INPの追求はUXの向上につながるのか?心理学的に考えてみた
はじめに
フロントエンドの開発を進める中で、SEOは切っても切り離せない重要な要素です。
検索エンジン最適化(SEO対策)は、ウェブサイトの訪問者数やビジネスの成長に繋がっています。
そのため、Googleが提唱するCore Web Vitals(CWV)の指標は、フロントエンドエンジニアにとって避けては通れない課題です。
しかし、これらの数値を追い求めるあまり、時に、本来大切にしたいユーザーエクスペリエンス(UX)への意識が希薄化してしまっていたという状態に陥ってしまうかもしれません。
今回は、Core Web Vitalsの1つである、INP(Interactive Navigation Performance)の改善がUXにどのように寄与するかを、心理学の観点から再確認してみたいと思います。
INPとは?
まず、INPについて簡単におさらいしましょう。
INPは、ユーザーがアクションを起こした後、次のペイント(レンダリング)までの時間を測定する指標です。
平たくいうと、ユーザーがウェブサイトやアプリケーションを操作する際の反応速度やナビゲーションのスムーズさという感じです。
例えば、ページをクリックしたときに素早く次のページが表示されたり、メニューを開いたときにすぐに表示されたりすることです。
https://web.dev/inp/#what's-in-an-interaction より引用
INPと心理学の関係
心理学的観点から考えると、INPの改善はUXの向上にどのように寄与するのか。
いくつかの心理学的理論と研究を基に、INPの重要性を考えていこうと思います。
1. フィードバックとユーザー満足度
こんな経験はないでしょうか?
ショッピングサイトで商品をカートに追加したときに、ボタンをクリックしても特段反応がない。
カートに商品が追加されたかどうか不安になり、何度もクリック。
数秒後、遅れてボタンが反応し、商品が複数追加されてしまいイライラ💢
上記の例からも、分かる通り、
フィードバックはユーザーの満足度に直結する要素の一つです。
心理学では、即時フィードバックがユーザーに安心感と達成感を与えるとされています。
例えば、ボタンをクリックした際にすぐに反応が返ってくると、ユーザーは操作が成功したと認識しやすくなります。
これにより、ユーザーのストレスが軽減され、満足度が向上するのです。
🎓 フィードバックの重要性に関する研究
スタンフォード大学の研究では、即時フィードバックが与えられたグループと、遅延フィードバックが与えられたグループに分けてタスクを行わせた結果、即時フィードバックを受けたグループの方がタスクに対する満足度が高く、次のタスクへの意欲も高かったという結果が得られました。
この研究では、教育的メリットを主張していますが、即時フィードバックがUXの向上に寄与することを示唆していると言えるでしょう。
参考:
CE Kulkarni, MS Bernstein, SR Klemmer(2015)
PeerStudio: Rapid Peer Feedback
Emphasizes Revision and Improves Performance
2. フロー体験の促進
こんな経験はないでしょうか?
オンラインゲームでキャラクターを操作しているときに、ボタンを押してもキャラクターがすぐに反応しない。
反応が遅れると、意図した通りにキャラクターが動かずイライラ💢
没頭できず、ゲームを続ける意欲が失われ離脱。。。(こんなゲーム2度とやるものか😡)
フロー体験とは、心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した概念で、活動に完全に没頭し、時間を忘れるほどの集中状態のことを指します。
上記のゲームの例の場合、フロー体験が阻害されていると言えます。
もし、キャラクターがボタンを押すたびに迅速に反応し、操作が途切れずにスムーズに行えていた場合、プレイヤーはゲームに没頭し、フロー体験を得ることができていたかもしれません。
📕 フロー体験の条件
フロー体験を促進するためには以下の7つの条件があります。
- 行動と成果の因果関係明確化
- 意識と行動の融合
- 成果確認の即時性
- 難易度と自己評価の均衡
- 活動への嗜好性、充足感、満足感
- 注意散漫の原因から退避
- 自意識の喪失/時間間隔の喪失
🔗 INPとフロー体験の関連性
INPは、特に下記の4条件と深く関わっていると言えます。
-
行動と成果の因果関係明確化:
各行動とその想定成果が本人に明確に意識されていること。 -
意識と行動の融合:
統制感、自分がコントロールしている感覚を生み出すために意識したことが即時実行できる必要がある。 -
成果確認の即時性:
行なったことに対して即座にフィードバックが掛かる。 -
注意散漫の原因から退避:
集中するに当たって邪魔になる要素を取り除く。
INPが改善され、ユーザーの操作が途切れることなくスムーズに進むと、ユーザーはフロー体験を得やすくなります。
この状態では、ユーザーは高い満足感を得るだけでなく、再訪問の意欲も高まります。
このように、INPの向上はフロー体験を促進し、UXを向上させられることに加え、
エンゲージメントの向上や、ロイヤリティの強化にもつながることがわかります。
3. 認知負荷の軽減
人間の認知能力には限界があります。
認知負荷理論によれば、ユーザーが多くの情報を短時間で処理する必要がある場合、パフォーマンスや満足度が低下することが示されています。サイトやアプリケーションの反応速度が遅いと、ユーザーは次に何をすべきか考える時間が長くなり、認知負荷が増大します。
🧠 認知負荷の影響
遅延が発生すると、ユーザーは操作が成功したかどうかを確認するために余計な注意を払わなければなりません。これにより、本来の作業に集中できず、作業効率が低下します。例えば、フォーム入力時にボタンを押した後、次のステップに進むために数秒待たされると、ユーザーはその間に他の情報に気を取られ、入力しようとしていた情報を忘れてしまうことがあります。
🔗 INPと認知負荷の関連性
INPが優れていると、操作がスムーズに行えるため、ユーザーは操作結果をすぐに確認でき、次のステップにスムーズに移行できます。これにより、認知負荷が軽減され、ユーザーは本来の作業に集中しやすくなります。したがって、INPの改善は認知負荷を軽減し、ユーザーのパフォーマンスを向上させるのに役立ちます。
具体的なINPの改善方法
以下記事をご参照ください!
まとめ
INP(Interactive Navigation Performance)は、単なる技術的な指標ではなく、UXに深く関わる重要な要素です。
心理学的な視点から見ても、INPの改善はフィードバックの質向上、フロー体験の促進、認知負荷の軽減に寄与することが分かります。これらの要素を総合的に考慮することで、単にサイトのパフォーマンスを向上させるだけでなく、ユーザーにとってより満足度の高い、魅力的な体験を提供することができるのではないでしょうか。
Core Web Vitalsの改善は重要ですが、その過程でUXを疎かにすることなく、むしろユーザ体験を向上させるための手段として捉えることが大切なのだと思います。
INPの向上を目指すことで、ユーザーにとってより快適でストレスのないインターフェースを提供し、引いては、ビジネスの成長にも繋げていきたいですね。
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