0から始めるアクセシビリティ改善の挑戦
みなさん、こんにちは!さざなみこと、ランサーズの高橋です。
この記事は、Lancers(ランサーズ) Advent Calendar 2024の14日目の記事です。
2024年はアクセシビリティの改善を本気で始めた一年でした。
16年有余の歴史あるLancersですが、アクセシビリティを本気で考慮したデザインはほとんどありませんでした。そんな中、アクセシビリティの改善に本気で取り組みたいという強い思いを持ち、一年を通して奮闘しました。
この記事では、
- 1年間行ってきたこと
- 気づきや反省点
- 今後目指すべき姿
についてお話しします。
1年間行ってきたこと
開始時の自分の状態
- アクセシビリティ関連の書籍や記事を読んで学んだり、イベントに参加した経験はありましたが、実践経験は不十分でした。
- メインの業務との兼ね合いがあり、同時並行で改善を行う必要がありました。
- 旧来のCakePHPテンプレートで作られたページと、新しいReactで作られたページ、旧・新デザインシステム、追加・修正を多く重ねられた複雑なコードなどなど、どこから改善を始めるべきか迷っていました。
上期:状態の把握と基盤作り
アクセシビリティの問題の改善
そもそも、自分がアクセシビリティの改善の経験がなく、かつランサーズのサイトもどのくらい対応できているか全く把握できていませんでした。そのため、手を動かすことで得られる知識を身につけ、まずはランサーズの状態を知るために手を動かすことに専念しました。
アクセシビリティ改善を推進する仲間集めとレビュー参加
アクセシビリティに関心のある社内メンバーを募り、主体的に取り組む仲間を作ろうとしました。幸いなことにデザイナーの方に共感していただき、一部一緒に改善活動をすることができました。
また、余裕のある時に他プロジェクトのフロントエンドレビューにも参加し、アクセシビリティの観点を共有しました。
最低労力でできる周知活動
エンジニアの月1の定例において、アクセシビリティとは・具体的な問題例・どんな時に誰に聞いたら良いかなどを全体に共有しました。
また、少しでも目にする機会を増やすためにバーチャルオフィスでの自分の名前を「takahashi.hirokazuWebアクセシビリティ高めてこ〜」にしていました(笑)
Slackのアクセシビリティチャンネルに積極的に投稿するようにしました。アクセシビリティに関わるイベントや記事、動画、つぶやきなど自由に共有していました。
下期:デザインシステムの改善と運用のルール化
デザインシステムの改善
もとあったデザインシステムを改善しようという動きがフロントエンドエンジニア同士で起こり、下期にはデザイナーさんも加わり、デザインシステムの強化に向けた活動が本格化しました。
その中で新規・既存コンポーネントのアクセシビリティを考慮した実装やアクセシビリティの考え方をデザインシステムに組み込む活動を開始しました。
自分以外でもアクセシビリティの問題の改善を行える体制作り
上期の活動により、サイトの状態をある程度把握でき、全体像が見えてきました。そこで、アクセスログを利用してアクティブユーザーが多いページをリストアップし、その中から優先的にアクセシビリティ改善が必要なページを特定しました。改善が必要な課題を一覧にし、問題の詳細、修正方法、重要度等を整理することで、他のメンバーも改善作業を進められる環境を整えました。
社内での運用ルール化
現在取り組み中のことですが、リリースルールにアクセシビリティチェックの項目を追加する計画を立てています。それを踏まえて、組織全体でアクセシビリティの意義を共有している状態を作りたいと考えています。定例での周知のほか、1対1の会話を通じて一人ひとりに理解してもらい、前向きにルール化を進めたいと思っています。
気づき・反省
デザインの中のアクセシビリティという視点
最初は目の前の課題を一つずつ解決しながら、自分の実践経験向上とサイトのアクセシビリティ状況の把握を行いました。その中で、多くの重要な問題がコンポーネント化や共通コードの修正で解決できることに気づきました。もちろん、文脈やページ固有の機能の表現に依存した問題も数多くあるのですが、それらはそもそものデザインや表現に問題がある場合が多いと感じました。そのため、新規・既存コンポーネントのデザインも含めた改善が有効だと思い、共通部分の改善に注力しています。
改善を始めた当初は、組織への浸透にはアクセシビリティを個人ごとに意識してもらうことが必要で、そのためには研修や支援技術の体験が重要だと考えていました。しかし、一人でゼロから進めるのは現実的ではないと気づき、「アクセシビリティ改善の仲間」を増やそうとするのではなく、「デザイン(デザインシステム)改善の仲間」を増やそうとするように働きかけることにしました。アクセシビリティはデザインの一部なので、幅を持たせて働きかけることが組織浸透のために重要で、じわじわと効く遠回りな全体での活動が大事だと気づきました。
完璧を目指さないために
最初から完璧は目指すべきではないということは理解していましたが、どこまでやるかの基準を設けることの難しさは上期、改善をしていて感じていました。
達成基準のAAまでは改善しましょうとする動きはよく聞くのですが、今の少人数の体制ででそこまで達成するのは厳しいと感じ、WCAG2.2やデジタル庁のウェブアクセシビリティ導入ガイドブック等の基準や他社の事例を読み、一旦4段階に重要度を分けて進めることにしました。将来的にはAAまでは必ず修正したいですが、組織の状況に応じてどこまでやるかの基準を決めるのが良いと感じています。
イベント参加の価値
たくさんのイベントに参加した経験は本当に良かったです。他社がどんな取り組みをしているか、障害を持った方がどのようにサイトを利用しているかといった、書籍だけでは得られないリアルな声を聞くことができました。マジでいいです。同じ理念を共有できる人たちがたくさんいることは心強いです。
時間の確保とメインのプロジェクトとの兼ね合い
メインプロジェクトを進行しつつ、アクセシビリティの改善を同時に行う必要があったため、時間の確保が常に課題でした。ありがたいことに上長の理解をいただき、毎週金曜日をアクセシビリティ改善の日と決めて動くことができたことが非常に有益でした。メインプロジェクトのスケジュールも、アクセシビリティ改善を考慮した上で組み、調整しました。少ない時間を細切れに取るのではなく、強気でまとまった時間を継続して確保するのが良いと感じています。
今後目指したい姿
私の理想としては、皆がでアクセシビリティの問題意識を共有して改善を進められたらいい世界だろうなと思います。ただ、これは傲慢すぎるなとも思います。自分がアクセシビリティに情熱を持って活動しているのと同じように、他の人々もそれぞれの理想に向かって情熱を注いでいるはずです。そのため、私は他の方の思想を変えて同じ情熱を持ってもうべきだとは思いません。
アクセシビリティを考慮したサービスを作るためには、アクセシビリティを考慮しなくても自然とアクセシビリティの守られたものが作られる環境にすることが大切だと考えています。
今後目指したい姿は、「組織全体でアクセシビリティの目的を共有つつ、アクセシビリティの技術を意識せずとも自然と解決できるようになっている仕組み化された状態」です。
Webサービスが使えなくてチャンスを失っている誰かのために、組織全体で意識せずとも自然と改善が進む基盤を作っていきたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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