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『言葉ダイエット』から学ぶ、伝わる文章の書き方 -読み手を意識した文章術-

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みなさん、こんにちは!ランサーズのサーバーサイドエンジニアk_cat_kです。
私は、文章でもデータ出力されたスプレッドシートでも、
いちいち細かいところに目が行ってしまうキニシスギ君です。

はじめに

「なぜこの文章は読みにくいのだろう?」「自分の意図が相手に伝わらない」
───そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

橋口幸生氏の著書『言葉ダイエット』は、そんな文章の悩みを解決する実践的な一冊です。本書は単なる文章術の解説書ではなく、「読み手のことを考える」という本質的な視点から、具体的なテクニックまでを体系的に学べる内容となっています。
https://www.sendenkaigi.com/creative/books/book_20179/

この記事では、『言葉ダイエット』の核となる考え方と具体的なテクニックを紹介し、実際にどのような場面で活用できるかを解説します。文章を書くすべての人にとって、明日からすぐに使える内容をお届けします。

『言葉ダイエット』とは何か

言葉の「ムダ」を削ぎ落とす発想

『言葉ダイエット』は、文章から不要な「ムダ」を削ぎ落とし、本当に伝えたいことを明確にする文章術です。著者の橋口幸生氏は、多くの人が「言葉デブ」状態に陥っていると指摘します。

「言葉デブ」とは、必要以上に長く、回りくどい表現を使ってしまう状態のこと。これは決して文章力がないからではなく、むしろ「丁寧に伝えよう」「詳しく説明しよう」という気持ちから生まれることが多いのです。

なぜ文章は長くなるのか

本書では、ビジネス文書が長くなる要因として以下が挙げられています:

  • 保身的な表現:責任を回避しようとする心理
  • 論理構造の曖昧さ:何を伝えたいかが不明確

私自身を振り返ってみると、これらに加えて以下の要因も感じています:

  • 完璧主義:すべてを説明しようとする姿勢
  • 読み手への配慮不足:自分基準での文章作成

言葉ダイエット 7つの基本スキル

『言葉ダイエット』で提唱される7つの基本スキルは、どれも実践的で即効性があります。

1. ひとつの文には、ひとつの内容だけ(一文一意)

一つの文に複数の内容を詰め込むと、読み手は理解に時間がかかります。

改善前:

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改善後:

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2. 1文は40〜60文字以内

文章の長さには適切な範囲があります。40〜60文字を目安にすることで、読みやすさが格段に向上します。

3. 抽象論禁止(修飾語、カタカナ語は最小限にする)

抽象的な表現は読み手によって解釈が分かれます。具体的で明確な表現を心がけましょう。

改善前:

革新的なソリューションで、お客様にとって最適化されたエクスペリエンスを提供します。

改善後:

新開発のシステムで、お客様の作業時間を30%短縮します。

4. 繰り返し禁止(重言には特に注意する)

同じ意味の言葉を重複して使う「重言」は、文章を冗長にします。

重言の例:

  • 後で後悔する→後悔する
  • 事前に予約する→予約する
  • 過半数を超える→過半数に達する

5. ムダな敬語禁止

過度な敬語は文章を読みにくくします。適切なレベルの敬語で十分です。

6. 表現を統一する

同じ文書内では、用語や表記を統一しましょう。読み手の混乱を避けられます。

7. こそあど&接続語の連発禁止

「これ」「それ」「また」「しかし」などの多用は、文章の流れを悪くします。

「おもしろい」文章の条件:発見の重要性

『言葉ダイエット』では、読みたくなる文章の条件として「発見」があることを挙げています。発見には2つの種類があります。

主観的発見:読み手を意識することの重要性

主観的発見とは、「読み手のことを考えて文章を書く」という発見です。多くの人は文章を書く際、自分の伝えたいことばかりに意識が向いてしまいます。

しかし、本当に大切なのは「読み手が何を知りたいか」「どのような順序で説明すれば理解しやすいか」を考えることです。この視点の転換が、文章の質を劇的に向上させます。

読み手を意識した文章を書くためには:

  • 読み手の知識レベルを想定する:専門用語の使用量を調整
  • 読み手の関心事を理解する:相手が本当に知りたい情報を優先
  • 読み手の時間を尊重する:要点を明確にし、簡潔に伝える

客観的発見:新しい情報や視点の提供

客観的発見とは、読み手にとって新しい情報や視点を提供することです。既知の内容だけでは、読み手の興味を引くことはできません。

客観的発見を生み出すためには:

  • データや事例の活用:具体的な数字や実例で説得力を増す
  • 意外性のある切り口:常識とは異なる視点からのアプローチ
  • 時事性のある情報:最新の動向や変化を盛り込む

