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ハードウェア工作ド素人が Keyball61 を組み立てたらドハマりした話

2022/04/23に公開3

この記事の結論

Keyball はいいぞ。使う前と使ったあとでは世界が違って見えるほどだ。
このデバイスは、キーボードとマウスが別々に存在することを当然とした世界を変えるかもしれない。

予めお断りさせていただくと、この記事はかなり偏見や熱狂的な感想に満ち満ちております。
淡々と組み立て方だけを知りたい人や、 Pros./Cons. を冷静に調査して検討したい、という人には大してまったく役に立ちません。

Keyball とはなにか

まずKeyballとはなにか。百聞は一見に如かず。私の愛機(Keyball61)の姿を見ていただきましょう。


かわいい!😍

Column-Staggered レイアウト、左右分離型。 ErgoDash や Corn Cherry を彷彿とさせるキーボードですが、最大の特徴として、トラックボールが組み込まれています
エレコムやサンワサプライあたりが出しているキーボードにもトラックボールのついたものはありますし、みんな大好き ThinkPad にも「へそ」がついていたりと、ポインティングデバイスを組み込んだキーボード自体は珍しくありません。

しかし問題はその位置です。

さも当たり前のように、ホームポジションの内側に、35 mm の艶かしく輝くトラックボールが鎮座していますね?

初めて見た時は、さながら「試合直前にタッパーいっぱいのおじやを平らげ、1.5 リットル炭酸抜きコーラを飲みほす無名の格闘家」を見たモブのような反応をしてしまいました。
しかし、間違いなく「これは何かとんでもないことが起きている」と予感させてくれる姿と言えるでしょう。

あ、念の為。(販売元様では組立サービスも別料金で提供されていますが)自作キーボードです

Keyballシリーズには、そのキー数に依って61、46、39の三種類があります。[1]
私は今回 Keyball61 を購入しましたので、以降はすべて Keyball61 についての言及となります。

組み立ての参考にしたもの

このキーボードの組み立てに至るまでは、様々な記事や動画を参考にさせていただきました。

買うより先にこれらを日夜拝見させていただき、かなりイメージが高まっていたおかげで、実にスムーズに組み立てることができました。ありがたし。

組み立てに要したもの

基本的には、公式ビルドガイドを参考にされるのがいいでしょう。購入した際の付属品と、別途購入の必要なパーツ、そして必要な道具などのガイドが一通り揃っております。また、wonwon eaterさんの記事にも、いくつか紹介されています
ですが一部、これらに紹介されていないながら、私が

  • 個人的に持っててよかった
  • 買い足してよかった

と思ったものたちを、ここで紹介します。

アートナイフ

ダイオードをパッケージから出す時、手元にあった太いハサミでパッケージを切った拍子に、2,3本ほどダイオードの足も切ってしまいました。そこそこちゃんとした刃先の細いハサミか、アートナイフがあったほうがいいと思います。

アートナイフは、アクリルの裏のシールを剥がすのも楽です。

キーキャップ&キースイッチ引き抜き工具

当たり前っちゃ当たり前なんですが、キースイッチを挿しそこなったり、いくつかキースイッチ&キーキャップを試したりと、これらを引き抜くシーンはありえます。引き抜くための工具はあったほうがいいでしょう。自作キーボードに走るより先に、凝った市販キーボードに手を出して、メンテナンス用に持っているという人が大多数だとは思いますが…。

ヘッドルーペ

細かい作業がキツイんじゃ! という方には必須。買ってよかった。ルーペ無しでダイオードの極性を示す線を見分けるのは、大変な苦痛でした。また、ちょいと見るだけなら手持ちのルーペでも問題ありませんが、見失わないように作業するにはヘッドルーペのほうがいいでしょう。

ラジオペンチ

そのへんの(?)キーボードでキースイッチを入れ替えたことがある人ならご理解いただけると思うんですが、キースイッチを差し込むとどうしても何回か足が曲がりますよね。曲がった足を直すにはラジオペンチがあったほうが便利です。

はんだグッズ

数年ぶりにはんだ付けをするとあって、押入れの奥から引っ張り出してきましたが、そういえばはんだ付けってこういうものがないと辛いよね、と思い出したものたちです。

  • スタンド : 基本すぎて割愛されがち。初心者セットには大体ついてる
  • スポンジ : 基本すぎて割愛されがち。スタンドについてることが多い
  • 作業用マット : シリコンなどマットがないと、滑ってしまって作業にならない
  • 吸い取り線 : ミスをしない自信があるなら要らない
  • フラックス : ソケットみたいにデカイものやショート、などをはんだ付する時にはやはり心強い

