VoIP ルータを使って黒電話を IP 電話機にする
はじめに
前回の記事 “いまさら VoIP 網” では、MikoPBX を利用して VoIP 網を構築する方法について記述しました。 ここでは、VoIP ルータ YAMAHA RT57i やその後継機種である RT58i、NVR500 を利用して VoIP に黒電話を含む(通常の)電話機や FAX 機を接続する方法を紹介します。
YAMAHA RT57i を利用する場合
YAMAHA RT57i は 2003 年発売のブロードバンド VoIP ルータであり、現在では生産完了品となっています。 インターネット上のオークションサイトやフリーマーケットサービス上を彷徨っていると手頃な価格で入手できることがあります。
マニュアルをインターネット上で確認できます: https://www.rtpro.yamaha.co.jp/archive/RT57i/manual.html
初期化
RT57i を初期化し、工場出荷時の状態に戻すには以下のようにします。
- 本体背面(シリアルケーブル端子のある面)に INIT スイッチ及び RESET スイッチを見付けます。
- RT57i の電源を入れます。
- INIT スイッチを押下します。 まだ離しません。
- RESET スイッチを押下します。 INIT スイッチは押下したままです。
- RESET スイッチを離します。 INIT スイッチは押下したままです。
- INIT スイッチを離します。
- おわりです。
プロバイダ情報の設定
プロバイダ情報の設定 なんて仰々しい名前がついていますが、単に RT57i をインターネットに接続するための設定です。 RT57i はブロードバンドルータであるため、このような名前になってしまいます。 以下のように設定することで、多くの環境で RT57i を利用できるようになるはずです。
-
本体底面(カバーを取り付けられる面)の LAN ポートと WAN ポートを見付けます。
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LAN ポートとコンピュータとを接続し、WAN ポートとネットワーク(スイッチングハブなど)とを接続します。
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RT57i の電源を入れます。
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コンピュータで Web ブラウザを起動し、http://192.168.100.1/ にアクセスします。
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プロバイダ情報の設定 をクリックします。
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回線の種類と接続方法 では、CATV インターネット、または PPPoE を用いない端末型 ADSL 接続 を選択して 次へ をクリックします。
回線の種類と接続方法 -
契約先プロバイダの情報入力 では、設定名 に適当な名前を入力したりしなかったりします。 また、WAN 側 IP アドレス を適切に設定します。 多くの場合、DHCP クライアント を選択できます。 この場合、必要に応じて DHCP クライアント識別名 を指定します。 入力が済んだら次へをクリックします。
契約先プロバイダの情報入力 -
DNS サーバアドレス設定 では、DNS サーバの設定を行います。 通常は DNS サーバアドレスを指定しない、またはプロバイダからの自動取得 を選択することで、DNS サーバの設定情報を DHCP から取得します。 特定の DNS サーバを利用したい場合は プロバイダとの契約書に DNS サーバアドレスの設定がある を選択し、適切なサーバアドレスを指定します。 入力が済んだら 次へ をクリックします。
DNS サーバアドレス設定 -
設定内容の確認 では、これまでの設定内容を確認します。 設定に問題が無ければ 設定の確定 をクリックします。
設定内容の確認 -
正常に通信できている場合、トップページに 通信中 と表示されます。
トップページ
VoIP の有効化
初期状態では VoIP 機能は無効化されています。 有効化するには以下の通り設定を行います。
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トップページから 電話の設定 をクリックします。
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選択肢から VoIP の設定 をクリックします。
電話の設定 -
選択肢から VoIP の基本設定 をクリックします。
VoIP の設定 -
設定項目が表示されます。 まず、VoIP(NetVolante インターネット電話、IP 電話)の設定 のうち、VoIP 機能を使用する ように設定します。 接続プロバイダ では WAN ポート(LAN 2) を選択します。 さらに、発信時のプレフィックス(識別番号)設定 において ISDN 回線 を [8#] を付けて などのように設定しておきます(直接 でなければ何でも良いです)。 設定が済んだら 設定の確定 をクリックします。 このとき、再起動が必要になるかもしれまん。
VoIP の設定項目
IP 電話サーバの設定
VoIP のアカウントを登録するには、以下の通り設定を行います。
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トップページから 電話の設定 をクリックします。
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選択肢から VoIP の設定 をクリックします。
電話の設定 -
選択肢から IP 電話サーバの設定 をクリックします。
VoIP の設定 -
既にアカウントが登録されている場合、追加 をクリックします。
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選択肢から 手動設定 を選択し、次へ をクリックします。
