エンジニア人生で学んだこと、育児が教えてくれたこと
導入
「子育ては最高難易度のプロジェクトだ」――これが、私が1歳の息子を育てて実感したことです。エンジニアの仕事でも数々の難関プロジェクトを経験してきましたが、育児には全く異なる難しさがありました。
なにせ仕様書(育児本)はあるけれど環境依存が強すぎて再現できないし、バグ(夜泣き)は予測不能、しかもテスト環境なしでいきなり本番リリースですから。
子育て=アジャイル開発
私のチームはアジャイル(スプリント)開発を取り入れていますが、育児もまさにアジャイル。寝返り、つかまり立ち、初めての一歩…と、スプリントごとに成果物が見える。
レビュー(親の観察と喜びの声)があり、改善(次の挑戦)につながっていきます。設計通りには進まないけれど、毎週小さな成果が積み重なっていく感覚はまさにアジャイルそのものです。
設計通りにいかない
育児本やSNS、親世代のアドバイスを参考にしても「その通りに動く子」はいない。まるで「同じコードなのに本番環境だと動かない」現象に近い。
最終的には、その子専用のカスタマイズが必要になります。要件定義にこだわるより、走りながら修正する柔軟性が不可欠です。
テスト環境なしでリリース
育児の最大の難しさはこれ。妊娠前に「子育てのテスト」をすることは不可能。本番環境(=わが子)でいきなり運用を開始し、障害が起きれば真夜中であろうと即時対応。落ち着いたと思えばすぐに別の課題が発生し、まさに炎上案件の連続です。
マルチタスク処理
授乳しながら「この後にあれをして、これを片付けて」とタスクの優先度を常に考えている自分に気づきました。両手がふさがっていても思考だけはフル回転。エンジニアとして培ったリソース管理能力が役に立つかと思いきや、授乳が終わった途端にマミーブレインによって何を考えていたかを忘れ去ってしまうのです。
夜泣きという再現性のないバグ
一番悩まされたのは夜泣きです。私は「ぴよログ」というアプリに分単位で記録を残し、睡眠時間・昼寝回数・授乳との関連を徹底的に分析しました。
自分の睡眠が足りていないのに、○○式寝かしつけ法を調べすぎてさらに眠れなくなるという負のループ。会社のシステムログより丁寧にとった睡眠ログを見返しては「再現性なし」と首をひねる日々でした。
真っ暗な部屋で泣き声を何十分も聞き続け、出口の見えない気持ちになったこともあります。それでも翌日また分析してしまう――エンジニアの性です。
結局、子どもはシステムではないのでデバッグはできませんでした。ですがその経験から「解決できない問題を受け入れる力」も学んだ気がします。
ちなみにこれが生後半年頃のぴよログです。青背景が睡眠の記録で、夜中に何度も起きていることがうかがえます。
どんなに工夫しても夜通し寝てくれない日々にノイローゼ気味でした。(ちなみに今も夜泣きはあります)
チーム開発と同じく、協力が必須
育児はワンオペではスケールしません。夫と役割分担し、交代でタスクをこなす。まさにチーム開発と同じです。お互いのリソースを把握し、無理なく進めることが成功の鍵でした。
まとめ
育児を通して学んだのは、「完璧なコード」を目指すより「動くもの」を出し続けることの大切さです。
情報が溢れる現代では、育児本やSNSでの「こうあるべき」に振り回されがちです。でも最も大事なのは、わが子が健康でニコニコ過ごせること。「完璧にしなきゃ」「こうであるべき」という押し付けを手放したとき、親としても少し楽になれました。
子育ては最高難易度のプロジェクト。でもその難しさの中に、かけがえのない学びと喜びがあります。
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