組み立てのつまづきどころ

組立ガイドはとても丁寧に説明されているのですが、それでも何箇所かは戸惑ったり間違えたりするシーンはありました。

付属品の説明が難しい

数年ぶりのはんだ付け、二十年近く前、高専時代以来の電子回路界隈の用語に、面食らうことがありました。コンスルーピン…ってなんだっけ?など、脳内の画像検索が遅く、少々参りました。

作業台には気をつけて

ちゃんとした作業台(机)の上で作業しましょう。粋がって(?)ローテーブルなんぞで作業すると腰がイきます。

トッププレートには左右がある

スペーサーとネジ穴が重なるように、トッププレートを合わせましょう。そんなこと、見りゃ分かるのになんで間違えるかね。
ミドルプレート重ねたあとでスペーサーの付け直しじゃん!と気づくハメになります。愚か者。

PCBの表裏

表裏には気をつけましょう。

PCBの表裏には気をつけましょう

説明書にはちゃんと書いてありますが、表裏には気をつけましょう。

PCBの表裏には気をつけろって言ってんだろ!!!!!!!!!

説明書には大書してありますが、表裏には気をつけましょう。

私は「注意されているにもかかわらず、PCBの表裏を間違えました」の札を今でも心の中に下げています
手順上「ここはオモテ面で作業します」と書かれているにもかかわらず、左手用の OLED 、 Reset ボタン、 TRRS ジャックを裏につけました。足の数の多さに泣きそうになりながら吸い取り線で頑張りました。おかげで反対面の使ってない回路がちょっとイッてます。愚か者。

マスキングテープ剥がし忘れに注意

こんなもん、どうやったらそんなミスを犯すのか自分でもわからないんですが、キースイッチをはめる前に、オモテ面を示すために貼ったマスキングテープは剥がしましょうね。
こんなもん、どうやったらそんなミスを犯すのか自分でもわからないんですが、私はやりました(馬鹿なのかな?)。

キースイッチの足には注意

Keyball や自作キーボードに限った話ではないですが、キースイッチの挿し込みってどうしてあんなに難しいんでしょうね。テストして反応しないキーがある場合は、はんだ付けを疑う前にキースイッチを引っこ抜いてみましょう。だいたい足がグネっています。ラジオペンチで真っ直ぐに直しましょう。

カスタムへの挑戦と失敗

ガイド通りに組み立てて、一通り素直に動いたところで、よりよい使い勝手を得るためにいくつかカスタムをしてみました。

  • キーキャッププロファイルの変更
  • ティルトの調整
  • トラックボールの変更
  • ホームポジションマーカーの追加

キーキャッププロファイルの変更

いくつかキーキャップを試してみましたが、私はすべての行を DSA プロファイルで統一しました。

DSA PBT ブランク キーキャップ (グレー/2個) | TALP KEYBOARD

MIX 1.0のフルセットを買ってみたりしたのですが、指の屈伸方向がRowによって微妙に変わると妙に落ち着かず、私には向いてないと結論しました。

ティルトの調整

机の上にベタ置きして使うと、数字キー(R1)に届きにくく、かと言ってR1に合わせて手を置くとトラックボールが近すぎて使いにくかったので、ティルトさせることにしました。
概ね快適です。
まだ少し問題は残っているのですが、これは私の手癖の方を矯正することで解消できないか、と考えています。

トラックボールの変更

トラックボールはひとまず MX Ergo から流用しましたが、もっと適したものがあるのではないかと、いくつか試してみました。

つやありのトラックボールは滑りがよすぎてどうも上手くコントロールできません。
また、ベアリング用の鋼球は、反射特性が違いすぎるせいかセンサーが上手く反応しませんでした。
Gameball のトラックボールを触った折、その重さが大変に心地よかったことを思い出し、ものは試しに、と買ったのですが、そう甘くはありませんね。

結局、つや消しの交換用トラックボールに落ち着きました。
MX Ergo のそれも一応つや消しではありますが、こちらの交換用トラックボールのほうがより表面加工が荒く、上手く噛んでくれる感触があります。

ホームポジションマーカーの追加

フルセットではないキーキャップを買ったせいで、ホームポジションマーカーが付いてませんでした。
おかげで、ひとたびキーから手を離してしまうと、手を戻すために視線を落とすことになります。ちょっとコーヒーを飲んで、そのたびにキーの位置を目視で確認するのはなんとも億劫なものです。