IP 電話サーバの設定 -
選択肢から その他の IP 電話サーバ を選択し、次へ をクリックします。
IP 電話サーバの手動設定 -
IP 電話のアカウント情報を入力します。 SIP アドレス には 内線番号@PBX のホスト名または IP アドレス を入力します。 内線番号 や PBX のホスト名または IP アドレス の部分は適宜設定します。 サーバアドレス には PBX の IP アドレスを指定します。 ユーザ ID には 内線番号 を指定します。 パスワード には内線番号に対応するパスワードを入力します。 発信時のプレフィックス[全ポート共通] の 全ポートを一括設定する にチェックを入れ、直接 を選択しておきます。 最後に、電話ディスプレイ名 に人間向けの表示名を指定します(半角英数字を使えます)。 設定項目に誤りがないことを確認して 設定の確定 をクリックします。
IP 電話のアカウント情報 -
IP 電話サーバと正常に通信できている場合、トップページの下部に 通信中 と表示されます。
トップページの下部
着信許可の設定
初期状態では、登録されている IP 電話アカウントのいづれかに着信があると、RT57i に接続されている全ての電話機の着信音が鳴ります。 複数の IP 電話アカウントを登録していて、複数の電話機を接続している場合、アカウントと電話機とを紐付けるには以下のように設定を行います。
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トップページから 電話の設定 をクリックします。
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選択肢から VoIP の設定 をクリックします。
電話の設定 -
選択肢から VoIP の基本設定 をクリックします。
VoIP の設定 -
電話ポートの 電話ユーザ名 に対応する内線番号を指定します。 また、着信許可 に 電話ユーザ名が一致した場合に許可 を指定します。 設定が済んだら 設定の確定 をクリックします。
VoIP の設定項目
WAN 側からも設定できるようにする
初期状態では、RT57i の本体設定の Web UI には LAN 側からのみアクセスできます。 これを WAN 側からもアクセスできるようにするには以下のように設定を行います。
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トップページから 詳細設定と情報 をクリックします。
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選択肢のうち その他の設定 にある 本体の設定(日付・時刻、ブザー、利用制限) をクリックします。
詳細設定と情報 -
パスワードとアクセス制御 にある HTTP の利用を許可するホスト に 同一ネットワーク内であれば許可する を選択します。 設定が済んだら 設定の確定 をクリックします。
本体の設定 -
一度トップページに戻り、再び 詳細設定と情報 をクリックします。
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選択肢のうち 基本設定・VPN 設定・LAN 間接続の設定 から 基本接続の詳細な設定 をクリックします。
詳細設定と情報 -
設定されているプロバイダの一覧 から WAN インタフェースの 設定 をクリックします。
基本接続の詳細な設定 -
表示される設定項目のうち 静的 IP マスカレード関連 の 追加 をクリックします。
プロバイダの修正 -
プロトコル に TCP を、ポート に www を、使用ホスト IP アドレス に 192.168.100.1(RT57i の LAN 側 IP アドレス)を指定し、設定の確定 をクリックします。
静的 IP マスカレード関連
リビジョンアップ
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トップページから 詳細設定と情報 をクリックします。
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選択肢のうち レポートの作成・コマンド実行・初期化 にある リビジョンアップ をクリックします。
詳細設定と情報 -
現在のリビジョンが表示され、リビジョンアップを実行するか訊ねられます。 リビジョンアップする場合は 実行 をクリックします。
リビジョンアップの実行
RT57i を利用する上での注意点
RT57i の IP 電話機能は NAT を越えて通信できないようです。 つまり、IP 電話サーバ(PBX)は RT57i と同一のネットワーク階層にある必要があります(下図)。 また、IP 電話サーバ(PBX)は RT57i から見て WAN 側にある必要があります。 RT57i がブロードバンドルータであることを考えると当然なのかもしれません。
RT57i と MikoPBX は同一階層にある必要がある
RT58i や NVR500 を利用する場合
YAMAHA RT58i は 2006 年発売のブロードバンド VoIP ルータであり、現在では生産完了品となっています。 インターネット上のオークションサイトやフリーマーケットサービス上を彷徨っていると手頃な価格で入手できることがあります。
マニュアルをインターネット上で確認できます: https://www.rtpro.yamaha.co.jp/archive/RT/manual/rt58i/、https://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/manual/nvr500/
初期化
RT58i を初期化し、工場出荷時の状態に戻すには以下のようにします。
- 本体背面に INIT スイッチ及び RESET スイッチを見付けます。
- RT58i の電源を入れます。
- INIT スイッチを押下します。 まだ離しません。
- RESET スイッチを押下します。 INIT スイッチは押下したままです。
- RESET スイッチを離します。 INIT スイッチは押下したままです。
- INIT スイッチを離します。
- おわりです。
