付かせてきた文化があります。
本稿では、私が7年間にわたりエンジニア採用やオンボーディングに携わる中で蓄積した知見をもとに、その手法を体系化し、ご紹介します。これを参考に、長期的に活躍できるエンジニアを増やし、組織全体の成長につなげるヒントとなれば幸いです。
Google「プロジェクト・アリストテレス」に学ぶ、心理的安全性
「心理的安全性」という概念は、Googleが行った「プロジェクト・アリストテレス」で広く知られるようになりました。このプロジェクトの研究結果によると、チームメンバー間で自由に意見交換が行える環境、すなわち「心理的安全性」が高い状態が、チームが高いパフォーマンスを達成するための重要な要素であることが明らかにされています。
心理的安全性が高い環境では、小さな疑問や新たなアイデアを気軽に共有でき、失敗を学習機会として受け入れやすくなります。
当社の場合、この土壌は部署間の垣根を取り払い、開発以外の領域にも自然とアクセスできる環境を育みました。その結果、技術以外の視点を組み合わせた問題解決が可能となり、個々の成長だけでなく、チーム全体の生産性や創造性を高めることにつながっています。
カルチャーフィットは「相互調和」
「カルチャーフィット」という用語は、しばしば企業が候補者を一方的に評価するかのような印象を与えがちです。しかし、私たちの会社では、これを「相互の調和」と位置づけています。すなわち、企業と候補者がお互いを深く理解し合い、価値観や働き方が一致することにより、はじめて長期的な関係が構築されるのです。
- 会社が候補者にとって自然体で働ける環境や価値観を提供できているかどうか
- 候補者のパーソナリティや思考が既存の文化に良い影響を与える可能性があるかどうか
面談・面接では、「お互いを選ぶ場」であることを明言しています。スキルや条件面の確認だけでなく、価値観やコミュニケーションスタイルが噛み合うかを丁寧に確かめ合います。たとえば、事前にミッション・バリューを示すスライドを共有し、「なぜそのビジョンに共感できるか」「その中で自分がどう活躍できそうか」を自由に語ってもらいます。
このアプローチによって、入社後の「思っていたのと違う」というギャップを減らし、長期的な信頼関係を築いています。
カルチャーフィットを中心に据えた採用方針
採用プロセスにおいて心理的安全性とカルチャーフィットを最も重視しています。技術力も確かに大切ですが、組織の文化や価値観と合致しない場合、長期にわたる貢献は望めないと我々は考えています。従って、採用にあたっては次の3つの要素を重要視しています。
1. ミッションとバリューに対する共感
技術力が優れていても、組織の目指すビジョンに共感しなければ、逆境に立ち向かう力は生まれません。一方、ミッションとバリューへの共感は、チームを一つにする強い動機付けとなり得ます。
私たちのミッションとバリューに関してはこちらの記事で詳しく紹介しています。
2. 個性と文化の調和
組織文化は、日々の行動やコミュニケーションによって形成されます。候補者が自分らしくいられ、その独自性がチームを前進させる場合、長期的な貢献と成長が見込めます。
3. 建設的な議論の可能性
技術分野は絶えず進化し、挑戦は終わりません。単に与えられたタスクをこなすだけでなく、能動的に問題を提起し、議論を通じて解決策を見出す能力は非常に価値があります。面接の際には、候補者が過去に直面した問題や、技術選択のプロセスについて質問し、どのようにして議論を重ね、問題解決に至ったかを評価します。
具体的な採用プロセスとポイント
募集要項におけるカルチャーとバリューの提示
募集要項では、技術スタックや職務内容だけでなく、組織の使命や重要視する価値観も詳述します。エンジニアブログやインタビュー記事へのリンクを掲載することで、応募者が事前に企業文化を理解し、自己選択できるようにします。このアプローチにより、カルチャーフィットに優れた応募者との接点が増えることが期待されます。
カジュアル面談を通じた相互理解の促進
カジュアル面談の冒頭で、「評価の場ではなく、互いを理解する機会である」という点を強調します。事業の概要やミッション、バリュー、働き方についてスライドを用いて説明した後、応募者が気軽に質問できるような環境を整えます。
この段階で、「どのように成長できるか」「過去の経験をどう活かせるか」について自然に話せる応募者は、入社後にも組織文化にスムーズに溶け込む可能性が高いです。
面接での深い相互理解の追求
面接においても、私たちから一方的に質問するだけでなく、候補者が自らミッション・バリューに言及するかを観察します。技術や待遇面への関心だけでなく、組織の価値観に共感しているかどうかを判断する重要なポイントです。
対話を通じた技術力の評価
コーディングテストは原則行わず、候補者が過去に取り組んだプロジェクトや課題の解決プロセスを深掘りします。この対話から、技術的応用力や問題解決能力、学習意欲が明確になり、わからないことを素直に認める姿勢からは、心理的安全性の中で成長し続ける素養が感じられます。
入社後のオンボーディング体制
メンター制度と1on1によるサポート
入社後は、経験豊富なエンジニアがメンターとなり、新メンバーをフォローします。週1回の1on1で困りごとやスキルアップの状況を確認し、「何がわからないか」を早期に共有できる環境を整え、学習速度と定着度を高めています。
継続的なコミュニケーションで心理的安全性を維持
会社全体で「コミ活」と呼ばれる制度を整備したり、部署・職種を超えてランダムに少人数でランチに行く「シャッフルランチ」を開催したりすることで、普段接点のないメンバー同士が交流します。これにより、新たなアイデアや知見が自然と交わり、心理的安全性が維持・強化されます。
最後に
これらの取り組みを通じて、心理的安全性はただのスローガンではなく、日々の行動を通じて組織に根付く文化へと進化しています。 私自身、3年で離れるつもりだった会社に7年以上在籍し、環境や関係性の中で新たな学びを得続けられているのは、この「コミュニケーションの継続的なデザイン」の恩恵を受けているからです。
現在、私もこれらの仕組みを考え、実行していく側に回りながら、チームや組織が試行錯誤を繰り返しつつ成長していく過程を目の当たりにしています。同じ組織に長く在籍する中でも、視点を変え、役割を拡張し、新たな刺激を得ることは十分可能です。 結果的に、個人としてもキャリアとしても成長を続けられる実感が得られています。
これらの実践が、一人でも多くの読者の方が「長く活躍できる組織」を築く一助となれば幸いです。
この記事を通して弊社LCLに興味を持ってくれた方は、カジュアル面談を含む応募をぜひ以下のリンクからお寄せください。
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