三幕構成:効果的な文章の組み立て方

『言葉ダイエット』では、文章構成の基本として「三幕構成」を推奨しています。

第一幕:問題提起・導入

読み手の興味を引き、なぜこの文章を読む必要があるかを明確にします。

  • 現状の課題や問題点を提示
  • 読み手の関心事との接点を示す
  • 文章の目的や得られるメリットを予告

第二幕:展開・解決策の提示

問題に対する具体的な解決策や情報を提供します。

  • 論理的な順序で情報を整理
  • 具体例やデータで裏付けを行う
  • 読み手が理解しやすい構成を心がける

第三幕:まとめ・行動促進

要点を整理し、読み手の次の行動を促します。

  • 重要なポイントの再確認
  • 具体的なアクションプランの提示
  • 読み手へのメッセージで締めくくり

実践での活用例

AIプロンプトでの活用

『言葉ダイエット』のテクニックは、AI(ChatGPTやClaude等)とのコミュニケーションでも威力を発揮します。

従来、AIに指示を出す際、「詳しく説明すれば理解してもらえる」と考えて長いプロンプトを書いていました。しかし、言葉ダイエットの考え方を適用し、以下のポイントを意識するようになりました:

  • 一文一意の原則:一つの指示には一つの要求だけを含める
  • 具体的な表現:抽象的な指示ではなく、具体的な成果物を明示
  • ムダな修飾語の排除:AIが混乱する可能性のある曖昧な表現を避ける

改善前のプロンプト例:

マーケティング戦略について、とても効果的で革新的なアプローチを考えてほしいのですが、できるだけ詳しく、そして実践的で、かつ費用対効果の高い施策を、様々な角度から検討して提案してください。

改善後のプロンプト例:

SNSマーケティング戦略を作成してください。予算は月50万円です。ターゲットは30代女性です。目標は月間リーチ数10万人です。

結果として、AIからの回答が格段に具体的で実用的になり、やり取りの効率も大幅に向上しました。

社内での波及効果

社内LTで『言葉ダイエット』について発表したところ、予想外の波及効果がありました。発表を聞いたチームメンバーが、その後の文書作成において明らかに読み手を意識するようになったのです。

具体的な変化として:

  • 会議資料の簡潔化:要点が明確で読みやすい資料が増加
  • メールコミュニケーションの改善:件名と本文の一致、要点の明確化
  • 相互レビューの活性化:「読み手の立場で見るとどうか?」という視点での議論

この経験から、『言葉ダイエット』の考え方は個人のスキル向上だけでなく、チーム全体のコミュニケーション品質向上にも寄与することを実感しました。

この記事ができるまで:言葉ダイエットを実践したAI協業の実例

実は、この記事自体が『言葉ダイエット』の実践例でもあります。Claude(AI)との協業で作成する過程で、言葉ダイエットの原則を意識的に適用しました。

AI協業での言葉ダイエット実践

初期段階:

  • 私(k_cat_k)から「『言葉ダイエット』について2000字程度の記事を書いてほしい」という曖昧な依頼
  • AIからの最初の提案は一般的な書評に近い内容

言葉ダイエット適用後:

  • 一文一意の原則:「実体験を含めたい」「7つのスキルの正確性を重視したい」など、要求を一つずつ明確化
  • 具体的な指示:「AIプロンプトでの活用例」「社内LTの波及効果」など、具体的なエピソードを提示
  • 読み手の明確化:「文章に悩みを持つビジネスパーソン」というターゲットを共有

協業の成果

この記事は、人間(実体験・課題設定)とAI(構成・文章化)の強みを組み合わせて作成されました。言葉ダイエットの原則を守ることで:

  • 効率的なコミュニケーション:修正回数が大幅に減少
  • 質の高いアウトプット:読み手のニーズに合致した内容
  • 相互理解の促進:人間とAIの間での意図の齟齬が最小化

このように、『言葉ダイエット』の考え方は人間同士のコミュニケーションだけでなく、AI協業においても威力を発揮します。

まとめ:今日から始める言葉ダイエット

『言葉ダイエット』は、文章を書くすべての人にとって実践的で価値のある内容を提供しています。特に重要なのは、テクニック以前の「読み手を意識する」という基本姿勢です。

今日から実践できる3つのステップ

  1. 一文一意を意識する:まずは一つの文に一つの内容だけを含めることから始める
  2. 40-60文字を目安にする:文章の長さを意識的にコントロールする
  3. 読み返しの習慣化:「読み手の立場で理解できるか?」を自問する

継続のためのコツ

言葉ダイエットを継続するためには:

  • 小さな改善から始める:完璧を目指さず、段階的に改善
  • フィードバックを求める:周囲の人に文章の印象を聞く
  • 読み手を具体的に想像する:架空の人物でも良いので、具体的な読み手をイメージ

文章は相手に何かを伝えるためのツールです。『言葉ダイエット』の考え方を取り入れることで、あなたの文章はより伝わりやすく、読みやすいものになるはずです。

ぜひ今日から、一文一意を意識した文章作成を始めてみてください。きっと、読み手からの反応が変わることを実感できるでしょう。


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