プロバイダ情報の設定
プロバイダ情報の設定なんて仰々しい名前がついていますが、単に RT58i をインターネットに接続するための設定です。 RT58i はブロードバンドルータであるため、このような名前になってしまいます。 以下のように設定することで、多くの環境で RT58i を利用できるようになるはずです。
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本体底面(カバーを取り付けられる面)の LAN ポートと WAN ポートを見付けます。
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LAN ポートとコンピュータとを接続し、WAN ポートとネットワーク(スイッチングハブなど)とを接続します。
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RT58i の電源を入れます。
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コンピュータで Web ブラウザを起動し、http://192.168.100.1/ にアクセスします。
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プロバイダ情報の設定 をクリックします。
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回線の種類と接続方法 では、CATV インターネット、または PPPoE を用いない端末型 ADSL 接続 を選択して 次へ をクリックします。
回線の種類と接続方法 -
契約先プロバイダの情報入力 では、設定名 に適当な名前を入力したりしなかったりします。 また、WAN 側 IP アドレス を適切に設定します。 多くの場合、DHCP クライアント を選択できます。 この場合、必要に応じて DHCP クライアント識別名 を指定します。 入力が済んだら 次へ をクリックします。
契約先プロバイダの情報入力 -
DNS サーバアドレス設定 では、DNS サーバの設定を行います。 通常は DNS サーバアドレスを指定しない、またはプロバイダからの自動取得 を選択することで、DNS サーバの設定情報を DHCP から取得します。 特定の DNS サーバを利用したい場合は プロバイダとの契約書に DNS サーバアドレスの設定がある を選択し、適切なサーバアドレスを指定します。 入力が済んだら 次へ をクリックします。
DNS サーバアドレス設定 -
設定内容の確認 では、これまでの設定内容を確認します。 設定に問題が無ければ 設定の確定 をクリックします。
設定内容の確認 -
正常に通信できている場合、トップページに 通信中 と表示されます。
トップページ
VoIP の有効化
初期状態では VoIP 機能は無効化されています。 有効化するには以下の通り設定を行います。
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トップページから 電話の設定 をクリックします。
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選択肢から VoIP の設定をクリックします。
電話の設定 -
選択肢から VoIP の基本設定 をクリックします。
VoIP の設定 -
設定項目が表示されます。 基本設定(NetVolante インターネット電話、IP 電話機能) のうち、VoIP 機能 を 使用する ように設定します。 接続プロバイダ では WAN ポート(LAN 2) を選択します。 設定が済んだら 設定の確定 をクリックします。
VoIP の設定項目
プレフィクスの設定
プレフィクス(識別番号)の設定を済ませておきます。
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トップページから 電話の設定 をクリックします。
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選択肢から TEL の共通設定 をクリックします。
電話の設定 -
選択肢から プレフィックス(識別番号)の設定 をクリックします。
TEL の共通 -
設定項目が表示されます。 初期状態では各ポートで共通の設定を利用するように設定されています。 プレフィックス(識別番号)の設定(共通) から 電話回線 を 使用しない に設定します(直接 でなければ何でも良いです)。 設定が済んだら 設定の確定 をクリックします。
プレフィックス(識別番号)の設定
IP 電話サーバの設定
VoIP のアカウントを登録するには、以下の通り設定を行います。
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トップページから 電話の設定 をクリックします。
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選択肢から VoIP の設定 をクリックします。
電話の設定 -
選択肢から IP 電話サーバの設定 をクリックします。
VoIP の設定 -
既にアカウントが登録されている場合、追加 をクリックします。
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選択肢から 手動設定 を選択し、次へ をクリックします。
IP 電話サーバの設定 -
選択肢から その他の IP 電話サーバ を選択し、次へ をクリックします。
IP 電話サーバの手動設定 -
IP 電話のアカウント情報を入力します。 SIP アドレス には 内線番号@PBX のホスト名または IP アドレス を入力します。 内線番号 や PBX のホスト名または IP アドレス の部分は適宜設定します。 サーバアドレス には PBX の IP アドレスを指定します。 ユーザ ID には 内線番号 を指定します。 パスワード には内線番号に対応するパスワードを入力します。 発信時のプレフィックス[全ポート共通] の 全ポートを一括設定する にチェックを入れ、直接 を選択しておきます。 最後に、電話ディスプレイ名 に人間向けの表示名を指定します(半角英数字を使えます)。 設定項目に誤りがないことを確認して 設定の確定 をクリックします。