キーキャップには、彫りが深くなっていることでホームポジションマーカーとするものがあります(例: DSA PBT ホーミングキーキャップ)。これも試してみましたが、鈍感な私には使いこなせませんでした。不安になって結局いちいち目視してしまうという悲しみ。

そこで、レジン液を垂らしてキーキャップにマーカーをつけることにしました。残念ながらダイソーの UV ライトが今は売り切れのようで、日中の太陽の下、辛抱強く一滴一滴つまようじで嵩を育てました。

持ち運びケースの購入

めったに外に出ない私ですが、それでも持ち運びはできたほうがよかろうと、 Twitter で教えてもらったアクションカメラ用のケースを買いました。

これが実に丁度いいサイズでした。ただし、Keyballの薄さでは中で少しガタつくので、安定感を増すためにウレタンフォームを2つほどつめて嵩上げしています。
WAKI NRスポンジゴム 20mmX100mmX100mm NRS-09

やりたいこと

足の位置によるガタツキ問題は、手癖の強すぎる打鍵を矯正することができなければ、また別の手を考える必要があるでしょう。

  • 裏側のアクリル板を自分で CAD で改造して脚を足す
  • 1行目だけより軽いキースイッチに変える
  • いっそ一番上のキーを使わなくていいようにマップを見直す

また、今回は在庫を見つけられなかったので諦めましたが、いずれ USB はグレー、 TRRS ケーブルは真っ赤なものに変えたいところです。

さらに、どうもマウスクリック用のレイヤー切り替えキー(右手親指右側)がちょっと重すぎるきらいがあるため、よりライトなキースイッチを試してみたいと考えています。

キーマップ含め、私の Keyball 探訪は始まったばかりです。

使用感

あのですね、最高ですね。
これまでも LibertouchREALFORCEErgodashHHKBErgodox と様々なキーボードを渡り歩いてきましたが、これほどにいい体験は初めてです。

パーツも合わせたお値段、そしてはんだ付けのハードルはなかなかにお高いものですが、それに見合うだけの体験を得られています。
トラックボールのために手をキーボードから話さなくていい、というのがこんなにも快適なものだとは。

お金に余裕があって、ハードウェアに興味があって、あるいは自作キーボード作るくらいはどうってことないぜ!という方々には、ぜひ強く、強くオススメしたいデバイスです。

ご一考あれ。

注意点

とはいえ購入にあたってはいくつか注意点はあります。

図を描く作業には向かない

Keyball にかぎらずトラックボール全般に共通して、図を描くデバイスとしては未だにマウスに敵わないと思います。
そういう作業をする人は、別途マウスを持っておくのが良いでしょう。私は MX Master 3 を引っ張り出してきて使っています。

一にも二にも触ってみること

キーボードを買う上で、触らずに買うのはただのギャンブラーか、買ったものをまったく無駄にしても構わない富豪、あるいはメルカリで売りさばく自信のある人くらいです。
体験会に参加するなど、触ってみてどの程度使えるものなのか、は知った上で検討しましょう。

終わりに

今回、このような革新的なアイディアを形にして、また自キど素人にも優しい丁寧な説明を用意してくださった、白銀ラボ @Yowkees さんに心からの感謝を。

さらに、常からイメージトレーニングに大変役立つキーボード組み立て動画を淡々と公開し、そして迷える購入検討者(チキン)の背中を押すべく実機の体験会を開いてくださった、 @kaoriya さんにも大いなる感謝を。

おかげさまで、革新的なユーザー体験を、日々、贅沢に味わわせていただいております。

脚注
  1. すごくどうでもいんですが、この数字の並びを見たときに僕は思わず「楽器の方のキーボードみたいだな」と思いました。やっぱり意識してるんでしょうか。それとも自作キーボード界隈ではよくある並びなんでしょうか。 ↩︎

Discussion

shosanshosan

コメント失礼します🙇‍♂
記載している持ち運びケースは下記商品であっていますでしょうか
https://pgytech-japan.com/product/p-18c-020/

お手数ですがご回答よろしくお願いします🙇‍♂🙇‍♂🙇‍♂

kyoh86kyoh86

ですね!少なくとも私が利用しているのはP-18C-020で間違いありません。

shosanshosan

ご回答ありがとうございます🙇‍♂
これにしようと思います!🙇‍♂🙇‍♂🙇‍♂