IP 電話のアカウント情報 -
IP 電話サーバと正常に通信できている場合、トップページの下部に 通信中 と表示されます。
トップページの下部
着信許可の設定
初期状態では、登録されている IP 電話アカウントのいづれかに着信があると、RT58i に接続されている全ての電話機の着信音が鳴ります。 複数の IP 電話アカウントを登録していて、複数の電話機を接続している場合、アカウントと電話機とを紐付けるには以下のように設定を行います。
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トップページから 電話の設定 をクリックします。
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選択肢から TEL の共通設定 をクリックします。
電話の設定 -
選択肢から 基本設定 をクリックします。
TEL の共通 -
設定項目が表示されます。 電話ポートの 番号設定 → VoIP にある 自己 SIP アドレスの登録 をクリックします。
基本設定 -
電話ユーザ名(発信、着信で使用) に内線番号を指定します。 複数の番号で着信したい場合は、着信 SIP アドレス の部分にも内線番号を指定します。 設定が済んだら 設定の確定 をクリックします。
自己SIPアドレスの設定 -
一度トップページに戻り、再びトップページから 電話の設定 をクリックします。
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選択肢から TEL の共通設定 をクリックします。
電話の設定 -
選択肢から 基本設定 をクリックします。
TEL の共通 -
設定項目が表示されます。 電話ポートの 着信許可 → VoIP にある 以下の条件に一致した場合のみ許可 を指定し、自己 SIP アドレス を選択します。 設定が済んだら 設定の確定 をクリックします。
基本設定
WAN 側からも設定できるようにする
初期状態では、RT58i の本体設定の Web UI には LAN 側からのみアクセスできます。 これを WAN 側からもアクセスできるようにするには以下のように設定を行います。
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トップページから 詳細設定と情報 をクリックします。
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選択肢のうち その他の設定 にある ユーザとアクセス制限の設定(HTTP、TELNET、SSH) をクリックします。
詳細設定と情報 -
HTTP サーバ機能 にある HTTP の利用を許可するホスト に 同一ネットワーク内であれば許可する を選択します。 設定が済んだら 設定の確定 をクリックします。
ユーザとアクセス制限の設定 -
一度トップページに戻り、再び 詳細設定と情報 をクリックします。
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選択肢のうち 基本設定・VPN 設定・LAN 間接続の設定 から 基本接続の詳細な設定 をクリックします。
詳細設定と情報 -
設定されているプロバイダの一覧 から WAN インタフェースの 設定 をクリックします。
基本接続の詳細な設定 -
表示される設定項目のうち 静的 IP マスカレード関連 の 追加 をクリックします。
プロバイダの修正 -
プロトコル に TCP を、ポート に www を、使用ホスト IP アドレス に 192.168.100.1(RT58i の LAN 側 IP アドレス)を指定し、設定の確定 をクリックします。
静的 IP マスカレード関連
リビジョンアップ
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トップページから 詳細設定と情報 をクリックします。
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選択肢のうち レポートの作成・コマンド実行・初期化 にある リビジョンアップ をクリックします。
詳細設定と情報 -
現在のリビジョンが表示され、リビジョンアップを実行するか訊ねられます。 リビジョンアップする場合は リビジョンアップの実行 の 実行 をクリックします。
リビジョンアップの実行
RT58i・NVR500 を利用する上での注意点
RT58i や NVR500 の IP 電話機能は NAT を越えて通信できないようです。 つまり、IP 電話サーバ(PBX)は RT58i や NVR500 と同一のネットワーク階層にある必要があります(下図)。 また、IP 電話サーバ(PBX)は RT58i や NVR500 から見て WAN 側にある必要があります。 RT58i や NVR500 がブロードバンドルータであることを考えると当然なのかもしれません。
RT58i や NVR500 と MikoPBX は同一階層にある必要がある
MikoPBX に追加の設定
RT58i や NVR500 を MikoPBX とともに利用する場合、RT58i や NVR500 に割り当てられる内線番号には追加の設定が必要です。 該当する内線番号の Advanced setting から Extra options に下記の内容を記述してください。
[aor]
qualify_frequency = 0
RT58i や NVR500 のための追加の設定
おわりに
おわりです。
謝辞
現在の東京広域電話網において広く実践されているような黒電話を IP 電話として使う目論みは、そもそも、広島仮想閉域網(Hiroshima Virtual Closed Area Network: HVCAN)にあります。 この火種を生み出してくれた電子計算機総合研究所 所長 pepepper 氏に厚く御礼申し上げます。
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